第3章第1節第1項 ひまわりサービスの誕生と郵政省による取り組み
ひまわりサービスは1995年鳥取県智頭(ちづ)郵便局が町と連携して始めた「ひまわりシステム(独居老人宅訪問事業)」が基となっている。
郵便局が町役場、病院、農協等の協力を得て高齢者世帯を対象とするこの福祉サービスは、公務員法に抵触するなどの反対の中、縦割り行政を横断する新しい試みとして1995年4月に誕生した。最初は智頭町のうち、富沢地区に一人で暮らす高齢者12人を対象にスタートしたが、1996年4月以降はホームヘルパーとの相談の上、対象を町全体に広げて実施した。
智頭町の取り組み内容は、高齢者への声掛け・安否確認、生活用品等の受注・配達等、現行のひまわりサービス内容とさほど代わりは無い。薬事法・医師法に触れるとして現在は行われていないが、病院からの薬の配達も行われていた。
「ひまわり」にはいくつかの意味が込められている。外務職員が仕事ついでに毎日のように回る「日回り」、また植物の「ヒマワリ」は成長段階で太陽に沿って動いたり、花そのものが太陽になぞられたりするなど、明るさと温かさを表す。
外務職員のヒマワリのような温かい笑顔で、孤独になりがちな一人暮らしの高齢者の目に見えない暗い部分を照らしてあげようというこのシステムの本質は、件数よりも声掛けによって生まれる「心のケア」に目を向けていることにある。実際、生活用品等の受注・配達や薬の配達(現在は廃止)の依頼件数はさほど多くなく、今では安否確認が重要なウエイトを占めており、一人暮らしの高齢者からは「見守ってもらえて安心」「声を掛けてもらえるだけで嬉しい」と喜ばれている。一方、外務職員からも、サービス開始当初よりも「お年寄りの顔が明るくなった」との声も聞かれるようになっている。
郵政省(当時)はこの「ひまわりシステム」をモデル事業とした「ひまわりサービス」を全国の郵便局に紹介し、1997年8月から本格的にサービスを開始した。開始当時の実施自治体・局数は12市町村14局のみであったが、2000年3月には191市町村、2002年3月には200市町村300局を超えた。実施市町村は近年、減少に転じている(表1)が、これは「平成の大合併」で市町村数が減少したことによるものであると考えてよいだろう(鳥取県智頭町HP・日本海新聞・第154回国会参議院総務委員会議事録第22号)。
表1:略年表
1992頃 |
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「はてな運動」(長野県生坂郵便局他) |
1995 |
4月 |
「ひまわりシステム」開始(鳥取県智頭町) |
1997 |
6月10日 |
『郵便局ビジョン2010』 |
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8月 |
「ひまわりサービス」開始(郵政省:当時) |
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12市町村14郵便局 |
2000 |
3月末 |
191市町村 |
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4月1日 |
「過疎地域自立促進特別措置法」 |
2001 |
12月1日 |
「地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律」 |
2002 |
3月末 |
221市町村302郵便局 |
2003 |
3月末 |
216市町村 |
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4月1日 |
日本郵政公社発足 |
2004 |
3月末 |
210市町村 |
2005 |
10月 |
郵政民営化法成立・公布 |
2006 |
1月 |
日本郵政株式会社発足 |
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3月末 |
155市町村 |
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6月28日 |
「集配拠点等の外務営業拠点の再編計画」 |
2007 |
10月1日 |
郵政事業民営化 |
2017 |
10月1日まで |
最終的な民営化 |