第2項 3つの類型

 

 英語は女性の考え方、生き方にまで影響を及ぼしているということが分かった。女性にとっても英語を学ぶことは、確かに「英語が話せるようになりたい」という欲求を満たすだけのものであるかもしれないが、仮にそれだけのものだとして、なぜこれほどまでに女性に英会話学校が消費されているのだろうか。英会話学校に通う割合が男性よりも多いのもやはり、女性にとってそれだけ英語が意識されているということであり、それが英語習得の他に、何か女性にとって特別な意味を持つものであるに違いない。

ある新聞記事の中に、英語勉強中の2030代女性300人を対象に英語を学ぶ目的についての調査結果が掲載されていた。女性が英語を学ぶ目的は、6割の女性が「旅行や映画を楽しむ」ためといった趣味の範囲で捉えており、「旅行や映画を楽しむ」ことはメディアが作り上げたイメージの消費を意味すると思われる。女性にとって旅行や映画は娯楽であり、自分の生活を楽しむために英語が学ばれている。

続いて「教養を高め内面を磨く」ためという女性が4割と、「旅行や映画を楽しむ」目的に継いで多いことが分かる。この「教養を高め内面を磨く」とあるが、この言葉には英語を学ぶことで“自分に自信をつけることができ、新たな自分の発見をする”という意味合いを含んでいるように思う。このような意味で、女性の新しい自分を探求する生き方が、英語を学ぶことの中に組み込まれていると考えられる。また、現在20代〜30代の女性の中には「超氷河期に就職し、本意でない会社で働く人も多い」ので、英会話学校に通うことで充実感を感じ、価値観が洗練されることで自分自身が内面から輝いているように感じているのではないかと考えられる。

また、「将来のキャリアアップ」と考えている女性が3割だったことに注目したい。多くの女性が趣味や自分らしさを求める旅という意味合いで英語を学ぶようになった一方で、キャリアアップを意識している女性も見受けられることが分かる。その他にも、「話せないとかっこわるい」が2.6割、「外国人の友人・恋人が欲しい」が2割、「現在の仕事で必要」な女性が1割いた。複数回答形式での調査であり調査対象人数が少ないということから、この調査結果から強く言えることは少ないが、大まかな傾向を読み取ることはできる。英語を習得して何がしたいのか、どんな夢を描いているのかは、やはり男性とは違って女性の方がより特徴的な傾向が見られると考えられる。

英会話学校はもはや「英語が話せるようになるため」だけに女性に消費されているのではないことがわかる。この新聞の中で東京のある英会話学校が紹介されており、「通学自体がおしゃれなライフスタイルにつながる場所を選んでいる」とまで言っている。講師は元DJやデザイナーなどによるもので、この英会話学校が提供しているものは英語を学ぶことを通してキャリアアップすることではなく、新しい考え方や価値観を学ぶなどの自己啓発の場として利用されている。この英会話学校では「英語を学ぶこと=価値観が洗練される=おしゃれ」だという構図が描かれており、通う人たちの目的意識の中で「話せるようになる+α」のαの部分がより際立っているような印象を受けた。ここでいう「+α」の部分に、まさに現代女性が英語をどのように捉えているかの一つの側面が見えてくる。

それでは、英語を学ぶことが彼女たちの生き方や選択されるライフコースにどのように影響しているのか。英語と女性、あるいは海外留学と女性との関係について津田(1993)の3種類に類型化された現代の日本女性を参考にしてまとめる。