一幕一場
物語はイタリアのある都市で起こる。初めにヘレナ、フロリンダが登場する。その会話から、フロリンダは父と兄の意思によりドン・アントニオと結婚する運命にあることがわかる。しかし、フロリンダとヘレナは、自分たちの運命について父のいいなりにならないこと、二人はあるイギリス人に惚れていることを話題にする。
フロリンダはいう。
「怒ったからよ(なぜ顔を赤らめたかと訊かれ)、どんなにお父さんが私にあの憎い奴と結婚を強制することを考えていたからといって、私の美貌、生まれと財産について、また魂について、こういう無法な要求に従うより、もっといい道があることがわかっていると知らせてやるわ」(FLORINDA.: With Indignation; and how near soever my Father thinks I am to marrying that hated Object, I shall let him see I understand better what’s due to my beauty Birth and Fortune, and more to my Soul, than to obey those unjust Commands.)
ヘレナは答える。
「こんなに素敵に反抗することで、あなたを好きになれなかったら、私は駄目ね。私は悪戯な冒険が妙に好きなの。ほかに愛せるものなんてないわ。女はみんなそうだけど。でも、フロリンダ、あの素敵なイギリス人が好きではないの?あの人は愉快でハンサムだから、私は自分自身の次に好きだし、あなたが好きになれば嬉しい」(HELLENA.: Now hang me, if I don’t love thee for that dear Disobedience. I love Mischief strangely, as most of our Sex do, who are come to love nothing else? But tell me, dear Florinda, don’t you love that fine Anglese? For I vow next to loving him my self, ’twill please me most that you do so, for he is so gay and so handsom.)
つまり、フロリンダは、兄のドン・ベドロや父親の意に反し、ドン・アントニオを愛してはいない。彼女は、事実上ベルヴィル(話題になったイギリス人)を愛している。ヘレナは尼になることになっているが、彼女も別の人生設計をしている。こうした二人とドン・ペドロの意見の相違は、やがてペドロが登場して、二人と話すうちにはっきりする。カーニバルの仮面舞踏会に行く雰囲気の中の会話だったのだが、ペドロはヘレナが仮面舞踏会に行くことを禁止する。
ペドロは言う。
「カリス(使用人)、そいつを連れていってカーニバルの間閉じ込めておけ。そしてレント(四旬節)には尼僧院で永遠の懺悔期間に入ることになる」(Pedro: Callis, take her hence, and lock her up all this Carnival,
and at Lent she shall begin her everlasting Penance in a Monastery.
ヘレナは言い返す。
「かまわないわ、結婚をあなたがいうように強制されるくらいなら、もともとの予定通り尼になった方がましよ」(Hellena: I
care not, I had rather be a Nun, than be oblig’d to marry as you wou’d have me,
if I were design’d for’t.)
ペドロがいなくなると、二人はカリスに懇願し、家を抜け出し、仮面舞踏会に行く扮装をして家を抜け出す。
一幕二場
外で二人の若い娘はベルヴィルとその友達にあう。ジプシーの扮装をして、ヘレナとフロリンダは男性たちにその運命について語る。ヘレナとウイルモアが会う初めての重要なシーンである。二人ともある程度相手を愛するようになっていくが、永遠の愛を誓うほどではなく、二人の間で起こったことは基本的には語られない。
たとえばヘレナはウイルモアに次のように告白する。
「そんな風にしたいけど(美と愛の女神ヴィーナスにあやかる生き方)処女のまま死ぬという馬鹿な誓いをたててしまったのよ」(HELLENA: Why,I could be
inclined that way, but for a foolish Vow I am going to make to die a Maid.)
ウイルモアは、これに対し何とかそうした苦境を救ってやりたいと言い出す。
「本当だよ、危険を冒すように育てられ、奇麗でやさしい女性のためより、もっとくだらない大義名分で剣を振り回したことがある。どんな苦境にいるのか言ってごらん。長くかかる攻略戦でなければ、なんでも引受けるよ」(WILLMORE:
Faith, Child, I have been bred in Dangers, and wear a Sword that has been
employ’d in a worse Cause, than for a
handsome kind Woman. Name the Danger;
let it be any thing but a long Siege, and I’ll undertake it.)
「猛烈な攻撃が出来る?」(HELLENA: Can you storm?)
「ああ、本当に凄まじい勢いで」(WILLMORE: Oh, most furiously.)
