資料4:論点別データ

注.各データの末に、<論者名,出版年(論者の保持資格)テキスト ボックス: 背景論理、担当領域の差異の指摘>を記載。

 

 

1「学校心理士という資格は、心理教育的援助サービスの経験と能力の豊かな教師と、教育センターの相談員やスクールカウンセラーなどの経験を通して学校教育に関する知識と技能を獲得しているカウンセラーの双方が取得できるところに特徴がある。」<石隈,1997:149(学校心理士)>

 

「我々(学校心理士認定委員会)は、学校心理士は学校心理学の知識と技能を基礎にして、学校教育にかかわる真理・教育的問題に関して、直接的に、あるいは間接的に、その解決に携わる心理学の専門家と考える。」<松浦,1998: 35(学校心理士)>

 

教育心理学にかかわるものは、少なくともある程度は、教育現場を知り、教育現場から湧き上がってくるものを知り、それから、人の心の動きや人間相互の心の通い方をよく知る必要があると考えられる。」<塩見,1998: 33(学校心理士)>

 

「学校教育相談はまた、アメリカのスクールカウンセリングと同じく、学校教育に全体的かつ包括的に関わるものであって、たとえば、単に臨床心理的なもの(中核にすらならない)ではない。」<大野,1998: 34(学校心理士)>

 

「校内にしっかりと位置づき、学校組織の一部として機能することが重要であり、特定の不適応の子供の治療や援助だけを目的とするカウンセラーとは区別したい。」<橋本,2000: 38(学校心理士)>

 

「日本学校教育相談学会では、学会において認定している「学校カウンセラー」を臨床心理士と同じようにスクールカウンセラーとして外部からの援助を行えるよう再三再四、文部科学省に陳情してきた。陳情の理由は、学校というフィールドが正常な児童生徒多数を含む場所であり、臨床心理学的アプローチとともにカウンセリング的アプローチもまた必要であるというところにある。」<日野,2001:42-43(学校カウンセラー)>

 

「教師を支えるとともに校内の生徒指導・学校教育相談機能を充実させることが不可欠となる。そして、その役割を担うものは、わが国で唯一、「学校教育相談」を研究している学術団体である日本学校教育相談学会の認定した「学校カウンセラー」であると信ずるからこそ、彼らをスクールカウンセラーとして学校で活躍させるべきだと考えたのである。臨床心理士の専門性を認めないわけではないが、過渡期である現在、さまざまな可能性を探るべきであろう。」<日野,2001: 43(学校カウンセラー)>

 

「臨床心理士さんたちは、大学院で精神疾患を持った患者さんへのカウンセリングを訓練されてきた。つまり、中立性を保てとかクライエントの鏡になれっていうことを叩き込まれているのね。それから、もっといえば、彼らの背景理論になっているのは精神病理学。で、だから彼ら、臨床心理士って言っていて、学校にくるとなんで急にスクールカウンセラーって言うの?そこがやなの。臨床心理士のまま入ってこればいいでしょって。で、変えなきゃいけない理由っていうか後ろめたさがあるの?って思っちゃうのね。で、それに対して、学校心理士とか教育カウンセラーってのは背景理論がやっぱり教育学なんですよ。哲学とか社会学だとか。」<B先生(学校心理士・教育カウンセラー)>

 

「あなたたち(臨床心理士)の働き場所は、病院とか福祉系であるはずだ。」<B先生(学校心理士・教育カウンセラー)>

テキスト ボックス: 待遇について

 

10文部科学省では、スクールカウンセラーに該当する条件として、(1)(財)日本臨床心理士資格認定協会の認定する「臨床心理士」、(2)精神科医、(2)臨床心理を専門とする大学教員等に限定してきました。最近、スクールカウンセラーが圧倒的に不足していることから、「スクールカウンセラーに準ずる者」として制限が緩和されていますが、これは@上記スクールカウンセラーが十分活用できない場合の経過措置であること、A人数比率に制約があること、B時給の上限が低く設定されていること、などの不利な条件に押さえられています。資格として「臨床心理士」のみに限定していることの根拠が明らかでないまま、このような措置がとられていることは、他の資格取得者の雇用を制約し、かつ多様なニーズをもつ学校現場にとっても、十分な心理教育的援助が行えないという状況を生み出しています。<要望書2002「現状と問題点」>

