第2章
インタビュー調査
――「できちゃった結婚」を選択したカップル達――
第1節
調査概要
1章で述べたとおり、「できちゃった結婚」は20年で倍増し、いまや4人に1人の割合である。また、「できちゃった結婚」に対して、社会はアンビバレントな反応を示しているが、全体としては寛容になってきていることが分かった。では、実際に「できちゃった結婚」というライフコースを選んだカップルは、一体どのような結婚観、家族観、性意識のもとで、また、どのような体験を経て「できちゃった結婚」を選択したのだろうか。
ここでは実際に「できちゃった結婚」をした6組の夫婦(うち2組が夫もインタビューに参加。残り4組は妻のみ参加)にインタビューという形式で、彼らの本音に迫った。
【インタビュー内容】
1、客観的事実
年齢、仕事、学校、交際歴、結婚して何年か、子供の年齢。兄弟の有無、家族との関係(例:1人暮らしなど)
2、結婚までの経緯
・妊娠が分かった時のお互いの気持ち(すぐに結婚を決断したのか、他の選択肢は考えなかったのか…など)
・家族への報告(いつ、だれに、どのように)
・家族の反応(父母、祖父母、親戚、近所…それぞれの反応に違いはあったか、世代間の違いはあったか、世間体を気にしているような面はあったか)
3、結婚観
・自分たちはできちゃった結婚であるという事に世間体を気にしたか、できちゃった結婚と呼ばれることについてどう思うか、できちゃった結婚自体をどう考えるか
・世代の差によるできちゃった結婚に対する価値観の違いを感じたか
・結婚に対して抱いていたイメージと現在のイメージ
・結婚願望はあったか、それは何かの影響を受けてたのか
・専業主婦願望はあったか、それは何かの影響を受けたのか
・社会人…仕事に対する意識、学生…学校、仕事に対する意識
・仕事、学校との葛藤はなかったか
・もともと子供が欲しかったか、欲しくなかったか
・親になるということに対しての不安などはあったか、実際なってみてどうか
・同棲と結婚の違い
4、影響
・芸能人の結婚に興味はあるか、またはよく知っているか
・芸能人の影響を受けたか、芸能人の影響は大きいと思うか、自分の結婚の際に考えたか
・芸能人の影響の他に影響を受けたものはあるか(雑誌、友達、テレビなど)
5、性意識
・避妊の実行の有無、避妊に対する意識
【インタビュイー一覧】
インタビュイーは6組であり、私の友人夫婦が1組、その他5組は知人による紹介であり、全て個人的なコネクションによるものだ。インタビューは2003年10月5日から2003年11月22日にかけて行われた。6組のインタビュイーそれぞれが日時と場所を指定し、私がそこへ出向くという形で行われた調査である。インタビュー場所は3組がインタビュイーの自宅、2組がインタビュイーの自宅付近の飲食店、1組が病院である。
妻 A。21歳。元学生。現在Sの実家の自営業を手伝う。長女(弟2人と妹1人)。
夫 S。25歳。大工。長男(姉1人)。
交際当時Aは県外の大学に通っていたため1人暮らし。Sは実家。
交際歴は約4ヶ月半。結婚約2年。子供1歳5ヶ月。(2003年10月5日現在)
現在Sの実家近くにアパートを借りて子供と3人暮らし。
インタビュイー・・Aのみ
インタビュー場所・・A宅
妻 B。21歳。元フリーター。現在パート。長女。(弟1人)
夫 T。20歳。鉄筋工。次男(兄1人)
結婚前から同棲。
交際歴は約半年。結婚生活1年4ヶ月。子供9ヶ月。(2003年10月10日現在)
インタビュイー・・B、T
インタビュー場所・・B宅
妻 C。22歳。元フリーター。現在専業主婦。長女(弟1人)
夫 K。23歳。板金塗装。次男(兄1人)
交際歴約4年、結婚6ヶ月、妊娠6ヶ月。(2003年10月20日現在)
現在、同棲していたころから住んでいた一軒家(Kの父が所有していたもの)に暮らす。
インタビュイー・・C
インタビュー場所・・飲食店
妻 D。28歳。元美容師。現在専業主婦。長女(弟2人、妹1人)
夫 J。29歳。会社員。長男(弟1人)
交際当時、JはDの実家のある横須賀に出張に来ていて1人暮らし。Dは実家暮らし。
交際歴は半年で、2004年3月で結婚3年目。子供1歳。(最初の妊娠は流産したため)(2003年10月21日現在)
インタビュイー・・D、P、Q(P、Qは同席していたDの友達。D、P、Qの子供も同席。なお、P、Qは「できちゃった結婚」ではない)
インタビュー場所・・飲食店
妻 E。22歳。長女(兄1人)。元フリーター。現在パート。
夫 O。22歳。建設業。次男(兄1人、妹1人)。
交際暦半年。2004年2月で結婚2年目。子供は1歳1ヶ月(2003年11月17日現在)
結婚する前はお互い実家暮らし。
インタビュイー・・E、O
インタビュー場所・・E宅
妻 F。28歳。正社員(学校を卒業してから現在まで同じ会社で正社員として働いている)。長女(妹2人)
夫 V。30歳。建築業。次男(兄1人、姉1人)
結婚前はお互い実家暮らし。
交際暦は4年。子供は現在2人(4歳と1歳)。3人目を妊娠8ヶ月。(2003年11月22日現在)
インタビュイー・・F、Fの妹
インタビュー場所・・病院(子供が入院中のため)
*なお、インタビューは長いもので約2時間、短いもので約30分程度であった。6組ともMDにての録音を承諾してくれた。次の2節から7節は、A〜Fそれぞれのトランスクリプトをもとに、興味深い部分をトピック別にまとめたものである。
第2節 Aさん
妻 A。21歳。元学生。現在Sの実家の自営業を手伝う。長女(弟2人と妹1人)。
夫 S。25歳。大工。長男(姉1人)。
Aは県外の大学に通っていたため1人暮らし。Sは実家。
交際歴は約4ヶ月半。結婚約2年。子供1歳5ヶ月。(2003年10月5日現在)
現在Sの実家近くにある親戚が管理しているアパートの1室を安めに借りて子供と3人暮らし。
インタビュイー・・A
子供ができたら結婚してもいい
Aは昔から保母さんになりたいくらい子供が大好きで、もともと若いうちに結婚したかった。Sも子供ができる前からAに学校を辞めて結婚しろと言っていたので、妊娠が発覚したときはお互いすぐに結婚と決めた。「も、いっかって感じで(子供)作っとったからね」とAが言ったようにお互い別に子供ができたら結婚してもいいと思っていたので、妊娠を報告した時もSは驚いたが、Aは「やっぱりできたんだ〜」と思った。Sは自分が養っていけるかというマリッジブルーのようなものになったという。
また、後日、追加質問でなぜ子供を「も、いっかって感じで」作っていたのかということを聞くと、そのころは「若かったからかも」しれないがSのことを「頼りになる人だわー」「Sとならやっていける」と思ったかららしい。しかし、大学を出たら子供を作らなくても結婚しようと思っていたとAは語る。
学校、将来の夢との葛藤
Aは当時4年制の大学に通っていて休学したが、やはり子育てをしてみて、薄々覚悟はしていたけれど、周りの協力がないと無理だと気づき先日学校を退学。保母さんになろうと思っていたけど、「(今も)保母さんみたいなもんだから。」と笑う。
もし保母さんになっていたら結婚しても仕事は続けていたか?と聞くと、やったことがないからやってみないとわからないが、本当にやってみてその仕事が好きになっていたら子供が産まれても辞めないと思うし、また、経済状況にもよると言う。しかし保育園で保母さんを見るとやっぱりこういう仕事をしたかったとうらやましくもなる。
就職活動をしなくてよかったと思うかと聞くと、逆に社会というものを全く知らないまま結婚したからAは逆にしてみたかったという。
家族への報告、家族の反応、近所の反応
Aの父親にはやっていけないからおろせと言われたが、Sと2人でいずれAが大学を卒業したら結婚するつもりだったと説得しに行って納得してもらった。Aの母親はAが子供を欲しがっているのを知っていたので「だから言ったやろ!」と「暴れた」けれど反対はしなかった。Sが説得したのか分からないらしいがSの親からは何も言われなかった。
親戚の前でもできちゃった結婚ということには何の抵抗もなかったし世間体も何も気にしなかった。「(抵抗は)無かったし・・。どっちかっていうと子供欲しくて結婚したって感じやったからね。」とAは言う。結婚式でもスピーチでもオープンに子供のことを言っていた。Aは直接他人からできちゃった結婚だったことについて言われたことは無いのだが、自分はできちゃった結婚じゃないなどの主張はあるかと聞いてみると、「できちゃったもん産むしかなかろう。」と、あっさり答え、そんなことにこだわっている場合じゃないという雰囲気だった。
しかし、近所の人に「ざまーみろ、ほれみたことか」というようなことを言われた親が落ち込んでいたという時期もあった。親戚では母方の祖母だけが泣いて怒り、Aの母親に「おまえの育て方が悪い」と厳しく怒り、学校を辞めたときもものすごく怒った。しかし、最終的には応援をしてくれている。