「じゃあ尼僧院の壁は?私を勝ち得るには、まずそれを突破しないと」(HELLENA: What think you of a nunnery wall? for he that wins me, must gain
that first.)
「尼になるのか!ああ、それでますます君が好きになった。若い聖者くらい罪深いものはないよ。いや、本当だよ、処女のまま死なせるくらい古い法が女性にとって呪いになることはない、エプタの娘がその証だ(士帥記11.37−40:エプタが敵をやっつけてくれたら、凱旋時、家から迎えに出るものを生け贄にすると神に誓い、神に敵をやっつけてもらった。家に凱旋すると娘が迎えに出た。処女のまま死ぬことを二ヶ月嘆くことを許されたのち、処女のまま生け贄に娘はなった。)」(WILLMORE: A Nun! Oh how I love thee for’t!
there’s no Sinner like a young Saint. Nay, now there’s no denying me: the old Law had no Curse (to a Woman) like dying a
Maid; witness Jephtha’s Daughter.)
この調子で二人は話すうち、やがてウイルモアはヘレナの居所を聞き出そうとする。
「……君の居所を教えてくれるか、ねえ愛しい人、君の居所を教えてくれるか、そうでなければ私は絶望して死ぬ」(WILLMORE:……Thy Lodging, Sweetheart, thy Lodging, or I’m a dead man.)
「では不倫か殺人かの罪を女性は男性と会話すれば犯すことになるのね。で、私をただ愛するだけにするのと、私と寝ようと思えば寝られるようにするのと、違いはないの?」(HELLENA: Why must we be either guilty of Fornication or Murder, if we
converse With you Men? And is
there no difference between leave to love me, and leave to lie with me?)
「本当のところ、その二つは一体のものなんだよ」(WILLMORE: Faith, Child, they were made to go together.)
結局ヘレナは住所は教えない。しかし、後で会おうということでは一致する。次の会話で別れる。
「私の愛しく可愛い人、千の祝福を。同じ服装でディナーの後、同じ場所だよね」(WILLMORE: My dear pretty Creature, a Thousand Blessings on thee; still in this
Habit, you say, and after Dinner at this Place.)
「そうよ、あなたのハートをキープして、あれやこれやに与えないと誓うなら」(HELLENA: Yes, if you will swear to keep your Heart, and not bestow it between
this time and that.)
「小さな愛の神々(キューピッド?)にかけて誓う。ハートは君に預けるし、もし君がそれを持って逃げたら、正義の神々が私のために復讐してくれるだろうさ」(WILLMORE: By all the little Gods of Love I swear, I’ll leave it with you; and if you run away with it, those Deities of
Justice will revenge me.)
同じシーンでベルヴィルと扮装したフロリンダの間で会話がある。
フロリンダはベルヴィルが自分をジプシーだと思っているので、その手相を観る。
「それにしても、この線で、あなたは恋人になりますね」と手を覗き込んで言う。(FLORINDA:
But as I was saying, Sir, by this Line you should be a Lover. [Looking in his
Hand.])
「君の手相観は良く当たるよ、というのは、すべての男性は恋しているか、そのふりをしているからね。さあ、もう行かなければ、もう、こういう馬鹿騒ぎに飽きちゃった」とベルヴィルは歩き去ろうとする。(BELVILE:I thought how right you guess’d, all
Men are in love, or pretend to be so.
Come, let me go, I’m weary of this
fooling. [Walks away.])
「そうはさせないわ、あなたがフロリンダに誓った情熱が本当か嘘か告白するまで」と彼女は彼を引き止め、彼は何とか身を離す。(FLORINDA.: I will not, till you have confess’d
whether the Passion that you have vow’d Florinda be true or false. [She holds
him, he strives to get from her.])
「フロリンダだって!」とベルヴィルは素早く彼女の方を向く。(BELVILE: Florinda!
[Turns quick towards her.])
「静かに」(FLORINDA: Softly.)
「私をここに永遠に引き止める名前をあなたは言った」(BELVILE: Thou hast
nam’d one will fix me here for ever.)
「そしたら彼女はがっかりするでしょうね、今夜庭の門のところであなたを待って、あなたは、きっと――もう一方のあなたの手相を見せて――そこへ行くでしょうし、彼女は誓ってあなたを幸せにするか、さもなければ死ぬでしょう」と言う。(FLORINDA:
She’ll be disappointed then, who expects you this Night at the Garden gate, and
if you’ll fail not as--let me see the other hand--you will go near to do she
vows to die or make you happy.)
