第3章 「14歳の挑戦」から数年後 〜体験者達へのインタビュー〜

 

1節 インタビューの結果報告

 

ここでは「14歳の挑戦」を体験者した人のインタビューからどのようなことが読み取れるか調べる。このインタビューは以前に「14歳の挑戦」を体験した高校生以上の人に、直接会ってインタビューする他、Eメールや手紙を使用したインタビューである。この調査では8名の人にインタビューした。そのうち5人が高校生、2人が大学生、1人が短大生である。この調査の目的は、「14歳の挑戦」が体験者の将来にどのような影響を与えているのかということを調べることである。

 

体験者Aさん (滑川市在住の高校生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

薬を作っている会社で体験をした。仕事内容は薬を入れる箱づくりやラベル貼り、包装紙折りなどをした。あと、一般で働いている人たちと一緒に流れ作業もした。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

私は初め、働くということを甘く考えていた。しかし、1日中ずっと同じ作業をしていることがあり、実際にはとても疲れたし、大変だった。でも、1つの仕事が仕上がるごとに達成感があり、その時はとても嬉しく思った。また、仕事は学校と違い与えられたことは責任をもってやり遂げなければならないし、少しでもミスをしないようにしなければならないことを実感した。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

時間をきちんと守るようになった。余裕を持つようになった。

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

1つの仕事をやり遂げた達成感を味わったので、何に対してもやりとげようという気持ち

が出た。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

自分に与えられた仕事に対して責任感をもつようになった。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

 

あきらめない気持ち。精神的に強くなったこと。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 

誰に対しても気持ちよく挨拶をするようにしている。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

体験の中でチームワークも大切だということがわかったので、人とのコミュニケーションを大切にすることを活かしていきたい。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろ

うか

 

物事をいつも学生気分でしか味わっていないので、世の中を甘く見ていたと思う。

 

I高校を卒業した後は進学する予定か、就職する予定か

 

 多分大学か専門学校に進学すると思う。どんな分野の学校に行くかは、まだ決まっていない。

 

 

体験者Bさん(富山市在住の高校生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

スーパーマーケットの精肉店で、食品の賞味期限のチェック、前出し、あと台車の洗浄などをした。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

最初は簡単な仕事だと思ったが、いざやってみるとかなり難しく、大変な仕事だった。賞味期限のチェックは、ほとんどの食品を1つ1つチェックしっかり見ないといけないので、とても大変だった。食品の前出しは、なくなりかけている食品を入れる作業で、入れる食品を探すのはとても大変な作業だった。でも、一日が終わるごとに、仕事をやり遂げたという達成感を感じた。職場の人たちはいつもこんな仕事をしているのですごいと思った。14歳の挑戦」5日間はとても勉強になった。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

以前に比べて挨拶をするようになったと思う。

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

仕事をやり遂げたときに得られた達成感がとてもよかったので、勉強などもがんばって

みようと思うようになったこと。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

仕事は一人だけではとても大変なので、仲間と協力することが必要になることを感じ、

人と協力することの大切さを知った。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

 

何をやるにしてもとりあえず努力してみようと思うようになったところ。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 

何かをやるときに、一人ではむずかしかったら人と協力してみるようにしている。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

人と協力することの大切さを学んだので、何か困難があっても周りの人と協力して乗り

越えて生きたいと思う。そして、周りの人を思いやっていきたい。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろ

うか

 

仕事の大変さを知らないまま大人になっていくので、仕事というものをあまり真剣に考えなかったと思う。あと、毎日仕事をしている両親にあまり感謝しない自分になっていたと思う。

 

I高校を卒業した後は進学する予定か、就職する予定か

 

 大学に進学する予定。多分県外の大学になると思う。

 

 

体験者Cさん(富山市在住の高校生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

保育園で子供の面倒をみたり遊んだりした。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

最初、保育士の仕事は子供と遊ぶだけだと思っていたが、すごく体力を使う仕事であり、大変だった。子供が怪我をしないようにいつも目を配らなきゃいけないし、人の命を預かる仕事なので、責任重大だと思った。初日とかはかなり緊張していたと思うけど、だんだん慣れてきて子供と遊ぶのが楽しくなってきた。大変だったけど、とても充実していた。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

