環境ISOとは
これまでISOについて述べてきたが、今回の調査で対象としているのは 環境ISOいわゆるISO14000s(s:シリーズの略)である。これは環境問題がとりざされてきた現代に、環境に対する工業のあり方について標準化をもたらすものとして注目を得ているものである。
ISO14000シリーズの概要
- 環境マネジメントシステム(EMS:Environmental Management Systems)
- ISO14001 環境マネジメントシステム‐ 仕様およひ・利用の手引
- ISO14004 環境マネジメントシステム‐ 原則・システムおよび支援技法の一般指針
- 環境監査(EA:Environmental Auditing)
- ISO14010 環境監査の指針‐ 一般原則
- ISO14011 環境監査の指針‐ 監査手順ー環境マネジメントシステムの監査
- ISO14012 環境監査の指針‐ 環境監査員のための資格基準
- 環境ラベル(EL:Eco‐Label)
- ISO14020 環境ラべルと宣言‐ 一般原則
- ISO14021 環境ラベルと宣言‐(タイプ2)自己宣言による環境主張‐用語と定義
- ISO14022 環境ラベルと宣言‐(タイプ2)自己宣言による環境主張 記号
- ISO14023 環境ラベルと宣言‐(タイプ2)自己宣言による環境主張‐試験・検証方法
- ISO14024 環境ラベルと宣言‐(タイプ1)指針原則および手順
- ISO14025 環境ラベルと宣言‐(タイプ3)原則と手順
- 環境パフォーマンス評価(EPE:Environmental Performance Evaluation)
- ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)
- ISO14040 ライフサイクルアセスメント‐ 一般原則
- ISO14041 ライフサイクルアセスメント‐ インベントリー分析
- ISO14042 ライフサイクルアセスメント‐ インベントリー分析‐特定
- ISO14043 ライフサイクルアセスメント‐ 影響評価
- ISO14044 ライフサイクルアセスメント‐ 解釈
ISO14001の要求事項の概略
1.環境方針(Environmental policy)
*最高経営層は環境方針を定め、以下を確実にする
- a.方針を、組織の活動、製品またはサービスの特性や規模および環境影響に見合ったものとする
- b.方針で、継続的な向上および汚染の予防を誓約する
- c.方針で、環境に関する関連する法規制および組織が受入を決めた外部の要求事項の遵守を警約する
- d.方針で、環境目的・目標を設定、見直す枠組みを提供する
- e.方針は、文書化し、実行、維持し、すべての従業員に伝達する
- f.方針は、一般の人が入手できるようにする
2.計画(Planning)
環境側面(Environmental aspects)
- 管理可能または影響を及ぼしうる活動、製品またはサービスの環境側面を特定し、その側面の中から著しい環境影響を持つもの、あるいはその可能性のあるものを決定する規定類を作成し、維持する
- 環境目的の設定に当たっては、著しい環境影響を持つ環境側面を確実に考慮するこの情報は最新の状態で維持する
法規制その他の要求事項(Legal and other requirements)
- 組織の活動、製品またはサービスによる環境側面に係わる法規制、受入を決めた要求事項を特定し、参照を可能とする規定類を策定し、維持する
目的・目標(Objectives and targets)
- 関連する各部門及び階層ごとに、文書化された環境目的・目標を設定し維持する目的の設定・見直しにあたっては法的その他の要求事項、著しい環境側面、技術上の選択肢、財政・運用・ビジネス上の要求事項、利害関係者の見解を考慮する
- 目的・目標は汚染の予防に関する警約を含め環境方針と整合させる
環境マネジメントプログラム(Environmental management programmes)
- 環境目的・目標を達成するためのプログラムを策定、維持する。プログラムには以下を合む
- a.組織の関連する各部門と階層ごとに目的・目標を達成する責任を指定する、
- b.達成するための手段と日程を示す、
- 新規開発や、新規もしくは変更された活動、製品またはサービスに関するプロジェクトが発生した場合は、環境マネジメントプログラムの該当部分の改定を行い、既存の環境マネジメントシステムが確実に適用されるようにする