「それはどういう意味?」(BELVILE: What
canst thou mean?)
フロリンダは、その夜庭の門のところで会おうというメモを彼に渡す。ドン・ベドロがやってきたので、女性二人は家に帰る。
友人フレデリックと会話しながらベルヴィルは手紙を見る。
「誰の筆跡かわかるのか?」とフレデリックが言う。(FREDERICK: Do you know the Hand?)
「フロリンダのだ。高潔な乙女にすべての祝福を」(BELVILE:’Tis Florinda’s. All Blessings fall upon
the virtuous Maid.)
「夢中になっちゃ駄目だ、冷静に判断して行動しろ」(FREDERICK: Nay, no Idolatry, a sober
Sacrifice I’ll allow you.)
「ああ友よ!大歓迎のニュースだ、すごく優しい手紙だ、いや、ご覧よ、真面目なところ、太陽の下で一番幸せな男に俺はなったよ」(BELVILE: Oh Friends! the welcom’st News, the softest
Letter!?nay, you shall see it; and could you now be serious, I might be made
the happiest Man the Sun shines on.)
つまり彼女が去ってからベルヴィルは自分が話した相手はフロリンダだったと知る。
同じ場面でルセッタという売春婦が登場しベルヴィルの友達であるブラントを誘惑する。
まずルセッタはブラントをカモにしようと、次のような独白をする。
「こいつは外国人だ、目つきでわかる。もしテキパキした人間なら敢えて私についてくるだろう。そして商売をしっかりやれば、彼は私のもの。どうやらイギリス人だ。初心な愛情深い連中だと聞く。そしてあまり素朴なので頭のいい女ならどんな風にでも馬鹿にできるらしい」(LUCETTA: ’This
is a stranger, I know by his gazing; if he be brisk he’ll venture to follow me;
and then, if I understand my Trade, he’s mine: he’s English too, and they say
that’s a sort of good natur’d loving People, and have generally so kind an
opinion of themselves, that a Woman with any Wit may flatter ’em into any sort
of Fool she pleases.)
それに対し、ブラントは次のように反応する。
「ああ――彼女はうっとりしている――故郷ではお目にかかれない美人に目が開かれる思いがする」(BLUNT: ’Tis
so—she is taken—I have Beauties which my false Glass at home did not discover.)
そして彼女はブラントの近くを通り過ぎ、彼を見つめ、彼は気取って、ふんぞりかえったり、歩き回ったりし、彼女を見つめる。([She often passes by Blunt and gazes on him; he struts, and cocks, and
walks, and gazes on her.])
後で、友人たちの警告にも関わらず、彼女と逢引を重ね、そうしたことを友人は心配する。
「彼女の名前を知っているのか?」とウイルモアが訊く。(WILLMORE:
Dost know her Name?)
「彼女の名前?何で名前なんか気にするんだ?――彼女は美しく、若く、テキパキして優しい、魅惑的ですらある、だのに彼女に何か別の名前を付けることなんか気にする必要があるのか?」とブラントは答える。(BLUNT: Her Name? No, ’sheartlikins: what care I for Names?— She’s fair,
young, brisk and kind, even to ravishment: and whata Pox care I for knowing her
by another Title?)
「彼女に何かやったか?」とウイルモア。(WILLMORE:
Didst give her anything?)
「彼女にやるって!――は、は、は!だって彼女はちゃんとした淑女だ――彼女にやるとは驚いた!あんな素晴らしい女性が買えるとでもいうのか?あるいは、そういう取引があるとでも?彼女にやるって言ったな?彼女の方が、私が身につけていたダイアモンド用にこのブレスレットをくれたよ。いや、諸君、ネッド・ブラントはそこらの人間じゃない――今夜も彼女とデートだ」(BLUNT: Give her!—Ha, ha, ha! why, she’s a Person of Quality—That’s a good
one, give her! ’sheartlikins dost think such Creatures are to be bought? Or are
we provided for such a Purchase? Give her, quoth ye? Why she presented me with
this Bracelet, for the Toy of a Diamond I us’d to wear: No, Gentlemen, Ned
Blunt not every Body—She expects me again tonight.)
「まあ、それはいいが、みんなで行こうよ」とウイルモア。(WILLMORE:
Egad that’s well; we’ll all go.)
