第3章第2節 地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律
「地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律(以下略称:郵政干渉法)」は、地方公共団体が処理する事務のうち、特定の事務に関する業務や地方公共団体から委託された業務を身近な公的機関である郵便局で取り扱うことにより、住民の利便の増進を図るとともに、地方公共団体の組織・運営の合理化を目的として2001年12月1日に施行された。概要例は以下の通りである(本論文に関係するものは5、6)。
1、住民票の写し等の即時交付
郵便局は利用者からの請求書を受け付け、請求書をFAX等により地方公共団体に送信する。地方公共団体はその請求書を審査した上で証明書を作成し、電子公印のデータとともにFAX等で郵便局に送信する。郵便局は受信した証明書(公印が押印されたもの)を利用者に渡す時に手数料を受領する。これにより、戸籍の謄本・抄本等、納税証明書、外国人登録原票の写し・外国人登録原票記載事項証明書、住民票の写し・住民票記載事項証明書、戸籍の附票の写し、印鑑登録証明書等の交付請求の受付や証明書の交付を行う(2006年3月末現在、121市町村453局実施)。
2、公営バス回数券等の販売事務
公営バスの回数券・ごみ処理券・屎尿処理券・商品券・ゴミ袋等を地方自治体から預かり、郵便局窓口で販売する(2006年3月末現在、117市町村1111局実施)。
3、利用券等の交付事務
バス利用券・タクシー利用券・電車利用券等を地方自治体から預かり、郵便局窓口ではがきを持った交付対象者に交付する(2006年3月末現在、10市町村1780局実施)。
4、公的施設等の利用申込み取り次ぎ事務
公営施設・学習講座の利用申込みの受付を郵便局窓口で行う。
5、高齢者等当への生活状況確認
地方公共団体の選定した高齢者等の対象者宅へ定期的に訪問し、生活状況の聞き取りを行った上で記録票を作成、地方自治体に報告する(2006年3月末現在、18市町村29局実施)。
6、生活用品の注文・図書の貸し出し等の受付・配送
地方公共団体の選定した高齢者等の対象者宅へ定期的に訪問し、要望があれば日用品や図書名・著者名の聞き取りを行った上で記録票を作成し、地方公共団体へ提出する。地方公共団体は当該図書館等に依頼し、ゆうパック等で配送する(2006年3月末現在、1市町村1局実施)。
7、廃棄物の不法投棄の見回り
集配の際などに地方公共団体が指定した場所に廃棄物の不法投棄がないか定期的に見回り、発見した場合は地方公共団体に報告書を提出する(2006年3月末現在、7市町村20局実施)。
これらの内容は地域の実情を踏まえて郵便局と自治体が協議し決定するため、自治体によって内容は異なる。
更にこれらは郵便局と自治体の両者間の契約という形で行われるが、契約には有料契約と無料契約があり、例えば「7、廃棄物の不法投棄の見回り」の場合、無料契約ならば集配途中に異常を発見した場合のみ自治体に報告する程度で良いが、有料契約ならば集配物の有無に関わらず指定された地域を必ず見回り、異常の有無に関わらず報告しなければならない、などの義務的要素が含まれる。財政状況もあり無料契約には前向きだが有料契約は避ける自治体が多い(日本郵政公社HP参照)。