イギリス文学史



シェークスピア(Shakespeare)について

☆生い立ち☆
 彼は1564年イングランドの中部、オックスフォードの北西約60キロの付近にある小さな町、ストラトフォードにある商家の長男として生まれた。18歳のとき8歳年上のアン・ハサウェイと結婚し、3人の子供をもうけた。1587年頃、ロンドンに出て、宮廷お抱えの劇団に入り、自ら舞台に立つこともあったが、やがて脚本の手直しなどをやるかたわら、詩人になり劇作家となっていった。
 以後20年間に37の名義曲と数多くの詩を残し、最後に舞台監督や劇場主となって財をナスに至ったが、1610年頃故郷のストラトフォード・アポン・エイボンに戻り、その後は筆を執ることなく1616年4月23日に亡くなった。
 当時の作家で彼ほどその生い立ちや伝記が明確になっているものはない。
 作品以外で自分を主張することなく、自分の作品に対しての批評にも沈黙を守っている。そんな彼はGentle,Sweetと評されるのも当然である。
 シェークスピアの作家としての20年は4期に分けられている。

 第一期
 1591年からの5年間で、創作修業の時代とされる。おそらく人の書いた駄作を改作したり、座頭から請われて書いたものが多い。従って「リチャード三世」など史劇が多く後に「ロミオとジュリエット」「真夏の世の夢」「ベニスの商人」などの悲喜劇がある。

 第二期
 1597年から1600年までで、「ヘンリー四世」「お気に召すまま」などがあるが、喜劇風の作品が多く、第一期の作品のような緊張感がないといわれる。

 第三期
 1600年から1609年で、一般に「ジュリアス・シーザー」「アントニーとクレオパトラ」をはじめ、四大悲劇といわれる「ハムレット」「オセロ」「マクベス」「クレオパトラ」がこの時期である。

 第四期
 最後の第四期は1613年までである。先の四大悲劇でもハムレットのようにあくまで悲劇に終わるものであるが、リヤ王となる憎悪さえ抱かせるという余裕が見られるようになる。その延長がこの時期の作品だという。「王女シンべリン」「冬物語」があり、自ら完成した最後の創作「テンペスト」で終わるのである。


☆シェ―クスピアの作品☆
 歴史劇(Histories)
  ヘンリー六世 三部作(1590−92)
  リチャード三世   (1592−93)
  ジョン王      (1596−97)
  ヘンリー五世    (1598−99)
  ヘンリー八世    (1612−13)

 悲劇(Tragedies)
  ハムレット     (1600−01)
  オセロー      (1604−05)
  リア王       (1605−06)
  マクベス      (1605−06)
   →この四つを四大悲劇と呼ぶ。

  タイタス・アンドロニカス (1593−94)    アントニーとクレオパトラ  (1606−07)
  ロミオとジュリエット   (1594−95)    コレオレーナス       (1607−08)
  ジュリアス・シーザー   (1599−1600)    アテネのタイモン      (1607−08)

 喜劇(Comedies)
  間違いの喜劇    (1592−93)       ヴェニスの商人        (1596−97)
  じゃじゃ馬ならし  (1593−94)       空騒ぎ            (1598−99)
  ヴェローナの二紳士 (1594−95)       ウィンザーの陽気な女房達   (1598−99)
  恋の骨折り損    (1594−95)       お気に召すまま        (1599−1600)
  夏の世の夢     (1595−96)       十二夜            (1599−1600)
  
 暗い悲劇[問題劇](Dark Comedies/Problems)
  トロイラスとクレジタ  (1601−02)
  終わりよければすべてよし (1602−03)
  尺には尺を       (1604−05)

 悲喜劇[ロマンス劇](Trage Comedies/Romances)
  ペリクルーズ    (1608−09)
  シンベリン     (1609−10)
  冬物語       (1610−11)
  あらし       (1611−12)


☆「四大悲劇」について☆
  普通「シェークスピアの四大悲劇」といっているのは、ある一定の期間に集中して書かれた悲劇のみについて付いている呼び名である。悲劇作品としての良さの順序を言い表しているわけではない。四大悲劇は1600年ごろから07年頃にまとまって書かれたものをさす。シェークスピアとしては中年の頃である。