けっこう規則正しい生活を送れるようになった。

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

仕事をやり遂げた後の達成感はとても気持ちのよいものであり、達成感を得るために勉

強や部活など、今まで続けてきたことを諦めないように、途中でやめないように努力するようになったという面で役立った。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

責任重大な仕事をやったことによって、以前より責任感が出てきたと思う。それと、

日仕事をしている親を尊敬するようになった。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

やはり責任感の面で成長したと思う。それと、仕事をすることは大変だが、仕事が終わ

った後は達成感があるので、仕事に対する考え方が変わったと思う。以前は仕事をあま

りしたいとは思わなかったが、仕事には仕事の楽しみがあることがわかった。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 

仕事をやり遂げたあとの達成感はとてもよいものだったので、努力すれば達成感

を味わえるだろうと思い、何事にも努力しようという気持ちをもつこと。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

子供と遊ぶこと、コミュニケーションをとることは大変だったけど、楽しかったので、

人とコミュニケーションをとることを大切にしていこうと思う。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろ

うか

 

仕事の大変さを知ることがなかったと思うので、毎日働いて自分を養ってくれる両親に今ほど感謝をするようにはならなかったと思う。それと、仕事に対する意識もそれほど高くはならなかっただろう。

 

I高校を卒業した後は進学する予定か、就職する予定か

 

 まだはっきりとは決めていないが、おそらく進学することになると思う。

 

 

体験者Dさん(富山市在住の高校生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

ガソリンスタンドで車の窓拭きなどをした。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

最初は仕事なんてめんどうくさいと思っていた。実際に仕事をしてみると大変だったが、充実していた。職場の人は優しく仕事を教えてくれた。普段は優しい人達だったが、お客さんが来るとすぐに車のところへとんでいって仕事をする様子はかっこよかった。あと働くということの大切さ、充実感を味わった。そして仕事は真剣にやらなきゃいけないということも感じた。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

お客さんがきたら大きな声で挨拶をするように教えられたので、今でも人に挨拶をする

ように心がけている。

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

勉強や部活に対しても真剣にとりくめるようになったということが、役に立っていると

思う。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

ガソリンスタンドの仕事は大変であり、少しは親の苦労を知ることができたと思う。そ

のことで、以前より親に対して尊敬の念を抱くようになったと思う。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

 

仕事を通して以前より責任感が身についたと思う。それと挨拶をよくするようになった

と思う。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 

一番は挨拶をすること。挨拶の大切さを教わったから、挨拶を心がけている。あと、

事に取り組むときに以前より努力をするようになったと思う。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

やはり挨拶をすることを続けていきたいと思う。あと、何事にも真剣に取り組もうと思

う。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろ

うか

 

あまり挨拶が出来るようにはなっていなかったと思う。それと、仕事の大切さ、大変さ

もあまりわからないままだったと思う。

 

I高校を卒業した後は進学する予定か、就職する予定か

 

 今のところ、大学に進学する予定。工学部に入りたいと思っている。

 

 

体験者Eさん(富山市在住の高校生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

郵便局で接客や、裏で配達物を分ける仕事をした。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

最初は郵便局の雰囲気に緊張していて、挨拶もなかなか上手にできなかったけど、日が経つにつれてはっきりとした挨拶ができるようになっていったと思う。あと、仕事が終わったときに郵便局の人からお礼をいわれたときは嬉しかった。自分も役に立っているんだなと思い、自信が出てきた。責任ある大変な仕事だったけど、とても充実していて、勉強になった。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

時間にけじめをつけることが出来るようになったと思う。郵便局では、休み時間にはし

っかり休んで、次の仕事が出来るようにするように言われたので、それが普段の生活にも出てきたのかもしれない。

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

自分から進んで挨拶できるようになったことは役に立っていると思う。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

郵便局の仕事はとても責任ある仕事だったので、責任感が出てきたと思う。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

 

部活などで苦しかったときも途中で投げ出さないで努力して突き進んでいこうと思った

ところ。仕事をやり遂げたときの達成感がこういう成長をさせているのだと思う。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 

