第四章 分析
第一節 実録鬼嫁日記における「鬼嫁」
鬼嫁ブームのきっかけとなったブログで描かれる鬼嫁は、最初の鬼嫁イメージをつくったのではないかと考えられる。ブログにおいて、どのようなイメージで鬼嫁が語られているのかを分析していく。
ブログを見ていくと、鬼嫁の行動として以下のような特徴が挙げられた。
・理不尽な仕打ちをする
・家計を握っている
・やるべきことをやっていない
・姑に対して強い
それぞれの特徴について、例をあげて分析していく。以下のデータはブログから引用したものである。ブログの文章が長いため、要約し、引用箇所は斜体とする。引用箇所は巻末に記載する。また、それぞれの例の最後のカッコ内には日付とブログのタイトルを記載する。
■理不尽な仕打ちをする
例1)
嫁の要望により、少し値段の張るとんかつ屋さんにやってきたカズマ一家。食事は進み、カズマが最後に残しておいたエビフライを食べようとすると、
嫁「ねぇ♪相談があるんだけど・・・」
カズマ「ん?何の相談だ?」
嫁「そのエビフライと、私のキャベツを・・・・・
トレードしない?(゚∀゚)」
と、理不尽な事を言い出す嫁。カズマは抵抗するも、
嫁「うるさいわねぇ、早くよこしなさいよ!」
と、問答無用に嫁にエビフライを奪われてしまう。
(2004年10月01日 必死で守れ!エビフライ)
例2)
休日に家族そろって買い物にきたカズマ一家。嫁と娘が買い物している間、カズマは自由行動し、夕方5時30分に待ち合わせることになった。
カズマは待ち合わせの5分前には到着し、嫁と娘を待っていた。しかし、5分、10分、20分たっても来ない。嫁に電話をかけても出ない。6時になって、ようやく嫁と娘がやってきた。カズマが、なぜ遅刻したのか嫁に問い詰めると、嫁は、私は遅刻していないと言い張る。
カズマ「遅刻してない?お前、待ち合わせ時間から30分遅れてるじゃないか!」
嫁「あぁぁ、それね。私の集合時間は6時で、あなたの集合時間は5時30分なの( ´∀`) 」
カズマ「お前の言うてる意味が1%も理解できないんだけど(汗)」
嫁「こうやってズラしてたら、私が待つことは無いかなって( ´∀`) 」
カズマ「俺はおかげで30分待たされたじゃないか!ヽ(`Д´)ノ 」
嫁「しょうがないんじゃない?あなた男なんだから♪」
カズマ「男なんだから(;´Д`)・・・・・」
(2008年07月25日 我慢)
<分析>
カズマは日々、嫁から理不尽な仕打ちを受けていると書いてある。例1)では、カズマのエビフライと嫁のキャベツをトレードしようと言われ、断るが問答無用に奪われてしまう。また、例2)では、嫁が待ちたくないという理由で、待ち合わせ時間をカズマだけ30分早められたりしており、嫁は気が強く、自分の要求を通そうとする性格として書かれている。また、カズマ夫妻の夫婦関係において妻の力が強く、夫をコントロールしているように描かれている。
■家計を握っている
例1)
カズマは7年前、嫁から突然小遣いゼロ宣言をされた。
カズマ「お前、小遣いゼロってありえなくね?」
嫁「何言ってんのよ!残業が減ったんだから、何かを削らなきゃいけなでしょ。」
カズマ「でも、お前ゼロはないだろ、ゼロは(汗)」
嫁「大丈夫♪あなたは出来る子だから、大丈夫( ´∀`) 」
そういうわけで、カズマは7年前から給料は全額嫁に渡し、小遣いもゼロという日々を暮らしている。カズマ7年間スロットで稼いだり、ネットで連載している原稿料を小遣いにしたりして小遣い稼ぎに励んでいる。
嫁「見てみなさいよ。あなたはプレッシャーをかければやれる子なんだから( ´∀`) 」
ロナウジーニョ以上にプレッシャーをかけてくる嫁。
そんなプレッシャーはいらない_| ̄|○
(2009年04月27日 罪の意識)
例2)
カズマの嫁は、嫁はキレイになりたい願望が非常に強い。
鬼嫁日記の本が売れたとき、少しばかりの印税が入り喜んでいたカズマに嫁が一言。
嫁「私をネタにしたんだから、当然印税は全部私のものだから( ゚Д゚) 」
カズマ「(;´Д`)・・・・・」
俺はいったい何のために頑張って本を書いたのか_| ̄|○
そして、嫁は印税を使ってエステに通った。「お前バカじゃね?いまさらエステ行ってどうすんの?」とカズマが言うと、
嫁「あなたこそバカじゃない!?いまだからこそエステに行くんじゃない!いつまでもキレイでいたいって、女性なら誰だって考えてるの!そんな考えだから、女性にまったくモテないのよ( ゚Д゚) 」
と言い返されてしまう。
(2009年04月24日 嫁がキレイになりたいそうです(;´Д`) )
<分析>
カズマ家では、嫁が家計を握っていると書かれている。例1)では、カズマの仕事の残業が減ったことをきっかけに、カズマの小遣いはゼロになってしまい、スロットやネットの連載での原稿料などで小遣いを稼いでいることが書かれている。しかし嫁は金遣いが荒く、何かとカズマにお金を要求し、鬼嫁日記の印税もすべて嫁にとられてしまうと書かれている。嫁が家計を握り、お金をやりくりするというのは一般的なようにも思える。しかしカズマ家の場合、カズマの小遣いがゼロで、妻が自由にお金を使っているにも関わらずカズマは安い服を着ることを強要されるなど、夫の権力の弱さが描かれている。
■やるべきことをやっていない
例1)
カズマの嫁は、料理が上手い。味付けも、創作料理も完璧。
ただ一つ・・・
非常に残念なのが・・・
性格が、とても面倒くさがりなことだろう(汗)
料理は上手いが、毎日の晩御飯は手抜きが多い。
料理上手な嫁の恩恵を、あまり受けてはいないのだ(涙)
(2004年10月13日 母さん!今日はシチューなんだね(;´Д`)ノ)
例2)
夜11時、腹ペコで帰宅したカズマ。「今日は、あなたの好きな中華丼よ♪はいっ!たくさん食べてね♪」と言いながら嫁が出してきた中華丼を見て驚くカズマ。なんと中華丼の具がもやしだけだったのだ。嫁に問い詰めると…
嫁「しょうがないじゃない!冷蔵庫に”もやし”しかなかったんだから!」
カズマ「それなら、買い物に行けやぁぁぁ!」
嫁「うるさいわねぇ〜」
寒いのよ!」
カズマ「もしかして、明日の晩御飯のメニューは?」
嫁「野菜炒め!
