富山大学 人文地理学研究室
主な開講科目

カリキュラムの仕組み
人文地理学の授業は、大きく(1)講義、(2)調査科目、(3)文献講読に分かれ、その上に最終関門である「卒業論文」が控える形になっています。
(1) 講義は、人文地理学の様々な研究分野について座学で学ぶもので、概論(地理学を広く概観する入門的内容)と特殊講義(一定の専門分野を掘り下げて学ぶ、やや専門的な内容)からなります。このほか、当研究室では手薄な地誌学と自然地理学の二分野について、例年夏季に非常勤の先生方による集中講義が開講されています。
(2) 調査は、実習1(GISの操作方法、空間解析の技法を学ぶ)、実習2(2年生向けの野外調査実習)、実習3(3年生向けの野外調査実習)があります。2は旅程の中で、自由に調べたいことを調べていきますが、3では例年一箇所の地域に絞り、各人が決めたテーマを議論しながら調査・探求するゼミです。
(3) 文献講読は、日本語と英語の講読があり、毎週1〜2本の論文を全員で輪読し、その内容をもとにした議論をするものです。ここで、自分の興味ある分野にどのような先行研究があるかを学ぶことになります。
3年次までに身につけた座学での教養、文献講読で得た最新の知見と、野外調査やコンピュータ技能を駆使し、学生たちは4年次にいよいよ、最初から自分でテーマを決め、独力で卒業論文を書くのです。


講 義

地理学概論 (鈴木)
人文地理学は一般でいわれているような「地理」のイメージとは多少異なり、空間的に生起する様々な事象を論理的に解明する学問です。この講義では、人文地理学の基礎概念や基礎理論を概説します。空間的な秩序や法則をもって地域を理解する方法の導入的な授業です。
キーワードには、環境認知、立地論、空間的な拡散、人々の空間的行動などがあげられ、具体的な事例とともに説明されます。講義を通して、社会の中がで様々に生起する社会問題の中に地理学的に分析することができることが少なくないことを理解してもらい、地理学的なものの見方・考え方の一端を身につけて欲しいと考えています。
この講義では、これまでに人文地理学を専門として書かれた卒論も題材として取り上げますので、これから専門分野を検討しようと考えている学生の皆さんは、この授業で情報を得ると良いでしょう。


人文地理学特殊講義 (大西)
(担当者交代につき、改稿を予定しています)。

実 習 ・ 演 習

人文地理学実習1 (鈴木)
実習1は、コンピュータを用いた地図の作製や解析の基礎を学ぶ授業です。当研究室は地理情報システムを用いた空間解析の教育に力を入れており、EsriのArcGISを導入しています。GISは近年、飛躍的に操作性が向上し、今や自治体やコンサルタント、マーケティングや情報管理など、実社会の幅広い分野で活用されるようになりました。皆さんと試行錯誤しながら、地図の作成、情報管理から空間解析まで、地理情報システムの美味しい機能をまるまる使いこなせるようになりましょう。


人文地理学実習2 (大西)
日本国内から特色ある地域を選んで、都市・農山村・農漁業・鉱工業などの人文地理学的現象を3泊4日程度かけて広域的に巡検し、要所要所で簡単な現地調査を試みる実習です。巡検する地域や場所は例年、参加者全員で協議して選定されます。現地での巡検に先立ち、参加者は各自手分けして見学または調査したい地点と現象を選び、図書館やインターネットを利用したり現地自治体・団体に依頼したりして関係資料を収集し、地域の実態や課題を把握することを通じて、資料の収集と分析、巡検計画の立案や臨地で観察・調査する能力を涵養することが狙いです。


人文地理学実習3 (大西・鈴木)
一定の広がりを持つ設定した調査地域でのフィールドワーク(特定地域の総合的な地域調査)を通じて、地域の人々や地域の実態や抱える問題に関する理解を深めるとともに、作業仮説の立案・実地調査の企画から報告書の作成に至る地域調査の全過程を体験的に学び、地域調査に関する基本的な知識・技術・応用力・倫理観および説明能力(ポスターセッション・報告書)を養成する実習です。例年、一般市民の皆さんへも公開する形で成果報告会を行っています。


人文地理学実習・講読 (大西・鈴木)
演習は前期を大西、後期を鈴木が担当。どちらも、地理学的な文献の探し方と読み方、レジュメの作り方、そして議論の仕方を学んで貰うことを目的にします。
鈴木が担当する後期の演習は、同じく後期開講の人文地理学講読と対になっており、演習では日本語で、講読では英語圏で書かれた論文を、各人の興味に沿って選定して内容を紹介し、受講者全員でその内容について討論し理解を深めます。


卒 論 指 導
人文地理学教室での学修の集大成として、4年次になった皆さんに課せられる最後のハードルです。順調に単位を取ってきたら、4年次にはもう、卒論の10単位しか残されていないのが普通です。どうしてでしょう?それは、「合格」と認められるレベルの卒論を書くことは、それだけ学生にとって高いハードルだからです。それまでの長い人生でずっと「知の消費者」だった学生が、生まれて初めて(大多数の学生にとっては恐らく生涯で唯一)、自分の力で知の生産者となり、アカデミックな世界へ新たな知的情報を提供することによって、社会に貢献する側に回るのです。
ここでは、研究テーマや研究目的の設定から、実地調査の実施、調査データの分析と考察、卒業論文本体の作成までの全ての作業を独力でこなし、ひとつの論文を完成させることが最終目標です。もちろん、教員は毎週行われるゼミでの指導や適宜個々人に対して行う助言で、卒論生をサポートします。例年、年度の終わりには卒論発表会が開催され、口頭試問による審査を経て合格したものが最終的に10単位として認定され、卒業要件が(ほかに単位を取りこぼしていなければ)満たされます。