「いや誰も付いてきて欲しくない。いや、諸君、君たちは才気ある人々で、私は鈍い田舎者だ」(BLUNT: Not a Soul: No, Gentlemen, you are Wits; I am a dull Country Rogue,
I.)
「ええと、あなたの淑女さまのために、あなたの財布が盗まれていないことを喜ばしく思うけれど、それはさしあたり俺たちの全財産なんだから、一人の人物に託してしまいたくないんだよ。さあさあ、聞き分けのないことを言わないで」とフレデリックが言う。(FREDERICK: Well, Sir, for all your Person of Quality, I shall be very glad
to understand your Purse be secure; ’tis our whole Estate at present, which we
are loth to hazard in one Bottom: come, Sir, unload.)
「じゃあ必要な金はとっとけよ、俺には今は不必要だ、あんな淑女に愛されているのだから――金なんて!さあ、俺の分も取っとけよ」とブラント。(BLUNT: Take the necessary Trifle, useless now to me, that am belov’d by
such a Gentlewoman—’sheartlikins Money! Here take mine too.)
「いや、それは騙し取られるために持っておけよ。後で笑ってやるから」とフレデリック。(FREDERICK: No, keep that to be cozen’d, that we may laugh.)
「騙し取られる!――死んでもいいな!もし今夜あらん限りの愛を俺から騙し取ってくれる人と会えたら」とウイルモア。(WILLMORE: Cozen’d! —Death! wou’d I cou’d meet with one, that wou’d cozen
me of all the Love I cou’d spare to night.)
「馬鹿な、絶対ただの売春婦だ」とフレデリック。(FREDERICK:
Pox ’tis some common Whore upon my Life.)
「売春婦だって!あんな服!あんな宝石!あんな家!あんな家具!あんな召使!それで売春婦!」とブラント。(BLUNT: A Whore! yes with such Clothes! such Jewels! such a House! such
Furniture, and so attended! a Whore!)
イタリアには、いわゆる高等娼婦がいることを説明してもブラントは納得しない。その後どうなったかを見るため、三幕二場を先に説明する。
三幕二場(ブラントの逢引の結果を見るため一足先に)
三幕二場が始まると、ルセッタの家で、ルセッタとブラントが会話する。
「さあ、ここでは安全で自由よ、私の嫉妬深い年寄りの夫も帰ってくる気遣いはないし、あなたがやってきたとき、ちょっとそれが気になったけど、今は愛こそすべての魂の働きだわ」とルセッタ。(LUCETTA: Now we are safe and free, no
fears of the coming home of my old jealous Husband, which made me a little
thoughtful when you came in first, but now Love is all the business of my Soul.)
「うっとりしてしまった。(独白)――畜生、恋人が言うような気が利いた台詞を言えない。来る前にフレッドから聞いて覚えておけばよかったのに、馬鹿だった。何か言わなくては。――愛しい人、私は挨拶に慣れていませんが、正直な紳士で、あなたの忠実な召し使いです」とブラント。(BLUNT: I am transported.--[Aside.]Pox on’t, that I had but some fine things to
say to her, such as Lovers use. I
was a Fool not to learn of Fred a little by Heart before I came. Something I must say.—‘Sheartlikins,
sweet Soul, I am not us’d to complement, but I’m an honest Gentleman, and thy humble Servant.)
「そうした恩顧に応えられなくてすみません、でも、そうした愛が素晴らしいものでないはずはありません、というのは、そのお顔、姿形を拝見した最初から、私は完全に虜になってしまいましたから」とルセッタ。(LUCETTA: I have nothing to pay for so
great a Favour, but such a Love as cannot but be great, since at first sight of
that sweet Face and Shape it made me your absolute Captive.)