・・・・・”もやし”のみだけどね♪」
これを聞いて、カズマは明日帰りにスーパーに寄ることを決意したのだった。
(2004年10月01日 みじめな中華丼)
例3)
お腹ペコペコで家に帰り着いたカズマ。嫁が「ねぇ!今日さぁ、アップルパイを作ったの♪」と言って嫁がアップルパイを出してくれた。おいしく食べるカズマ。しかしカズマが「さて・・・今日の晩御飯は?」と聞くと…
嫁「ん?晩御飯?
あんた、今食ってるやないね!(゚Д゚)」
カズマ「食ってるって!晩御飯がアップルパイかよ!(鬼汗)」
ご飯が食べたいと主張するカズマ。そんなカズマに、嫁が出してきたのは白いご飯のみ。
カズマ「お前、アップルパイでめしを食えってか!('A`)」
嫁「ガタガタうるさいわね!私はアップルパイで充分なの!
もうお腹いっぱいなのよ!」
嫁はそう言うと、不満そうなカズマを無視して風呂へ直行していった。
(2004年10月11日 アップルパイ)
例4)
カズマの嫁は、平日は毎日料理をしてくれるが、土日は絶対に料理をしない。
ある土曜日に、カズマが「なぁ、今日の昼御飯さぁ・・・」というと、「昼御飯、食べたいの?ほれ(゚Д゚)・・・」といって出前できるお店の一覧表を差し出してくる。簡単なものでいいからたまには作ってくれないか?とカズマが頼むと、
嫁「うるさいわね・・・
私は、土日のお昼は料理を作らないって決めてるの!
あんただって、土日は会社休んでるやん!
いまどき、小学生だって完全週休2日なのよ!
私が、土日の昼御飯を休んでも、神様は笑って許してくれるわよ!
あんただけ週休2日ってのは、虫が良すぎるわ!
主婦だって、週休2日が必要なのよ!」
新婚当初は、「出前や外食は、基本的にカロリーが高いからイヤなのよね♪」と言って、ちゃんとカロリーまで考えて土日にも食事を作ってくれていた嫁も、今ではお昼にピザを食べて、食後にポテトチップスを食べている。カズマが「でもさぁ、出前って正直飽きるねん。ピザにカレーに、ガストの宅配サービスに・・・簡単なのでいいからさぁ・・・」と言うと、
嫁「簡単なの?
簡単だったら、あんたが作ればいいやん(゚Д゚)」
と言われてしまう。
(2004年11月11日 週休2日)
<分析>
「やるべきことをやっていない」という特徴に関しては、主に「料理の手抜きが多い」ということを意味している。例1)では、嫁は料理が上手いが、性格が面倒くさがりで手抜きが多いということが書かれている。具体例としては、例2)のように中華丼の具がもやしだけであったり、例3)のように夕食がアップルパイだけだったりということが挙げられる。また、例4)には、「主婦にも週休二日が必要である」と嫁が主張し、土日は絶対に料理をしないと書かれている。このような行動は、「家事は女性がやるものだ」という従来のイメージから逸脱している。
■姑に対して強い
ある日、カズマの母親が嫁に電話をかけてきた。
母親「ねぇ、この前見つけた、娘の洋服なんだけどさぁ・・・」
嫁「はぁ?本気で言ってんですか?ダメ!ダメ!あんなもんに目がくらむようじゃ、全然ダメだって!」
母親「でも、けっこう可愛い洋服なのよ!
