第2章 「14歳の挑戦」事業の実際

 

1節 中学校での事前準備、実施、事後活動 〜N先生へのインタビューより〜

 

14歳の挑戦」の実施にあたり、中学校でどのような事前準備をしているか、また実施後の活動はどのようなことをしているのかということを調査するために、富山市内のB中学校の2学年の学年主任のN先生にインタビューに協力していただいた。次の資料はB中学校の「14歳の挑戦」に関する組織図及び活動計画である。

 

<組織図>

社会に学ぶ「14歳の挑戦」推進委員会

自治振興会、商店街連盟、保育所長、小中PTA会長

校長、教頭、進路指導主事、2学年主任

 

 

 

 

社会に学ぶ「14歳の挑戦」事務局

 

校長、教頭、教務主任、進路指導主事、2学年担当教員、保護者ボランティア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保護者指導

ボランティア

 

 

 

事業所指導

ボランティア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒

 

 

 

<組織の活動内容>

 

社会に学ぶ「14歳の挑戦」推進委員会の活動内容には、最終的な活動場所の確保、事業所への事前依頼、そして取り組みへの助言等がある。

社会に学ぶ「14歳の挑戦」事務局の活動内容には、実施計画の原案の作成、そして事業所、保護者会、推進委員会との連絡・調整がある。また、速報等の文書の作成及び発送や、指導計画の作成も行う。加えて、学年集会や学級活動における生徒への事前指導があり、これは2学年の担当教員が行う。そして事業実施後には事後指導を行う。

保護者指導ボランティアの活動内容には、非常時の生徒の送迎、事業所巡回指導、事業所への速報等の発送と生徒の感想文の回収等がある。

事業所指導ボランティアの活動内容には、事業所での生徒の指導、アンケートなどへの回答等がある。

 

<活動計画>

 

学年集会・学級活動

保護者・保護者ボランティア

推進委員会・事務局

 

 

 

 

 

<学年PTA>

・概要、趣旨の説明及び理解と協力依頼

 

 

 

 

 

<学年集会>

     活動の内容説明

     活動意義の説明

     準備内容の説明等

<学級活動>

     第1回希望調査

     事前学習等

 

 

 

 

<事務局>

     事業目的の共通の理解と今後の活動計画

<推進委員会>

     事業の概要・趣旨

     現在の取り組み状況

     今後の活動と支援方法

 

 

 

 

<学級活動>

     活動場所決定

     第2回希望調査

     班編成と調整

     役割分担

<保護者>

・活動場所確保の協力

 

 

<事務局>

     学校だより、学年だより等で事業内容を知ってもらう

     活動場所が未定の部分の調整

 

 

 

 

<夏休み中>

     活動場所への電話依頼(生徒)

     職場との打ち合わせ(生徒)

<学年登校日>

     仕事内容の事前学習

     自己紹介カードの作成

     <始業式>

     保護者の承認、依頼書の回収

 

 

 

 

 

 

<事務局>

・事業所へのあいさつ

 

 

 

 

 

 

 

<学級活動>

     自己紹介カード、事前打ち合わせ確認書、出席簿などを完成

<学年集会>

     ねらいの再確認

     申し合わせ事項の確認

<学級活動>

     注意事項についての話し合い

     班毎に事前学習

     「私の『14歳の挑戦』」

     活動日誌配布と活動計画表記入

     事業所でのミーティングの方法・分担

     <学年集会>

     決起集会

 

<保護者会>

     趣旨の再確認と保護者の支援についての協力依頼

 

 

 

 

<保護者指導ボランティア会>

・直前打ち合わせ

 

<事務局>

     依頼書と事前確認事項などを事務所へ発送

     巡回ボランティアの計画

 

 

社会に学ぶ「14歳の挑戦」

実施

 

 

10

 

<学級活動>

     活動のまとめ(感想・礼状作成と発送)

     アンケート

 

<推進委員会>

・事業の報告

 

<「14歳の挑戦」実施前の活動>

 

4月には中旬にPTA総会があり、それが終了したらPTAの会合がある。そこで「14歳の挑戦」についての説明会を開き、PTAに説明をする。「14歳の挑戦」について知らない親もいるので、昨年までの内容、趣旨、学校の組織、活動内容を説明し、大まかな予定表を配る。