強い専業主婦願望
Aは、大好きな子供の世話だけをして好きなことをしている母親の背中を見ていたため、「なんっちゅー!楽な人け!!」と思い、ものすごく専業主婦に憧れていた。小学校のアルバムにも将来の夢は「お嫁さん」と書いていたくらい、昔から結婚に憧れがあり、早く結婚したかった。
友達の影響
芸能人の影響は大きいと思うらしいが、Aは友達が1人できちゃった結婚した時に「欲しい!」と思ったという。芸能人というより周りの友達に流されたとAは振り返る。
同棲していたら別れていた
Aに同棲と結婚は違うかと聞くと、「すぐやめれるか、やめれんか」という大きな違いがあると即答した。一緒に生活していたら相手の嫌な部分も見えてくるものだが、結婚していたら子供が第一だからすぐに別れることなどできず、夫婦で話し合って解決していかなければいけないとAは言う。「同棲してたら別れとった」とAとSはお互い話している。
第3節 Bさん
妻 B。21歳。フリーター。現在もアルバイト中。長女。(弟1人)
夫 T。20歳。鉄筋工。次男(兄1人)
交際歴は約半年。結婚前から同棲。結婚生活1年4ヶ月。子供9ヶ月。(2003年10月10日現在)
インタビュイー・・B、T
10代で結婚したい
Bはとにかく若いうち、10代で結婚がしたかった。「20代で結婚するのと響きが違う。なんとなくよくない?」とBは言う。子供が欲しいわけでなく、とりあえず10代で結婚がしたかったのだが、先に子供ができてしまったとBは笑う。また、Bは結婚したい理由を好きな人とずっと一緒に生活できるからだという。
子供が欲しい
Tは子供が大好きで、10代後半のころからとても子供が欲しくなった。理由は無いのだが、ただ単にかわいいと思ったからだという。
お互い初めて結婚したいと思った相手
BもTもかつては特に結婚願望は無かったのだが、BはTに、TはBに出会って初めて結婚したいと思った。Bは、ここまで結婚したいと思ったのはTが初めてだと話し、Tは「昔は、もう、遊んどったから」別に結婚など考えなかったという。
避妊
BもTも子供ができたらできたで結婚すればいいと思っていたので避妊をしなかった。どうでもいいわけではないが、子供ができたらできたでまあいいかと思っていたと述べ、お互い割と楽観的に考えていたようだ。
予定より早すぎた妊娠
Bは子供は欲しくなかったわけではなく、結婚もいずれはするつもりだったけれど、予定外に早く妊娠してしまい、お金も何の準備も無く大変だったと当時を語る。
しかし、Tは妊娠が分かった時「おおーーー!!!妊娠しとる!!!」と大喜びし、妊娠した時はBもTもお互い嬉しさの方が強く、不安は無かったという。Bは妊娠している時もどんな赤ちゃんが産まれてくるかという楽しみしか思い浮かばず不安など無かったが、2人の喧嘩が多い時はこれからやっていけるか不安になったという。Tは自分で「自信過剰」というくらいで、全て「なせば成る」という考えなので妻と同じく何の不安も無かった。
妊娠の報告、反応
Tは妊娠が分かった時、嬉しさを抑えきれず「妊娠したかもしれん!」と、すぐに自分の親に報告した。BとBの親はTの家に挨拶に行くと、その年にTの兄の結婚も決まっていたことから、Tの母親が少し金銭的な面で少し悩んだ。Tも親に本当に大丈夫か心配されたが説得し、親も最終的には妊娠してしまったものはしょうがないから頑張りなさいと考えになった。
また、BもTも自分の家を「楽な家」と表現し、できちゃった結婚だからと文句を言う人はいないという。Tの両親も19歳の頃にできちゃった結婚をしているので大丈夫だったのではないかとBは考える。しかし、Tの親が少し心配したのも、やはり自分達が若いときにできちゃった結婚をして苦労を知っているからではないかとBは言う。
また、BとTは昔「荒れていた」時期があったので親は「やっと楽できる」と思ったのではないかとBは笑う。Bの祖母は孫ができることを目を潤ませて喜んでくれたという。
できちゃった結婚と言われること
自分たちができちゃった結婚だと言われることについては、Bは「別になんとも思わん。そうやぁーって感じ。」Tは「それは別に無いかな。」と答えた。BもT最近はみんなできちゃった結婚の方が多く、妊娠しないとなかなか「普通に結婚」などしないし、妊娠しないのに結婚する方が不思議だと考えている。
Bは「いつそんな踏ん切りついてんろうって感じ。どういう…区切りで結婚って決まってんろうって思う。」と「普通の結婚」を不思議に思っている。
実際に結婚して
結婚して良かったことは、喧嘩した時やお金が無い時などは大変だが、いつも一緒にいられることがやっぱり幸せだとBは言う。想像と違ったのは金銭的にとても大変なことだという。Tは結婚して、前より一層会話も増え、家の中が明るくなったという。
結婚と同棲は違ったかと聞くと、BもTも同棲の延長で2人だけの頃と変わらなかったが、「子供できたら全然違う。」 と答え、Tは、「普通に結婚やったら普通に同棲の延長。」と述べている。子供ができると子供中心で、夜も昼もTは働いているため2人の時間など全く無く大変だが、楽しみのほうが多いと2人は幸せそうだ。
無駄な時間があったら働く
Bはできることなら専業主婦になりたいが、金銭的にも無理な上に、子供が産まれてからは少しでも貯金をするために無駄な時間があるのだったら働こうと思うらしい。Tは昼も働いて夜もバイトをして頑張っている。
影響
BもTも周りの友達や芸能人などメディアの影響を受けて結婚を考えたというわけではないようだ。Tの周りはTが若かったためまだ誰も結婚しておらず、Bの周りはたくさん結婚した人はいたが、ほとんどみんなが別居か離婚だという。そのようにうまくいかないのは結婚が早かったというのではなく絶対どちらかがしっかりしていなかったからで、両方がしっかりしなければ結婚はうまくいかないとTは考えている。
第4節 Cさん
妻 C。22歳。元フリーター。現在専業主婦。長女(弟1人)
夫 K。23歳。板金塗装。次男(兄1人)
交際歴約4年(お互い実家暮らしののち、同棲2年)、結婚6ヶ月、妊娠6ヶ月。(2003年10月20日現在)
インタビュイー・・C
半同棲 〜半分夫婦〜
CとKは、交際をはじめて2年位の時に、Kの父が所有する空き家に2人で住まわせてもらえることになった。土地と家の税金、光熱費とかガス代などをきちんと自分たちで払えるのなら、住んでもいいという許可が出たため、少しずつ引っ越しを始めていったという。そして、「半同棲?昼だけ私実家に帰ってきて、バイトもしとったし。それで夜だけその家に帰ってきて寝るみたいな半分同棲みたいな生活」を交際2年目から結婚するまでの2年間ずっと続けてた。実家とその半同棲をしていた家はやや遠いためとても面倒くさく、「通い妻みたいな感じ」だったCは言う。
結婚をする前にあまりお金かけたくなかったという2人は、その2年間の間で家具一式、ベッド、ボイラーもローンで買い、序々に生活に必要なものを揃えていった。そのおかげで、「住む準備がうまいこと整ったところでうまいこと結婚」という感じであった。「なんか、そんなことしとったら別れられんしね。別れるつもりはなかったけど。」とCは笑う。また、「2人でローン組んだりしとったから、なんかずっとそんな夫婦みたいなことをしとったから別に結婚しても結婚したっていう実感は無い。うん。通帳も2人の作ったりしとったし。その通帳から光熱費とか引いたりとかしとったから。」と、Cは結婚前からほとんど夫婦同然だったという話を詳しくしてくれた。
CとKの両家族とも結婚は「時間の問題」と思っていたようで、Kの実家が2人の家の向かいにあるので、よく一緒にご飯を食べに連れてってもらったりとにかく何か行動する時は一緒に行動をし、「もう嫁みたいな感じやったし。」とCは語る。Kの家は男の兄弟しかいないので、Kの親からは自分の娘のようにかわいがってもらえて有難かったと話している。
結婚絶対したくない派
Cは、10代の頃は、絶対結婚をしたくないと思っていた。中学時代も仲のいい子と一緒に「絶対結婚せんとこうねとか、そんなことばっかり言っとった。」と言うほど、「絶対結婚したくない派」だったと強く語る。
結婚したくなった理由
絶対結婚はしたくないと以前は言い張ってたCだが、今の旦那と交際2、3年目になると、心境に変化が表れ、子供も欲しくなり結婚もしたいと思うようになった。
子供が欲しくなった時期は1年半位前からで、その頃は、「ころころころころ友達が子供産み始めて、結婚し始めとった」時期だったという。そのような感じで周りにできちゃった結婚する友人が非常に増えてきて、「いいなー」と思うようになり意識するようになってきた。「やっぱり。その時点で彼氏とも2,3年くらい付き合っとったし。」と、彼との交際歴の長さも考えた。そして、子供がものすごく欲しい上に、自分が「働くのが嫌」「グータラ」な性分であるため「楽になりたい」と思っていたと語り、とにかくものすごく結婚したかったと言う。