嫁「あのね、言っちゃ悪いけど、お母さんの感覚は古いんですよ!あんなもん、リサイクルショップでも売ってないですよ(笑)昭和じゃないんですよ!今は平成ですよ!」
と、姑に対してタメ口で言いたい放題である。
ちなみに、母親の口癖は・・・
母親「お嫁さんの言うことは、ちゃんと聞かなきゃダメよ!」
嫁の手下である(;´∀`)・・・
カズマ家に、嫁と姑問題などは全く関係ない。
(2004年11月04日 嫁と姑)
<分析>
カズマの嫁は、姑に対する立場も強い。姑に対してタメ口を使い、なんでもずばずばと言ってしまうと書かれている。姑もそれに不満を持つわけではなく、「お嫁さんの言うことをきかなきゃダメ」とカズマに言うのが口癖になっている。一般的に嫁姑問題は、嫁と姑の価値観、風習や習慣の違いからくるもので、嫁が我慢するというパターンが多く思われる。しかしカズマ家では嫁の立場が強く、かつ嫁姑関係が良好であるという点で従来の嫁姑関係とは大きく異なっている。
<実録鬼嫁日記で描かれている鬼嫁>
以上のように、「実録鬼嫁日記」での「鬼嫁」には、「理不尽な要求をする」「やるべきことをしない」「家計を握っている」「嫁に対して強い」などの特徴が挙げられる。これらの特徴は、従来の女性イメージとは大きく異なっている。気が強く、夫に対して自分の要求を通そうとする嫁は、受動的で従属的な従来の女性イメージを逸脱している。また、料理の手抜きが多く、それに対して夫に文句を言われると「自分で作ればいいじゃない」と言い放つ嫁は、「家事(料理)は女性がやるべきものである」という概念を打ち破っている。その上、夫と同じように週休2日を要求する嫁には、男性と同等の権利を望む意思が感じられる。嫁姑関係においても、カズマ家では姑に対する嫁の立場が強く、かつ姑もその関係を受け入れているという点で従来の嫁姑関係とは異なっている。夫のカズマも「カズマ家に、嫁と姑問題は全く関係ない」と断言しているほどである。このように、「実録鬼嫁日記」では、従来の女性イメージとは大きく異なっている嫁の行動を描きながら、おもしろおかしく妻をおとしめている。
第二節 モバゲータウンにおける「鬼嫁」
モバゲータウンの小説コーナーの検索機能を使って「鬼嫁」で検索し、その中でノンフィクション・エッセイ・日記という実話に基づいて書かれているジャンルのものを見ていった。男性・女性の語り方の違いを見るため、夫が書き手の小説・妻が書き手の小説それぞれについて調査することにする。
モバゲータウンのデータは、日記・小説という点でブログ「実録鬼嫁日記」のデータと類似している。そのため、「実録鬼嫁日記」で挙げられた「理不尽な要求をする」「やるべきことをしない」「家計を握っている」「嫁に対して強い」という鬼嫁の特徴と共通する部分があるかどうか、また異なる部分があるかどうかをみていく。引用部分は斜体とする。
■理不尽な仕打ちをする
例1)
あほか〜!!」
バチッ!
嫁がその一部始終を見ていて、僕のふくらはぎにローキックをかました。(鬼嫁チャンピオンp35)
例2)
僕は鬼嫁がキレてたら何も言い切らないんです…
僕「ごめんなさい…」
鬼嫁「喋ったら気が散るけ黙ってて!!!」
僕「はい…」(僕と鬼嫁の素敵な生活p19)
■家計を握っている
例)
会社で仕事をしていると、嫁登場!!
店長達と雑談して、オイラの給料を持って逃亡した………
三 (/ ^^)/
はぁ………オイラは今月も貧乏生活だ………
(T_T)(鬼嫁一家の珍道奮闘記p114)
■やるべきことをやっていない
例)
料理も結構手抜きデス。
今日は牛丼だから…………ハイ!レトルト!
今日はソバだから…………緑のタヌキ。
カレー……
わかりますよね?
メールで、ご飯のメニュー(メニューか?)が来る時はまだいいです。
メールが帰って来ない時は、魔神ブーと化し寝ています。何度、額に肉て書いたり、殺や、呪て書こうと思った事か。(嫁時々猫たまに俺pp10-11)
■ギャップがある(弱点、可愛いとき、優しいときがあるなど)
例1)
「鬼嫁も一応女の子…寝顔はとても可愛いんです(僕と鬼嫁の素敵な生活p33)」
例2)
実は鬼嫁にも弱点があるんです!!!
それは………
なんと!!ホラー映画が鬼嫁はめちゃくちゃ苦手なんです!!!
