『ダレン・シャン(原題・The saga of Darren Shan)』の物語は、子供たち(ダレン、そして親友のスティーブ)の子供らしいふとした好奇心からはじまる。そのことがもとで起こった事件から親友の命を助けるため、ダレンは半バンパイアにされてしまうのだ。 それからダレンの半バンパイアとして悲喜こもごも(確かに悲しいことの方が多いのだけれど)の生活がはじまる。決して明るい話ではない。希望のある話ではないけれど、そこには今までの児童文学になかったファンタジーの世界でありながらのリアリティーが存在している。だからこそ、読み始めたらつづきが気になってやめられなくなる。 これもまた、わたしたち読者の童心であり、好奇心なのだ。 この感情は、ダレンやスティーブが抱いた好奇心と似かよっているように思われた。それを意図して作者であるダレン・シャンが自伝という形でこの物語を展開させているのなら、本当に敬服すべき表現力だ。 そして予想もつかない展開、文章の細部にまで散りばめられた皮肉やユーモアには、作家の技法としてではなく純粋に物語を楽しませる力が宿っている。 ことあるごとに『ハリー・ポッター』と比較されたり、読者によっては賛否両論がある本作だが、まずは楽しむことを目的に第一巻『奇怪なサーカス(原題・シルクドフリーク)』に焦点を当てて調べていこうと思う。 |