それからルセッタはすぐに側に行くからと言い、服を脱ぐから待て、そんなに待たせないと言う。そしてサンチョというルセッタのヒモ(pimp)が現れ、彼女の私室に案内すると言う。その重々しい態度をブラントはすっかり信用する。
三幕三場
ブラントが服を脱ぎ、ルセッタが待つベッドに入ろうとすると、ルセッタは灯を消すように言う。暗闇の中で、ベッドが沈み込み、ブラントは手探りで探す。
初め、それはルセッタの悪戯だと思い、「可愛い愛の悪戯」などと言っているが、やがて、部屋中探ってもベッドがないと気付き、「悪戯が過ぎる」と叫ぶ。そして「騙された」と叫びながら落とし穴に落ちてゆく。
やがてフイリッポというルセッタの情夫(gallant)が現れ、ルセッタと首尾よく騙せたことを喜ぶ。ベッドに入ろうと服を脱いで跳びこもうとして、落とし穴に落ちたので、結果的にブラントの身に付けていた金目のものは、すべてルセッタたちのものになった。
「これは俺たちの安全のためだよ。彼は我々が見知らぬ人というだけでなく、外国人だ――溝に落っこちて別の通りに行ってしまったから、この灯りを二度と見つけられない――お前の名前も、家がある通りも、自分自身の宿に辿り着く道も知らない」とフィリポ。(PHILIPPO: That’s our security; he is not only
a Stranger to us, but to the Country too—the Common–Shore into which he is
descended, thou know’st, conducts him into another Street, which this Light will
hinder him from ever finding again—he knows neither your Name, nor the Street
where your House is, nay, nor the way to his own Lodgings.)
「情け容赦のない悪い人ね、たったの一晩も彼に与えないで、これだけ奪うなんて――そこまで悪い人にはなりたくなかったわ」とルセッタ。(LUCETTA: And art not thou an unmerciful
Rogue, not to afford him one Night for all this?—I should not have been such a
Jew.)
「そう責めるなよ、ルセッタ、たっぷり分け前はやるからさ――さあ、そんなこと考えたらむずむずしてきた――ベッドへ行こう――サンチョ、鍵を閉めておけ。これは馬鹿が着る毛皮で頭のいい人間の分け前さ」とフィリポが言う。(PHILIPPO: Blame me not, Lucetta, to keep as
much of thee as I can to my self—come, that thought makes me wanton,—let’s to
Bed,—Sancho, lock up these./ This is the Fleece which Fools do bear,/ )
Design’d for witty Men to sheer.
二幕一場に戻る
男性たちは1000クラウンで売春をしているアンジェリカの家にやってくる。ドン・アントニオは価格が適当だと認め(売春に応じようとす)る。これをドン・ペドロはドン・アントニオと婚約している妹フロリンダへの侮辱と見て、ドン・アントニオと決闘しようとする。アンジェリカの絵姿の美しさに圧倒され、絵をウイルモアは引き摺り下ろし、ドン・アントニオと闘いになる。とうとう、アンジェリカは闘いを止めさせ、ウイルモアを招き入れる。
二幕二場
アンジェリカがウイルモアに愛を誓うが、ウイルモアは女性を信用しない態度を見せる。
「どうも私を信用してないようね」とアンジェリカが怒った調子で言う。(ANGELICA: I find you cannot credit me. [In an angry tone.])
「俺を使い走りの馬鹿だと思ってるのか。なだめて信用させられると。そして快楽に利用できると。しかし、奥さん、俺は誓い破りの優しげな幻惑する偽善者に何度も騙されたので、騙す性である女性は信用しない。特にあなたのような職業の女性はね」とウイルモア。(WILLMORE: I know you take me for an errant Ass, / An Ass that may be
sooth’d into Belief,/ And then be us’d at pleasure./ But,
Madam I have been so often cheated/ By perjur’d, soft,
deluding Hypocrites,/ That I’ve no Faith left for the cozening Sex,/
Especially for Women of your Trade.)
「あなたに見下されたので、多分、心(あなたに捧げた)を取戻したようね。私は愛よりプライドの方が上回った心境になったわ」と彼女は誇りに満ちてそっぽを向き、彼は引き止める。(ANGELICA: The low esteem you have of me, perhaps / May bring my
Heart again: / For I have Pride that yet surmounts my Love. [She turns with
Pride, he holds her.])
「そんなプライドは捨てなさい、至福の敵だから。そして愛の力を見せてご覧。そうした武器でこそ私は征服され、奴隷にされる」(WILLMORE: Throw off this Pride, this Enemy to Bliss, / And shew the Power
of Love: ’tis with those Arms / I call be only vanquisht, made a Slave.)
