第四章 質問紙調査の概要

・質問紙調査の意義、概要
 第三章での読み取りでは、マンガに対して積極的にコミットした人の発言ばかりが採用されるという、マンガのイメージについての客観的考察としてはいささか不十分な部分がないでもなかった。そこで極力無作為な対象からマンガについてのイメージを聞き出すため、質問紙調査を実施した。
 まず、今回、質問紙調査の対象としては富山市選挙人名簿を選択した。それを選挙区で分けた第一段無作為抽出で15の選挙区を選び、さらに抽出された選挙区内で二段階無作為抽出を行い各選挙区20名、計300名を抽出した。なお1995年9月1日現在において70歳以下の人に対象を限った。
 選挙人名簿から抽出した対象者にあらかじめ「調査協力お願い文」を送付し、特に拒否のなかった方を訪問し質問紙を預け、後日再び受け取りにいく留め置き調査を行った。実施期間は10月26日から11月10日までの二週間あまりで、社会学調査方法論を受講していた学生に協力してもらった。

・質問紙の内容(質問紙を論末に資料として添付)
 次に、質問紙中の各設問について紹介し、説明する。
 問1〜8は、「マンガのイメージについて」と同時に並行して行われた「ヒーローのイメージについて」の質問項目である。この論では用いない。
 問9、問10はどちらもマンガについてのイメージをSD法で問うている。問9は直接マンガのイメージについて20項目、問10は同じ読物メディアであり活字読物の代表ともいえる小説との対比でイメージを問う項目を17設けた。質問紙の中での中心的設問ともいえる。なお、他の質問の影響(キャリーオーバー)を防ぐため敢えて最初に持ってきてある。
 問11も小説との対比である。「マンガばかり読んでないでちゃんとした本も読みなさい」というステロチックな親から子への警句は、本当に実情に添ったものなのか、いささか直接的すぎる質問をした。
 問12、13、14ではマンガが非難されてきた点に関しての質問をした。それぞれ、広い意味での「子どもへの悪影響」の程度、「有害コミック問題」に対する知識、マンガにおける性描写の可否、についての質問になっている。富山県は全国的に見て「有害コミック問題」の時の対応が早かった県であるので、そのあたりがどう回答に影響するのだろうか。
 問15〜17は解答者のマンガ経験についての質問である。問15は子どもの頃、というと漠然すぎると思い12〜13歳頃のマンガに触れた度合いを聞いてみた。この年齢層はマンガ経験に関して、丁度読まなくなる子どもが出始める頃、もしくはその直前ではないかと思われたので採用した。問16は子どもから大人になるに従って、マンガを読む量はどのように変化するかを聞いた。そして問17は現在マンガを読んでいる度合いである。最後に質問する年齢がこれらの設問に与える影響、そしてこれらの設問が問9、10に与える影響がどのようなものか、非常に興味が持たれるところである。
 問18、19は子どもがマンガを読むことについて、親子という文脈で質問した。先にも書いた「マンガばかり読んでないで〜」という文脈は本当に出てくるのか、また子どもの時どう言われたか、と、実際に自分が親の立場だったらどうするか、との関係や、これ以前の設問との相関が出たら面白い。
 問20、21はマンガ以外の本を読む量を、子どもの時と現在との両方で聞いてみた。単純にマンガと量を比較してもいいし、それ以外との相関もひょっとしたら出るかもしれないと思い設問した。
 最後に問23から問30までに性格、生活満足度、生活レベル、社会的地位に関する自己分析、職業、最終学歴、性別、年齢といった質問を設けた。これらには前半の質問との関連が見られるものもあるかもしれない。特に年齢との相関は有意なケースを期待できそうである。


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