第10回 言語装置としての差別
1.社会的カテゴリーの生成
1)差別に関る社会的カテゴリーは所与のものか?
- 境界の曖昧さ
- どこまでが「障害者」なのか
- 人種・民族間の通婚が進んだ場合、どこまでがマイノリティグループなのか?
- なぜ特定の属性だけが重視されるのか?
- 個人は様々な属性を持っているが、ある局面において特定の属性だけが問題にされ、その属性に基づいてカテゴリー化が行われる
- 社会的カテゴリーに付与される属性は常に同じか?
- 場面に応じて同じカテゴリーに異なった意味が付与されている。
- 対立するものとしての男女、引きあう存在としての男女
- 切り捨てられる存在としての障害者、保護すべき存在としての障害者
- (差別に関る)社会的カテゴリーは、場面に応じて、境界も、重要性も、付与される意味も変化する。
- これを決定づけるのが「カテゴリー化」という作用。
2)社会的カテゴリーによる場面の構成
私たちは社会的カテゴリーを使用することによって、ある場面を理解可能なものとして構成し、円滑な相互行為を達成することができる。
- 教師と学生というカテゴリーによる授業の遂行
- 「友だち」というカテゴリーによる、共感の達成
- 「外国人」というカテゴリーによる、ディスコミュニケーションの解釈(正当化)
- 先輩−後輩カテゴリーによる地位関係の成立
3)差別に関る社会的カテゴリーの特徴
- 被差別カテゴリーの「有徴性」
- 二分法的カテゴリーのように構成されているが、「差別する側」のカテゴリーは曖昧 (「それ以外」として構成されている)
- 被差別部落に対して、「一般」?
- 在日朝鮮人に対して、「日本人」?
- 男女というカテゴリーの非対称性 「女」が付く言葉(女医、女教師、女流作家、婦人警官などなど)
- 一方的意味付け
- 被差別カテゴリーの方にのみ様々な属性が一方的に付与される
- 排除カテゴリー
- 排除によって成立するカテゴリー対
- 「障害者」を識別することによって、始めて「健全者」を特定することができる。
「排除」によってカテゴリーが成立するならば、排除しているのは誰か?
2.三者関係としての差別
差別に関るカテゴリーの成立と排除との関係を理解する枠組
- 差別者−被差別者の二者関係ではなく、差別者−「共犯者」−被差別者の三者関係として差別を捉える。
- 差別者はある基準において、差別者と「共犯者」が同一カテゴリー、被差別者のみが別のカテゴリーに属するような恣意的な基準を設定する
- これによって、差別者と「共犯者」は「同化」され、被差別者は「異化」(排除)される。
- 同化は異化(排除)に依存し、異化(排除)は同化に依存する
- 障害者に対する「差別語」の例
- 職場の中の性差別の構造
- 女性を排除することによる「男性」の均質化(地位関係の隠蔽)
- 男性性の確認が必要とされる文脈でのセクシャルハラスメント
3.他者化と「普通」の生成
「同化」を意図する差別
- 差別者の視線は「共犯者」向いている
- 存在しない、関りのない、他者としての被差別者
排除によって成立する「差別する側」のカテゴリーとは何か?
- 異常な存在を排除することによって成立する「正常」
- 特異な存在を排除することによって成立する「普通」
「普通」を作り出すことによって、人を取り込んでいく言説戦略としての「差別」
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