3.実施および運用(Implementation and operation)
体制及び責任(Structure and responsibility)
- 役割、責任、権限を定め、文書化し、伝達して環境境マネジメントが効果的に行われるようにする。
- 経営層は環境マネジメントシステムを実施及び管理する上で不可欠な資源を提供する。資源には人的資源、専門スキル、枝術、資金が含まれる
- 最高経営層は他の責任とは無関係に、下記事項を執行するに足る役割、責任、権限を与えた管理責任者(1人または複数)を指名する
- a.この規格に従って、環境マネジメントシステムの要求事項を満たす仕組みを確実に確立し、実施し、維持する
- b.環境マネジメントシステムの見直し及び改善のためのべ一スとして、環境マネジメントシステムの活動実績を最高経営層に報告する
訓練、自覚及び能力(Training,awareness and competence)
- 組織は必要な訓練事項を特定する
- 環境に著しい影響を及ぼす可能性のある作業を行うすべての要員に適切な訓練を施していることを要求する
- 組織はそれぞれの業務や階層の従業員や構成員の該当者に、以下の事項を自覚させる規定類を制定、維持する
- a.環境方針や規定類を守り、環境マネジメントシステムの要求事項に適合することの重要性。
- b.自分たちの作業活動による現実の、あるいは潜在的な環境影響で著しいもの、および自分の改善活動の成果が及ぼす環境への好影響
- c.以下への適合実現のための自分たちの役割と責任
- 環境方針および規定類
- 環境マネジメントシステムの要求事項
- 緊急事態への準備と対応の要求事項
- d.定められた運用手順書からの逸脱がもたらす結果の予測
- 著しい環境影響のある作業を行う要員は、適切な教育や訓練および/もしくは経験の裏付けのある能力が必要。
コミュニケーション(Communication)
- 組織は環境側面および環境マネジメントシステムに関し、次項について規定類を制定、維持する
- a.種々の階層および部門間で行う内部コミュニケーション
- b.外部の利害関係者からの環境関連情報の受理、文書化、回答の提示
- 著しい環境側面について、外部とのコミュニケ一ションのプロセスを検討し、かつその決定事項を記録する
環境マネジメントシステム文章(Environmental management system documentation)
- 組織は情報を確立、維持する。情報は書面もしくは電子形式とし、その目的は
- a.マネジメントシステムの核となる要素と要素間の相互関係を記述
- b.関連文書の所在を示す
文書管理(Document control)
- この規格で要求されるすべての文書類を管理する規定類を制定維持し、以下を確実に行う。
- a.文書類の所在が分かる。
- b.文書類は定期的に見直し、必要に応じ改定し、権限のある人が妥当性を承認する。
- c.関連文書類の最新版が、システムを効果的に機能させるのに、不可欠な実務が行われている全ての場所で利用できる。
- d.旧廃文書は発行部署、使用部署から速やかに撤去するか意図していない使われ方がされないよう確実な処置をとる。
- e.法律上/情報保存の目的で保管が必要な旧廃文書は適切に区分する。
- 文書類はすべて読みやすく、日付があり(改定に日付を含む)容易に識別でき、順序良く維持し、所定の期間保持する。
- 種々の文書類の制定・改定に関する規定類および責任を定め、維持する。
運用管理(Operational control)
- 組織は以下の運用作業、活動を特定する。特定すべき作業、活動とは、著しい環境影響があると判定された環境側面に関するもので、方針・目的・目標に定めた事項に関するものとする。
- 組織はそれらの活動について、維持活動を含めて以下の条件のもとに、確実に実行するよう計画する
- a.文書化した規定類を制定、維持する。これにより環境方針、目的・目標からの逸脱を防止する。
- b.規定類には運用基準を明記する。
- c.調達等に関する規定類を制定、維持する。これにより、組織が使用する物品やサービスの著しい環境側面を可能な範囲で抽出し、供給者や契約業者に関連の規定類や要求事項を伝達する。
緊急事態への準備および対応(Emergency preparedness and response)
- 事故および緊急事態の可能性を特定し、それらに対処し、並びに、それらに伴う環境への影響を予防し、緩和するための規定類を制定、維持する。