5月には下旬から「総合的な学習の時間」に「14歳の挑戦」に関する学習をする。「総合的な学習の時間」は週4日あり、1回につき25分の授業を5時間目の時間に行う。5月下旬から8月の上旬の登校日の「総合」の時間のうち、他の事に使う必要がない「総合的な学習の時間」を「14歳の挑戦」の準備に充てている。その内容は主に、生徒に一般的な礼儀や態度、心構えを指導するということである。

6月には「総合的な学習の時間」の時間に「14歳の挑戦」に関する学習をする。そして6月中旬には2年生のみ「社会人に学ぶ講演会」に参加する。これは、直接「14歳の挑戦」と関係するものではないが、進路指導の一環として行っている。地域で働く人に来てもらって、生徒をグループに分けて、45分間、地域の人の話を聞くという試みである。平成17年度では保育士、新聞記者、電気会社の社員、公務員など、12人の地域の人が来てくださり、生徒を12グループに分けて、話しを聞くことになった。バランスをとるために、1グループ少なくても178人、多くても25人ほどになるように調整する。また、6月の学年集会では「14歳の挑戦」に関する話をする。

この時期に生徒に事前アンケートをとる。その内容は、

・どの程度楽しみにしているか

・体験に関して家族と話をしたか

 ・家族とはどれくらいの時間話をしたか

 ・どんな活動をしてみたいか

 ・学びたいこと、知りたいこと、身につけたいことは何か

 ・今回の体験で心配なことは何か

というものである。

また、先生は受け入れてくれる事業所を探す。その際には、昨年度受け入れてくれた事業所に電話をし、内諾がえられた事業所には正式な依頼状を発送する。内諾がとれた事業所には、窓口がどの方なのか、事業所の住所、電話番号を学校にFAXしてもらう。

7月には生徒の事業所への割り振りをし、割り振りが決まったら、担当の先生がその旨を事業所に伝えに行く。その際に生徒の名簿と「指導ボランティアのしおり」という冊子を渡す。この冊子には、指導ボランティアに方にお願いすべきことが記載してある。また、事業所の窓口の方と指導者の方は違う場合があるので、どの方が実際に生徒を指導してくれるのかということも教えてもらい、加えて事業所に実施期間中に巡回や、写真撮影をしてもよいか、生徒がどのような服装で行けばよいか、実施中、生徒の食事はどうするかということについて打ち合わせをする。

また、7月の期末テストが終わってからは、学活や「総合的な学習の時間」を「14歳の挑戦」の準備に充てる。その中では、地図の見方、電話帳の見方、新聞、書籍、自分の事業所関係、やりたいと思う職種についての調べ方、電話のかけ方、話し方、手紙の書き方、マナー、敬語の使い方等を学習する。

8月上旬には登校日があり、その日のすべての授業時間(午前中の4時間分)を「14歳の挑戦」の準備に使う。活動内容は、通う事業所別に班長を決める、班名簿を作る、自己紹介カードを作る、事業所の場所を確認する、連絡方法の仕方を確認する等である。その後、班長が職員室から事業所への電話依頼をし、事前訪問する日を決める。そして事業所ごとに、受け入れてもらう生徒全員で事業所に事前訪問をする。どのような子供がくるのか知りたい事業所の方もいるだろうから、子供たちが事前訪問するときに、我が子に関する保護者のコメントが書いてあるプリントを持っていき、事業所の方に渡す。

9月中旬には保護者の指導ボランティアに説明会を開いて、巡視する事業所の割り振りなどを説明する。

 

<「14歳の挑戦」実施>

9月下旬に「14歳の挑戦」を実施する。実施中には事業所に出席簿の紙を貼った紙袋を

置き、事業所の指導ボランティアの人にそれを確認してもらって、巡視した人がそれを見てチェックする。その紙袋には前日の速報をいれておいて、それを班長が生徒たちに配ったり、事業所の人に渡したりする。この紙袋は学校と事業所、生徒との連絡袋のようなものである。

 

<「14歳の挑戦」実施後の活動>

 

14歳の挑戦」実施後には、先生も生徒もすぐ事業所に礼状を書く。また、「14歳の挑戦」の文集を作る。その内容は、生徒の感想、「14歳の挑戦」期間中に毎日出している速報、写真を載せたものである。

