ホーム :第1章 高岡漆器についての導入的説明 :第2節 工程と分業 (坂田 美紀) :

分業

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 私たちが高岡漆器について調べていたときに「本には高岡漆器は分業と書いてあるけど、本当のところはどういった形なのだろうか」「分業というけれど、作品には一人の人の名前しか書いてないのはなぜか」という疑問が出てきた。
 実際には、高岡漆器の製作は分業形式で行われているそうだ。木地を作る工程、塗りの工程、加飾の工程に分かれている。しかし、木地→塗り→加飾と進んでいく中で、作品がそれぞれの職人さんの手から手へと直接渡るのではなく、問屋さんが仲立ちをしているのである。
 問屋から注文があって、例えば木地師の人なら木地を作り、それを問屋に提供する。次に、問屋は木地師に作ってもらった木地を塗師のほうへ持っていって塗りの工程を依頼する、という流れになっている。依頼が来て作る、ということで高岡漆器は「受注生産」なのだという。
 現在、作品の見本を作るのは問屋さんだ。問屋の番頭さんたちは、デパートに行ったり一般の人に話を聞いて、今どのようなものが売れているかを調べるのである。職人さんは朝から晩まで家で作業していて外のことが分からないので、問屋から話を聞くのである。しかし、職人さんたちは問屋ばかりにも頼っていられないということで、高岡の漆器職人のみで構成される「みどり会」でも東京や大阪に視察に行っているのだという。
 次に「分業というけれど、作品には一人の人の名前しか書いてないのはなぜか」という疑問についてだが、作品に名前が出ているのは「こういう作品を作りたい」と発案した人となっているそうだ。例えば、塗師の人が「こういう作品を作りたい」というのがあると、木地師に「こういう木地を作ってください」と依頼します。そして自分が塗りを担当するというわけである。
 青貝師のMYさんは分業のよさとして、ひとりに50頼めば同じものが50できるところで、悪いところはひとりがものを作れない、完成品まで仕上げられないところだと言っている。

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