Cは、今まで異性との交際で長く続いたことが無かったので、Kともまさかこんなに長く続くとは思っていなかった。Kと付き合い、初めて結婚したいと思えたという。それは、Kと一緒にいたいから結婚したいと思ったなどという「そういう感動的なこと」は無かったのだが、2年ほど付き合っていると落ち着いてきて、Cはもともと家で2人で「まったり」とするのがとても好きな性格なので結婚したいと思い始めたのだと思うと言う
周囲の友達には、遊びたくならないのかと頻繁に聞かれるらしいのだが、Cは自分は「もともとそんな遊ぶ派」ではなく、「家でまったりするのが好き派」だからと説明している。Cの周りのできちゃった結婚をした友達は、子供を預けて遊びにいったり車を買ったりして派手に遊んでいるのだが、Cは、「そんなんとかももうする体力ないし。」「遊び歩いたりとかもうめんどいし。」と自分の体力の無さを挙げ、更にKと付き合って3年4年と時間がたつと、「長年連れ添った夫婦」のようにまったりしたかったと、付け加えた。
友達の影響
Cの周りには結婚している人が多く、たまたま妊娠して結婚したという人が7割だという。C曰く田舎のヤンキーはそういうパターンが多いらしい。
Cが結婚や出産といったことを全く考えない「ゼロの状態」に友達の結婚、出産が突然押し入ってきたので、Cは最初の子供が欲しいと思ったきっかけは全て友達だという。それからは、絶対結婚しそうになかった芸能人が結婚して妊娠するとうらやましくなったり、街やテレビで子供を見ると欲しくなったりと気持ちがどんどん強くなっていったという。
結婚を待てずに子作り
結婚をしたくなり子供も欲しくなったCは、1、2年位前から赤ちゃんの可愛い写真を見せたり、周りの友達ができちゃった結婚して赤ちゃんが産まれる様子を見せて、だんだんKも子供が欲しくなるように「洗脳」 した。そして、「いいなー。俺たちも子供欲しいなー。」という方向に向けることに成功したという。CはKのような働きたての若い男は子供なんて考えられないので、やはり「洗脳」するしかないと考えており、周囲の友達もみんなも洗脳しているよと話した。
それまでは、性行為の時には今日は安全日だからと嘘をついたり、とにかく妊娠しようと必死だったのだが、Kが子供を欲しいと思い始めてからは堂々と子作りに専念できるようになったと語り、排卵日など全部正確に調べ、2人で子作りに励んだという。
また、Cは子供をつくり始める1ヶ月前の2002年の12月に2週間ぐらい留学をしていた。留学がずっとしたかったので、それさえできればいつ子供産んでもいいと思ったという。留学から帰ってきた時、Cの中で子供を作る心の準備が整ったということが「自由の身になったから」「準備万端って感じになったから」と言葉からよくわかる。
また、そこまでがんばって子作りをしていたのに先に結婚をしなかった理由を「ほんとこれ言ったら言い訳っぽいけど・・」 と話してくれた。Cは車のローンのめどがつくのが8月だったので、もともと8月9日に籍を入れようとしていた。「もうちょっと我慢すれば妊娠、結婚、出産できるんだって、もうちょっと生活が安定すればってそれまでの我慢やねか」と思っていたのだが、「そんなもんできちゃったらすぐ勢いで結婚できるってのもあるから、やっぱり2人とも若かったし、今も若いけど、やっぱりなんかちょっと勢いがないと結婚できんみたいとこがあって、その勢いを作るためにきっかけを作るために、子供作ろうとしとったっていうのはあるけどね。欲しかったしね。2人ともすごい。」と語ってくれた。
妊娠できないいらだちができちゃった結婚へのいらだちに
Cは避妊をしなかったら子供はすぐにできるものだと周りを見て思っていたのだが、1ヶ月、2ヶ月と全くできないのでだんだん心配になりストレスがたまってきた。そんなに簡単にできるとは思っていなかったが、周りにあまりにもできちゃったというのが多いのでだんだん「そんなもんこんな私きちんとやっとる私でさえできんがに、そんなもん、そんなころっとできるわけない」と腹がたったという。もし避妊してない月があったら、女としてその月はもしかしてできているかもと思いながら生活していくべきで、生理が遅れて妊娠に初めて気づくなんて絶対無いと怒り、自分の体を管理しないだらしない女が多いと怒った。避妊していない人はこどもができて当たり前で、予定外の妊娠なんてないと、世の中のできちゃった結婚に対して妊娠した今でも腹がたつという。芸能人でも友達でも堂々とにこやかにヘラヘラとできちゃったと言っている人を見ると「いいなーそんなコロコロとすぐできて」と思うという。自分たちは不妊症ではないが、でもやはり何ヶ月か悶々と2人で苦しんだ時期もあり、不妊症の人のサイトを読んで不妊症の人たちの苦しみも分かるので、「できちゃった結婚ってなんかなー・・。」「コウノトリさん来るとこ間違っとるんじゃないか」などと考えてしまうらしい。
家族への報告の仕方の工夫、反応
Cは2003年5月にめでたく妊娠をした。Cは妊娠したことを報告すると絶対両親にため息をつかれると思い、「できちゃった」というとドラマのようでよくないのでなるべくほのぼのと行こうと考え、父母には「来年の1月に孫ができることになったよ」と、「いい感じ」に聞こえるように言った。すると、拍子抜けするくらい反応が薄く、逆に期待外れでつまらなかったとCは言う。しかし、両親が内心ものすごくとまどっているのは伝わってきて、両親は自分たちが祖母、祖父になるという実感が湧かなかったのではないか、でも孫が生まれたらものすごく喜ぶだろうとCは言う。
結婚前に口酸っぱく結婚前に赤ちゃんなんて作るなと言っていた祖母には絶対に怒られると思っていたので、祖母、祖父にも「来年の1月にひ孫ができることになったよ」とほのぼのと報告したら、そのおばあちゃんが意外にもものすごく泣いて喜んでくれた。「やったー!まず第一関門突破!」と思ったとCは言う。
Cの親戚もCとKが4年も交際していてそろそろ結婚だとは思っていたようなので直接は何も言われなかったが、「赤ちゃん先やったかー」「あれー失敗したぜー」とCの父母にはもしかしたら言っているかもしれないけれどとCは言う。
Kの父親は去年からものすごく子供を欲しがっていたため、すごくうれしくて次の日会社中に言って回ったくらいだ。旦那の母親は特別反応はなく、しっかりしなさいよという感じで反対もされなかった。旦那の兄が全く結婚の気配がないため、せめて弟だけでもと両親は思ったのではないかとCはいう。
近所の人は昔高校中退したり朝帰りをしたりしているのを心配をしていたらしく、Cが結婚したと聞いて、あんなにだらしなかったのに、よかったね、おめでとうととても喜んでお祝いを持ってきてくれた。
祖父母の年代はできちゃった結婚に対して厳しいらしいが、父母の年代になると職場でも同僚の息子、娘がほとんどできちゃった結婚のため慣れているらしい。「やっぱり今っちゃみんなできちゃった結婚なんやのー。そんでやっぱりみんな結婚式せんがやのー。」と、Cの父はつぶやいていたらしい。
結婚式
Cは子供のころから結婚式が大嫌いなため、周りの反対を押し切って結婚式を開かなかった。しかし会社に顔が立たないし、親戚に広める手段も必要だという親の意見で、仕方なく食事会を開いた。仕方なく開いた食事会も日本的な型にはまったもので、騙されたと思ったという。Cは自由の国アメリカに行きたいと叫び、日本のしきたりにうんざりしていた。
計画的妊娠と親族には言えない
Cは、自分たちが結婚を待たずに子供を計画的に作ったことを「絶対口が裂けても言えんけどね。周りの親戚とかには。殺される。」と言う。年をとったしつけなどに厳しい親戚が多いので、それを言うのが嫌で絶対怒られるとビクビクしていたが、思いのほか何も聞かれなかったので、今も一切家族、親戚には計画的だとは言っていない。Cの祖母はCがまるで結婚する意志が心の準備が無いまま結婚してしまったと思っているため心配している。
できちゃった結婚ではなく計画的結婚と主張はしたい
Cは「できちゃった結婚なんやろー?」と批判的に言われると、腹が立って「ちゃんと計画して作らんと子供なんてできるわけないやろ。」と言うことがあるという。Cに自分たちは計画的に作ったんだっていうのを主張したいかと聞くと、「したいけどー!そんなこと言ったら、なんてだらしない人たちなんけって思われるかもしれんから、先に結婚しろよって言われそうな気もするから。」と述べた。特に自分たちは計画的なんだとは言っていないが、仲のいい友達には言っている。