 

11「臨床心理士」以外のスクールカウンセラー関連資格者に対しても、「それぞれの資格の認定条件」および「その個人の実務経験と研修暦」を勘案して、基準を満たしていると教育委員会が判断した場合には、「臨床心理士」と対等の条件で雇用できるようにしていただきたいこと。<要望書2002「要望事項」>

 

12「大学の教員もしくは臨床心理士だと、時給6000円なのね。今んところね、富山県は臨床心理士か大学の教員なの。つまり、教育カウンセラーや学校心理士の資格をもってるだけの人がスクールカウンセラーにっていうときは、たぶんね4000円か5000円なんじゃないかな。臨床心理士と格差があるなって思った、たしか。その資格もなくて、実はうちの大学院の子なんかも心の相談員でどんどん出してるんだけど、彼らは時給3000円なのかな。」<B先生(学校心理士・教育カウンセラー)>

テキスト ボックス: 養成・資格認定の必要性

 

◇臨床心理士

13これまでは、それを民間団体のお花の免許みたいなもので振り替えてきたんですよね。それで満足してきたんですよね。しかしそれだけではだめで、大学における養成過程をきちんと作ったり、法律をつくったりして、国家資格にしないといけないと思います。そうしないと社会的に認知されない」<村山,1998: 14(臨床心理士)>

 

14「今はたくさんの資格をつくる時代ではないと思います。医師の場合、医師免許があれば内科でも外科でもなんでもやれますよね。そのように心理でも基礎資格を一つつくるのがいいと思います。そしてそれを取ってから教育相談の専門化とか病理臨床の専門化とかになっていくといいんじゃないかな。現在心理学関係のいろいろなところがさまざまな資格を作るようなことをやっていますが、それはまずいんじゃないかな。そうやるとお互いに足を引っ張り合うことになったりするかもしれないし、国家資格かに向けて動くとき、分断化される恐れがあります。」<村山,1998: 15(臨床心理士)>

 

◇学校心理士

15 不信感を粉砕し専門性を認知してもらうために学校心理士の養成機関・養成講座の充実が求められます。<横島,2000: 38(学校心理士)>

テキスト ボックス: スクールカウンセラー像

 

◇臨床心理士:学校との一定の距離、専門性を主張

16 一般にSCの機能として、カウンセリングのような直接的援助と、コンサルテーションや学校システムへの介入などの間接的援助が考えられる。いずれの援助を行う場合も、当然のことながらSCには援助者としての中立性が要求される。<本間,1999: 243(臨床心理士)>

 

17 学校システムとの適度な距離がとれることが、「外部の専門家」として派遣される大きな理由のひとつである。<本間,1999: 243(臨床心理士)>

 

18 一定の距離をとりながら中立性を維持しその一方で教師との信頼関係を形成し学校システムに働きかけていくという、やや矛盾する機能を担わねばならないところに学校カウンセリング特有の困難が存在するのである。<本間,1999: 243 (臨床心理士)>

 

19児童生徒に直接援助するよりは、先生方へのコンサルテーションを大事にしよう、ということを提案しました。それには2つの理由があります。1つは大学の相談室とかクリニックで自分の責任で相談をやっているのと違って、学校に入っていくということは、学校の校長先生の責任のもとで仕事をするということです。したがいまして、先生方の生徒指導、あるいは面接、そういったことについてお互いに専門家として一緒に考えるというコンサルテーションという仕事が大事だと考えたからです。<村山,1998: 67(臨床心理士)>