「オセロー(Othello)」
  オセローは、ヴェニス政府に仕えるムーア人である。彼は数々に手柄を立て、周囲から尊敬されていた。その彼が護官の娘デズデモーナに恋をし、彼女も彼を愛するようになった。彼女は父ブラバンショーの反対を恐れ、屋敷を抜け出して密かに二人は結婚式を挙げたのだった。
  オセローの旗手であるイアーゴーは愛想のよい外見の下に、卑しい本性を隠している人物である。彼は副官になれなかったことでオセローを憎み、常に彼を陥れることを考えていた。そこで彼はヴェニスの紳士であり、デズデモーナに恋をしているロダリーゴをそそのかし、彼とともにブラバンショーの屋敷へ行く。オセローとデズデモーナが結婚したという知らせに逆上したブラバンショーは、一隊を集めて 自分の娘を盗んだオセローを探しに通りに飛び出す。まもなく彼はオセローが元老院に向かって行くところに出会う。剣を抜くブラバンショーにオセローは、剣をしまわせて大公が来ていることを告げる。
  まだ話は続くのだが、この劇の見どころを紹介する。この劇で最も印象的なシーンは5幕3場である。それはデズデモーナが無実の罪を着せられ、どんな身の潔白を訴えても夫に聞き入れてもらえず、就寝前に「柳の歌」を歌う場面である。「柳」は西洋では、報われぬ恋、実らぬ恋を表す。『ハムレット』のオフィーリアが死ぬ場面でも、柳の木が茂っている。つまりなぜデズデモーナはこの歌を歌うかというと、ただ少女が歌っていたから思い出したという理由だけではなく、夫への忠実な愛、そして自分自身を信じてもらえず、悲嘆に暮れる彼女の心情を表しているのである。 そして歌が頭から離れないと言っているのは、自分も死期が近いことを悟っていたのだと思われる。

「リア王」(King Lear)
 T,ブリテンの王リアは、王位を退き3人の王女に領地を分配するが、その際娘たちに最も自分を愛しているのは誰か聴かせてくれという。長女のゴナリルと次女のリーガンは父に対する愛は何よりも深いものであると伝える。しかし、姉たちのように父の機嫌を取ろうと心にもないことを口にすることを拒んだ三女のコーディリアは、自分の正直な気持ちだけを伝えようとする。そのコーディリアの言葉に腹を立てたリアは彼女に与えるはずだった領地を姉たちに分け、彼女を勘当してしまう。
 U,エドマンドはエドガーをうまく言いくるめ、グロスターにエドガーが父親の命を奪おうとしたが、失敗して逃げたのだと信じ込ませる。
   ゴナリルの家を飛び出したリアは、リーガンの家へ向かうが、リーガンからも冷たくあしらわれる。彼女とそこへやってきたゴナリルのやり取りから、リアは二人の本性に気付き、怒り泣き叫ぶ。
 V,怒り狂ったリアは道化一人を連れてリーガンの家を飛び出し、嵐の中「風よ吹け!!」と叫ぶ。
  グロスターの屋敷では、エドマンドが父親を裏切り、グロスターのところに来た一通の密書をリーガンの夫コーンウォルに渡してしまう。それを読んで、グロスターがリアを元の地位に戻そうと企んでいると知ったリーガンは、彼の両目をくりぬき追放してしまう。
 W,こじきに変装し、身を隠していたエドガーは荒野で両目をつぶされたグロスターに出会う。父の変わり果てた姿に思わず自分の正体を明かしてしまいそうになるが、ドーバーの絶壁まで連れて行ってくれという父の願いを聞き入れる。
  視力を奪われたグロスターの手を取ったエドガーは、崖の上に着いたと嘘をつく。グロスターはそこから飛び降りたつもりになる。しかし、前に倒れただけのグロスターのもとにリアがやってきて、彼らは互いを気の毒に思い泣く。そこへコーディリアの兵士がリアを迎えにやってくる。
  リアたちが去ったあと、こじきに変装していたエドガーは父に正体を明かす。
  父に勘当され、フランス国王の妃となっていたコーディリアは父を救うためフランス軍を率いてブリテンへやってくる。そのコーディリアのもとでリアは目を覚まし、自分のしたことを詫びる。
 X,グロスター伯となっていたエドマンドは自分の計画を実行するために、ゴナリルとリーガンに結婚をほのめかして言い寄り、見方につけていた。しかし、その二人がエドマンドをめぐって口論を始める。3人が去ったあと。一人残ったゴナリルの夫オルバニーのもとに、エドガーが一通の手紙を持ってやってくる…。

