第3章 生涯学習参加者の調査

第1節 富山県民生涯学習カレッジ概要

 

 ここでは、私が調査に行った富山県民生涯学習カレッジについて紹介する。

 富山県民生涯学習カレッジ(以下「県民カレッジ」)とは、富山・高岡・新川・砺波の4つの地区に置かれている生涯学習施設である。富山(県教育文化会館)が本部となっており、各地区で様々な講座が開設されている。

 

県民カレッジの行っている事業は以下の通りである。

・生涯学習の情報提供…学習情報の提供

             講師の紹介・派遣

              生涯学習相談

・多彩な学習機会の提供…夏季講座 

            テレビ放送講座

            映像センター講座など

・学習に映像を生かす…郷土映像教材の制作

           映像ソフト及び上映関連機器の貸出

・学習交流や成果の発表を支援…生涯学習活動の奨励・支援

・生涯学習に関する調査研究

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 学習機会について、午後5時以降ものは約3割、土日実施のものが13%、平日の午前か午後のものが約6割と昼間働く男女には参加が困難である現実がある(佐藤:1995 207)が、県民カレッジは平日に限らず、土曜・日曜にも講座が開設されている。夜に開設されている講座もあり、仕事を持った人にも学習機会が設けられているのが魅力的である。

 

 また、多様な学習機会が設けられている。主な学習機会については以下の通りである。

なお、県民カレッジには大きく分けて、主催講座と連携講座があるが、今回は主催講座について簡単に紹介する。

県民カレッジ主催講座

一般講座

夏季講座

県外の著名な講師による講演会形式の大型集中講座

テレビ放送講座

テレビ放送番組の継続的視聴とスクーリング、講座テキストを通して郷土の自然や文化について学習

教養講座

 富山・高岡・新川・砺波の地区センターでも実施されている

学校開放講座 

専門講座

・人間探求講座

自遊塾

自己推薦のボランティア講師を中心に受講者と自主運営で展開

特別講座(科目履修)

「志貴野高校」「新川みどり野高校」「となみ野高校」の授業は、社会人も履修可能で、社会人が興味を持てる講座を「特別講座」として開設

 

◎県民カレッジの主な沿革

昭和43年度

精神開発室(創設)

昭和49年度

振興課(機構改革により、精神開発室を廃止)

県民大学校 夏期大学を開始

昭和51年度

生涯教育班(機構改革により、振興課を廃止)

昭和56年度

生涯教育室(生涯教育班を昇格)

生涯学習センター(生涯学習の中枢として創設)

昭和63年度

生涯学習室(生涯教育室と社会教育課を統合

県民カレッジ(生涯学習センターを廃止)

富山県民生涯学習カレッジ開学(10月)

放送講座、専門講座開始

平成元年度

第一回県民カレッジフェスティバル開催

平成2年度

県生涯学習情報提供ネットワークシステム(とやま学遊ネット)開通

平成5年度

映像センター及び学習サロンを新設

平成7年度

県民カレッジ自遊塾開始

平成8年度

夏季講座新川会場実施 

「とやま学遊ネット」の一般開放と24時間稼動開始    

平成9年度

夏季講座砺波会場実施

平成11年度

映像センター課内に「富山県映像センター」設立

平成12年度

新川地区センターと砺波地区センターを開設

平成13年度

新川地区センターと砺波地区センター事業の開始

平成16年度

高岡地区センター事業の開始

 

◎受講者数

 県民カレッジには多彩な学習機会が設けられているが、一体どのくらいの人が講座に参加しているのだろうか。今回私が見学した自遊塾の受講者数や男女比、年齢層を紹介する。

 全講座の定員1434人に対し、男性339名、女性790名の計1129名が何らかの講座に参加している。男女比はと言うと、男性:女性=3:7の割合である。また、年齢層では、60代が343人と最も多く、次いで50代の324人となっている。

 

以下にグラフを示す。(グラフ1,2)

 

 

 

◎単位認定

 県民カレッジの講座は、「1時間1単位」となっている。各講座で取得された単位数の累計が50単位を超えると、毎年10月に行われる「県民カレッジ学遊祭」で、認定証をもらうことができる。その後、100単位刻みで表彰される。

 また、1000単位を超えると以下のような称号が贈られる。

1000単位取得者 「県民カレッジアドバイザー」(平成15年度認定者4名)

2000単位取得者 「県民カレッジマスター」(平成15年度認定者2名)

3000単位取得者 「県民カレッジドクター」(平成15年度認定者2名)

 

 

◎県民カレッジカード

 生涯学習の記録帳である「県民カレッジカード」というものがある。パスポート程度のサイズで、県民カレッジでの学習記録などを記入したり、講座修了時にもらえる修了シールを貼る欄もある。発行は無料で、平成16年4月1日現在37,631名が利用している。

 

◎自遊塾について

 私が今回見学した講座は、「自遊塾」というものに属する。自遊塾とは、多彩な講座をボランティアの県民教授を中心に、受講者と自主運営で展開するものである。

講座にはaタイプbタイプ、2つのタイプがあり、両タイプを通して2講座まで受講が可能。aタイプ講座は自遊塾運営費2,000円、bタイプ講座は同じく自遊塾運営費500円が必要。その他、必要な経費は講座によって多少ばらつきがあるが、お稽古事のようにどこかに習いにいくことを考えれば、そんなに高くはない金額と言えよう。

 また、講座実施回数の7割以上の出席で修了証が発行され、決められた単位が認定される。

 

 ここで簡単にaタイプとbタイプの違いについて説明しておく。

 

aタイプとbタイプの違い

 aタイプはボランティアである県民教授の経験が浅い人の講座。ボランティア育成支援の観点から、県民カレッジ(以下カレッジ)からの支援が大きくなる。運営にかかる費用をカレッジが受講者から直接徴収し、必要な経費に充てることになっている。

 bタイプは教授経験のある人が開く講座で、自主的運営の度合いが大きい。運営費である500円を県民教授が受講者から徴収し、カレッジに納入する。その他の運営にかかる費用は受講者と県民教授が負担する。材料費。保険代等の実費は県民教授が別途徴収する。bタイプでは卒業生が別にサークル化して活発に活動している講座もある。カレッジ側としては、そのような講座は自遊塾から卒業して育っていったり、県民教授が地域などで活動の場を広げていけるような支援をしていければと考えているという。