 

◇学校心理士:学校や教員に近い存在であること、他との協力を主張

教育心理学にかかわるものは、少なくともある程度は、教育現場を知り、教育現場から湧き上がってくるものを知り、それから、人の心の動きや人間相互の心の通い方をよく知る必要があると考えられる。

<塩見,1998: 33(学校心理士)>

 

学校教育相談はまた、アメリカのスクールカウンセリングと同じく、学校教育に全体的かつ包括的に関わるものであって、たとえば、単に臨床心理的なもの(中核にすらならない)ではない。<大野,1998: 34(学校心理士)>

 

校内にしっかりと位置づき、学校組織の一部として機能することが重要であり、特定の不適応の子供の治療や援助だけを目的とするカウンセラーとは区別したい。<橋本,2000: 38(学校心理士)>

 

教師を支えるとともに校内の生徒指導・学校教育相談機能を充実させることが不可欠となる。そして、その役割を担うものは、わが国で唯一、「学校教育相談」を研究している学術団体である日本学校教育相談学会の認定した「学校カウンセラー」であると信ずるからこそ、彼らをスクールカウンセラーとして学校で活躍させるべきだと考えたのである。<日野,2001: 43(学校カウンセラー)>

 

20学校では専門くささには拒否的である。だからまず、教師の学校心理士が大学・専門機関の学校心理士と連携するしかない。ただ、石隈利紀氏が言うように、この次の段階には、教師でないが、学校心理学を専門に研究してきた学校心理士が学校に入ってくることも考えられる。こうなれば、学校の中で教師と学校心理学専門家の協働が可能になるからである。<大野,1998: 35(学校心理士)>

 

21 教育カウンセラーとは「教育とカウンセリングの両分野になじみのある教育の専門家」のことである。カウンセリングについてはなじみはあるが、教育については門外漢、教育についてはなじみがあるがカウンセリングについては門外漢、こういう門外漢の限界を乗り越えるには「教育者だからこそできるカウンセリング」を普及定着させることである。この志を実現しているのが「日本教育カウンセラー協会」である。<國分,1997: 144(教育カウンセラー)>

 

22学校心理士は万能でないことを自覚する必要がある。問題により、他の人々や機関と協力する能力と努力が必要になる。<岸,1998: 32(学校心理士)>

 

23どのような問題や援助ニーズに対して、誰が、どこまで援助するかの問題を避けては通れない。<小野,1998: 35(学校心理士)>

 

24教育と心理の両者が統合的に柔軟に機能する学校カウンセリング、学校心理学が望まれ、それを実践していくのが学校心理士の重要な役割と考える。そうして当然、学校心理士が何もかもやるのではなく、学校心理士である自分には何ができて、何ができないかをしっかり見極め、しっかりと学校の中に根づき、他領域の専門家たちとの連携協力は欠かせないということである。<橋本,2000: 38(学校心理士)>

 

25今後スクールカウンセラー制度の拡充が進むなかで、学校心理士は他の資格を持つ人たちとチームを組んで学校教育の中での心理教育援助を進めていくというのが大切な図式でしょう。<塩見,2002: 143(学校心理士)>

テキスト ボックス: 資格取得レベルについて

 

◇臨床心理士

26「例年合格率は約70%である。カウンセラーの専門的資質をユーザーのために最小限保障しようとする資格認定制度は、興味と熱意だけでは、なかなか超えられない厳しさがある。」<大塚,2001: 14(臨床心理士)>

 

◇学校心理士

27「学校心理士」では専修免許状に「学校心理学」を付与するためのカリキュラムの条件が定められているが、臨床心理士を要請する指定校ほど厳しいものを要求していない。<岡田,2001: 271(臨床心理士)>

 

◇教育カウンセラー

28落とす試験ではなく育てる試験をモットーにしているので、合否通知状には一人一人に今後の課題を記している。」<國分,1997: 145(教育カウンセラー)