考察
今回の調査においてわかった事をまとめてみる。
各項目についての解説
全体的には、本社やグループとしての方針という意見が多く見られたが、ここには業種や事業所の立場のような現実的な要因が背景として関係しているようである。特に言える事は現在取得している業種の半数が電子・電気、機械関係の産業であり、その製品に使用されている部品、源材料の生産がグループ内で分社、分業化されているという現実である。製品に対し環境の配慮を要求するという事は、使われる部品一つ一つに対し環境に配慮してある必要があり、必然的に各分社、工場にその要請があったものと思われる。また、市場から遠い位置に属するそれらの企業は製品に対するイメージの向上の期待を希薄にさせる結果を必然的に生み出しもした。逆に、サービスや建築、製品の最終工程に属する企業からは商品や企業に対するイメージの向上に大きく期待し、取得のきっかけの大きな要因となっている。実際に開発に携わっている企業からはその開発の状況と、その商品に対する市場の反応を回答してくれた所があった。
一方 化学薬品を多く使用する紡績、化学といった業界は、それらの環境側面の管理、緊急時の対応システムの必要性から
ISOの持つ環境マネジメントシステムの必要性が大きな要因となっている。これはISO9000sにはない、環境側面の特定、それらに関する法規制等のリストアップによる従業員の教育の徹底という意味を含んでいる。今後環境問題に対する関心が市場で高まる事が予想され、環境側面物質に関する事故の発生、その対処に対し厳しい反応があるだろう。この時その事故に対する企業の責任は大きく問われ、多くのデメリットをこうむる事になる。現代の環境問題に対する取り組みは、そのような危機管理に対し厳密な対応が要求されており、その体制作りが急務と捉えられているように考えられる。ISO14001に対する認識については大きく意見が分かれているように見られる。地域社会や自治体に「環境に配慮している」という所を示す手段として捉える傾向が強い。それは現代の産業界においてISO14001の認証というものが一番効果的な「環境問題に配慮している」という事を示す手段であるからである。それに対し対外的な方面ではなく企業内、従業員に対し「環境に配慮している」事を示す事を考えている企業もある。これは認証のきっかけが会社(親会社等)の方針により取得した企業に多く見られたが、対外的なイメージにはそんなに大きく効果は期待していないが、認証を機会に従業員内に環境に関するモラルの向上と、システムの定着を期待しているというものである。これに関してはマネジメントシステムの所でも述べたが、この様な意識の浸透は今後の企業の活動においてきっかけとなり、何らかの効果をもたらすだろうという期待の表れであり、特にISOだからというものではないように見受けられる。もうひとつはISO14001をはっきりと「環境に対して効果がある」と認識した企業である。これはごく少数であったが、企業がISOの取得を進める事は環境によい事だという認識からきたものである。特に業種や会社の形態に違いや傾向は見られなかったが、早い時期に認証を得た企業にこの考えがあらわれている様に見受けられた。私が感じた事だが、この考えは認証を得た後の期間が長い程その企業が出ているのではないかと感じた。早く取得したという意識よりも認証を得てからの環境に対する意識の発展の結果そのような考え方が生まれてきたように感じられたからである。
活動の方面に関してはだいたいの企業が省エネルギーと廃棄物の二点に重視している。省エネルギーに関しては特に紙や水、燃料など細部にわたりその使用量の確認、使用方法の改善を行っている。これにはいくつかの原因が考えられる。まず大半の考えはその実行者が従業員全員にわたり、新たなる設備投資や、人員などの設定が不要であり、一番手近なレベルの問題に属している事が挙げられる。認証に際し企業には従業員に対し環境に対する教育が義務付けられており、この様な手近な所の改善は環境意識の定着にはきっかけとして一番適していたとみられる。またコスト面からいっても消費を控えるという点で効果が期待できる方面であり、省エネルギー意識の定着は重視された様に見受けられた。廃棄物の管理、分別に対しても同じ事が言える。これはコスト面の部分では一見あまり関係しないように見えるが、「今後お金を払えば捨てられるという時代ではなくなる」という意見があった事にも表れているが、廃棄物をどう減らす、リサイクルするという所は、「資源を使う」事よりもコスト面で大きく影響していくことが予想される。今の段階での廃棄物の管理システムの構築は今後の企業活動にとって重要事となってきているのではないか。
他によく見られたのは周辺環境の改善という活動である。これは企業事態の利益にはならないものである。木を植えた事が実際に企業の活動にどう影響するのかと言われれば私には計り知る事ができないが、これはきっかけの所で見られた傾向から考えると、地域の住民や自治体に対するイメージ作りや、従業員のモラルの向上という面で行われているのではないかと予想される。ボランティアという事も考えられるが、今回の調査においては「環境に対する取り組み」としてではなく「
ISO認証に際しての取り組み」と聞いているので、ボランティアでしているとは考えにくい。教育の面においては先に述べたようにいくつかの手順、方法が見られたが、教育を行う範囲については当然であるが従業員全てにわたっている。集合教育を行った企業に関しては「環境」というものの基礎概念から教育し、なぜ今環境問題に取り組まなければいけないのか、その必要性を訴える所が多い。これは実際に環境に関する取り組みを行う上で、この知識、意識の浸透が基本であると考えた事が見受けられる。またこれらの教育に加え、テストやアンケート、環境カードの様な個人目標記入を実践したところもあり、企業がいかに従業員の教育、意識の改革を重要視したかがうかがえる。ある企業では、常駐の協力会社(食堂の従業員)に対してもその協力を要請し、事業所全体での意識の浸透を強く推進した企業も見られる。
ISO認証というものが基本的にトップダウン(経営層から従業員へ)のものであるのに対し、その活動が従業員の協力無しには実行できないという現実があるからであり、どれほど従業員がそれを理解し、実行して行くかによって、ISOの持つ効果に大きく違いが現れると考えられた事が見受けられる。
反対にこの従業員の教育に関して積極的に行わなかったと思われる企業には共通点がある。それは集合教育という形ではなく、各セクション代表者(責任者)の教育を行いその代表者が各セクションでそれぞれ教育を行うというものである。これには業種やその会社の規模といった違いではなく、その企業内の仕事が多岐にわたり、一概に共通の教育が行えない現実もあったように見受けられる。この教育方法に関しては「環境」というものの概念などに関しての教育がどう行われたのかについては分からないが、この方法を行った企業に関しては企業内にアンケートや環境カード等の「全従業員全体で行う活動」というものはあまり見られなかった。この事は日常生活の面にも現れているのか、前者の教育方法に比べ、目立った活動実態の回答はなかった。