ここでウイルモアの不実がわかる。舞踏会のシーンでヘレナに彼は愛を告白したのに、ここでは、結局アンジェリカとベッドをともにし、彼女を愛することを約束する。
三幕一場
「ああ、あの気が狂った殿方に会わなければよかったのに。でも、あなたに笑われても私は恋に落ちてはいないけれど、良心にかけて、このちょっと知り合ったことが頭から離れないのよ」とヘレナはフロリンダに言う。(HELLENA: Ah! would I had never seen my
mad Monsieur. And yet for all your
laughing I am not in love. And yet
this small Acquaintance, o’my Conscience, will never out of my Head.)つまりヘレナは、ウイルモアを愛してはいないが、忘れることもできないという。
ウイルモアが登場するとヘレナはその会話を立ち聞きする。
「……おお、ああした高等娼婦、彼女の腕の中で眠るのは新鮮な空気の中によこたわるようなもの、あたりの空気がかぐわしい」とウイルモアが言う。(WILLMORE: …… Oh such a Bona Roba, to sleep in her / Arms is
lying in Fresco, all perfum’d Air about me.)
それを聞いて、ヘレナは「馬鹿をやるのを見事に促してくれるわ」と独白する。(HELLENA: Here’s fine encouragement for me to fool on.
[Aside.])
つまり、その夜早く別の女性と一緒にいたことを知り、ウイルモアの背中をぽんと叩いて、その日何をしていたか問う。ウイルモアは驚き、立ち聞きされなかったことを願いつつ、一日中彼女を探していたと嘘を言う。
「ご苦労様にも、私を探していた」とヘレナ。(HELLENA: In tedious search of me.)
「本当に、そうだよ。恋するようになって以来、どんなに憂鬱な犬のようになっていたか、見せてあげたい。手を袖に入れて、堅物の僧侶のように通りを歩いて。本当に、愛しい人、哀れだった」とウイルモア。(WILLMORE: Egad, Child, thou’rt in the right, hadst thou seen what a
melancholy Dog I have been ever since I was a Lover, how I have walkt the
Streets like a Capuchin, with my Hands in my Sleeves--Faith, Sweetheart, thou
wouldst pity me.)
「それじゃ、どんなことがあっても彼に怒れないわ、こんなに心のこもった嘘をつくのだから」とヘレナは独白し、「ああ、良いお方、何て辛いことをさせてしまったのでしょう。こんなに忠実な召し使いに報いなければ私は忘恩の徒だわ」といった調子になる。(HELLENA: Now, if I should be hang’d, I can’t be angry with him, he dissembles so
heartily--Alas, good Captain, what pains you have taken; Now were I ungrateful
not to reward so true a Servant.)
つまり奇妙なことに、彼が見事な嘘をついて、やったことをごまかそうとしたので、かえって彼に腹を立てられなくなる。そうした会話の最中にアンジェリカが気付かれぬように登場し、自分が恋におちた相手であるウイルモアが別の女性を口説いているので、嫉妬の怒りをつのらせ「もう我慢できない。といって彼を止められない。そんなことをしたら嫉妬のあまり理性が破壊され彼をぶちのめすことになる」といった独白をする。(ANGELICA: I can endure no more. Nor is it fit to interrupt him; for if
I do, my Jealousy has so destroy’d my Reason,I shall undo him.)*
三幕六場(二〜五場は省略)
その夜遅く、フロリンダとベルヴィルが駆け落ちする計画は、酔ったウイルモアがフロリンダに絡んで破綻する。相手がベルヴィルでないと気付いてフロリンダは驚く。
「ベルヴィルじゃないわ――驚いた、知らない人だ――あなたは誰でどこから来たの?」(FLORINDA:’Tis
not my Belvile—good Heavens, I know him not.—Who are you, and from whence come
you?)
「お願いだから――お願いだから可愛い子ちゃん――そんな堅い質問をしないで――俺がここにいるだけで満足しろよ、ねえ――さあ、さあキスしておくれ」とウイルモア。(WILLMORE: Prithee—prithee, Child—not so many hard Questions—let it suffice
I am here, Child—Come, come kiss me.)
「ああ神様!私の運命はどうなるのでしょう?」(FLORINDA:
Good Gods! what luck is mine?)
「良い運だよ、とびっきり良い運だ――ここへお出で――これは繊細で輝くような娘だ――本当に彼女は香る、匂いのいい花束のようだ――お願いだから、愛しい人、馬鹿なことをしないで、時間が惜しい――貴重な時間――今ちょっと酔っているけれど、絶対誓って正直な男だよ――さあ、お出でよ――ねえ、俺に拘束されることはないよ、秘密にするから。絶対恩に着せることはしない――君の名前は絶対知ろうとしないから」(WILLMORE: Only good luck, Child, parlous good luck.—Come hither,—’tis a
delicate shining Wench,—by this Hand she’s perfum’d, and smells like any
Nosegay.—Prithee, dear Soul, let’s not play the Fool, and lose time,—precious
time—for as Gad shall save me, I’m as honest a Fellow as breathes, tho I am a
little disguis’d at present.—Come, I say,—why, thou may’st be free with me,
I’ll be very secret. I’ll not boast who ’twas oblig’d me, not I—for hang me if
I know thy Name.)
