第三章 法律上の議論

 

選択的夫婦別姓の議論においては、民法750条がやり玉にあがることが多い。同条は、婚姻関係にある夫婦はどちらか一方の姓に統一すべしという「夫婦同氏」の原則を定めたもので、この条文が憲法13条や24条に違反するという主張が夫婦別姓賛成派からよく聞かれる。憲法13条は日本国民の個人の尊重を保証する者であり、憲法24条は婚姻に際して夫婦間の平等を定めたものである。                                         

また、日本政府が締結している「女子差別撤廃条約」およびその条約に基づき設置されている女子差別撤廃委員会からの勧告(選択的夫婦別姓制度を採用する内容の民法改正や、女性のみに課せられた6か月の再婚禁止期間の廃止などのための対策を条約締結国に求めるもの)を根拠とし、民法750条はこの条約に違反しているので改正しなければならないとする主張もまたよく聞かれる。

 

1 民法750条及び憲法13,24

民法750

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

憲法13

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法24

1.婚姻は、両性の合意のみにいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

2.配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。