そして、「14歳の挑戦」の学習発表会を行う。時間は2時間ほどである。ここでは、75事業所別に担当者が大きな紙にどのような活動をしたかということや、感想を書いて発表する。

また、実施後には生徒、保護者、事業所にそれぞれ事後アンケートをとる。その内容は次の通りである。

生徒に対してのアンケートは、

・「14歳の挑戦」は楽しかったか

 ・家族と話し合いをしたか

 ・その話し合いの時間はどれくらいか

 ・今回の体験でどんなことを学んだか

 ・今回の体験でよくない結果となったのは何か

 ・目標をもって取り組めたか

 ・進んで活動に取り組めたか

 ・指導ボランティアや地域の人々との交流ができたか

 ・班の仲間と協力することができたか

 ・活動に関して保護者と話し合ったか

 ・活動に関して先生と話し合ったか

 ・将来の生き方の参考になったか

 ・1週間、充実していたか

 ・今後も継続してやりたいと思うか

 というものである。

 

また、保護者に対してのアンケートは、

 ・趣旨について理解したか

 ・活動中子供と話し合ったか

 ・この活動を通して、子どもに好ましい変化が見られたか

というものである。

 

また、事業所に対してのアンケートは、

 ・「14歳の挑戦」の趣旨について十分理解できたか

 ・あなたの事業所で活動した生徒たちに対する、学校での事前指導は十分だったか

 ・あなたの事業所で活動した生徒たちの取り組みはどうだったか

 ・体験中の生徒たちに、好ましい変化が見られたか

 ・この期間を通して保護者が見学したが、そのことについてどう思ったか

というものである。

 

<その他>

 

次は事前準備、事後活動の他に、N先生へのインタビューによってわかったことである。

 

14歳の挑戦」の費用は、県と市が半分ずつ出している。

 

子供達は自分の興味のある職業の事業所に行きたがる。販売業はいつも見ているのでイメージがわきやすいが、製造業は中で何をやっているのかよくわからないということでイメージがしにくいからあまり行きたがる子は多くない。また、事業所の方でも受け入れてくれるところはあまり多くない。

 

事業所に受け入れをお願いするときに、受け入れてくれる期間が3日以上だったら頼んで、2日以下だったら頼まないようにしているが、平成17年度は鉄道関係の事業所に2日、気象台に2日、というパターンもあった。この場合、5日のうち、初日は休みになった。また、定休日などで事業所が休みのときは、家にいると欠席扱いになる。これは学校によってもいろいろやり方はあるが、人数が少ないときは、学校の「14歳の挑戦」本部の補助として登校させる学校もある。本部では先生方が速報の原稿を書いたり、ボランティアの方が巡視のときに使うカメラを用意する。補助の仕事は事業所に送る礼状を封筒に詰めるというもの等である。B中学校では以前は地区センターにお願いして除草させてもらったことがあった。また、1日だけ図書館で働いたり、幼稚園で働いたりしたこともあったが、平成17年度は1つの地区センターしか受け入れをしてくれなかったので、学校の中でボランティアをしてもらった。砂が溜まってる溝の砂上げをしてもらったりした。他の学校でもこのような形をとっているところは多いだろうとN先生は言う。

 

不登校でなかなか学校に来られない生徒は2学年には10人ほどいたが、本部付きとしたものは3名だけだった。この3人の生徒たちには家庭訪問していろいろ話したりしたのだが、閉じこもって出てこなかった。一応出て来られたら本部の方に来るようにいっておいた。他の7人の生徒はみんな事業所に行くことが出来た。

N先生は次のように語っている。不登校だった生徒は「14歳の挑戦」実施後、そんなにすぐ変わるわけではないが、この体験は自分を変えていくためのいいきっかけになると思う。この体験が自分の進路のことを考えるための手助けになったり、自分は学校に通えてないけど、5日間がんばれたという自信につながるのだと思う。3年生のころには進路のことも絡んでくるので、学校に出てくるためのプラス要素には必ずなるだろう。

 

 

2節 現場での生徒の様子 〜C保育所での体験〜

 