「何ということ!何て汚らしい獣なの、こいつは!」(FLORINDA:
Heavens! what a filthy beast is this!)
「そうだよ、で、お互い獣なんだから出来るだけ早く私と寝ようよ――というのは、ねえ、可愛い子ちゃん、それは罪ではないんだよ、あらかじめ計画したものじゃないから、お互い、全くの偶発事件なんだから――それは今や確実なことだよ――本当に私が君を愛し、君が貞節を誓えば――誓って私を信じ、私に征服されるまで寝れば――だから君は(君は敬虔なクリスチャンだから)私を拒絶しなければならない良心の呵責なんてないよ。さあ――お出で、自然に振舞うんだ、余計なおしゃべりをせず」(WILLMORE: I am so, and thou oughtst the sooner to lie with me for that reason,—for
look you, Child, there will be no Sin in’t, because’twas neither design’d nor
premeditated; ’tis pure Accident on both sides—that’s a certain thing
now—Indeed should I make love to you, and you vow Fidelity—and swear and lye
till you believ’d and yielded—Thou art therefore (as thou art a good Christian)
oblig’d in Conscience to deny me nothing. Now—come, be kind, without any more
idle prating.)
「おお、破滅だわ――凶悪な奴、放してよ」(FLORINDA:
Oh, I am ruin’d—wicked Man, unhand me.)
「凶悪だって!何てことだ、可愛い子ちゃん、わかるだろう、若くて元気な男性が君のような目を見たら、それが最初の一撃だということが――最初に始めたのはそちらだ――さあ、お願いだから時間を無駄にしないで、さあ――ここは素敵な便利のいい場所だ」(WILLMORE: Wicked! Egad, Child, a Judge, were he young and vigorous, and saw
those Eyes of thine, would know ’twas they gave the first blow—the first
provocation.—Come, prithee let’s lose no time, I say—this is a fine convenient
place.)
「お願いです、放してください、懇願します、さもないと叫びますよ」(FLORINDA:
Sir, let me go, I conjure you, or I’ll call out.)
「はい、はい、せいぜい君がどんなに素晴らしく私を扱ったか証言する人を呼ぶんならどうぞ」(WILLMORE.: Ay, ay, you were best to call Witness to see how finely you treat
me—do.—)
「叫びますよ、殺人、強姦とか、何でも、すぐに放さないと」(FLORINDA:
I’ll cry Murder, Rape, or any thing, if you do not instantly let me go.)
「強姦だって!さあ、さあ、嘘だろ、お転婆娘、嘘だろ。君が俺と同じくらい乗り気でないと世間の人に信じ込ませることは、今や出来ないよ。いや、君はやりたいんだ――この夜の時刻に蜘蛛の巣をはって――つまり戸を開け放って、親愛なる蜘蛛さん――蝿を捕まえようとする以外に何がある?――はあ、お出で――でないと本当に怒るよ――何でこんなに面倒なんだ――」(WILLMORE: A Rape! Come, come, you lye, you Baggage, you lye: What, I’ll warrant
you would fain have the World believe now that you are not so forward as I. No,
not you,—why at this time of Night was your Cobweb–door set open, dear
Spider—but to catch Flies?— Hah come—or I shall be damnably angry.—Why what a
Coil is here.—)
金が要るならここにある、といった会話になり、あわやというとき、幸いにもベルヴィルとドン・ベドロが彼女を救い出し陵辱を免れさせる。
三幕六場
庭から男性たちが去った後、ウイルモアはドン・アントニオと喧嘩になり、今回は負傷させる。「殺人だ!」という小姓の叫びにベルヴィルが舞台に再登場し、辺りを探っていると、兵隊と将校が登場してベルヴィルを逮捕する。不幸にも、ベルヴィルが傷害の犯人である疑いをかけられる。
四幕一場
ドン・アントニオは誤認逮捕を認め、彼を許すが、翌日、自分の代わりにドン・ベドロと闘うようにさせる。
四幕二場
翌日、扮装したベルヴィルはペドロをやっつける。不幸にも、彼がフロリンダを勝ち得ようとしたとき、ペドロは彼がベルヴィルと闘っていたと気付き、結婚を阻止しようとする。アンジェリカがウイルモアに裏切られたと知り、凄まじい勢いでウイルモアを追及する。
