第1章 問題関心
2003年4月1日、日本郵政公社が発足した。2005年10月21日に公布された郵政民営化関連法律に基づき、2007年10月1日に日本郵政公社を民営・分社化、移行期を経て2017年の最終的な民営化実現を目指す。
国営から民営に移行することで、民間企業的な経営手法の導入による効率的な経営、企業間競争によるサービスの向上が望まれている。更には約340兆円の郵貯・簡保の資金が民間向け資金として有効活用されることで経済が活性化し、今まで免除されていた法人税や法人事業税、固定資産税の免除がなくなり、約26万人の常勤職員が民間人になることで国や地方の財政再建が期待される。
その反面、営利追求が加速し、全国に展開された約24,600局の郵便ネットワークが整理・統廃合され、過疎地域にある郵便局の撤退や採算の合わないサービスの切り捨てなど、社会に浸透した組織だけに民営化に対する不安も多い。特に過疎地域において無料で行われている、高齢者を対象とした福祉サービス「ひまわりサービス」は、人員的・時間的コストの面からも廃止・縮小が検討されることは避けられないとの見方が強い。事実、多くの地域で郵便局の業務縮小が図られており、不安は現実となりつつある。
郵便局の行っている福祉サービスにはどのようなものがあり、どのように行われ、どのような役割を果たしているのか。実際に福祉サービスを行っている郵便局長へのインタビューを通じてその実態と有意性を明らかにし、郵政民営化に伴う議論の一端の考察を試みる。