僕がホラー映画が好きでよく見るんですが
見た後は必ず夜眠れなくなるんですよ(・∀・)
鬼嫁にも可愛い所があるんですね( ̄ー+ ̄)フッ(僕と鬼嫁の素敵な生活pp71-72)
■妻に対する感謝の気持ち
例)
朝 、いつも妻 がお弁当を作ってくれます
それが当たり前なので、何も言わずに鞄に入れてると
「ありがとうも言えないの 」
と怒ってきました
自分は気付きました
今まで妻 が怒っているのは、全部自分が悪いのだと
私の妻 は最高の妻 です
今までごめんなさい お弁当おいしかったよ (鬼嫁日記p21)
■自分の性格について
例)
「やっぱり、オイラはMだから、いじってくれる人が居ないと面白くない!」(オイラと鬼嫁の珍道奮闘記p76)
■妻の変化(昔は可愛かったなど)
例)
いやあのね
最初の3ヶ月くらいは本当にデレデレで可愛いかったんですよ
そんな可愛いお嫁さんも今ではすっかり鬼嫁になってしまいました…(僕と鬼嫁の素敵な生活p13)
以上のようなデータから、妻の普段とのギャップに魅力を感じている男性が多いということ、また妻のありがたみ・妻への感謝の気持ちを述べている男性が多いということが分かった。また、「自分の性格について」という項目では、「やっぱり、オイラはMだから、いじってくれる人が居ないと面白くない!」など、マゾヒズム的な語りも見られた。
(2)「鬼嫁」についての妻側の語り
■理不尽な仕打ちをする
例1)
アイツの頭、ぶん殴ったけど、気持ちはおさまらねぇ〜。 (どうせ鬼嫁だし p53)
例2)
旦那の意見は、あってないようなもの…
二児の母となったアタシはますます鬼嫁パワーアップしました( ̄∀ ̄)
頑張れ〜旦那。 (I am 鬼嫁様}(゜Д゜*)ノp39)
■家計を握っている
例)
旦那はパチンコ大好き!
けれど、お小遣いが少ないのであまりできない!
けれど、もらえないと
わかってる彼は彼なりに
考えて使ってるようです。
本当はもっとお小遣いを
あげたいのですが、
ローンもあるし、貯金も
したいから、あまりあげられません。(イタイ旦那と鬼嫁日記p169-171)
■鬼嫁ではない部分もある
例)
アタシ…
鬼嫁だけど
寂しがりで(-"-;)
なんだかんだ言いながら旦那いないと
つまらんくて。
チビがいたら全然いなくても良いんだけど(笑)
今は入院中でチビもいないし。
チビの変わりかな?(笑) (I am 鬼嫁様}(゜Д゜*)ノ p43)
■夫に対する愛情・感謝の気持ち
例1)
鬼とは言え…嫁ですから
やっぱり旦那あっての鬼嫁です
「なんだかんだ言っても 旦那は大好きですよ 間違いなく…」(どうせ鬼嫁だしp37-38)
■自分の性格について
例)
ちなみに私は、肉食系女子。
あまり詳しくわからないけど、多分、肉食系です。はい。
しっかりしてる という言い方もあるけれど、気が強いです。そのくせ、ビビリ性で気が小さいです。
気が小さいので、キャンキャン吠えるだけです。
だから、バランスが取れてるのかもしれませんね(^_^;)(イタイ旦那と鬼嫁日記p6)
■夫への不満
例)
本当 お金持ってたらロクな事しやしない
やっぱり根本から締めなきゃ駄目だとつくづく思いました (鬼嫁プー家騒動記p19)
以上のようなデータから、語り手が男性の場合と同じように、語り手が妻の場合もやはり相手に対する愛情・感謝の気持ちを述べている語りが多く見られた。しかしそれと同時に、夫に対する不満も多く見られた。また、「自分の性格について」という項目では、「自分は気が強い、だから気の弱い旦那とバランスがとれている」と、自分の気の強い性格が旦那と合っているという語りも見られた。
夫が語り手の場合と妻が語り手の場合の共通点はそれぞれ対応しているものがほとんどだった。「妻に対する感謝の気持ち=夫に対する愛情・感謝の気持ち」「暴力をふるわれる=暴力をふるう」「口答えできない(しても言い負かされる)=旦那の意見は聞かない」「小遣いが少ない=家計を握っている」「ギャップがある(弱点、可愛いとき、優しいときがあるなど)=鬼嫁ではない部分もある」などがそれぞれ対応していた。
<モバゲータウンの分析>
モバゲータウンの男性の語りの共通点の中で特徴的だったのは、鬼嫁がたまに見せるギャップに魅力を感じている男性が多く、妻に対する感謝の気持ちを述べているという点である。逸脱がありながらも、このように夫(語り手)が妻への感謝を示すことで、読者は安心して読むことができ、「鬼嫁」はキャラクターとして受け入れられ、愛されるようになったのではないか。
モバゲータウンの小説の女性の語りからは、夫の特徴として、「弱い」「女々しい」などが多く挙げられた。そういう夫には「鬼嫁」がちょうどいい、バランスがとれている、との語り方で自分の鬼嫁的態度や行動を肯定しているものが多かった。また女性の語り手にも、男性の語り手と同じように、夫への愛情・感謝の気持ちを述べているという傾向は強く見られた。
