4−4 現在のマンガへの接触度とマンガに対するイメージとの関係


 ここでは「現在どのくらいの頻度あるいは深さでマンガに接触しているのか」ということと「マンガに対してどのようなイメージを持つか」ということとの関連について見る。

使用する設問

 分析の中心になる設問は、現在のマンガとの接触の度合いの指標として、問17n、マンガイメージをうかがうものとして、問9である。

問17nと問9のクロス集計

 問17nと問9の小問それぞれのクロス集計を行った結果、有効なものを以下にあげる。

表4-4-1(問9-1) マンガは子ども向けか大人向けか
度数
(%)
マンガのイメージ
子ども向けどちらかといえば
子ども向け
どちらともいえないどちらかといえば
大人向け
大人向け
マンガに
接している
度合い
買って読む
(10.9)
11
(23.9)
28
(60.9)

( 4.3)

( 0.0)
立ち読み程度14
(14.6)
36
(37.5)
42
(43.8)

( 3.1)

( 1.0)
読まない22
(31.0)
25
(35.2)
21
(29.6)

( 4.2)

( 0.0)
合計41
(19.2)
72
(33.8)
91
(42.7)

( 3.8)

( 0.5)
P<0.05  Cramer's V=0.20

図4-4-1(問9-1)

表4-4-2(問9-2) マンガは高尚か低俗か
度数
(%)
マンガのイメージ
高尚どちらかといえば
高尚
どちらともいえないどちらかといえば
低俗
低俗
マンガに
接している
度合い
買って読む
(2.2)

(4.4)
38
(84.4)

( 8.9)

( 0.0)
立ち読み程度
(4.3)

(6.4)
54
(57.4)
29
( 30.9)

( 1.1)
読まない
(0.0)

(10.0)
44
(62.9)
11
( 15.7)

( 11.4)
合計
(2.4)
15
(7.2)
136
(65.1)
44
( 21.1)

( 4.3)
P<0.01  Cramer's V=0.26

図4-4-2(問9-2)


表4-4-3(問9-19) マンガは感情移入できるかできないか
度数
(%)
マンガのイメージ
感情移入できないどちらかといえば
感情移入できない
どちらともいえないどちらかといえば
感情移入できる
感情移入できる
マンガに
接している
度合い
買って読む
(0.0)

(17.8)
14
(31.1)
13
(28.9)
10
(22.2)
立ち読み程度
(0.0)
13
(14.0)
39
(41.9)
31
(33.3)
10
(10.8)
読まない
(9.0)

(9.0)
32
(47.8)
16
(23.9)

(10.4)
合計
(2.9)
27
(13.2)
85
(41.5)
60
(29.3)
27
(13.2)
P<0.01  Cramer's V=0.22

図4-4-3(問9-19)


クロス集計表から読み取れる傾向

 以上のような集計表から読み取れる傾向を以下に述べる。
 おおまかにいってマンガを「読まない」グループは、まんがについて「子ども向け」で、「低俗」で「感情移入できない」ものであると考える人が多い。一方で「読む」グループは、(大人向けと言わないまでも)「子ども向けとは限らない」、「低俗だとはいえない」、「感情移入できる」と考える傾向がある。
 特に「読まない」グループについては他のグループに比べてその特徴が顕著であるといえよう。「子ども向け」と答える人が半数以上であること、「高尚」と答える人が全くいないことなどだ。また「(まったく)感情移入できない」と答える人は「読まない」グループの中にしか見られない。

考察〜マンガは「文化」たり得るか

 これらの結果から推測できることを以下に述べる。
 前項に取上げた3つの設問は、マンガにまつわるネガティブなイメージをはかるのに適した質問である。つまり、マンガをどのように「評価」しているのか、ということを読み取ることができるのである。「子ども向け」「低俗」、つまりマンガを取るに足らぬものとして軽んじているということは、マンガを低く評価しているということであり、そうではないと思う者は、マンガをそれなりに価値あるものとして評価しているということが言えるだろう。
 また「感情移入」できるかどうかということは、そのメディアが自分を十分に楽しませてくれるものであるかどうか、ということである。
 そこで、マンガをどのように「評価」するのかということと、マンガとの接触の度合いとの関係について考察してみる。当然に予想されることながら、マンガに多く接している人は、マンガに対する「評価」が高くなり、マンガをほとんど読まない人は「評価」が低いということが言える。
 ここで押さえておきたいことは、本調査の対象者は20才以上の人であり、一般的に「大人」である。自分を大人だと思っている人が自分も深く接しているマンガについて「子ども向け」であるとは、考えにくいであろう。
 「マンガは大人の鑑賞に堪え得るか」ということが、鍵となるように思う。マンガに積極的に接している人は、マンガは大人が楽しめるエンターテイメントであると考えており、マンガにあまり馴染みのない人は、それを軽んじているのである。
 接触度が評価に影響するのか、評価が接触度に影響するのか。これは「鶏と卵」ではないけれども、どちらか一方を決定要因と定めることはできない。相互に影響しあっていることが容易に想像できるのである。ただ、関連する資料として、次の表をあげておく。

表4-4-3 過去のマンガ経験と現在のマンガとの接触度との関係
度数
(%)
現在のマンガとの接触度
買って読む立ち読み程度読まない
過去の
マンガ
経験
買って読んでいた31
(28.7)
52
(48.1)
25
(23.1)
立ち読み程度だった
(7.3)
23
(56.1)
15
(36.6)
読まなかった
(14.3)
21
(33.3)
33
(52.4)
P<0.01  Cramer's V=0.22

 この表から分かることは、過去(12〜3才の頃)にマンガに接する度合いの高かった人は、現在でもマンガに積極的に接しており、過去にマンガに接する度合いの低かった人は、現在もあまり読まないという傾向があるということである。つまり、子ども時代にマンガに接する機会がどのくらいあったか、ということは現在のマンガとの接触度、マンガに対する評価にかなり影響力があると言えるであろう(ここで4-1で見た、年代ごとの特徴というものをふまえておかなくてはならない。マンガというメディアが相当に普及する以前に子供時代をおくった人が、マンガに馴染めず、それを評価する機会もなかったということは、当然のことである)。
 次では活字メディアとの比較を通して、人々がマンガをどのように「評価」しているのかということをさらにみていきたい。

 担当:川村 幸代

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