2−3 性格から見たヒーローイメージ


 ここでは性格の違いが、どのようにヒーローイメージに関係しているのかを、推察して見ようと思う。特に、性格の積極性と、消極性との違いに注目した。
 注:

1.性格から見るヒーロー像

図2ー3ー1

図2ー3ー2

図2ー3ー3

図2ー3ー4

図2ー3ー5

 上の5つの図を、見比べてみて、ほぼどのグラフにも見られる積極的な人と、消極的な人との、ヒーロー像の違いを挙げると、
積極的な人の考えるヒーロー像  消極的な人の考えるヒーロー像 
自分の人生の目標 生きていく上での心の支え
夢中になれる憧れの対象 自分の理想、尊敬の対象
自分の代わりに何かをしてくれ
る存在
 世間の辛さ、ストレスの解消
となった。
 まず、積極的な人からみるヒーロー像を考えてみると、積極的な人は、ヒーローを、憧れをもちつつ、それを人生の目標としている。これは、割と身近なヒーローを指しているようだ。「自分の代わりにしてくれる何か」というのも、人間の力では到底できないような、超越的な「何か」ではなく、自分ではちょっと無理な、でも誰か他の人がやってくれるだろうというような、現実的な「何か」ではないだろうか。
 次に、消極的な人からみるヒーロー像を考えてみる。消極的な人はヒーロー像を、自分の代わりに何かしてもらいたい、というより、ヒーローを、心の支え、尊敬の対象としているところが、積極的な人のそれとの違いである。むしろ、神のようにあがめるような存在を望んでいるようだ。辛さ、ストレスの解消というのは、そんな脅威的な力をもつヒーローの活躍を見て、この世の辛さや、ストレスを発散したいと願っているのではないか。
 ここで、つぎの表をみて欲しい。
 ヒーローは近いか、遠いかという問いに対して、近い、もしくはどちらかというと近い、を選んだ人の、Q23の性格に関する問いそれぞれにおいて、積極的な人全体に対する割合と、消極的な人全体に対する割合を表にした。

表2ー3ー1
ヒーローは遠いか近いか

目標の有無尊敬願望上昇志向独自性率先性
有における「近い」人の割合8、9%9、6%9、2%5、8%11、4%
無における「近い」人の割合5、6%6、9%6、8%10、2%6、4%

 この表から見て取れるように、ほぼ、積極的な性格な人の方が、近い、もしくはどちらかというと近い、と答えている割合が高い。先に述べたヒーロー像についての見解と合わせて考えると、やはり積極的な人は、ヒーローを近いと感じやすく、消極的な人は、遠いと感じやすいようだ。ここでは表にしないが、遠い、もしくは、どちらかというと遠い、と答えたひとの割合は、消極的な性格な人のほうが多かったことも、それを裏付けている。

2.性格から見るヒーローの定義

 Q23とQ8とのクロスで、有為なものを表にした

表2ー3ー2
 物事に取り組む場合の目標の有無と、誰にでもヒーローになれる社会の必要性
必要中間不要
目標を持って取り組む46、4%38、7%14、9%
取り組まない25、0%63、9%11、1%
   目標を持って取り組む人の方が必要と感じている。

表2ー3ー3
 尊敬、注目の欲求の有無と、豊かな社会ではヒーローが生まれにくいか
生まれにくい中間生まにくくない
尊敬されたい45、8%48、6%5、6%
されたくない44、0%36、0%20、0%
 特に、尊敬されたくないと答えている人は豊かな社会でも、ヒーローは生まれにくくないと考えている。
表2ー3ー4
尊敬、注目の欲求の有無と、ヒーローが他の人のチャンスを奪うか
奪う中間奪わない
尊敬されたい8、7%51、0%40、4%
されたくない9、0%32、0%59、0%
 尊敬されたくない人に、ヒーローは他の人のチャンスを奪わないと答える傾向がある。

表2ー3ー5
尊敬、注目の欲求の有無と、ヒーローこそが社会を発展させるか
させる中間させない
尊敬されたい34、6%51、6%14、0%
されたくない20、4%50、0%29、6%
 尊敬されたい人ほどヒーローが社会を発展させると考え、尊敬されたくない人ほど、発展させないと答えている。

表2ー3ー6
上昇志向の強弱と、ヒーローこそが社会を発展させるか
させる中間させない
強い34、4%47、3%18、3%
弱い15、3%56、9%27、8%
  上昇志向の強い人ほどヒーローが社会を発展させると考え、弱い人ほど発展させないと答えている。