第三節 雑誌における「鬼嫁」としての北斗晶の描かれ方
本調査の目的は、メディアにおける鬼嫁イメージを探ることである。そのための調査の一つとして、「鬼嫁キャラ」として有名な北斗晶に関する雑誌記事分析を行った。北斗晶は、「鬼嫁キャラ」としてブレイクし、テレビのバラエティ番組で目にする機会も多い。「鬼嫁」の代表である北斗晶がメディアにおいてどのように描かれているのかを調べることで、メディアがどのような「鬼嫁」イメージを伝えているのかを探っていきたい。
「北斗晶」という人名で雑誌の見出し検索、バックナンバー検索を行った結果、件の記事が抽出できた。今回は、あくまで「鬼嫁」としての北斗晶のイメージを探るため、見つかった記事の中でも特に「鬼嫁」という単語が出てくる記事8件を中心に分析を進めた。記事の中で「鬼嫁」という言葉がどのような文脈で使われているかということと、記事内容については巻末資料に詳しく記載する。
今回は、誰が発言しているのかを分かりやすくするため、北斗晶が記事の中で発言した内容と、それ以外のインタビュアーの発言や本文中の内容とを分けて分析していく。記事からの引用部分は斜体とする。
<北斗晶がつくる鬼嫁イメージ>
北斗晶は雑誌のインタビューにおいて、「今や私は鬼嫁って呼ばれてますから」(潮2004年10月)「そう、家族を守るための鬼嫁なんですよ」(読売ウイークリー2005年7月)「鬼嫁を突き通します」(アエラ2005年12月)など、自ら「鬼嫁」という言葉を使用していた。そうすることで、積極的に自身に「鬼嫁」というキャラクター付けをしようとしているのではないか。
また、「鬼嫁」という言葉について、北斗晶自身が次のように述べている。以下は記事の引用である。
「鬼嫁」という言葉、勘違いされてるんだけど、旦那をいじめるんじゃなくて、旦那のために相手と闘うんです」読売ウイークリー2005年7月)
「私の事は心配しなくていいから、リングに集中して」と夫に言います。そう、「家族」を守るための鬼嫁なんですよ。」(読売ウイークリー2005年7月)
記事中で北斗は、鬼嫁という言葉は「旦那をいじめる」という意味ではなく、「旦那のために相手と闘う」、また「家族を守るためのもの」と、肯定的な意味で鬼嫁を定義づけしている。ここから、北斗は「夫にひどい仕打ちをする」という一般的に持たれている鬼嫁についてのイメージを否定し、「鬼嫁」という言葉そのものに肯定的な意味を持たせようとしていると考えられる。
さらに「息子がね、鬼嫁として木刀振り回してる私を見て、「ママ、かっこよかったよ」と言ってくれるんです。」(読売ウイークリー2005年7月)という発言では、家族である息子が「鬼嫁」としての自分をかっこいいと認めていると述べている。
北斗晶は次のようにも述べている。以下は記事の引用である。
夫と子どもを守ることができるなら鬼嫁を突き通します。私の目指す生き方は戦争時代の女たちなんです。夫が死ぬかもしれない戦いをしているなら、子供をおんぶしてでも竹ヤリで加勢する。それが本当の大和撫子。でもね、世間の奥さんは、みんな鬼嫁(大和撫子)になれる素質を持っていると思うんです(アエラ2005年12月)
この発言からは、北斗が日本人女性への賛辞の言葉である「大和撫子」と「鬼嫁」が同じであるととらえていることが分かる。また、「世間の奥さんも鬼嫁になれる素質がある」と語ることで、「鬼嫁」という存在を「世間の奥さん」が目指すべき対象として位置づけている。
このように、北斗の発言からは、一貫して鬼嫁という言葉に肯定的な意味合いを持たせていることが分かる。また、北斗は「夫にひどい仕打ちをする」という一般的に持たれている鬼嫁についてのイメージを否定し、「鬼嫁」という言葉そのものに肯定的な意味を持たせようとしている。
<メディアがつくる鬼嫁イメージ>
北斗晶は、「鬼嫁こと元女子プロレスラー北斗晶」(週刊女性2005年12月)「鬼嫁≠ニして有名な、元女子プロレスラー・北斗晶さん」(週刊女性2007年1月)など、「鬼嫁の北斗晶」と紹介されることが多く、「鬼嫁」というキャラクターが定着していることが分かる。次のように紹介されている記事もあった。以下は記事の引用である。
プロレスラーとして現役時代には数々の修羅場を経験。いまは鬼嫁(!)という愛称でも親しまれる北斗さんは、アイディア料理の達人としても有名。(かぞくのじかん2010年3月)
「アイディア料理の達人としても有名」として書かれており、料理上手なイメージが定着していることが分かる。
また、「鬼嫁」という言葉とのギャップについて書かれている文がいくつかみられた。以下は記事の引用である。