また、できちゃった結婚をした人は必ず言い訳っぽく「でも、もう結婚するつもりやったしー。」 と言うとCは話してくれた。しかしそれは嘘だとCは言う。交際期間が長かったり、子供がやたらとほしくなったりと、おそらく結婚は考えていたと思うが、Cの周りは突然妊娠に気づくのがほとんどのパターンなので、それなら避妊をしろとCは思うらしい。Cは自分はそれとは違い、「あからさまに計画的」で「予想もしてなかったできちゃった結婚」ではないと主張した。
芸能人の影響
Cは芸能人の結婚には興味はないけれど出産日が近いなど自分と境遇が似ている人はとても興味がある。最近芸能人のできちゃった結婚が多いことについては、だらしない世の中になってきたとCはいう。しかし、「芸能人がああやっておおっぴろげにできちゃった結婚してくれるからさー、うちらの世間の反応もそんな厳しくならんがはありがたいけどねー。芸能人がそういうブームを広げてくれとるからさー、スムーズにうちらもできちゃった結婚とかできるしね。」とも述べている。Cも去年祖母にできちゃった結婚なんてするなと怒られた時に「もっとテレビ見て勉強しられ。」「そんなん普通やよ。」 と祖母に言った覚えがあるという。Cは芸能人の結婚に詳しいように思えた。
強い専業主婦願望
Cの両親は共働きでとても寂しい思いをしたので、Cは絶対自分の子供にはそんな目にあわせたくないという強い思いがあり、ずっと子供と一緒にいてあげるため専業主婦でいたい。Cは祖父母に育てられ忙しい両親の背中を見ていたため、妊娠前から自分の子供は自分で育てたいと思っていた。子供が幼稚園に入って金銭面が苦しい場合は働くことになるかもしれないとCは言う。
子育てには自信 〜親は反面教師〜
自分が母親になることについては、近年多い少年犯罪などその類の心配は無い。体力的な面では心配はあるが、精神的な面では何も不安はなく、むしろ自信を持っていると自負している
Cは自分の母親は、「だらしないっていうか、あんまり子育てうまくないっていうか働いとったから…。ちょっと子供を産むべきじゃない人がお母さんになってしまったって感じの人」だったといい、Cは母親を反面教師にして、自分の子供に対する育て方だけは心配はしていない。
働きたくない理由
Cは妊娠前はフリーターとして働いていたが、妊娠4ヶ月の時につわりのため続けられなくなり辞めた。Cは自分は「働きたくない」と言うのだが、Cは働きたくない理由を次のように分析してくれた。7割が、自分の両親が共働きで寂しかったので子供に寂しい思いをさせたくないから。2割は自分はグータラな性分のため働くのが面倒くさいから。残り1割は子供を預けて働くことが大変で、預けるところもないから。
金銭的不安
妊娠前から心配事はお金のことだけだったとCは言う。Kの給料はとても少なく金銭的な面はかなり厳しいらしく、妊娠が分かってから2人とも軽4に乗り換えたりと、覚悟はしていたけれど今更だがどうなるんだろうとCはもらす。しかし、お互いの親も元気で働いてもいるし、食べられなくなることは無いだろうと、もしもの時はどうにでもなるだろうと考えている。しばらくは、なんとかお祝い金を崩してやっていかないといけない時期が続くかもしれない。Cも働きたくないが働かなくてはいけないかもしれないと言う。
同棲の延長
Cは結婚して未だに「切り替え」がうまくできずに、Kにも怒られるという。Cは自分たちは夫婦のように過ごしてきてそのまま籍を入れ、これといった「引っ越し」や「新婚初日」が無いからなのか、全く結婚していない時と変わらないとつぶやく。家事をつい忘れてしまい、Kにいつもこんなので子供が産まれてやっていけるのかと怒られると嘆く。
しかし、Cは子供が産まれたらまた家庭が変わるのではないかと考える。子供が産まれたら家事に対する意欲が湧くことを期待しているが、今のままでは駄目なので、しかっりしなくてはと反省していた。
避妊、中絶
Cの周りのできちゃった結婚をした人たちはほとんどが避妊をしていなかった。中絶もよくある。(中には男性と別れたくがないためにわざと避妊をせずに子供をつくったという人もいる。)
最近の若い親
Cの周りの結婚している友達は非常に親に金銭面でも育児の面でも世話になっている人が多い。自分がまだ遊びたいので親に子供を平気で預けて好きなことをしている、母親になる努力をしていない人がよくいるとCは嘆く。まだおしゃれをしたいし、友達とも遊びたいさかりなのに、心も準備ができてないまま子供ができてしまったのだろうという。「母親になるがは誰でもできるねかね、赤ちゃんさえできれば。ほっときゃ産まれるしほっときゃ育つわけやから。(省略)ほっときゃ産まれてほっときゃ育つわけやから、母親がどれだけだらしないことしても子供は育つわけやからね。そんな風に育てられた子供は将来どんな風になるんか恐ろしいけどね。」と周りやショッピングセンターの母親を見て嘆いている。そして「不妊のお母さん達が聞いたら怒るような事ばっかしとる感じ」と、Cはやはり不妊症の人達の立場に立って考えてしまうようだ。
第5節 Dさん
妻 D。28歳。元美容師。現在専業主婦。長女(弟2人、妹1人)
夫 J。29歳。会社員。長男(弟1人)
当時、JはDの実家のある横須賀に出張に来ていて1人暮らし。Dは実家暮らし。
交際歴は半年で、2004年3月で結婚3年目。子供1歳。(最初の妊娠は流産したため)(2003年10月21日現在)
インタビュイー・・D、P、Q(P、Qは同席していたDの友達。D、P、Qの子供も同席。なお、P、Qは「できちゃった結婚」ではない)
結婚前提の交際
DとJは、Dが転勤でDの実家のある横須賀に来ていた時に出会った。DがJに交際を申し込まれた時(2000年8月末)、「結婚前提で。」と言われたらしく、交際を始めて1ヶ月もしないうちに結婚指輪もらったとDは笑いながら話してくれた。その時の気持ちをDは、「一応結婚前提でって言われたけど、やっぱりごめんっていうのもありかなと思って、こっちはもう軽くハイって言って…」と話している。Jの転勤の期限が2000年11月までと決まっていた矢先だったので、多分焦ったのかもしれないとDは推測する。
結婚願望
D曰く、Jは結婚願望が強かったように思うという。D自身はというと、「まだ25だったから。その時は。だから、んーまあ出会いがあれば、するかもしれないけど、まだそんな身近なもんだとは感じてなかった。」「結婚願望ですか?あんまり無かったですね。」と述べている。
しかし、「あーまあ一応売れ残りにだけはならなければいいかなって(笑)。」と、結婚自体はしたいと思っていたようで、周りの友達を見ていて結婚をしたいとも思ったりもしたけれど、「30までに結婚できればいいかな。」とも話していた。「体力いるから、やっぱ高齢出産やだし、うん。あと、子供がかわいそうだな。」「みんなお母さんが若いのに」などと思って、「30までに子供産みたかったっていうのはあるから、その前に(結婚は)20代後半までに・・。」とも述べている。
妊娠
Dはつきあって4ヶ月でJの子供を妊娠した。その時の気持ちをDは、「びっくりと同時にはめられたと思った。」と笑いながら話し、DはJに避妊はしろと言っていたのだが、Jがきちんと避妊をしていたかどうかは「してたかもしれないしそれは彼しか知らないかもしれない。」とのことだった。「あっち(J)は、多分作る気満々だったかも。」とも漏らしていた。また、「(私は)、私の友達からは、うまいことやられたねって。あっち(J)の友達は、(Jに)なんか成功したねって感じだった。で。(Jは)周りの友達に入れ知恵されたらしいから。(子供を)作っちゃえばって。そうすれば(嫁に)来てくれるよって。」と笑っていた。
妊娠が分かった時、お互いすぐに結婚と決めたかと聞くと、「あー、一応、1年間っていうことで、9月に結婚しようって言われてたんだけど、指輪もらった時点で。だけど、それが早まって、3月にしたんだけど、うん。最初からもうあっちはするつもりで、こっちも、まあいいかなぐらいの。」と述べている。
家族への報告
妊娠が分かったので、2001年の1月の中旬にDとDの家族とJとで軽く食事をしながら、Jの口から「結婚したいです。」とお願いしようということになった。「みんな食事を食べながら話しましょうよっていうノリ」だったのだが、JがDの父親に「お嬢さんをください。」と言う前に「あのー、その前に報告があるんです。…今Dのおなかの中に子供いるんですよー。俺もDも喜んでるので、ぜひお父さんもお母さんも喜んでください。」と突然言ったらしい。Dの父は「えーっ!!」と驚き、母も父が怒ると思ったので、「そうなの?!おめでとー!よかったわねー!」などと言ったという。Dの父は「ちょっと怖い人」「おっかない人」らしく、本当は「結婚は9月にしてくれ」とDの父はJにお願いしようと考えていたのだが、「早くしなきゃ」「善は急げ」と3月に結婚が決まったという。
