ヒツジとオオカミ


 「動物占い」がひと頃人気であった。私はもともと占いは嫌いではないので、試してみたら「サル」と出たが、人にサルと言われたことなど一度もないし、外見もサルには似ていないつもりであるから、今ひとつピンとこなかった。何よりこの占いは生年月日だけで動物を決めてしまうのがどうも合点がゆかない。○×式の心理テストでもやった上で動物を当てはめるのならまだわかるのだが。

 さて人の性格を動物に当てはめる時、よく言われるのは「イヌ型」と「ネコ型」である。殊に女性の「ネコ型」は、男好きがするタイプだが実際につき合うのは大変というのがもっぱらの評判であるし、また「ネコ型」は気位が高いというのもよく聞く話。私自身も犬と猫のどちらを飼いたいかと言われれば、迷わず猫と答えるクチであるし、大変だろうが何だろうが、魅力を感じるのは「ネコ型」の女性のほうである。

 ところで最近、「イヌ型」と「ネコ型」よりも、「ヒツジ型」と「オオカミ型」のほうが、人の相性を考えるには的確ではないかと思うようになった。「ヒツジ型」の人は群れるのを好み、その結束力と協調性は一切の外敵を寄せつけない凄まじいものである。一方「オオカミ型」は単独行動を好み、なかなか人と相容れない。
 「ヒツジ型」の人は群れの中での掟を重んずる。従って「ヒツジ型」同士の個人としての交わりは比較的ゆるいものになる。公園での若い母親のグループを考えてみればよろしい。一方「オオカミ型」の人の場合、志を同じくする他の「オオカミ」に出会って意気投合してしまうと、「ヒツジ型」同士の二人よりもずっと深い結びつきになる。
 では「ヒツジ型」と「オオカミ型」が何かの拍子に出会うとどうなるか。「オオカミ型」はいつも一匹でいるとはいえ、人並みの孤独感は持っている。それだけに、孤独を満たしてくれそうな「ヒツジ」には、狭く深い結びつきを求めようとする。そうなると悲劇である。広い群れでの結びつきにしか慣れていない「ヒツジ」は、鋭い牙に怯えながら窒息してしまう。
 逆に「ヒツジ」の群れの中にたまたま「オオカミ」が紛れ込んでも、その「オオカミ」は群れの掟に窒息してしまい、結局ははじき出されることになる。
 してみると「ヒツジ」は「ヒツジ」から、「オオカミ」は「オオカミ」から友人なり伴侶なりを得るのが一番ということになるが、厄介なのは人間の「ヒツジ」と「オオカミ」は、現実の羊や狼と違って簡単には見分けがつかないということである。いつもひとりでいるから「オオカミ型」だと思ったら、実は群れをはぐれた「ヒツジ」にすぎなかったということもある。そういう出会いは、初めは良くても、「ヒツジ」が自分にふさわしい群れを見つけ出したらそれでおしまいである。
 人間関係に悩む人は、一度自分自身や周囲の人が「ヒツジ型」か「オオカミ型」かを考えてみると、今後とるべき道が見えて来るかも知れない。


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