『山海経』の研究書


 わが国では『山海経』に関する研究書はあまり多くはない。その中で『山海経』という書物について概略を知るには

・高馬三良『山海経』(平凡社『中国古典文学大系』、1973、また平凡社ライブラリー、1994)
・前野直彬『山海経・列仙伝』(集英社『全釈漢文大系』33、1975)

の解説が手頃である。
 もう少し専門的な研究書には

・松田稔『「山海経」の基礎的研究』(笠間書院、1995)

があるが、これは主として五蔵山経の動植物・鉱物や神々に的を絞って、統計学的手法を援用した研究である。同じく五蔵山経の動植物や神々について詳説した研究書には

・伊藤清司『中国の神獣・悪鬼たち』(東方書店、1986)

もある。
  
 中国では『山海経』に関する研究書は数多く出版されているが、まさに玉石混淆であり、中にはいわゆるトンデモ研究もあるので注意されたい。
 中国での『山海経』研究にはどんなテーマや題材があるかを概観するには、

・『山海経新探』(四川省社会科学院出版社、1986)

という論文集がある。ただ現在では入手困難なので、大学図書館などで閲覧するのがよい。最近の研究書から二三選ぶと、

・張岩『《山海経》与古代社会』(文化芸術出版社、1999)

は神話学・民俗学・古文字学など幅広い立場からの分析であり、また

・邱宜文『《山海経》的神話思惟』(台湾・文津出版社、2002)

は構造主義的な分析研究で、いずれも学問的評価に十分堪え得るものである。

 『山海経』に関する日中の雑誌論文のうち、主なものは次の通りである。

(1)文献学的研究
・蒙文通「略論『山海経』的写作時代及其産生地域」(『中華文史論叢』一、1962)
・袁珂「『山海経』写作的時地及篇目考」(『中華文史論叢』復刊1号、1978)
・竹内康浩「海外諸経の成立」(『史流』31、北海道教育大学史学会、1991)
・森和「『山海経』五蔵山経の世界構造」(『史滴』第22号、2000)
・森和「『山海経』五蔵山経における山岳神祭祀」(『日本中国学会報』第53集、2001)

(2)神話学・民俗学的研究
・伊藤清司「山川の神々」(『史学』41−4、42−1、42−2、慶應義塾大学三田史学会、1969、)
・松岡正子「『山海経』西次三経と羌族」(『中国文学研究』第12期、早稲田大学中国文学会、1986)
・阪谷昭弘「『山海経』鍾山条についての一試論」(『学林』21、立命館大学中国芸文研究会、1994)

(3)研究史
・岡本正「山海経について」(『中国古代史研究』吉川弘文館、1960)
・小南一郎「『山海経』研究の現状と課題」(『中国ー社会と文化』第二号、東大中国学会、1987)
・桜井龍彦「郭璞『山海経』注の態度」(『中京大学教養論叢』34−4、35−1、1993〜1994)

なお日本国内で戦後発表された論文及び著作の総目録はこちらを参照されたい。


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