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Aさんのエスノグラフィー(スライド10〜12)


(スライド10)
 私は「地球の子」利用者Aさんの語りから、Aさんのエスノグラフィーを描き、中川さんの語りももとにして「地球の子」が利用者の方にとってどのような<場>となるのかについて発表していきたいと思います。
 Aさんは70代女性の方で、パーキンソン病になって3年目になります。パーキンソン病のために処方している薬のせいか、食欲が低下し、1年で12sも痩せてしまったといいます。
さらに水分を摂ることも難しいようで、リハビリの合間の水分補給で出されるコップ一杯の飲み物も全部飲み切ることが難しいそうです。
 また、パーキンソン病になり、息継ぎをすること、指を自由に動かすことが困難になってくるなど、以前できていたことが今ではやることが難しくなっているといいます。そしてパーキンソン病とは直接関係ない症状かとは思いますが、Aさんは夜中に排便・排尿のために約1時間おきに目が覚めてしまうそうです。
 この症状のための薬も処方されていると聞きましたが、お話を伺ったときはまだ薬を処方されたばかりらしく、効果のほどはまだわからないと言っていましたが、最近になり、効果が出てきたようで、今はその薬を飲んでいないと語っていました。また、Aさんは足があまり良くなく、長距離を歩くことが難しいとも言っておられました。

(スライド11)
 次にAさんの「地球の子」での過ごし方についてです。
 まずは午前中に他の利用者さんと共にリハビリを行います。そのリハビリに対しては「辛い」という感想をお持ちでした。実際に見てもかなりハードだと思いましたし、実際にリハビリに参加し、ハードであることを体験しました。
 スタッフの方からは「疲れたら休んでいい」という旨のことは言われるそうですが、リハビリは利用者さん皆で行っているため、自分一人だけが抜けるということはしにくいそうです。しかしそのことが逆に「頑張って(リハビリを)やろう」と思えることに繋がっているともいいます。皆でリハビリを行う<場>として、そしてリハビリに対する意欲が掻き立てられる<場>として機能しているように見えます。そしてAさんは以前やっていたことを、またできるようになるために、リハビリに励んでいると語っていました。
 しかし実際のところ、以前のように戻ることは容易なことではなく、「以前のようにできるようになるには難しい」「戻れない」と語っておられ、少しネガティブな状態にあるようでした。しかしそのネガティブな考えを中川さんに言ったところ、中川さんから新たな、ポジティブな方向にもっていくような提案を受けたそうです。ここから中川さんは利用者さんのネガティブな考えを少しでもポジティブな方向へと持っていくような働きかけをしていることが見て取れます。
 Aさんの午後からの過ごし方は、オセロやカラオケ等をすることはあまり好まずに、一人で音楽を聴いたり、新聞を読んでいることが多いと言います。「地球の子」の午後は利用者さんが自由に過ごすことができる<場>として機能しているのかと思います。

(スライド12)
 最後にAさんがご近所の方にとっている対応と、中川さんが考えるご近所の方との関係について述べたいと思います。
 まずAさんはご自分がパーキンソン病であることをご近所の方には「隠しておきたい」「秘密にしておきたい」と語っていました。「地球の子」の気に入っているところに、送迎車に施設名が入っていない、普通の車であることを挙げている程です。
 中川さんは利用者さんの中には、Aさんのようにご近所の方には隠しておきたいという方がおられるということを把握しています。だからこそAさんが挙げたように、送迎車に施設名を入れないなどの配慮をしています。しかし中川さん自身は、周りの方に病気のことを知ってもらうということは大切であり、そのことが自身の安心につながり、自分の肩の荷がおりる、と言う考えを持っていました。周りに自分のことをオープンにすることで、オープンにしていない状態よりも多くの支援が得られると中川さんは言います。
 中川さんは周りに知られていないような状況は壊していくべきと語り、周りに知らせることをためらったり、迷ったりしている利用者さんに対しては、利用者さんのことを考え、利用者さんがより安心して暮らせて、より多くの支援が得られるよう、働きかけをしているようです
ここから「地球の子」は利用者さんがより多くの支援が得られるように促すような<場>としても機能しているのではないかと思います。
                                (片岡葵)