2005年9月下旬に富山市内のB中学校の、C保育所で実施された「14歳の挑戦」を見学した。このC保育所では0歳児と1歳児(計26人)で構成されるa組、2歳児のみ(計29人)で構成されるb組、そして3歳児、4歳児、5歳児で構成されるc組(計28人)、d組(計28人)、e組(計28人)、f組(計24人)の計6組がある。今回来ていた中学生は全員で9人であり、最初の3日間はa組に3人、b組に2人、c、d、e、f組にそれぞれ1人配属された。そして、4日目には配属する組を変えて、最初の3日間にa、b組に配属されていた中学生をc、d、e、fのいずれかの組に配属し、最初の3日間にc、d、e、f組に配属されていた中学生をa、bのいずれかの組に配属する。つまり、最初の3日間に0、1歳児の組または2歳児の組に配属されていた中学生は4日目には3〜5歳の組に移動し、逆に最初の3日間に3〜5歳児の組に配属されていた中学生は4日目には0、1歳児の組または2歳児の組に移動することになる。この理由として、C保育所の所長さんは「なるべくいろんなことを体験してもらいたいから途中で組を変えるようにしている。しかし、1日ごとに組を変えていては、せっかく子供達と仲良くなっても子供と築いた関係がなくなってしまうので、最初の3日間と後の2日間は同じ組に行ってもらうことにしている」と言う。

また、中学生を受け入れるにあたってどのような準備をしているのかという質問には、

「『14歳の挑戦』を受け入れる前に、副所長が中学校に行き、課外授業をする。内容は保

育所の仕事の説明であり、パワーポイント等を使って1時間半ほどで説明する」と答え

た。

  見学は午前中に30分間、それを5日間毎日行った。ここでは9人の中学生が体験に来ていた。全員女子だった。人数が多いので、始めに0、1歳児の組であるa組に配属された3人の中学生の様子を見学することにした。この3人の中には保育士になりたいと思っている中学生もいた。

 

 <1日目>

 

1125分にa組の教室の端に立って見学を始める。教室の中には保育士さんが2人と実習生4人、それと中学生3人がいる。幼児たちは椅子に座って食事をしているところで、大きな机が4つあり、1つの机に幼児が6人ほど座っている。中学生は幼児の横にすわり、幼児たちの食事を見守っているという感じである。初日のせいか、保育士さんたちに比べて中学生たちの表情は堅く、あまり笑顔が見られない点から緊張しているように見える。保育士さんにいろいろと指図を受けて、テーブルを拭くなどの仕事をしている。子供が茶碗を落としたら拾ってあげたり、落とした食べ物の始末をしたり、スプーンでご飯を食べさせたりしている。

食事が終わった後は昼寝の時間であり、中学生は布団を敷くのを手伝っている。何をすればいいのかわからないのか、ぼーっと立って様子を見ている中学生もいた。3人の中学生に感想を聞いてみた。

 

小池:今日は初日ですが、やってみてどうですか。

 

Aさん:思っていたより大変です。けっこう疲れました。

Bさん:大変な仕事だと思いました。子供は好きだけど、やっぱり大変です。

Cさん:思っていたより疲れました。けど、5日間がんばっていきたいです。 

 

1日目、中学生たちの堅い表情は緊張していることを感じさせた。インタビューからは、「大変」、「疲れた」という言葉が目立ち、中学生達は保育士の仕事の大変さ、疲れを知ったようである。

1日目の見学はここで終了した。

 

 

<2日目>

 

1130分に、昨日と同様、a組の端に立って見学を開始する。幼児たちは食事中であり、中学生は昨日のように幼児の横に座って食事の様子を見ている。a組には今日も中学生が3人来ている。幼児のほほをさわったりしてスキンシップをとりながら遊んだりしているところを見ると、昨日より慣れてきたように思える。子供が食べ物をこぼしたら、中学生はすぐに布巾で床を拭いたりしていた。また、食事中に席を立って歩き出してしまう幼児をすぐに追いかけて席に戻したりもしていた。このような点から、昨日よりも行動が速くなっているように感じる。そして、幼児が食事を終えたあとに、幼児が食器を片付けるのを一緒に手伝ってあげている。そのようなとき、中学生に笑顔が見られ、昨日よりも表情が柔らかくなっていることを感じさせた。

食事が終わった幼児は昼寝をするので、中学生は幼児を布団まで連れて行って寝かしつけている。寝かしつけるときには、ただ横に座ってみているのではなく、背中を軽くなでながら寝かしつけている様子から、昨日より緊張がほぐれ、仕事に慣れてきているように感じる。食事後には汚れた机を1日目のように保育士さんに指図されなくても自分から布巾で拭いている。

