第2章 富山の獅子舞

 

第1節 富山の獅子舞概要

 

 富山県は非常に獅子舞が盛んな地域である。佐伯(2002)によれば、県内で約1200もの獅子舞が確認されているという。獅子舞といえば全国的には正月に行われるというイメージがあるかもしれないが、富山県の獅子舞の多くは、春祭りもしくは秋祭りとして行われる。春は豊作を願い、秋は五穀豊穣への感謝の意味で舞う。

 各地域で舞われる以外にも、富山県各地の獅子舞が一堂に会して舞いを披露する競演会が多数開催されている。また2006年には富山県教育委員会が行っている「とやまの文化財百選」事業の第2弾として、「とやまの獅子舞百選」の選定が行われている。

 

第2節 獅子舞の形態

 

富山県に伝承されている獅子舞は、大まかに獅子の胴の中に数人の人が入る百足獅子と、二人で舞う二人立ち獅子に分けられる。百足獅子は県西部で多く見られ、二人立ち獅子は主に県東部で行われている。佐伯(2002)はさらに細かい芸態から、百足獅子は氷見獅子、砺波獅子、射水獅子、二人立ち獅子は金蔵獅子、下新川獅子に分類している。ここではそれぞれの獅子舞の分布と簡単な特徴を紹介する。

なお獅子舞独特の用語についてはアンダーラインを引いてある。巻末で簡単に説明してあるのでそちらを参照してもらいたい。

 

1.氷見獅子

 氷見市とその周辺、および五箇山や南砺の一部にも分布している。獅子あやしは天狗と呼ばれ、烏帽子、狩衣、胸当てなどを身につけている。胴幕は素手で支える。祭りの最後はシシゴロシで終える。太鼓を乗せる太鼓台が大きく豪華なのも特徴である。

2.砺波獅子

 砺波平野一帯に分布している。獅子あやしはシシドリと呼ばれ、子供が二人一組で演じる。胴幕に特徴があり、竹の輪を入れて支える。そのため他の獅子と比べ胴体が大きく見える。

3.射水獅子

 射水市周辺に分布している。獅子あやしは天狗とキリコで、天狗は青年が演じ、キリコは花笠をかぶった二人一組の子供が務める。獅子の形態は氷見獅子に近いものの、演目や衣装などには砺波獅子や金蔵獅子の影響を受けており、富山の各獅子舞が入り混じったような特徴をもつ。

4.金蔵獅子

 神通川沿いを中心に広く分布している。獅子あやしは、キンゾウ、サンパサ、ササラ、オドリコなどと呼ばれ、子供が演じる。雌雄二体の獅子が一対となっている獅子舞だが、一頭だけの獅子舞もある。

5.下新川獅子

 下新川地域一帯に分布している。獅子あやしは天狗で、多いところでは10人ほどの大人数で獅子と対峙する。金蔵獅子と違い、獅子は一体だけである。