「世間では「鬼嫁」と呼ばれていると聞いていましたが、「良妻」の鑑ですね。」(こども未来2005年5月)
「確かに、「鬼嫁」というすさまじい響きとは裏腹に、北斗は「夫再生工場」の役割も果たした。」(アエラ2005年12月)
「鬼嫁≠ニしての顔から、やさしい妻の顔に変わっていた。」(週刊女性2007年1月)
記事中では、「鬼嫁」という言葉に否定的な意味合いがある前提で、その後に「良妻」「夫再生工場」「やさしい妻の顔」という言葉で北斗晶を表現し、その否定的な意味合いを覆している。このように、「鬼嫁」というイメージとはまた違った北斗晶の様子を描くことで、メディアは北斗晶に「鬼嫁と呼ばれているが実は良妻」というイメージを植え付けようとしていると考えられる。そうすることで、北斗晶は、「鬼嫁」と呼ばれつつも愛されるキャラクターとして受け入れられているのではないか。
さらに、「鬼嫁」という言葉の意味に関しても、次のように述べられている。以下は記
事の引用である。
実際の彼女は、とても女性的でバランス感覚のある人。『鬼嫁』という言葉の使い方も、家庭をきりもりできる『いい嫁』に変わってきています。(アエラ2005年12月)
このように、「鬼嫁」という言葉の意味が「いい嫁」という意味に変化していると書かれている。どのような過程で意味が変化したのかは記事には書かれていないが、「鬼嫁」である北斗晶がテレビや雑誌などのメディアで良妻のイメージを与えてきた事で、意味が変化していった可能性がある。
「真の鬼嫁になるには、夫との強い絆に裏打ちされていなければいけない。」(アエラ2005年12月)「夫婦の絆とともに鬼嫁≠フ真の姿を垣間見た気がした。」(週刊女性2007年1月)という2つの文では、「鬼嫁」「夫婦の絆」という言葉が合わせて書かれていた。ここから、北斗晶のように世間から愛される「鬼嫁」であるためには、夫婦関係が良好であることが重要であると考えられる。
このように、メディアは、北斗晶を肯定的にとりあげることで、北斗晶が肯定的な意味で鬼嫁を語るのをサポートしている。
<雑誌における「鬼嫁」としての北斗晶の描かれ方>
北斗の発言からは、一貫して鬼嫁という言葉に肯定的な意味合いを持たせていることが分かる。また、北斗は「夫にひどい仕打ちをする」という一般的に持たれている鬼嫁についてのイメージを否定し、「鬼嫁」という言葉そのものに肯定的な意味を持たせようとしている。また、メディアは、北斗晶を肯定的にとりあげることで、北斗晶が肯定的な意味で鬼嫁を語るのをサポートしている。
北斗晶の雑誌での描かれ方は、夫に対して強いという意味では「実録鬼嫁日記」と共通している。しかし、北斗は料理上手で家庭的なイメージでとらえられているという点が実録鬼嫁日記やモバゲータウンのの「鬼嫁」とは大きく異なっている。
第四節 発言小町における「鬼嫁」
掲示板である発言小町では、鬼嫁に対しての本音の意見が出やすいのではないかと考え調査対象に選んだ。発言小町において、鬼嫁という言葉がどのようにして語られているのかを分析していく。
発言を見ていくと、嫁姑関係に関するものと夫婦関係に関するものとに大きく2つに分類することができる。また、嫁姑(嫁義家族)関係、夫婦関係の中でさらに細かく分類していく。実際にどのように「鬼嫁」という言葉が使われているのか、いくつか例をあげて分析していく。
第一項 嫁姑関係における「鬼嫁」
■自己嫌悪・自虐・反省として語られる「鬼嫁」
例1)
鬼嫁のようになっている自分がいやですが、いい加減つかれるので・・。(2005年2月9日 10:15 やめてー)
上の文のように前置きしてから、息子依存症の姑への対応が疲れると愚痴をこぼしている。「鬼嫁のようになっている自分がいや」と言っており、自己嫌悪に陥っている。
例2)
年賀状出せない年が早くこないかな(わかりますか?)と考えてる鬼嫁にいつのまにか、なってしまいました。(なやみっこ 2009年5月27日 10:11)
自分中心の姑に対して、「年賀状出せない年が早く来ないかな」=「早く姑が他界しないかな」と思っており、そのようなひどい事を考える自分(鬼嫁)になってしまった、と言っている。トピックの題名も「義母の事で、自己嫌悪」と、自己嫌悪に陥っているのが分かる。
■自分自身の行動を肯定するための「鬼嫁」
例1)
鬼嫁になった方が楽ですよ。(2004年12月10日 14:02 鬼嫁天使妻)
「よい嫁をやめましたという意見をよく見かけるが、突然疎遠になったりしたらかえって辛い立場にならないか不安」という相談のトピックに対するレス。「いやみにも対応できるようになった、嫌なこともはっきり断れる、夫婦のきずなが深まった」と、具体的に鬼嫁になって良かったことを述べており、「こんなにハッピィになれるんだったら、早く鬼嫁になれば良かった」とも言っている。