挨拶をすることや、時間にけじめをつけて遊ぶときは遊ぶ、勉強するときは勉強すると

いった形で経験を生かしている。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

挨拶などももちろんそうだが、人と協力して仕事をすることの大切さも学んだので、こ

れからも何かやるときは人と協力していきたい。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろ

うか

 

仕事の大変さ、苦労を知らないで、あまり努力をしない人間になっていたかもしれない。だから、14歳の挑戦」に参加できたことは本当に意味があったと思う。

 

I高校を卒業した後は進学する予定か、就職する予定か

 

 県内の短期大学に行きたいと思っている。

 

 

体験者Fさん(富山県内の大学生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

スーパーマーケットで商品の陳列をやった。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

 日ごろの学校生活と違って、働くことの大変さがわかった。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

 特に違いは出なかったと思う。

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

 あまり役に立っているとは思えない。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

 特に影響はなかった。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

 

 たいして成長していないと思う。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 普段の生活で生かすようなことは学ばなかった。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

 特にない。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろ

うか

 

 別に変わりないと思う。

 

I大学を卒業したら就職する予定か

 

今のところ就職すると思うけど、どんな仕事に就きたいかはよくわからない。

 

 

体験者Gさん(富山県内の短期大学生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

 保育園での保育体験をした。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

 園児たちはとてもかわいらしく、楽しい体験でした。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

 活動してみると、あいさつの大切さや言葉使いや態度など、改めることがたくさんあり、

体験後はそのようなことに気をつけるようになったと思う。 

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

 あいさつをするように気をつけることは、普段の生活や、アルバイトなどで役にたって

いると思う。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

 私は小さい頃から保育の仕事に興味があったので、保育園での体験は進路を深く考える

ための良い体験だった。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

 

 人に対してやさしい気持ちになれるところが成長したと思う。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 

 時間厳守や言葉使いなどに気をつけるようになった。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

 体験を通して学んだ仕事に対する気持ちなどを、これからの生活に活かしていきたいと

思っています。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろうか

 

 現在短大で保育士になるための勉強をしている。これは14歳の挑戦で体験したことがきっかけになっていると思う。

 

I短期大学を卒業したら就職する予定か

 

 保育士になりたいと思っている。

 

 

体験者Hさん(富山県内の大学生)

 

@どのようなことを体験したのか

 

 中古車販売所で清掃や洗車をした。

 

Aやってみての感想はどのようなものか

 

 楽しかった。少しでも社会勉強になったと思う。

 

B体験の前後では、普段の生活に何か違いが出たか

 

 言葉使いに気をつけるようになった。

 

C14歳の挑戦」の体験は今までで役にたったか

 

 役にたったと思う。

 

D14歳の挑戦」の体験は、自分にどのような影響を与えたか

 

 社会で働くとはどのようなことかを理解できた。

 

E14歳の挑戦」の体験を通して、どのようなところが成長したと思うか

 

 人に親切に接する態度。

 

F現在までの生活で、14歳の挑戦」の経験をどのように生かしているか

 

 物事を合理的に考えること。

 

G14歳の挑戦」の体験をこれからどのように生かしていきたいと思っているか

 

 自分の社会経験の一つとして活かしていきたい。

 

Hもし14歳の挑戦」に参加していなかったら、今の自分とはどのように違っていただろ

うか

 

 労働する機会のない中学校で、少しでも働くことで将来の職業に対する見方が変化したと思う。

 

I大学を卒業したら就職する予定か

 

車が好きなので、どこか車関係の会社に就職したいと思っている。

 

第2節 分析

 

この8人のインタビューを見ると、Fさんは例外的に14歳の挑戦」の体験をあまり高く評価していないようだが、他の7人は似たような語りになっているように思える。目立つ言葉をピックアップしてみると、「大変さ」、「達成感」、「充実感」、「楽しさ」、「責任感」、「挨拶」、「コミュニケーション」、「人と協力する」、「人を思いやる」、「努力する」といったものが上げられる。