- 緊急事態への準備および対応の規定類は、必要に応じ、特に事故または緊急事態発生後は、見直し、改定する。
- 実行可能な場合は、上記規定事項を定期的にテストする。
4.点検及び是正事項(Checking and corrective action)
監視および測定(Monitoring and measurement)
- 組織は監視と計測に関する文書化した規定類を制定、維持する。これにより環境に著しい影響がある運用作業や活動に関する鍵となる特性を定常的に把握する。
- これには環境パフォーマンスや運用管理および目的・目標への適合の度合いを確認する情報を記録することを含む。
- 監視機器は校正し、維持する。また、そのプロセスの記録は規定を定めて保持する。
- 適用を受ける法規制の遵守を定期的に評価する文書化した規定類を制定、維持する。
不適合並びに是正と予防処置(Non‐conformance and corrective and preventive action)
- 不適合の取扱いと調査、不適合に起因する影響を軽減する処置及び是正予防処置の着手と完了に関する責任と権限を定めた規定類を制定維持する。
- 現実の及び潜在的な不適合を取り除くため取られる是正処置、または予防処置は問題の大きさに対応したものであり、生じた環境影響にみあったものとする。
- 是正及び予防処置の結果として文書化された規定類の変更事項はすべて実施し、記録する。
記録(Records)
- 組織は環境記録の項目を特定し、保持し、処分する規定類を制定、維持する。
この記録には教育訓練記録、監査及び見直しの結果を含む。
- 環境記録は読みやすく、識別が可能でどの活動、製品、サービスによるか追跡が容易なこと。また、記録の保管、保持は容易に検索でき、損傷、劣化、紛失を防止できる方法とする。かつ、保存期間を定め、記録する。
- 記録はシステムや組織に適応した方法で維持し、この規格の要求事項に適合していることを示す。
環境マネジメントシステムの監査(Environmental management system audit)
- 環境マネジメントシステムの監査を定期的に実施するプログラム及び規定類を制定、維持し、次のことを行う。
- a.環境マネジメントシステムが次のようであるか否かを決定する
- この規格の要求事項及び環境マネジメントのために計画した諸事項に適合しているか
-
適切に実施され維持されているか
- b.環境監査に関する情報を経営層に提供する
- 監査プログラムはすべてのスケジュールを含めて、監査対象活動の環境面での重要性及び前回の監査結果に基づいたものとする
- 監査規定類は包括的なものとし、監査の範囲、頻度、方法ならびに監査の実施と結果の報告に関する責任及び要求事項を含める
経営層による見直し(Management review)
- 最高経営層は自ら定めた間隔で環境マネジメントシステムを見直す。これによりシステムの継続的な適合性、妥当性並びに有効性を確実にする。
- 経営層による見直しのプロセスには、それぞれの経営層が評価に必要な情報を確実に収集評価することを含む。この見直しは文書化する。
- 経営層による見直しは方針、目的及び環境マネジメントシステムのその他の要素の変更の必要性まで踏み込み、環境マネジメントシステム監査の結果や状況の変化、継続的改善の誓約に照らして判定する。
ISO14001では、いままでの標準化規格とは違い、具体的な目標数値を示してはいない。これはこの規格が、企業に環境に配慮した活動の持続と、その恒久的な発展を約束できるシステムの構築を求めているものであり、逆に言えば、これで良いという目安はない。企業が活動を続ける限り環境に関する活動については実行し続けなければならないという事である。
またその活動とシステムの働きなどは内部で定期的に監査し、改善,対処していかなければならない。そしてそれは第三者の監査機関によって監査され、場合によってはISO14001の認証を取り消される事態もある。企業はこのISO14001の認証を得続ける為の努力は絶やせないのである。この環境に対する活動が公開され、その情報の管理についても厳しく定められている事もこの規格の特徴とも言える。それは企業がどのような環境活動を行うのか(環境目標)を明確にし、その情報は結果や改正部分についても正確に認識し、記録に残す事を指す。環境問題というものを公平に企業に責任を振り分け、その活動の透明性を確かなものにするという所が重視されているのである。