結婚に反対されなかった理由として、「もうちゃんと(Jは)定職にもついてるし、うん。なんか誠実そうな感じしたから、まあしょうがないっていって。本当は北陸(Jの実家は北陸)にやるのは嫌がってたんだけど。遠いから。だけどもう、そういう決定的な事実つくられちゃったから、ね、もう善は急げになって。」と話してくれた。また、「私の父親も母親も昔同棲してたから、結婚決めて、日にちも決めて、その半年くらい前に同棲始めて、で、もう、うちのお母さんのおなかに結婚式の時には多分いたと思うんね。多分本当に初期だけど。計算したらそうだったから。うん。だから、うちは結構おっかない父親だったけど、まあ彼がそういう人だったっていうのもあるけど、全然平気。」とも話してくれた。
また、報告の少し前である1月の上旬に、初めてJの実家に泊まりに行ったらしいのだが、その時Jの母と一緒に寝た際に、「もうここまでやったんだったら結婚してくだはれ。」というようなことをJの母に頼まれたDは話している。それなので、Jの家は、反対どころか大喜びだったのではないだろうか。(結婚してからは、Jの実家のある北陸で生活。)
仕事を辞める際の葛藤
Dに結婚をして仕事を辞めたのかと聞くと「やめましたー。全て失いました。美容師だったんですけど、これからって時に。」と笑いながら答えた。つわりでもぎりぎりまで働いていたのだが、ある時出血してしまい、入院を機に仕事を辞めた。仕事を辞める際の葛藤をDはこのように話してくれた。「これからって時だったから、上司にも馬鹿だっていわれて。ちょうど上ってってたとこだったから。」「(もったいないと)思ったけども、やっとお客さんもだんだん結構ついてきてくれて、あっやっとこれからもう自分の時代がどんどんどんどん攻めてった方がいいなって時だったから。うん。そうねえ。」
子供が大きくなってからまた働こうと思っていたのかという問いには、「っていうか、あのー、環境が変わってしまうからそこまで考えてなくて、北陸になじめるかどうかしか。」という答えが返ってきた。結婚していなかったらずっと美容師をやっていたかと聞くと、「あー、やってたかもしれない。」と答えた。
結婚してからは、横須賀から北陸と「全然知らない環境」に来たため、まず友達作りなど「自分がこういう土地に慣れるのが精一杯だった」ので最初は全く働こうとは思わなかったという。それから働いてもいいかなと思ったらしいのだが、先に友達を作っていこうと思ったという。しかし、いずれは自分のお小遣いが欲しいので、子供が保育園に行くなど都合がついたら「パートなりなんなりしてお金を稼ごうかな。」と述べた。
1人目はJ、2人目はDが作った子供
Dは1度目の妊娠で3月に流産して、同じ年の10月にもう1度妊娠して今度はめでたく子供を産んだ。Dは子供は早く産んで若いうちに育てたいと思っていたので、子供は欲しいと思っていた。「だからこっち(2度目の妊娠でできた子)は私の計画で全部やった子(笑)。夏に産むこと計算して逆算して、今月が勝負だろうと思って、で、今度は相手を騙した側になるの。この子は。私は前の子は騙されたけど、今度は騙して作ったの(笑)。」と笑いながら話していた。
できちゃった結婚と言われること
自分達ができちゃった結婚とか言われることに対して何か思いますかと聞くと、「あー、できちゃった結婚。でもまあ、事実はできちゃった婚だけど、彼の中では、できちゃった婚じゃないって言ってる。もう結婚はしようと思ってたから、たまたま早くなっただけって。でも、まあ、できちゃった婚には変わりないんだけど。」と冷静に答えた。
土地柄も関係
Dはできちゃった結婚についての考え方は土地柄にとっても違うのかもしれないと考えている。「あっち(横須賀)の方は結構式挙げなかったり、あとそういうの(できちゃった結婚)も多かったから、あと、こっち(北陸)ってそういうのあんまり無いって聞いたから。」と、地域による結婚に対する考え方の違いを指摘している。
結婚に対するイメージ、実際
Dは、結婚に対して夢は抱いてはおらず、両親の生活も見ていたので別にギャップは無いが、時々働いていた当時の自分とのギャップがありすぎるという話を次のように語ってくれた。
「あー、やっぱ自分の両親とかを見てたから、やっぱこうなるんだろうなっていうのはあったんだけど、うーん、なんか夢とかそういうのはあんまり抱いてなくて、夢って言うか結婚したらこんな感じとか、なんかこう、朝食にクロワッサンとコーヒーとかそういう感じのことは抱いてなくて、(省略)恋愛の延長じゃないってことは思ってたから、別にギャップは無かった。こんなはずじゃ!って時々思うけど、うん。あとなんか、働いてた時の自分と家庭に入った時の自分のギャップがありすぎたっていうのが。体型も変わったし(笑)。こう、なんか、人にみられてないって言うか、職業柄美容師だったしいつも綺麗にして洋服とかも綺麗なの着てたけど、もう主婦になった途端に、ユニクロとかさ(笑)なんか汚れてもいいようななんか目線感じないから、1日中すっぴんでいることとかあるし、かえって自分に努力しなくなったかもしれない。」
また、「生活は子供中心」だが、やはりストレスがたまるので、外では友達と会ってお茶をしたり、やりたいことを見つけてやってみたりと、「遊びは私中心」と述べた。
自分の子供を育てる責任
自分が親になる時の不安については、Dは、育児よりも「産むのは怖い」と、出産に強い恐怖を抱いていたことを語った。育児は、1番下の弟が14離れてるので、母に教えてもらいながらミルク飲ませたりおむつ取り替えたりするのを一緒に手伝ってやっていたので、「こんなもんかなー」ということは、ある程度分かっていたという。しかし、「でもやっぱり、弟と自分の子供は違うなっていうか、やっぱり弟のほうが余裕があったっていうか、かわいいで済んで、責任が無いもんだから。こっちには責任があるから、なんかちょっとすぐ怒っちゃったりしちゃうと…、手は上げないけど。」と話し、自分の子供を育てるということの責任について考えさせられているようであった。
芸能人の結婚
芸能人の結婚の話には、インタビューに同席していた主婦Pさん、Qさんも話に加わった。(*P、Qはできちゃった結婚ではない。)Pは、好きな人は気になると言い、最近では窪塚洋介が結婚したときはショックを受けたという。それを受けて、Dは「好きな芸能人?別にキムタクもすきじゃないしねー(笑)。」と言う。また、「Q:つくろう婚みたいな?でもそういうの最近あるよなー。芸能人やったら。」「D:キムタクの家みたいな?」「P:なんか不妊治療・・。」「Q:山崎邦正とか。」「P:通っとったとかねー。」などと、ここ最近のできちゃった結婚をした芸能人カップルの話題に花が咲いた。
私が、「芸能人ができちゃった結婚すると妊娠したっていうのをいいやすいって友達は言ってたんですけど。」という話題をふると、「D:あー芸能人ができちゃった結婚したら堂々と言いやすくなった?」「Q:私もよっていう風に?」「Q:あー大半そうやもんねー。今多いもんね。芸能人なんてほとんどそうやし。」と意見が飛んだ。
また、「芸能人がそういうブームみたいのを作ってくれたらちょっと言いやすかったという話がある。」という方もいたと私が述べると、「あー。ちょっと私ブームの前だったから(笑)。ま、だんだん社会的にもマスコミでそう言われるようになったってことは、社会的には前ほどそんな汚らわしいとかじゃなくて、ただ順番が逆なだけで、でも結婚しないほうの人は許せないけど、あの作っといて。でも、まあみんなちゃんとしてるからいいと思う別に。」とDは答えた。
私が「妊娠しんのに結婚するほうが不思議。」と本音をつぶやくと、Dが即、「そうやよね。」と同意した。そしてDは「うん。多分、今の時代そっち(妊娠が先の結婚)のほうが多いかもしれない。きっかけがないとなかなか。で、自分も諦めがつかないし。今の生活がもしすごい好きだったら。よっぽど結婚願望があるか、相手のことがすごい好きかっていうのじゃない限りはね。私もどうなんだろ。ま、でも9月、3月で結婚して半年早くなっただけだけど、ま、別に9月でも別にできてなくても結婚はちゃんとその準備はしてた。うん。」と語ってくれた。
妊娠していないのに結婚する理由
同席していたP,Qに妊娠してないのになぜ結婚しようと決意したのかという質問をすると、次のような会話が見られた。
「P:妊娠してないのになぜ結婚?あーなるほどねー。」「D:うん、私もそれ(妊娠していないのに結婚する理由)よくわかんないから。」「P:タイミングやね・・。」「Q:タイミングもある。うん。」「P:もうなんか、言われたときにしたかったからたまたまって感じで・・。」「Q:それはある。」「P:もうずっとつきあってても、タイミングがあわなかったらしないし。」「Q:私はもう情がうつって。」「閤田:長かったんですか?」「Q:でも4年くらい。でも、なんかずっと(結婚)しないでおこうかなとか思った時期もあったし。なんか自信が無かった。いろんなことに対して。子育てとか、なんかこう、姑さんとか。うん。そんな感じかな。」