「大変さ」に関して、Aさんは1日中ずっと同じ作業をしていることがあり、実際にはとても疲れたし、大変だったと語り、Bさんは、最初は簡単な仕事だと思ったが、いざやってみるとかなり難しく、大変な仕事だったと語っている。Cさんは、保育士の仕事は子供と遊ぶだけだと思っていたが、すごく体力を使う仕事であり、大変だったと語り、Dさんは実際に仕事をしてみると大変だったと語る。Fさんは日ごろの学校生活と違って、働くことの大変さがわかったと語っている。

 しかし、仕事の大変さは、必ずしも彼らにとって落ち込むような出来事として語られているわけではない。Aさん、Bさん、Cさんは、ともに仕事をやり遂げたという「達成感」を感じたと語っている。CさんとDさんは、「充実」していた、あるいは「充実感」を味わったと語る。Eさんは、「大変さ」については語っていないが、仕事をやり遂げたときに「達成感」を感じたと語っているし、体験中はとても「充実」していて、勉強になったとも語っている。さらに、Cさんは仕事には仕事の「楽しみ」があることがわかったと語っている。「楽しい」という言葉は、GさんとHさんも挙げている。このように「達成感」、「充実感」、「楽しさ」という満足を表す語彙が目立つようになっている。

そのほかにも、「14歳の挑戦」を体験することによって変化した(あるいは、変化しつつある)自分の資質が変化したことを示す語彙がある。ひとつは、「責任感」で、Aさん、Cさん、Dさん、Eさんが、この体験をしてみて責任感が出てきたと語っている。「挨拶」に関しては、Aさん、Bさん、Eさんが「挨拶」ができるようになったと自分の変化を語っているし、GさんとEさんは、挨拶を意識するようになったという語り方をしている。「コミュニケーション」に関しては、AさんとCさんが、「14歳の挑戦」を通して、「コミュニケーション」の大切さを学んだので、今後も大切にしていこうと思うと語っている。同様にBさんとEさんは「人と協力する」ことを学んだので大切にしていきたいと語っている。さらに、Bさんは、周りの人を「思いやって」いきたいと語り、Gさんは、人に対して「やさしい」気持ちになれるところが成長したと思うと語っている。このように、「責任感」をもてるようになること、「挨拶」ができるようになること、「コミュニケーション」や「人と協力すること」を大切にできるようになること、「思いやり」や「やさしい」気持ちをもてるようになるというふうに変化が語られている。

最後に、語り手たちは「努力する」ようになったと自分のことを語っている。Aさんは、何に対してもやりとげようという気持ちが出たと語り、Bさんは、何をやるにしてもとりあえず努力をしてみようと思い、勉強などもがんばってみようと思うようになったと語る。Cさんは、達成感を得るために勉強や部活など、今まで続けてきたことを諦めないように、途中でやめないように努力するようになったと語り、Dさんは、勉強や部活に対しても真剣にとりくめるようになったと語っている。Eさんは、部活などで苦しかったときも途中で投げ出さないで努力して突き進んでいこうと思ったと語っている。

以上の分析から言えることは、体験者は14歳の挑戦」によって数年後、次のように変わるストーリーを語れるということである。

 

     仕事の大変さを知ったと語れるようになる。

     仕事の充実感や、達成感、そして楽しさを知ったと語れるようになる。

     以前より責任感がついた、挨拶などのコミュニケーション大切にするようになった、人を思いやり協力できるようになった、という変化と語れるようになる。

     以前より努力するようになったと語れるようになる。

 

14歳の挑戦」を体験して数年後、体験者は以上のように自分にこのような変化があったというストーリーを語れるようになるようだ。また、14歳の挑戦」をあまり評価していないFさんも、仕事の大変さを知って、仕事をする気がなくなったとは言っていない。この8人の中に、体験を通して「仕事をしたくなくなった」という人はいない。むしろ、仕事の楽しさを知ったという人が多い。第2章のC保育所の例でも、中学生たちは仕事の大変さと共に、仕事の楽しさを知ったと語っている。体験者がこのように自分のストーリーを語れるということは、一体どのような意味があるのだろうか、次章で考えていきたい。