第5回 差別論の概要
1.差別論の課題 −何を解明しなくてはならないか?
1)差別の2つの次元
- 異化−排除
- 異質な者とみなす
- 忌避する、関係を絶つ
- 集団や組織から排除する
- 格差づけ−見下し
- 劣った者とみなす
- 侮辱する
- 一方的に攻撃する
- 資源を奪う、制限する
- 資源の不平等な分配をする
この2つの次元の作用がどのようにして起こっているのかを解明する。
2)「不当性」の扱い
- 倫理の問題 →この授業では直接は扱わない
- 一見「合理的」な理由の背後に別の理由が隠されているのではないか?
- なぜある人にとって「不当」だと見えることが、別の人にとっては「不当」であると感じられないのか?
3)「差別論」に取り組む上での一般的な注意事項
- Victim Blaming(直訳すると「犠牲者に対する非難」?)
- 「差別される側に(も)問題がある」という考え方
- もちろん、「問題」はある。しかし、それはいかなる場合でも「差別問題」の主要な原因ではあり得ない(例えば「甘えている」女性がいるとしても、それを根拠にすべての女性が同じように扱われることが「差別」のメカニズム)。
- むしろ、なぜ「Victim Blaming」が生じるのかを考えることが差別論の仮題。とりあえず現時点では次の2つの点を注意しておいてほしい。
- 差別問題は「被差別者の問題」ではないこと
- 形式的な「正当/不当」(誰が「悪い」のか?)の結論を急ぎすぎないこと
- 視点の問題
- 一般的に言って差別問題では「被差別者の視点」を重視することが多いが、この授業ではそれを強調しない。むしろ、「差別するものの視点」や「傍観者の視点」を含む複合的な視点で差別問題を見つめていきたい。
2.差別論の(暫定的)分類
1)心理的差別
何らかの理由で個人の中に「差別をする心」が生じてしまう。
2)社会システム論
社会の仕組みの中に、排除や格差づけのシステムが組み込まれている
- 社会階層論
- 家父長制論
- 植民地支配
- 労働市場の問題
3)文化理論
「支配的な文化」が差別問題を生じさせる原因となっている
- 文化的埋めこみの諸理論(「文化フェミニズム」、「能力主義」批判)
- 「貧困の文化」論
4)ミクロ相互作用論
日常的な(対面的)相互作用の中で差別的な関係が再生産されている
- 権力作用論(日常会話や言説の分析)
- 他者化と排除の理論(佐藤オリジナル)
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