第5章第1節 調査結果からみるひまわりサービスの問題点
郵便局の行う福祉サービスの実態はどうなっているのか――今回の調査では調査前にイメージしていたよりもマイナスの部分が多く見えた。
一番大きいのは一部のサービスが縮小されたり行われなくなってしまったりしていること。
ひまわりサービス実施郵便局では、日本郵政公社が定めている基本的な4サービス「励ましの声かけ(安否の確認)」「郵便物の集荷サービス」「生活用品等の受注・配達」「小学生等からの定期的な励ましメッセージのお届け」の全てを必ず実施するのではない。今回の調査地のように最初は全サービスを導入したが、そのうち衰退したサービスが徐々に淘汰されるケースが多い。事実、日本郵政公社北陸支社によると、4つのサービス全てを行っている郵便局は北陸支社管内には無いという。逆に全ての郵便局で必ず行われているサービスもなく、採用しているサービスは郵便局ごとに異なり統一性が無い。
今回の調査では生坂郵便局では生活用品等の受注配達が、平地区ではそれに加えて小学生等によるメッセージ等のお届けも現在は行われていないことが分かった。原因は様々あるが、生活用品等の受注配達はニーズに合っていないこと、地域実情に適していないことが主要因として挙げられる。山間地域に暮らす独り暮らしの高齢者といえども、地域の中心部や近隣市町村のお店に移動できるだけの交通手段を有しており、買い物に行けないので配達をお願いしたい、という場面はほとんど無いのではないか。
またはがきで申し込みにしろ外務職員へ直接申し込むにしろ、受注から配送までの手続きが複雑で時間がかかり、即行性がかなり低いことは大きな課題である。早急に必要なものがあるので持って来て欲しい、という場合には利用できないのである。これに対し平地区ではひまわりサービスより簡素な、電話一本による手続きで配送を行っているJAがある。
このように交通網がある程度整っていて、別に既存の配達サービスがあるところでのニーズはもともとあまり期待できないのではないか。
そもそもこのような過疎的地域内での配送サービスは、購入・配送に携わる人が全員顔見知りであることも少なくは無いだろう。自分が何を購入するのか他人に知られてしまう可能性に抵抗がある人がいたとしたら、このような配送サービス自体が受け入れられないかもしれない。また、「よそ様に迷惑を掛けたくないからできるだけ自分で」という高齢者独特の心理も何かしら影響しているのかもしれない。
もしこのサービスを再生・発展させるのならば、簡単な手続き体系の確立、受注から配送までの迅速化、配送対応品の充実、関連する情報の秘匿システムの確立など、安心性とスピードの確保が重要である。
平地区における小学生等によるメッセージのお届けの問題点は、協力機関である小学校との連携不足によるものが原因と考えられる。ボランティア色の強い制度だからといって無理強いはもちろん良くはないが、小学校や教育委員会への働き掛けがもっとなされても良いはずである。教育委員会・小学校の主導で行われている生坂村ではもっと郵便局が積極的に関与し、回数を増やすなどの諸策を講ずることもできる。
いずれにしろ高齢者の目線から考えれば、孫や曾孫と同じくらいの小学生からのメッセージは、例え自分の実の孫・曾孫でなくとも喜ぶことは必至ではないだろうか。実際平郵便局には高齢者からの喜びの声が届いている。メッセージを送ったことがきっかけで高齢者とのやり取りが始まり、小学生と高齢者の間に交流が生まれれば高齢者にとってはさらに嬉しいことになるはずであるし、小学生にとっても高齢者と接することでいろいろと学べるのではないか。地域交流が生まれ、温かい地域風土が育つ期待もできる。
またサービス外でのやり取りが増えれば郵便局が扱う郵便物も多くなり、業績にも少なからずプラスになるかもしれない。
郵便局側の積極性にも疑問が残る。
対象者の更新がされなかったり市町村合併によって連携が曖昧になっていたりと自治体や社会福祉協議会等関連機関との連携が必ずしも強いとは言えない。郵便局側からの働き掛けはなされないのであろうか。
さらにサービス内容も地域性や社会状況を考慮したものではない。通常サービスの一部をそのままひまわりサービスに組み込んでいるのもその一例である(「郵便物の集荷サービス」)。衰退するサービスを盛り返すために日本郵政公社がサービス内容や対応などを改善したわけでもなく、合わなかったサービスはそのまま放置されている。
本業に支障が出ない範囲内でのサービスとはいえ、利用者の利便性を考慮すればもっとよい対応ができるのではないだろうか。