四幕三場
フロリンダは逃げ出して結婚することにする。
四幕四場
フロリンダは、とある家に逃げ込む。そこは偶然ベルヴィルの宿である。
四幕五場
フロリンダが偶然入り込んだベルヴィルの宿にはブラントがいる。ブラントに娼婦とみなされ、娼婦に騙されて傷ついているブラントから罰してやると脅される。フロリンダは、どうしてそんなに残酷なのかと抗議する。
「残酷だって、本当にガレー船の奴隷やスペインの娼婦のようにな。残酷だよ、そうだ、お前をキスして叩いてやる。お前の身体全体にキスして、眺めてやる。お前は俺と寝なければならない。俺が歓楽が好きだからではない。お前に慎重に意地悪をすることで、ある娼婦の罪について別の娼婦に復讐していることを示すためだ。お前に微笑みかけ、お前を騙し、お前におべっかを使い、お前を叩き、キスして誓い、お前に嘘をつき、お前を抱きしめ、強姦する、ちょうど彼女が俺にしたように。お前にじゃれつき、お前を素っ裸にして、俺の窓の外に逆さに吊るしてやり、胸に堕落した女性を讃える下劣な詩を書いた紙をくっつけてやる――さあ、来い」とブラント。(BLUNT: Cruel, adsheartlikins as a Gally–slave, or a Spanish Whore: Cruel,
yes, I will kiss and beat thee all over; kiss, and see thee all over; thou
shalt lie with me too, not that I care for the Injoyment, but to let you see I
have ta’en deliberated Malice to thee, and will be revenged on one Whore for
the Sins of another; I will smile and deceive thee, flatter thee, and beat
thee, kiss and swear, and lye to thee, imbrace thee and rob thee, as she did
me, fawn on thee, and strip thee stark naked, then hang thee out at my Window
by the Heels, with a Paper of scurvey Verses fasten’d to thy Breast, in praise
of damnable Women—Come, come along.)
「ああ、では、私は女性が犯す最も悪名高い罪の犠牲にならねばならないのですか?あなたがおっしゃる罪を理解出来ません」とフロリンダ。(FLORINDA: Alas, Sir, must I be sacrific’d for the Crimes of the most infamous
of my Sex? I never understood the Sins you name.)
「理解しろ。お前が彼を愛しているとか、お前たちの一人が正しく正直だとか、馬鹿を説得しろ。俺が安易な伊達男ではなかった(のが悪い)とか、奇妙なありそうもない話をでっちあげろ。お前の抗議の嵐と同じ程度しか信用されないだろうよ。堕落した偽善者たちの世代め!おべっかを使って俺の背中から、まさに服を剥ぎ取りやがった。騙すにたけた魔女たちめ!これが、お前たちを信頼し、信じ、愛する正直な紳士へのお返しなのか?――しかし、俺はお前と一緒にいることさえなかったかも知れないのだが――来い、さもないと」とブラントはフロリンダを引っ張る。(BLUNT: Do, persuade the Fool you love him, or that one of you can be just
or honest; tell me I was not an easy Coxcomb, or any strange impossible Tale:
it will be believ’d sooner than thy false Showers or Protestations. A
Generation of damn’d Hypocrites, to flatter my very Clothes from my back!
Dissembling Witches! are these the Returns you make an honest Gentleman that trusts,
believes, and loves you?—But if I be not even with you—Come along, or I shall— [Pulls her
again.])
そこへフレデリックがやってきて、フロリンダはベルヴィルから貰った指輪を見せ、ブラントもちゃんとした女性を娼婦のように扱う間違いを犯しそうだったと気付く。
五幕一場
ベルヴィル、ウイルモアも帰ってきて、ブラントと娼婦の関係でひとしきり騒ぎがある。フロリンダの兄、ペドロもやってきて、ベルヴィルはペドロに見つからぬようにフロリンダを救うのに苦労する。兄に邪魔される前にフロリンダはなんとか、神父を呼んで、ベルヴィルと結婚する。追いかけてきたベドロは、あるところで急に態度を変え、二人を祝福する。最後の場面で、ヘレナとウイルモアは結婚することにする。