第1章 問題関心

 

 「生涯学習」、この言葉から連想するものは何だろうか。ちょっとしたスポーツを行うこと、好きなことを勉強すること、地域の生涯学習施設で講座に参加すること…。「生涯学習」という言葉の解釈の仕方は人それぞれだと思われる。解釈の仕方が人それぞれだからこそ、「生涯学習」の実態はつかみにくく、私たちの中に何となくぼやけたイメージを与えてしまっているのではないだろうか。『世論調査』(2000)によると、「『生涯学習』という言葉を聞いたことがある」という人は74,0%だが、「この1年で生涯学習をした」という人は44,8%にまで下がるという現実がある。もしかすると、私たちにとって、「生涯学習」は近いようで遠い言葉なのかもしれない。

 生涯学習の目的として、しばし、「自己実現」「自分さがし」「自分の人生を豊かにするため」という言葉が出てくる。また、西村は「個が善く生きるための生涯学習」において次のように述べている。

 

「生涯学習やボランティア活動などの自己決定活動によって「本当の自分」を見つけようとする人が増えている。彼らにとっては、それらの活動は「自分さがし」の一環である。そこでは、仕事をしているときの自分、主婦業をしているときの自分とは異なる自分を見つけることができると考えられる。」

 

果たして、学習者たちにはこのような論述があてはまるのだろうか。一体どのようなことが「自分さがし」となり、どのようなことが「本当の自分」を見つけるということなのだろうか。「自分さがし」という言葉にこだわり、学習者の自分さがし像を探っていきたいと思う。

 「生涯学習社会」と言われる現代において、自主的に学習に取り組んでいる人は、「生涯学習」という言葉にどのようなイメージを抱いているのだろうか。「生涯学習」と学習者の姿にずれがあるのではないだろうか。また、そもそも「学習している」なんて思っているのだろうか。本調査では、生涯学習施設、富山県民生涯学習カレッジの講座参加者の姿を通して、「講座参加のきっかけ」「講座に参加して変わったことはあるか」等の素朴な疑問から、学習者にとっての「生涯学習」は何なのか、また、講座に参加することで彼らは何を求めているのかを考えていく。

 なお、第2章では「生涯学習」と一口に言っても幅広いので、私が興味を関心を抱いている、生涯学習のイメージといった部分や、生涯学習活動参加者に関する気になる記述を抽出し、後の分析で触れていく。第3章では、調査を行った富山県民生涯学習カレッジを紹介し、講座参加者のインタビュー調査をまとめた。第4章はインタビュイーの発言を細かく追い、インタビュイーそれぞれの生涯学習に対するイメージ、感じ方・考え方を浮き彫りにし、まとめにつなげるという形をとった。