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今回の調査実習のベースとなる研究(スライド4〜6)


 次に、今回の調査に臨んで、どのような問題関心を持てばよいのかを定めるためのよりどころとなる研究をふたつほど紹介します。
 ひとつは、厚生労働省の研究費をいただいて行われた研究の一部で、「小規模介護施設は難病を持つ人の『居場所』たりうるか」と題した報告書です。この研究の問題関心は、一言でいえば、難病患者は社会に居場所がない、ということです。医療的ケアが必要というだけで、福祉の場から排除されてしまう。これは乗り越えることのできないことなのか。そのことを考えるにあたって、ここでは富山県に特徴的な小規模介護施設に焦点を絞り、約40の施設に聞き取り調査を行いました。すると、少数ながら難病患者が利用した経験をもつところがありました。この報告書では、過去にALS患者を受け入れた事例をもとに考察を行い、結論として、小規模介護施設が難病患者の居場所となる可能性はあるとしつつも、施設リーダーの気概や当該利用者との特殊な信頼関係が前提となっていることも浮かび上がらせました。
 もうひとつは、高岡市にあるパーキンソン病を中心とする患者のリハビリ・サークル「リハビリジム」を取材した「患者会への社会学的アプローチ」という論文です。そこでは、参加者たちが一緒に日々リハビリを行うことによって、互いのちょっとした改善劇の目撃者になったり、あるいは病いに関するユーモア・笑いを共有したりといった、さまざまな勇気づけるようなプロセスが観察できました。
 これら先行研究をふまえたとき、「地球の子」はどのような<場>として見えてくるのか、というのが今回の調査の総合的な問題関心になります。もっとも、これはあくまでも総合的な問題関心であって、学生個々によって問題関心には若干のバリエーションがございます。ある者は、利用者の中で特に気をひかれた場面や個人に注目します。他の者は、「地球の子」がもつ明るい雰囲気に印象を受けて、笑いにテーマを特化しています。あるいは、総合的な問題関心に自分なりに正面から答えようとする者もいます。このように、多様な関心にもとづく発表となることをご理解ください。(伊藤智樹)