P,Qの口からは、しきりにタイミングという言葉が出てきた。結婚にはタイミングもあるというのが両者共通の意見だった。
子供は良い
PとQ共通の意見としては、「子供は良い」というものがある。「こどもはいいよねー。」と2人は語っている。Dは更に、「子供できたらまた変わるよねー。(でも)順番はちゃんとしないとね(笑)。」とみんなを笑わせ、Pが「あんたが言うな(笑)。」と笑った。Dは更に「(順番をちゃんとしないと)未婚の母に・・(笑)」とジョークを飛ばして、みんなの笑いをとった。
第6節 Eさん
妻 E。22歳。長女(兄1人)。元フリーター。現在パート。
夫 O。22歳。建設業。次男(兄1人、妹1人)。
結婚する前はお互い実家暮らし。
交際暦半年。2004年2月で結婚2年目。子供は1歳1ヶ月(2003年11月17日現在)
インタビュイー・・E、O
突然の妊娠、夢との葛藤
Eが高校を卒業してから2年間フリーターをしていたのは、トリマーの専門学校に行くお金を自分で貯めるためだった。その時に出会って交際していたのが今の夫Oだ。2002年の4月から新潟にある学校に行くことが決まり、Oも一緒に新潟に行き2人で同棲することが決まっていた。入学金も納めアパートも決めた矢先(2002年2月)に、突然妊娠が発覚した。
Eは高校を卒業する前に、獣医師になるから一緒に学校へ行かないかと友達に誘われ、それがきっかけで動物が好きなEはトリマーになることを考え始めた。しかし、夢に対する思いの反面、「その子(友達)は学校行ったんだけど、私はお金貯めてから行くって言って、2年間くらいフリーターして、やっと行こうとしとったんね。」「もう遅いだろうなーって思っとった。自分で。遅すぎるかなって。」というような、自分が今から夢を目指すのは遅いのではないかという不安を思わせる発言も見られた。
妊娠した際は、相当産むか産まないかを迷ったらしく、「自分で貯めたお金が、もうねえ、払ってしまっとったんね。自分で貯めたお金なんに、今まで2年間頑張ってきたんに、何だった…ねえ、無駄になるがも嫌だったし。」 と、その当時の自分の夢との葛藤を語ってくれた。最終的にEは赤ちゃんをおろすことを決意して「もう明日赤ちゃんをおろしてくる。」とOにも報告していた。ところが、その後Eが自分の母親に相談すると、どういう真意で言ったのかはEもわからないらしいのだが「今産んどかれ」と母親に言われ、急に「そっか・・。産もう。」と考えが変わったらしい。「言われて、それでころっと変わってしまったみたいな。」とEは述べており、おろすと決意していた気持ちが母親の一言で急に「今産んどこー。」という気持ちに変わったのだ。
妊娠の報告、反応
Eは妊娠した際に、まず最初にOに知らせ、その後にバイトの店長に相談した。「店長はもう産む気満々みたいな。仕事も減らさんなんなーって言われて。」とEが言うように、店長には産む方向で応援されたようだ。親へ報告するのには非常に緊張したらしくEは妊娠が分かって1〜2日後に知らせた。Oの親は、Oに早く結婚してほしいと思っており、孫が欲しいなどと言われていたため、言いやすかったのか、Oは妊娠がわかったその日に親に報告した。すると、親は非常に喜んで、抑えきれず顔をニヤニヤとさせていたらしい。
反面、Eは学校も決まって入学金を納め、住むアパートも決まっているという状況だったので、家族への報告は今思い出すだけでもドキドキするといった様子で語ってくれた。彼女は、「もうこれはスパーっと言わんと言えんくなるなーと思って、帰ってきてすぐにサーっと」言ったという。「ただいまー。」と帰って突然、「お父さんおじいちゃんになるがんぜー。おばあちゃんひいおばあちゃんになるがんぜー。」と言い残し、すぐに自分の部屋に逃げ込んだ。そのためよく反応は見ていないが、「本当か!?みたいな。」反応だったというように、家族はとにかくとても驚いていたという。
しかし、Eの家族にはいい顔はされなかったものの、妊娠してしまったものは反対しても仕方が無いと雰囲気で特別トラブルは無かった。祖母は、Eが学校に行くものだと思っていた上に妊娠までしたため初めはショックを受けていたのだが、おなかが大きくなっていくにつれて祖母の気持ちが変わってきていたかもしれないとEは言う。世間体を気にしているようなところも特に見られなかったという。ちょうど同じ時期にすぐ近所の人ができちゃった結婚をしたので、近所の目も気にならなかったのではないかとEは述べた。おろせといわれなかったのかという質問には、「絶対言われるかなーと思っとってん。でも大丈夫やった。えー?みたいな。結構あっさりいってびっくりした。」と述べ、最終的にはみんな産まれた子供がかわいくてたまらないらしく、誰1人反対している人も無く応援してくれていると話してくれた。
芸能人のブームの効果は全く無し
妊娠を報告する時に、芸能人ができちゃった結婚ブームのようなものを作ってくれたから言いやすかったという人もいるという話をすると、EとOは全く言いやすいという感情は無かったということを話してくれた。それが次の会話だ。「E:言いにくかったよね。」「O:すんごい言いにくかった。」「E:すんごいドキドキした。」「O:すっげー緊張した。」「E:言いやすいはない。ブームだからとか。」「O:関係ない。」「E:おまえらもかみたいな感じじゃないけ?別に言いやすいとかそういうのは…。」 「O:うんうん。無かった。やっぱ言いにくかったね。」「E:言いにくかったね。すっごいドキドキ、緊張した。」
2人が興奮気味に話しているのを聞いて、こちらにもドキドキした気持ちが伝わってくるくらいであった。芸能人のできちゃった結婚ブームのおかげで言いやすいという場合もあるが、全くそんなことは関係なく、逆に「おまえらもか」と思われるのではないかとブームの負の面もあることが分かった。
もし妊娠をしていなかったら・・
もし妊娠をしていなかったらどうなっていたかという質問には、2人から即、「別れとったんじゃない?」という答えが返ってきた。知らない土地で2人でやっていくなんて今思うと無謀なことを考えていたと笑いながら語ってくれた。同棲が決まっていたが、Eには学校があり学校の友達とも遊びたい、Oには仕事があり忙しいで、今思い返すと無謀な計画だったと2人は口をそろえて言う。Oは当時はとにかく新潟についていくことしか頭に無かった。
結婚は考えていなかったのかと聞くと、そんなに具体的には考えてはおらず、「ゆくゆくは・・」という程度であった。同棲をしたいとEの父親に言った時も父親から「同棲するんだったら、もう最後まで(結婚のこと)考えてるのか?」と聞かれ、結婚するつもりでならと言われ「はい!はい!」と返事をして同棲の許しを得た。同棲でうまくやっていけそうだと思ったら結婚しようと考えていたのかという問いには「うん、まあまあ。そう…かな?」とOが答えたが、あまりピンときていないような様子だった。
「じゃあ妊娠っていうきっかけが無かったら今どうなっとるか分からないってこと?」と聞くと、「E:富山におらん。」「O:…どうなんやろうね。」「E:変わらん生活をしとるんじゃないかなーって思う。仕事してー、友達と遊んで、楽しいがじゃない?それなりに。」「O:うん。」と、予想はつかないがそれはそれで楽しくやっているのではないかと2人は答えた。
子育て、一家を養うことに対する不安はあまりない
Eは自分がちゃんと子供を教育できるかという不安はあったが、今は、こう育てたいというOとの意見の食い違いのほうを問題にしているようだ。Oに自分が養っていけるかという不安はなかったかと聞くと、「O:うーん。…いや、そんなことあんま考えてなかったかな?(笑)何考えとったやろ…。」「E:何も考えてないやろ?」「O:うん、結構楽観的やから。」「閤田:なんとかなるやろうって?」「O:なんとかなるやろうみたいな(笑)感じはあったかな。」という答えが返ってきた。
他人と生活しているという違和感
結婚に対して思っていたイメージと実際してみての違いはありますかという質問には、2人共違うと答えた。特にEは、結婚というものが想像していたものと全然違うと述べ、今まで他人だった人と共に生活していることが時々ものすごく不思議になってしまうと話している。それが次の会話だ。「E:でもなんかこんな当たり前になると思わんかった。おって当たり前とか。帰ってきて当たり前とか。ね、当たり前すぎて。他人なんに…。」「O:(笑)」「E:なんで一緒におるが?!とか思って。思わんけ?」「O:…」「E:思わん?」「O:うん、あんまり。」「E:あれ?私だけ?」「O,閤田:(笑)」「E:朝はちゃんとご飯を作ってとか(普段)ないし。」「O:そんなもんなんじゃないが?」「E:えー!そうなーん?」「O:(笑)」「閤:おって当たり前なのが不思議?」「E:うん。何で?って。たまーにすごい不思議になる。あれー?って。」 「閤:なんで一緒におるんって?」 「E:そうそう。あれ?って。ならん?」 「O:ならん(笑)」
