二つのトンデモ「研究」の例はいかがでしたか? 「暗号」や「超古代文明」といった、ロマンをかき立てられそうなテーマでも、現代の文献に置き換えて考えてみれば、実にくだらない与太話であることがおわかりいただけたと思います。これでトンデモ「研究」に対する免疫もついたことでしょうから、これからいよいよ古代中国や古代日本に関するトンデモ「研究」を見ていくことにします。
ところでこれまで「トンデモ『研究』」という言葉を使ってきましたが、「トンデモ」という言葉は「と学会」の『トンデモ本の世界』シリーズによって一般に広まったものです。本来は「作者の意図に反して失笑を誘う本」という意味だったのですが、最近ではこの言葉が一人歩きして、「常識ではにわかに信じられない突飛な説」を何でもかんでも「トンデモ」と呼んだり、さらには単に自分の気に入らない考えを感情的に罵るのに使われたりする傾向があるようです。しかしウェゲナーの大陸移動説のように、一見突飛な考えであっても、ちゃんと科学的根拠に基づいている学説もあります。私が問題にしたいのは「学問的に成り立たない説」なのであって、「突飛な説」を問題にしたいのではありませんから(古代神話研究は一般の人には多かれ少なかれ「突飛」な印象を与えるものですが、それらのすべてが学問的に成り立たないわけではありません)、「トンデモ『研究』」という用語は誤解を招くおそれがあります。
それに「学問的に成り立たない説」は誰が見ても「とんでもない」と笑えるようなものばかりではありません。一見するともっともらしく学術用語をちりばめていて、取り立てて笑うところのなさそうなものでも、よくよく見れば全くデタラメで「学問的に成り立たない」説もたくさんあります。むしろこちらの方が、あっさり騙されてしまう人が多い点で危険であるといえるのです。
そこで今後はいわゆるトンデモ「研究」、即ち「学問的に成り立たない説」のことを「研究ごっこ」と呼ぶことにします。一見研究のように見えるけれども、実は学問的な手続きを踏み外していて、単なる「猿まね」に過ぎないという意味をこの名称に込めています。自然科学の分野では「擬似科学」という言葉が古くから使われていますが、歴史や文学の研究に「科学」という名称を使うと違和感を抱く人も多いでしょうから、「研究ごっこ」という名称の方がふさわしいのではないかと思います。
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