第一章   問題関心

 

 消費社会といわれる現代では、様々なものが人々の欲望の対象となり商品として消費されている。人間の身体も欲望の対象となりうる。スポーツにおいては、メディアに登場するスポーツ選手、スポーツヒーローの身体や生活が消費者の欲望の対象として商品化され、メディアはそれらのイメージを共有されるものとして、一定のイメージを形成している。メディアでのスポーツとは消費者の欲望の対象であり、文化的消費として消費者の価値観を形成していく手段だといえる。

 三年次に行なった調査ではオリンピックに向けての一大スポーツイベント(2003年ワールドカップバレーボール大会)を取り上げ、テレビで放送する試合や関連番組をデータとして分析し、そのイベント内で日本チームや各選手のイメージが物語の構成要素として視聴者に提供されていることについての考察を試みた。

 今回の調査では、直接スポーツ自体とは関係のない商品や情報のCMにもスポーツ選手が起用されている点に注目し、それはテレビタレントを起用することに比べてどんなメリットがあるのかを明らかにしていきたい。そして、そこからスポーツイメージが読み取れるのではないかと考えた。メディアが提供しているものは、現代の社会や時代の欲求が少なからず反映されたものである。スポーツは人々の希望やさまざまな欲求の対象となる文化であり、消費が経済的行動ではなく文化的行動となっている現代において、スポーツは情報として消費されるものであるといえる。情報としてのスポーツは、メディアを介した消費の対象である。

 企業や商品のイメージ付けになるであろう広告・CMは、どんな手法であろうと、現代の消費者(企業も含む)が求めている欲望に基づいて作られることになる。また、スポーツヒーローとは、その時代に合わせて存在し続けていくものだと思われる。メディアでのスポーツとはスポーツ選手のイメージも含めて、消費者の欲望の対象であり、文化的消費として消費者の価値観を形成していく手段だといえる。メディアが人々の求める価値観を提供しているのなら、その価値観を読み取ることでスポーツという文化が形成されていく過程をみることができるのではないか。CMとはテレビというメディアを通して絶えず得ることのできる、選択不可能な情報である。だからこそ現代社会に、より受け入れられやすい価値観を構築している媒体であるといえる。

 そこで、現代の消費者が求めているスポーツヒーロー、またはスポーツの価値観とはどのようなものなのか、そのイメージが間接的に反映されているであろうテレビCMから読み取りたいと考えている。