そして、それが例えば結婚じゃなくて同棲の場合だったらそんなに不思議にもならなかったかと聞くと、そのようで、「…彼氏として見るからかな。なんだろう。分からん。なんでだろう。なんでだろうね。」と、理由はE自身はっきりと分からないようだ。
また、結婚しても子供がいなくて2人だけの場合は同棲のようだが子供産まれると変わるという話になり、Oは子供が生まれてから家族だと感じるようになったようだ。
婚姻届を出すのと出さないのとでは大違い
前述した子供がいると家族だと感じるという話をしていた時に突然、Eが婚姻届を出すのと出さないのとの違いについての自分の考えを述べ始めた。それが次の会話だ。「E:婚姻届出しとるのと出してないのじゃ大間違いだって。」「O:そうけ?」「E:大間違い!大間違いじゃない(笑)大違い!」「O:俺そんな思わんだけど。」「E:だってさー、別れよってなった時って、スパっと別れれるねか。大変なんでしょ?」「O:うん。」「E:(結婚より)離婚の方が。」「O:うん。」というように、Eにとって婚姻届一枚は非常に重いものであるということが分かる。
結婚のメリット、デメリット
結婚のメリット、デメリットを考えたかという質問には、両者、金銭面の関係から「遊べんくなる。」と答えた。「E:お金とかないし。ピリピリするね。やっぱり。お金無かったら。ギスギスする。お金あったら違うね。やっぱり。笑顔が違うよね(笑)」「O:違うね(笑)」「E:無かったらイライラするしー、何で使ったんけよー!ってなるしー。」「O:お金は大事だね。」という現実的な会話が見られた。
その後に私が「結婚してしまったら一生その人とおるって意味やから、そういうのって若いから私はすごいなって思う。」という本音をもらすと、「同い年やねか。」と両者から笑いがおこったが、その後沈黙が続き、Eの「なんか本音を言っとったら喧嘩になりそうじゃない?」という言葉で再び笑いがおこり、この話題はなんとなく終わっていった。
結婚願望の有無
結婚願望はあったのかとEに聞くと、「…昔はあったけど、別にこの人と付き合っとる時じゃなくて。でもなんか、夢があったから…。学校に行きたかったから、今はそっちに…その時はそっちに行きたかった。」という答えが返ってきた。しかし、「もう遅いだろうなーって思っとった。自分で。遅すぎるかなって。」という自分は夢を目指すのが遅すぎるのではないかという不安もあったことも話してくれた。
子供が欲しかったかという質問には、次のような答えが返ってきた。「E:欲しかったかね?欲しかったかな?…自分の子供は見てみたかったけど、そんなに…。」「O:おまえそんなでもなかったやろ。」「E:そこまでは…。」
Oの方は、特別結婚願望は無かったようだが、自分の子供は見たかったことを次のように話している。「えー!俺そうでもなかったかな(結婚願望について)。子供早く見てーなーと思っとったけど。自分の。なんか。」そして、Eが「(Oは)子供好きやもんねー。」とOが割と子供好きなことを教えてくれた。
「できちゃった結婚」と「普通の結婚」
「自分たちができちゃった結婚とか言われることに対して何か思ったりしますか?」と聞くと、おもしろい会話が返ってきた。即答で「E:思わんね。」更に「O:むしろその方がいいがじゃない?って思う。」「E:きっかけだよね。」「O:きっかけっていうか。…ま、それはそれでありなんじゃないかなって。」「E:普通の結婚もしてみたかったけどね。」「O:うん。」「E:普通にプロポーズされて…」「O:(笑)」というように、できちゃった結婚を「むしろその方がいいがじゃない?」と非常に肯定的に捉えている。できちゃった結婚を結婚式で隠す人がいるという話をすると、Eは「別にやましいことじゃないよね。」「なんでかね。世間体みたいな感じかね。」と、なんで隠すのか?と非常に肯定したいという気持ちが強いように見られた。しかし一方、結婚してから妊娠をするという従来の結婚を「普通の結婚」と呼んで、まかり通っている点もおもしろい。更に、プロポーズされて結婚を申し込まれるという「普通の結婚」もしてみたかったというEは言う。
専業主婦願望〜無い物ねだり〜
専業主婦願望はあったかという質問には、人間の無いものねだりの心理が表れていた。次の会話がその一部だ。「E:あー…私この子が5ヶ月くらいの時から仕事しとって、それまでは仕事も全然してなくて、すごい外に出たかったんね。ずっと一緒におるから。でも働いたら働いたで、専業主婦がいい。」「O:無い物ねだりや(笑)」しかし、Eが今専業主婦がいいと思ったのには理由がある。Eは現在ほぼ毎日働きに出ており、「今全部旦那の実家に預けとって、だからもうあっちのうちにもうなついてしまったり、私も寂しいなっていう感情あって。」というように、自分の子供が離れていくような寂しさを感じ始めたのだという。なので、最近は1日だけ休みをとるようになったのだという。しかし、形としてはほぼ共働きである。ちなみにEの両親も共働きであった。
避妊をしなくなった理由
初めはお互いきちんと避妊をするという考え方だったので避妊をしていた。しかし、避妊用具で体調が優れなくなり、それから使用するのが嫌になり使うのを辞めた。
きちんと避妊をしていたのに妊娠してしまったという人もいるという話をすると、Eは「(避妊用具も)100%じゃないっていうけどね。」と避妊用具も絶対ではないという意見を出してくれた。しかし、「絶対どっかでミスしとったんだって。」という厳しい意見も述べていた。
将来は、子供は1人だとみんなに甘やかされて育つので、3人欲しいらしい。なぜ3人なのかと聞くと「にぎやかでよくない?」とEが幸せそうに答えた。
長い目で見て家は一戸建てを購入
E、O夫婦の住む家は自分たちで建てた一戸建てだ。なぜ一戸建てなのかと聞くと「O:いや、会社で、結婚してどっかアパート入っても金なんか貯まらんって言う話をよく聞かされとって、で、うちの親とかも見とって、で、一戸建て買った方がいいんじゃない?とか結構進めてきたというか。うん。」「 E:家賃払うのと一緒だよね。」「O:それがただ長いだけで。いずれはうちとか欲しいからね。ただそれがちょっと早かったっていうだけで。」と答えてくれた。将来の家族のこと、お金のことを長い目で考えて一戸建てを買うことに決めたようだ。
第7節 Fさん
妻 F。28歳。正社員。長女(妹2人)
夫 V。30歳。建築業。次男(兄1人、姉1人)
結婚前はお互い実家暮らし。
交際暦は4年。子供は現在2人(4歳と1歳)。3人目を妊娠8ヶ月。(2003年11月22日現在)
インタビュイー・・F、Fの妹
未婚の母でもいい
Fは昔から若いお母さんになりたかった。その理由を聞くと、次のような会話になった。「F:なんだろうねー、なんか、わからんけど、なんでかなー。私のお母さんが、24で子供産んどんがやねか。なんかそれもあって、24までには絶対欲しいってなんか昔からずーっと思っとったんね。そんで、なんか、なんかな、なんていうがけ?・・なんか別に結婚せんでも子供だけは欲しいってずっと思っとったんね。」「閤田:えっ未婚の母でもいいんですか?」「F:うんうんうんうん。なんか、なんていうがかな、自分のものっていうかさ、なんていうがけ、そういうなんか、自信でもないけど、なんかそういうなんか、ねえ、なんていうんけ、なんか、取り柄が無いっていうかさ、自分に。なんかそういう1つ守るものていうかさ、そういうものがあればいいかなみたいな感じで思っとったんかな。なんかそういうなんか・・ねえ、うん。だから別に男おらんでも、1人で育てていけるわみたいな感じで、ずーっと思っとったんかな。」「閤田:なるほど・・。」「F:今は思わんけどね(笑)昔はね。若い時はね(笑)」Fの家庭は両親が離婚して父親がいないので、そのような母親の背中を見て育ってきた影響がとても大きいようだ。
その家庭環境の影響が強いのが次の会話からも伝わってくる。「だから、うち、そんな家庭だねかね。だから別に男おらんでもいいと思っとったし・・。」「閤田:(1人で)やってけるって?」「F:うんうん。別にね?うっとおしいみたいな、ねえ、そんな感じだったから、結婚願望は無い、かな。」しかし、妊娠=結婚というE曰く昔ながらの考えのVには未婚の母でもいいというEの考えが理解できなかったらしく、「付き合っとる時も子供だけ欲しいとかずっと言うとったけど、なんでそうなんがよみたいな、そんな感じの会話はよくあったけどね。」と、その頃のことを話してくれた。
もし子供ができたら結婚
Fは4年間交際して結婚に至った。最初の3年は別に結婚は考えていなかったが、残りの1年はお互い子供ができたら結婚しようと決めて避妊を行わなかった。
