アングロノルマン文学

 ノルマン征服から中英語が完成するまでの時期、つまりノルマン人のフランス語が主導権を握っていた時期を「アングロノルマン文学の時代」と呼ぶことがある。この時期の特徴を示す文学的な現象を一つあげるなら、12世紀の前半、ウェールズ地方に近いマンモスという土地の修道士ジェフリーがラテン語で『ブリタンニアの諸王の歴史』(1136年頃)を書き、それがまずフランス語に翻訳され、フランスの詩人たちに伝えられ、彼らの筆によってブリトン族の伝説的な英雄アーサー王と円卓の騎士たちの物語が広められたという事実である。
   言葉の用法から見て現代の英語にも影響をあたえたのは、同一の事物や動作を指すのに二つの単語が使われることがあるという点である。これはアングロサクソン人とノルマン人が互いの意思を通じさせようとするときに、それぞれの単語を並べて使ったからだと見られている。