表2ー3ー7
行動における独自性、個性の有無と、ヒーローが生まれない社会は衰退するか

衰退する中間衰退しない
他人と違ったことがしたくなる37、4%43、4%19、2%
したくならない41、7%50、5%7、8%
 他人と違ったことがしたい人は、ヒーローが生まれなくても社会は衰退しないと答えている。

表2ー3ー8
行動における独自性、個性の有無と、私だけのヒーローを望むか
望む中間望まない
他人と違ったことがしたくなる22、0%37、0%41、0%
したくならない8、7%46、6%44、7%
他人と違ったことがしたい人は、私だけのヒーローを望んでいる。

表2ー3ー9
率先、統制の欲求の有無と、私だけのヒーローを望か

望む中間望まない
リーダーシップを取りたがる22、5%35、0%42、5%
取りたがらない10、4%47、2%42、4%
リーダーシップを取りたがる人は、私だけのヒーローを望む人が多い。

 以上のことをまとめると、目標を持って取り組む、や、尊敬されたいなど、積極性のあるひとの傾向をまとめると、
 「誰にでもヒーローになれる社会を必要としており、ヒーローこそが社会を発展させると考えている。かといって、ヒーローがいないと社会が衰退すると考えているわけでは無い。私だけのヒーローを望み、ヒーローに特権は必要ないと考えている。豊かな社会ではヒーローは生まれにくいとも考えている。」
 次に、尊敬されたくないなど、消極的な人の傾向をまとめると、
ということになる。このことから、性格によるヒーローイメージのちがいを検証してみる。まず、積極的な人について。
 特徴の一つ、私だけのヒーローを望むというのは、特に、他人と違ったことがしたくなる人と、リーダーシップを取りたがる人に強く見られるが、これは、このような性格の人は、個性や独自性が強く、人と同じ、ということを好まない。よって、このような人が求めるヒーロー像というのも、必然的に、万人に受け入れられるような、ステレオタイプのものではなく、それぞれ自分の持つ個性にあった理想というものを満たすヒーローを望む。よって、自分だけが満足すれば良い、「私だけのヒーロー」を望むのではないだろうか。他の特徴をあわせて考えて見れば、このような私だけのヒーローには、もちろん特権は必要ないし、ヒーローがいなくても、社会が衰退するわけではない。また、積極的な人は、自分に自信があるとも考えられるので、自分の理想とするヒーローが現われたなら、社会も発展すると考えているのではないか。誰もがヒーローになれる社会が必要というのは、目標を持って、物事に取り組む人に強く見られるが、これは目標をもって取り組む人は、ヒーローに頼るといよりも、頑張れば、誰でもヒーローになれる、そうなれるように、日ごろから目標をもって取り組んでいこうという意志のあらわれではないか。
 次に、消極的な人について。
 特徴からみる限りにおいて、全体的にヒーローと社会に相互関係はないと考えているようだ。社会が、豊かであろうと、そうでなかろうと、ヒーローは生まれるし、かといって、そのヒーローによって、社会が発展するということも無いし、ヒーローによって、他の人のチャンスが奪われるようなこともない。消極的な人は、より現実的な考えの持ち主であるといえるのかもしれない。

1と2からの結論

 1と2から推察したことを合わせて、性格の違いによるヒーロー像の違いについて、述べてみる。
 積極的な性格の人は、ヒーローを「身近な」ものとして捕らえているようだ。そのヒーローとは、例えば神のような、想像上の域を出ないような物ではなく、もっと現実味を帯びた、実際に誕生し得る人物を求めている。そのヒーローとは、自分の目標であったり、憧れであったり、という対象になり得るもので、ヒーローによって、実際に社会が発展することを望んでいる。誰にでもヒーローになるチャンスがあり、もしかしたら自分もなれるかもしれないような、手に届く、ヒーローを望んでいる。ヒーローになりたいという願望を持っているともいえるのかもしれない。
 消極的な性格の人は、ヒーローを「遠い」ものとして捕らえているようだ。このような性格の人が考えるヒーロー像は、現実には実在し得ないような、超越的な、人間ばなれした力を持った存在である。ヒーローによる、現実社会に対する影響を期待しているのではなく、心の支えとか、生きていく上での希望を持たせてくれるような、そんな対象を期待しているようだ。積極的な人が望むヒーロー像とは対照的に、あまりにも現実ばなれしたヒーローを望みすぎ、返ってヒーローに対する期待も、小さいのではないか。

担当:山口 恵梨子

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