その時の様子をこう語ってくれた。「私は、ずーっと、若いお母さんになるがが夢っていうか、欲しかったんね。ずーっと。若くして子供が欲しかったん。でもずーっと言うとったけど、あっちは全然その気が無くって、25くらいまで結婚はせんとか。結婚はするって言っとったんだけど、25くらいまでは結婚はせんって言うとったが。ほんで、でももういいわっていうがになって、じゃあならするかみたいな感じで、別に何も気にせず、そのまま。」
なぜVは気持ちが変わったのかと聞くと、「わからん。(笑)それは分かりません。そのー、だから、言う事が適当な奴だから、その、できてもいいわって言ったこと自体も、25になったら結婚するって事自体も、多分彼は覚えてない。(笑)」「ただその場で言ったこと?うんうんうん。あんまりそんな、なんて言うんけ?深く意味は無く、ただできたからって感じで、うん。そんな別に計画性は全く無し。(笑)現在に至っても。(笑)」という話だった。
その上、Fは母親にも「もう長いから、(結婚)するがんならするって、せんがならせんって、はっきりしられ。」「きりいいところで、けりつけるがなら、けりつけられ。そうじゃなかったら、もう子供でも作ったら?もう24だし。」ということを言われていた。
しかし、Fは子供ができにくい体質であるために、妊娠を内心諦めていたという部分も話してくれた。交際も長いため、別れようと思ったときもあり色々あった上に、体質的に子供を妊娠しにくいことが分かっていた。そのため、「もういいわ。もうできんし。もうこの先別れても、自分の時間のために使うわ」とFは思い、VもFは妊娠しないのではないかと思っていたところに、「ひょこっとできた。」と語ってくれた。「ま、これも運命かなーみたいな。(笑)なんかそんな感じで・・。」と当時を振り返っていた。同席していたFの妹も「最初さ、妊娠したって聞いた時、あっFちゃんも妊娠できたんだって思ったもん。」と当時の気持ちを話し、Fも「それが運命ってことだよ。」 と語っていた。
もし妊娠していなかったらどうなっていただろうと聞くと「分かりません。それは分かりません。(笑)」とFは笑って答えた。
子供も自然の流れに任せて
子供は最初からたくさん欲しいと思っていたのかという質問には「そこまでは思わんけど、うーん、でも3人くらいかな?うん。」という答えが返ってきた。しかし、2人目も妊娠できたらいてもいいと思っていたのだが、1人目を産んでから体調が優れず、ずっと不妊治療のようなことをするためしばらく病院に通って2人目ができた。そのことをFは、「別にそういう次作るとかがんばったとか、そういう感じではない。また成り行き上の流れに自然の流れに。(笑)そんな感じかな。」と述べ、Fの自然の流れに身を任せる生き方がよく表れていた。
家族への報告
妊娠したときはお互い以前から妊娠したら結婚と決めていたので、両者、即結婚と決めた。Fは家族に報告する際全く言いにくいということはなかったと述べている。前述したように、「もう長いから、するがんならするって、せんがならせんって、はっきりしられ。きりいいところで、けりつけるがなら、けりつけられ。そうじゃなかったら、もう子供でも作ったら?。もう24だし。」 と母親に言われていたこともあり、妊娠したときは「生理無いがんだけどー。」と「普通に」報告し、母は「 ほんなら病院行ってこられよみたいな感じ」だったという。
Fの家は男親がいないため「普通の家より楽」だった上に、FとFの妹曰く、「なんか、ちょっと変わった」「普通の感じじゃない」「多分世間様と違う」家だったので、家族の反対という点は心配無かったらしい。Fの母親は、世間一般の「親らしくなく」、「好きにしろじゃないけど、(子供に)干渉もしない」、「本当になんか友達みたいな親」 であり、「(自分達が)本当に子供なん?」と思うような母親らしいのだが、それを説明するのはFもFの妹も「1番難しい」 と困っていた。
また、Fの家族の特徴としては、「(母親の)代わりにおばちゃんがうるさい」ということがあり、Fの祖母は結婚が決まるまではVのことをあまりよく思っておらず、会っても全く無視といった状況だった。しかし、結婚することになってからは変わり、普通に会話するようになったという。「やっぱ喜んどったんかね。」とFはいう。子供ができてから一層祖母は変わったらしく、「孫が孫がみたいに」なり、「もうおばあちゃんおらな駄目やわー!」と孫をかわいがっているという。
Vの親はFとVの交際が長いのでいつ結婚するのか周りの人に聞いたりして結婚を気にしていたらしいのだが、F曰く、「やっぱり田舎のうちだから、そういう昔ながらのうち」なので、「子供ができたら男の責任」「どうする!」「何しとる!」という雰囲気があったという。Fの家にVとVの親が訪ねてきた時も「なんか謝るみたいな感じで」「そういう大げさじゃないけど、なんか、しでかしたみたいな、うちの責任みたいな感じで」 話をされたという。Fとしては「そんな全然、計画的でもないけど、できたらするっていう前提があったから、別に、ありゃあどうする?みたいな結婚じゃないつもりでおったから。別に堂々とっていうか。ねー、長いし。別にそんな・・。」という感覚だったらしい。両家共に反対する人もおらず、何の問題も無く進んだという。
仕事を続ける理由
Fは、学校を卒業してから結婚した今でも同じ会社の正社員として働き続けている。仕事は子供を産んでもずっとつづけようと思っていたかの問いには、「産んでも、辞めるつもりは無かったねー。うん。どうやったかなー。」という答えが返ってきた。自分で今までやってきたので辞めたくないという気持ちからなのかと聞くと「えー?そうでもないと思うがんだけどなー(笑)ただ大変だからかなー?なんでだろう?何で辞めんかったんだろう?(笑)あん時辞めとれば(笑)なんだろう、どうしてかな、ただ単に選べんかっただけかなー?(笑)」と答えた。専業主婦には特になりたいとは思わなかったという。その理由については、こう述べている。「ほら結構旦那さんがうちにおれっていう人多いねかね?働くなって感じでさ。そんなんじゃないがね。働けって感じなんやねか。だからかな?」Vについては、「働け派」で「なんで(妻が)うちにおらんなんがよって感じじゃない?」と述べている。
できちゃった結婚と言われることについて
自分達ができちゃった結婚って言われることに対しては何か思うかと聞くと、「できちゃった結婚じゃないよっていう。(笑)じゃないから。私としたら。違うから。」とFは言った。もう妊娠したら結婚すると決めていたからかと尋ねると、「うん、決めとったから。できたら結婚するって決めとったから、そうじゃないよって(人には言う)。」とFは答えた。
また、「なんか、ほら、いい加減みたいな感じで言う人おるねかね。そういういう言い方されると違うよって感じで、ちょっとムカっとはくるけど、うん。なんか一緒にして欲しくないって感じ?なんか今多いねかね。」と、できちゃった結婚と言われることに対する軽い苛立ちが見られる。「なんかほら、すぐできて結婚するみたいな、(自分たちはそういう)感じじゃないから、そういう言い方されるとはがやしいけどね。」と続けた。
しかし、世間体については「世間体は別に・・なんでそんな・・なんで(気にしなくちゃいけないの)?って感じ。別にいいねかって感じ。気にするっていうか、別に・・。」と、世間は関係無いといった口調だった。「やましいと思っとるわけじゃないから、親に言う時も別にね、そんな、あれだし。いいがんじゃない?(笑)だって別に普通のことやねかね。」と、できちゃった結婚に非常に肯定的な一面も見られた。
男のいる生活
Fの家には父親がいないため、「男のいる生活」というものがどんなものなのか分からなかったという。しかし、「あれしろこれしろ言われること」がすごく腹が立ったらしく、「(男がいる生活を)見てればさ、そういうもんだって分かるねか。お父さんはこういうもんだとか男の人はこういうもんだとかいうの分かるけど、そういうが見て育ってないから、理解ができんかった。」と述べている。
自然の流れに沿って生きる
Fの話にはよく「流れに沿って」「なるようになる」「自然に任せて」という言葉が頻繁に出てくる。それはFとVの生き方をよく表している。Fは自分のことを「流れに流れて沿って生活しとればなんとかなるわって感じの人」「どっちか選択あったら、難しいよりも楽なほう行く人」と自負しており、「何も考えてない。何とかなるわって感じだからいつも。全てにおいてね。人生も。」と笑っていた。子育てに対する不安について聞いても「その時の、なんか起きたことに従って生きとるって感じだから(笑)。(省略)別に何も。心配もせんし。(笑)」と明るく答えた。
VもF曰く「何も考えてない」人で、同様に「マイペース」らしい。Fは最後に、「何も難しいことはない。やったらなんとかなるから。」と頼もしく語ってくれた。