昼寝の時間になり、1150分には部屋の電気が消えた。中学生の1人が幼児を抱きかかえて広い場所へ素早く移動し、オムツを取替えている。このような点からも昨日との違いを感じる。 

 ここで今日の感想を聞いてみた。 

 

小池:今日で2日目ですが、どのような感じですか。

 

Aさん:やっぱり大変ですけど、昨日より慣れてきました。

 

Bさん:けっこう疲れますけど、子供と接していると楽しいです。仕事も昨日よりはわかってきたと思います。

 

Cさん:だんだん子供と接するのにも慣れてきました。けどやっぱり言葉が通じない分コミュニケーションが難しいですね。

 

下線部の言葉から、昨日よりも緊張がほぐれてきているように感じる。昨日と同様、インタビューのコメントには、「大変」、「疲れる」という言葉があるが、「慣れてきた」「楽しい」という言葉から、初日に比べて仕事に慣れてきて、仕事の楽しさを感じた中学生もいたようだ。2日目の見学はここで終了した。

 

<3日目>

 

1125分に、昨日と同様a組の端に立って見学を始める。幼児たちは食事中である。

 中学生たちは幼児たちに話しかけながらごはんを食べさせている。その様子からは、幼児たちから目を離さないようにしっかりと見守っているという感じが伝わってくる食事のあとの片付けのときに、中学生たちは保育士さんに指図される前に行動しており、1日目のような少し困惑したような表情はあまり見えないように思える。

1145分になると、中学生は幼児を寝かしつけている。1日目とくらべるとかなり表情がやわらかくなったように思える。笑顔で幼児たちと話している様子から、幼児たちとも仲良くなっているように見える。1、2日目と比べて中学生たちが笑顔を見せる時間が長くなった。

 ここで今日の感想を聞いてみた。

 

小池:今日で3日目ですが、調子はどうですか。

 

Aさん:だんだん慣れてきました。大変ですけど、楽しい仕事だと思います。

 

Bさん:言葉はなかなか通じないけど、子供がその場にあるもの、例えばタオルとかでも遊んだりしてくれるのでとても可愛いし、この仕事はとても楽しいです。

 

Cさん:もうあまり緊張しないようになりましたが、やっぱり大変で、責任ある仕事だと思います。でも、楽しいです。

 

コメントには「楽しい」という言葉が目立つ。やはり仕事は大変だが、3人ともこの仕事を楽しいと思っているようだ。1日目に比べると随分ポジティブなコメント増えたようだ。また、仕事の責任を感じている生徒もいるようだ。

3日目の見学はここで終了した。

 

<4日目>

 

1140分に保育所に見学を開始する。4日目から配属先の組が変わるので、Aさんの配属先のd組を廊下から見学した。今までの0、1歳児とは違って3〜5歳児の組なので、Aさんは昨日より表情が堅く、笑顔が少ないようなので、少しとまどっているような感じだったが、椅子に座って幼児たちと話をしたり、遊んだりしている。

Aさんに感想を聞いてみた。

 

小池:今日から組が変わったけど、どんな感じですか。

 

Aさん:雰囲気が変わったので、少し緊張しています。でも言葉が通じるので話しやすいです。みんな元気がいいです。

 

1150分には、Bさんの配属先のf組を廊下から見学した。

Bさんも椅子に座って幼児たちと話しをしていた。Bさんも昨日に比べ笑顔が少なく、緊張気味に感じる。

Bさんに感想を聞いてみた。

 

小池:今日から組が変わったけど、どんな感じですか。

Bさん:昨日と環境が変わっちゃったので、少しと戸惑っちゃったりします。あと、この組の子供たちは大きいので、元気があって一緒に遊んだりすると疲れちゃいます。でも、楽しいです。

 

1200分には、Cさんの配属先であるe組を廊下から見学した。

Cさんも椅子に座っており、幼児たちと話していた。笑顔が多く、楽しそうに話をしていた。幼児と手を握ったり、スキンシップをとっていた。

Cさんに感想を聞いてみた。

 

小池:今日から組が変わったけど、どんな感じですか。

Cさん:やっぱり少し緊張しましたけど、みんな元気があってかわいいです。しゃべっててもけっこう楽しいですやっぱり楽しい仕事だと思います。

 