例2)
それから私の中の張り詰めていた糸がプッツリと切れ、今ではほぼ疎遠状態の、腹をくくった鬼嫁(?)として生きています。(ラベンダー)
「姑の攻撃をうまくかわす方法について話し合いましょう」というトピックに対するレス。最初はなるべく受け流し、明るく笑い飛ばしたりしていたが、それだと姑がさらにひどい態度と言葉をとるようになってきたので、今では鬼嫁として生きており、姑とはほぼ疎遠状態になっている。
■目指すものとしての「鬼嫁」
例1)
目指せ「鬼嫁」です。(2009年1月20日 11:34 春侍)
「姑が電話で夫ではなく自分ばかりに愚痴を言ってくる」という内容のトピックに対するレス。「夫が役に立たないので、姑には自分の口で釘を刺すようにした」「姑に遠慮するのは止めた」と、夫が役に立たないので、自ら鬼嫁を目指し、姑に対抗している。
例2)
私、今年は「鬼嫁」で通そうと思ってます。(ゆきはな 2008年3月11日 1:22
)
「兄嫁への不満」を弟の視点から述べているトピックに対するレス。「兄嫁と似たような立場なので、兄嫁の気持ちが分かる」と言っている。「義母にいやみを言われる、いつ来るかいつもびくびくしている」ので、今年は「鬼嫁」で通そうと思っている、と宣言している。
■他人を評価する際に使う「鬼嫁」
(言われた側)
例)
夫は孫しか楽しみの無い夫婦だからマメに顔を出す様にと言われ反論したら鬼嫁扱いです。(2008年2月12日 11:56 匿名子)
結婚して10年間義理の両親に嫌味を言われ続けてストレスが溜まっているが、夫に鬼嫁扱いされてしまった、というトピック。最後には「どうすれば水に流せるでしょうか」と言っており、「鬼嫁」と言われたことがショックであることが分かる。
(言う側)
例1)
赤ちゃんを見せるのも嫌なんて、同じ嫁の私でも鬼嫁と思いますが。
「義両親が生理的に受け付けない、出産のときに真っ先に赤ちゃんを抱きに来ると思うとゾッとする」という内容のトピックに対するレス。同じ嫁の立場でもそれは「鬼嫁」であると非難している。
例2)
何だか気弱なお姑さんをいじめてる鬼嫁さんの文章かと思いました。(2009年5月9日 7:33 pipi)
「同居している義母に対する愚痴(姑は自分のことを自分で考えることができない、話ができないなど)」をいくつも例を挙げて述べているトピックに対するレス。「姑をいじめている鬼嫁」と非難している。
これらのデータをもとに、以下のように4つに分類する。
・自己嫌悪・自虐・反省として語られる「鬼嫁」
・自分自身の行動を肯定するための「鬼嫁」
・目指すものとしての「鬼嫁」
・他人を評価する際に使う「鬼嫁」
まず、【自己嫌悪・自虐・反省として語られる「鬼嫁」】にあてはまる発言は6件あった。「鬼嫁でゴメンナサイ」「鬼嫁のようになっている自分がいや」など、姑や義家族に対する自分の態度や行動から自分のことを「鬼嫁」として、反省しているものが多かった。
【自分自身の行動を肯定するための「鬼嫁」】は11件あり、最も多かった。「鬼嫁なのでこうしています!」など、強気で、開き直ったような発言が多数みられた。姑の理不尽な態度に対抗するために鬼嫁となり、こういう態度をとっている、というふうに語られるものが多かった。
【目指すものとしての「鬼嫁」】は6件あった。「目指せ鬼嫁」「今年は鬼嫁で通そうと思ってます」など、姑の態度に耐えかねて、鬼嫁を目指そうとする発言が目立った。また、他人に対して「鬼嫁になるしかないのでは?」と、鬼嫁になることを勧めるものもあった。「姑の態度に対抗するための鬼嫁」としては「【自分自身の行動を肯定するための「鬼嫁」】と共通していた。
【他人を評価する際に使う「鬼嫁」】は7件あった。これはさらに、「他人に鬼嫁と評価された側」と「他人を鬼嫁と評価する側」に分けることが出来る。「他人に鬼嫁と評価された側」は、2件あり、夫や友人に「鬼嫁」と言われ、どちらもその評価に不満を持っていた。「他人を鬼嫁と評価する側」は、5件あり、誰かの姑への態度に対して「鬼嫁ですね」とレスして評価しているものである。ここでは「鬼嫁」は他人をけなすマイナスの意味を持った言葉として使われていた。
第二項 夫婦関係における「鬼嫁」
■自己嫌悪・自虐・反省として語られる「鬼嫁」
例1)
いつも「そんなんで仕事やすむの?」と思ってしまうのは鬼嫁でしょうか?(2009年3月30日 14:35 ぴちょん)
夫がよく体調を崩し、仕事を休むことに対して非難してしまうのは鬼嫁か、と問いかけているトピック。「鬼嫁なのか悩みます」と最後に言っており、自分の行動は鬼嫁なのかと自虐的に語っている。
例2)
トピック名:私が悪い? 夫が悪い? それとも引き分け!
