About Dickens

イギリス文学史

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私は大学の講義『イギリス文学史』の中で、ケンブリッジ英米文学史のディケンズについて書かれた項目の訳をしました。彼について調べたことをわずかながら載せたいと思います。


↓Charles John Huffam Dickens(1812〜1870)↓

↓課題である訳の方から↓

X. Dickens

§9. Christmas Books

ディケンズはクリスマス物語集の序文の後半で、クリスマス物語を「愛すべき寛大な思考を喚起する気まぐれな仮面劇のようなものだ」としている。その後、無知で軽率な作家は彼が“心を豊かにしまた、ベストを着る季節である”というクリスマスの一般的な意見を生み出したと信じたこともあった。文学全世代からの評価やたくさんの論争は、この愚行を論破した。そしてディケンズが靴墨工場で働いていたとき(注1)に、ワシントン・アーヴィン(注2)がブラスヴィレッジホールを書いたという単なる事実は、そのひどい無知さを露呈させるには十分である。しかし、クリスマスがおいしいご飯と良い気分の季節であるという考えは、ディケンズのもっとも優れた性分にあうものである。そのことが彼の弱さを少し勇気づけもしたが。その空想にふけるという神業も完全に彼の文章にあらわれていた。というのも(完全ではないがもっぱらドイツへの)その影響はすでに際だった審美眼を作り出していた。また、その趣向をピックウィックの挿話(注3)や努力を必要としないそのほかで用いた。五冊の現行本のうち一冊『人生の戦い』(1846)は決定的な失敗作であると言われている。確かにおそらくそれは『ジョージ・シルバーマンの釈明』(注4)を除いた小説において、ディケンズの書いた中では最も悪いものである。イギリスの陰気な召使いの中には、彼の本当の素質を見つけた人もいた。ともかくもほかのどの点においても、その素質を見つけるには難しい彼らにその特権を与えられたのだ。けれども『鐘の音』(注5)(1844)や『炉端のこおろぎ』(1845)はある程度格別な人気がある。『鐘の音』の方は、ジョセフ・バウリー男爵(注6)やキュート州長官(注7)などすべての実在人物の皮肉を欠いては、さえないありふれた社会風刺によってほぼ致命的に不当な扱いを受けている。一方『炉端のこおろぎ』の方は、ティリー・スローボーイやほかでのさわやかなさえずりに関していくらかはすっかり‘うまくいった’ようにはみえない。最初の本『クリスマスキャロル』(注8)(1843)や最後の『憑かれた男』(1848)は断然最も優れたキャロル(クリスマス祝歌)であり魅力的なものである。我々はもちろん『古代の船員』の場合におけるバーボウルド夫人(注9)を認めなくてはならないように、その物語が‘起こりそうもない’ものであることを認めなくてはならない。つまりすべての感情や物語が人を怒らせるものであるという視点を除いては、それキャロルに対抗しうる別の反対意見はほとんどない。『憑かれた男』はより一貫性がない上、時には注の強制という古い失敗をおかしている。だが最初の水であるテタビーズ(注10)は確かにキャロルの中で類似しているクラチット(注11)よりは良く、良い天使のミリーは誇張表現や感傷的なものから通常よりもかけ離れているし、深刻な場面では現在のものと違って、ディケンズがしばしば試みたがあまり達成できなかった本当の非現実的な性質の筆致やひらめきがある。


☆CHRISTMAS BOOKSとは??☆

ディケンズがマンチェスターの労働者の教育とレクリエイション施設を作るために組織されたアセニーアムに招かれて、募金のための講演を行なった後、インスピレイションによって生み出された『クリスマス・キャロル』(A Christmas Carol)(1843年2月19日発売)のに続く一連の作品

☆訳に対する注☆

上の訳中にある(注*)の数字に対応しています。

  1. 1824年、家計が苦しくなったため親類の世話でテムズ河畔にある靴墨工場に働きに出された
  2. 1873〜1859 米国作家 代表作…THE SKETCH BOOK
  3. 最初の小説 The Pickwick Papers (1836-37)
  4. ディケンズが完成させた最後の作品。(1867) 語り手シルヴァーマンは、不幸な生い立ちを常に自身の引け目と感じており、自分のがめつさを意識している。それをとり繕うために彼は利他的に振舞うのだが、他人から誤解されて苦しむことになる。従来その語り手が暖昧な人物であるために、物語全体が不明瞭なままであると評されて来た。
  5. 惨状な貧民に対する数々の虐待と政治家を対比し、為政者を咎め、貧民に対してのみ厳罰を科する社会の仕組みの欠陥を責める作品
  6. 登場人物の一人、心なき為政者
  7. 登場人物の一人、功利主義を奉ずる取り巻き
  8. クリスマス前夜の幻想にスクルージを訪れたマーレイの亡霊が、未来の幸福のために悔い改めと徳行を説く物語
  9. Anna Letitia Barbauld…18世紀の教訓主義作家
  10. 『憑かれた男』に登場する貧しい一家
  11. 『クリスマスキャロル』の登場人物で、主人公スクルージの家で働く貧乏な店員