ホーム :第1章 高岡漆器についての導入的説明 :第2節 工程と分業 (坂田 美紀) :

彫刻

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彫刻の工程で欠かせないのは、やはりノミだろう。一口に「ノミ」と言っても、印刀、三角ノミ、蓮花ノミ、すきノミなど何種類かあり、工程によって使い分けられている。例えば、ある模様にふくらみや奥行きなどの立体感を表現する「肉付け」という作業では、蓮花ノミやすきノミというノミが使われ、葉筋や鳥の羽毛などのように細い筋入れが必要な「上筋入れ」という工程では小形の三角ノミを使用する。
 ノミの取っ手部分は自分の身体に応じて作るそうだ。長いものもあれば短いものもあり、他の人が使っても、その人の身体に応じていないので使いにくいという。
それに、ノミは金属部分(掘るところ)で売っていて、注文するとその部分が来るそうだ。金属部分も形や角度を注文することができるので、ノミは「オーダーメイド」と言えるだろう。

<三角ノミ>
 昔、高岡で使用されていた三角ノミは井波彫刻で使用されている角度の鋭いものだった。しかし、高岡漆器はお盆などの平面な部分に薄肉に彫るということで、井波彫刻で使用される鋭いノミは使いにくかったという。しかし、彫刻職人さんが熱心に研究や改良し、現在では道具に関する苦労はほとんどないようだ。彫刻師のHTさんも、ずっと上の職人さんたちが研究していろいろなノミを作ったから、自分たちの代では全てが揃っていると言っている。
 彫刻塗の工程で彫刻師がする仕事は、彫るのはもちろんだが、「置目(おきめ)」といって、美濃紙に図案を描いて、青竹という天然染料を水に溶いて図面に筆書きしたものを木地に写す、という作業も含まれている。


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