下線部から、4日目は、環境が変わったことで緊張している様子が伺えるが、コメントには「楽しい」という言葉も見られる。また、3〜5歳児だと、言葉が通じるので話しをしていても面白いという感想もあった。相手が言葉の通じる大きい子供だからこその感想である。環境が変わっても、その環境を楽しめている中学生もいた。

4日目の見学はここで終了した。

 

<5日目>

 

1130分に、Aさんの配属先のd組を廊下から見学した。Aさんは椅子に座って幼児たちに囲まれて、子供達を話していた。今日は昨日にくらべて笑顔がよく見られたので、新しい環境にも慣れたようだ。

Aさんに感想を聞いてみた。

 

小池:今日で最後だけど、どんな感じでしたか。

Aさん:この仕事はとても大変だと思いますが、子供たちと遊ぶのは楽しいしやりがいのある仕事だと思います。今やっていることは、とてもいい経験になると思います。

 

1140分に、Bさんの配属先のf組を廊下から見学した。

Bさんは幼児たちと椅子に座って遊んでいた。手を握るなど、スキンシップをとりながら遊んでいる姿から、新しい環境に慣れてきたように思える。そして昨日より笑顔がよく見られた

 

Bさんに感想を聞いてみた。

小池:今日で最後だけど、どんな感じでしたか。

Bさん:最初の頃はすごく緊張して何をしていいかわからなかったけど、今はけっこう慣れてきて子供と遊ぶのはとても楽しいです大変だけど、本当に充実した5日間だと思います

 

1150分に、Cさんの配属先であるe組を廊下から見学した。

昼食後だったのか、Cさんは幼児たちと弁当箱で遊んでいた。昨日より笑顔が目立ち、幼児たちもCさんも楽しそうに遊んでいた自分から積極的に幼児に話しかけている様子も見られ、昨日よりも慣れてきたようだ。

 

Cさんに感想を聞いてみた。

小池:今日で最後だけど、どんな感じでしたか。

Cさん:最初の頃に比べてだいぶ慣れてきましたね楽しいです。私は子供が好きなので、この仕事はとても楽しいものだと思います。ここに来てよかったと思います。

 

感想からは、体験当初は緊張していたが、仕事もだんだん慣れてきて、楽しくなったということが伺える。「充実した」「来てよかった」「いい経験になる」といったコメントも聞くことができたので、この中学生たちはこの5日間の体験を高く評価していると言えるだろう。

5日目の見学はここで終わる。こうしてC保育所での「14歳の挑戦」の見学は終わった。

 

第3節 分析のまとめ

 

 1日目、まだ職場の環境と仕事に慣れない中学生たちは、まず仕事の「大変さ」を知るようだ。感想には「疲れた」「大変です」という言葉が目立ち、笑顔が少なく表情が堅いことから緊張していることが伺えた。仕事も保育士さんに指図されてから動いているという様子が見られた。それが2日、3日と経つにつれて徐々に仕事に慣れ、そして仕事の「楽しさ」を知るようだ。「慣れてきた」「楽しいです」という言葉が感想の中に出てきて、仕事も保育士さんに指図される前に自発的に動いている様子が見られた。そして笑顔で仕事をすることが多くなった。4日目には配属先の組が変わり、仕事の環境が変わる。相手をする幼児の年齢が上がるので、緊張しているようだ。感想にも「緊張する」「戸惑う」という言葉があり、笑顔が少なくなっている中学生もいたが、「楽しい」という言葉を残す中学生もいた。そして最終日の5日目には、3人とも昨日に比べ笑顔がよく見られるようになり、幼児と楽しそうに会話をしたり、遊んでいる姿が見られた。「この仕事は大変だが、楽しいし、やりがいがある。とてもいい経験になると思う」「最初は緊張したが、今はけっこう慣れてきた。子供と遊ぶのは楽しい。大変だが、充実していた」「最初に比べてだいぶ慣れてきた。この仕事は楽しい。ここに来てよかった」という感想から、3人の中学生たちはこの体験を高く評価しているようだ。初日の緊張して強張っていた表情が、最終日の5日目には笑顔がよく見られる柔らかい表情になり、仕事にもだんだん慣れてきて、自発的に行うようになるという変化が見られた。3人とも、この5日間を通して仕事の「大変さ」そして仕事の「楽しさ」を知ったと語っている。