「マクベス」(Macbeth)
 スコットランド国王ダンカンは、ノルウェイと戦いで活躍した将軍マクベスに、恩賞として領地コーダァを与える。同時に、ダンカンは自分の息子マルカムを王位継承者と定める。マクベスと将軍バンクォウは荒野で三人魔女に出会い、マクベスは「いずれは王となられる方」という予言を、バンクォウは「王様を生むだろうよ、自分じゃなれないが」という予言をそれぞれ聞く。そこでマクベスは国王の座も手に入れようと、妻と共に国王暗殺の計画を立てる。
 インヴァネスにあるマクベスの城では、国王を向かえるための宴会が催されている。そこから一人抜け出したマクベスは怯え、暗殺計画を中止にしようとするが、マクベス夫人に後押しされ、深夜ダンカンを殺害する。
 翌朝、ダンカンの死体が発見される。マクベスは前日門番をしていた二人が暗殺者であるといい、二人を殺害する。その場にいた国王の二人の息子は身の危険を感じ、スコットランドを離れる。しかしスコットランドの貴族であるマクダフは、真犯人はマクベスであると気付き、同じく貴族であるロスにそのことを告げるのである…。
 マクベス夫人はこの作品でとても重要な役割を果たしている。国王暗殺の際には、劇中何回か登場する三人の魔女たちよりも悪女ぶりを発揮していて、気の小さいマクベスに対して、度胸のある女性であることが分かる。しかし国王の死後、彼女は良心の呵責にさいなまれ、夢遊病になってしまう。妻の死を知ったマクベスは、愕然となりそれは彼の破滅を意味しているのである。

「ハムレット」(Hamlet)
 舞台はデンマーク、エノアシア城。主人公ハムレットの父親である先王ハムレットが亡くなり、ハムレットの母親である王妃尾フィーリアは夫の葬儀後すぐに、先王の弟クローディアスと結婚する。そのため現デンマーク王はハムレットの叔父にあたるクローディアスである。
 城の見張り従臣たちの間では、夜中の一時になると武装した先王そっくりな亡霊が現われるという噂が立つ。そのことを親友の保冷ショーから聞いたハムレットは実際に自分の目で確かめようと亡霊を待ち構える。すると死んだ父親そっくりの亡霊が姿を現し、はじめは半信半疑であったが、本当に父親の亡霊であると知る。そこで彼の死の本当の理由を聞かされる。ガードルードは夫を裏切ってクローディアスと不義の仲になった。そのクローディアスに昼寝をしていたところを耳に毒汁を注ぎ込まれ、殺されたというのだ。以前から父親の死に疑問を感じ、母親と叔父に対して不信感を抱き始めていたハムレットは、亡霊の告白を信じる。そして自分の恨みを晴らしてくれるように頼み消える。 真実を知ったハムレットは「父をわすれるな、父の頼みを」という言葉を胸に刻み、復讐を固く誓う。


☆感想☆
 シェークスピアに関しての私の知識はとても乏しかった。しかし、調べてみるうちにとても有名な作品が彼の作品だったりして私の乏しい知識が少しばかり豊富になった気がした。あらすじを読んでみるとなかなか興味深いものが多い。私は「オセロ」というタイトルの曲を演奏したことがある。もちろん、このシェークピアの作品「オセロ」をモチーフにしたものだ。演奏した当時はあらすじについてあまり知らなかったので、曲とあらすじを照らし合わせて見てみるともっと楽しめそうだ。シェークスピアは奥深いような気がした。