第8回 差別を生み出す社会構造
0.前回の補足
「他人の不幸は蜜の味」(下方比較理論)だけでは、差別は説明できない。
- 「不幸」をことさらに取り上げたり、「作り出す」ことは、心理的・社会的コンフリクトを引き起こす。(道徳観や平等規範など)
- そこで、そのコンフリクトを回避するための手段が取られることがある。
- 「不幸」な人と自分とは関係がない、彼/彼女らは「ヨソモノ」である →異化
- 「不幸」なのは本人の責任 →victim blaming
1.(マルクス主義)階級理論
- 差別問題に関する最大の社会理論
- 労働運動を始め、様々な社会運動との関り
- 差別問題は、「富」の生産と配分に関する問題
資本主義的生産様式
- 私的に所有された大規模な生産手段と賃金によって雇用される労働者
- 利潤の資本家(企業)への帰属(搾取)と階級闘争
- 景気の循環による労働力調整の必要性
- 資本家(企業)の利益を庇護する存在としての国家権力
差別問題との関り
- 安価な労働力(搾取)の必要性
- 雇用調整の必要性
- 労働者の分断
- 過酷な労働への労働者の配分
- 植民地支配
- とりわけ、外国人労働者の問題、女性労働者の問題(パート労働・総合職と一般職)
閉鎖理論と二重閉鎖
- 資本家と労働者の利害対立だけが問題なのか?
- 様々な「利害集団」が自らの利害を守るために外部からの資源へのアクセスを排除する(社会的閉鎖)
- 閉鎖により資源へのアクセスを拒絶された集団が残された資源を守るために社会的閉鎖を行う(二重閉鎖)
「外部理論」としての階級理論
- 階級と、エスニシティやジェンダーなどは本来関係がない。いわば「利用されている」
- それではなぜ「利用」が可能なのか? →別の「軸」が存在しているのか?
- 階級としてのエスニシティ・ジェンダー
2.マルクス主義階級理論と性差別
賃金労働者を前提とした階級理論 → 性差別の視点の欠如
「家事労働」をどう見るのか?
- 利潤を生まない労働としての家事労働→階級理論の対象外
- しかし、労働者の労働は家事労働によってささえられているではないか
- 不払い労働としての家事労働→搾取
- しかし、それを支払うとしてもどのように支払うのか?
- 「家族賃金」という考え方の問題点
- 家事労働は市場労働とは全く異なった性格の「労働」
- 財の生産ではなく、人間自身の「再生産」 →再生産労働
- 「再生産労働」をめぐってジェンダー間で「階級対立」が存在している
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