Attack on America
アメリカ同時多発テロ…あれからいくらか時間が流れました。日本のニュースの話題にも上らなくなって、ずいぶん昔のことのように思う人も多いことでしょう。
私はアメリカに、特にニューヨーク市に憧れています。どこがどう好きかと問われても困りますが、海外に行ったことのない私が、死ぬまでに一度は必ず行っておきたいと思うところです。
アメリカには、私の大叔父が住んでいます。住んでいるところは西海岸なので、事件の被害には幸いにも遭わずに済みました。しかし、動揺したアメリカ人の中には、報道を見て"Remember Pearl Harbor!" と、日系人やホテルに滞在していた日本人観光客を罵った者もいたそうです。実際、私も同じことを言われました。
そのとき私は自宅でインターネットをしていました。世界中の動物好きが集まるチャットルームで、オーストラリア、中国、韓国、そしてアメリカから、愛犬自慢をしていました。私も愛犬の写真をHPに公開してチャットに参加していました。つたない英語をみんながフォローしてくれて、国際交流とはこんなに素晴らしいものなのか、なんて思っていました。
しかしその途中、黒煙立ち上るWTCの映像が、世界中に報道されたのです。私は恋人から「テレビ見てるか?すごいことになってるぞ!」と電話をもらって慌ててテレビをつけたところでした。そして私は我が目を疑いました。
abcNEWS.comより
慌ててチャットに戻り、アメリカから参加していた人とその話をしました。その人はニューヨーク出身ではないので直接の被害はなかったようです。最初はまさかあのビルが倒壊するとは誰も思っておらず、のんきに犬の話を続けていました。しばらくして参加してきた興奮気味のアメリカ人に、あろうことか私はタイプミスで挨拶してしまいました。
Miho>Hello!
と言うはずが、
Miho>Hell
でエンターを押してリロードしてしまいました。その人は怒りました。ただでさえ興奮しているところへ、のんきなイエローモンキーに「死んじまえ」などと言われては起こっても仕方ないでしょう。すぐさま私は、タイプミスだから誤解しないで、ごめんなさい。と発言し、周りのみんなも「Don't mind.」と言ってくれました。
しかし当の本人はもうキレた後で、私が何を言って謝っても取り合ってくれず、最後には
「hellだって?じゃあこっちはkillだな!卑怯なジャップめ!パールハーバーと同じようにおまえらがやったんだろう。俺たちアメリカ人が何をしたって言うんだ!」
と激怒。テロは私のせいではないにしろ、彼を怒らせたのは私のタイプミスです。とにかく私は平謝りですが、言葉が足りない上に対面していない会話ですから、こちらの誠意がなかなか伝わりません。何も言い返せず黙っていた私に、彼は猛攻撃をかけました。それすら何を言っているかわからないほど俗で下品な言葉で罵っていました。
すると、周りのみんなが彼に反論してくれました。「彼女(私)がやったんじゃないのは明白だ。日本人が卑怯というのは誤解もいいところだろう。」「まだ英語を勉強している途中の学生になんてひどいことを言うんだ。」「いい加減にしなさい」と言ってくれたのです。もう私は感動してしまって涙が出てしまいました。
それと同時に、一部のアメリカ人にとって日本人は戦争犯罪者というイメージが強く、卑怯で残忍な人種だと思われているということを実感しました。どこへ行っても歓迎されるわけではない、ということ。それだけのことを、過去の日本人はしてしまったということ。そしてその意識が時間の中で風化するにはあまりにも大きいということ…。
私たち日本人は、アジアに対して取り返しのつかないことをしました。それは曲げられない事実であって、どれだけ非難されても仕方のないことでしょう。真珠湾攻撃のことも、もちろんそうです。年輩の日本人が、朝鮮人や中国人を差別したり、保守的なアメリカ人が日本人を差別したりするのは仕方のないことかも知れません。
しかし、私たちのような戦争を知らない若い世代は、過去のことからは離れたところで国際交流をしていけるのではないでしょうか。今、私たちに必要なことはなんなのか、それを考えられるはずです。この先ずっと、過去の戦争にとらわれてギクシャクするのはナンセンスです。だからもっと平らなところに立って、等身大の国際交流をしていければいいな、と思います。