日付:2009年6月29日 19:42
発言者:鬼嫁2号
私は夫に手も足も口も出る 鬼嫁なので トピ主さんの気持ちがよく判ります。(2009年6月29日 19:42 鬼嫁2号)
※トピ主=トピックをたてた人
「ついつい夫に手が出てしまう」というトピックに対するレス。自分もそうなので共感できる、と言っているが、「やりすぎだと思うのでお互いに気をつけましょう」とも言っていて、自分がやりすぎだというのを自覚して反省している。
■自分自身の行動を肯定するための「鬼嫁」
例1)
それに、少しくらい鬼嫁くらいの方がうまくいっている家庭が多いですよ。(2008年2月10日 0:57 40代女性)
「気が強く、将来鬼嫁になりそうな人と付き合うか迷っている」という男性へのレス。「少しくらい鬼嫁のほうがうまくいっている家庭が多い、自分の家庭もそう」とアドバイスしている。
例2)
鬼嫁かもしれませんが、基本的に自分で片付けられるおりこうさんな夫に育ちましたよ。(夫だいすき 2009年2月5日 22:41)
「夫が自分の脱いだ服すら片づけない」というトピックに対するレス。自分はわざと気付かないふりをして放っておき、夫に片付けさせると言っている。「鬼嫁かもしれないが、結果おりこうさんな夫に育った」と自分の行動を肯定している。
■他人を評価する際に使う「鬼嫁」
(言われた側)
例1)
呼びました??いやいや、鬼嫁じゃないですよ!(ちーかま 2009年1月16日 11:06)
鬼嫁に関するトピックに対するレス。「周りからは鬼嫁と言われるが、鬼嫁ではない」と否定している。
(言う側)
例1)
トピ主さん、無自覚でしょうが、鬼嫁の素質ありますね。(けいたママ 2009年3月6日 15:30)
「お金の使い方に関して友人に責められた、私が間違っているのか?」というトピックに対するレス。「ご自分は浪費しておいて働かず、夫が使うお金は勿体ないという自己中っぷり」「経済DV」と非難している。
これらのデータをもとに、以下のように3つに分類した。
・自己嫌悪・自虐・反省として語られる「鬼嫁」
・自分自身の行動を肯定するための「鬼嫁」
・他人を評価する際に使う「鬼嫁」
まず、【自己嫌悪・自虐・反省として語られる「鬼嫁」】にあてはまる発言は7件あった。「私は鬼嫁かもしれません」「鬼嫁なのか悩みます」など、夫に対する自分の態度や行動から自分のことを「鬼嫁」として、悩み、不安に感じているものが多かった。
【自分自身の行動を肯定するための「鬼嫁」】は2件あった。「少しくらい鬼嫁の方がうまくいっている」「鬼嫁かもしれませんが、おりこうさんな夫に育った」と、どちらも鬼嫁であることが夫婦にとってプラスになっているということを語っていた。
【他人を評価する際に使う「鬼嫁」】は4件あった。「他人に鬼嫁と評価された側」は、1件あった。周りから「鬼嫁」と言われており、しかし自分は鬼嫁ではないと否定している。「他人を鬼嫁と評価する側」は3件あり、「鬼嫁の素質ありますね」「鬼嫁すぎますよ」と、やはり相手を非難するものだった。
第三項 発言小町における「北斗晶」のとらえられ方
例1)
鬼嫁、で出ていますが、あんな素敵な料理ができる奥様、家族は幸せでしょうね。しかも強いしかっこいいですー。また北斗さんの料理が見たい。(2005年7月3日 22:43 まいっぺ)
料理上手な芸能人は?というトピックに対するレス。料理上手な芸能人に北斗晶を挙げ、「鬼嫁で出ているが、あんな奥様だと家族は幸せ」「強いしかっこいい」と、肯定的に評価している。
例2)
体が健康で、強くて料理うまくて、鬼嫁。素朴そうな性格もいい。
自分がひよわで面倒くさい性格だから、生まれ変わったらああいうお母さんになりたい なぁ。(2007年8月1日 19:48 うきわ)
「憧れの女性芸能人は誰?」と言うトピックに対するレス。憧れの女性芸能人として北斗晶をあげて褒めており、「生まれ変わったらああいうお母さんになりたい」とも言っている。
例3)
私も大好きです、彼ら。
鬼嫁といいつつも、本当に心が可愛い人なんだろうなぁと思わされるところががあり、 また旦那さんとのやりとりに無理がなく、見ていてほのぼのしてしまいます。自分が目指すかと言われると、また違うカラーなので、目指す事は無いでしょうが、一つの素敵な夫婦の形だと思います。(2005年2月28日 20:11 Titi)
「佐々木健介と北斗晶夫妻が好き」というトピックに対するレス。自分も佐々木健介と北斗晶を大好きだと言っており、北斗の事を、「鬼嫁といいつつも心が可愛い人」と肯定的に捉えている。また、二人のことを、「一つの素敵な夫婦の形」と言っている。
例4)
旦那さんとの相性の良さ&料理の腕が良くて、愛情豊かな鬼嫁…って感じがたまりません。(2005年3月1日 21:31 ゆきんこ)
「佐々木健介と北斗晶夫妻が好き」というトピックに対するレス。自分も「最近テレビで見るたび北斗晶さんがいいと思っていた」と言っている。また、「愛情豊かな鬼嫁という感じがいい」と褒めている。
<発言小町の分析>
発言小町の女性の語り手の特徴は、「鬼嫁」という言葉が夫婦関係だけでなく、嫁姑関係においても語られている点であった。もともと鬼嫁とは、嫁が姑虐めをする際に使われた言葉であるが、鬼嫁ブームが起こるきっかけとなったブログでは、男性側が自分の妻を表現する手段として「鬼嫁」という言葉が使われていた。
また、「鬼」という非常にマイナスなイメージを持った言葉にも関わらず、それを自分自身の行動を肯定するため、または目指すものとして使う女性がいたのが特徴的であった。それは嫁姑関係・夫婦関係においてどちらも共通しているが、特に嫁姑関係において多くみられた。なぜあえて「鬼嫁」という言葉を使うのだろうか。姑に対する鬼嫁の行動として多かったのは、「理不尽なことには言い返す」「遠慮しない」「無視する・会わない」というものだった。それは従来の女性の受動的・従属的なイメージから逸脱している。「鬼嫁」という言葉にマイナスなイメージとは別に「姑に対抗する強さ」としてのプラスの意味を持たせることで、嫁姑関係を嫁が語る際に都合のいい言葉として使われているのではないか。