環境と開発に関する国連会議(UNCED)

 人工衛星による観測でオゾンホールの拡大が確認されるなど、地球環境の悪化が科学的に、またわかりやすく証明され始めると、地球環境問題への対応の重要性や緊急性についての認識が、国際的に高まった。そして、1992年6月に、ブラジルのリオデジャネイロで「環境と開発に関する国連会議(UNCED)」が開催された。地球サミットとも呼ばれるこの会議は、世界の約180ヶ国から首相など政府要人が参加した他、NGOなど一般市民の集会も同時に多数開催されるなど、環境に関する史上初の大規模な国際会議となった。

 UNCEDでは、持続可能な開発に関する原則を示した「環境と開発に関するリオ宣言」や、その具体的な行動計画である「アジェンダ21」が採択された。また個別の地球環境問題への対応として、「気候変動枠組条約」、「生物多様性条約」、「森林原則声明」が採択された。 また、UNCEDでは民間や一般市民の自主的な活動が地球環境保全のために欠かせないものであることがはっきりと認識され、NGOの発言力や連携が強まり、注目されたことも大きな特徴としてあげられる。

 世界の過半数の人口を有し、将来、急速な経済成長に伴う環境への負荷の増加が予想されるアジア太平洋地域の先進国として、日本は持続可能な開発の実現のために率先して取り組む責任がある。また国際社会も日本の積極的なリーダーシップを期待している。

 地球環境問題に関する施策の効果的かつ総合的な推進を図ることを目的として、1989年5月に「地球環境保全に関する関係閣僚会議」が設置された。また、同年7月には、地球環境問題に対応するための施策を政府一体となって円滑に推進するため、行政各部の所管する事務の調整を担当するものとして地球環境問題担当大臣が設置され、以来、代々の環境庁長官が指名されてきている。

 リオサミットの翌年、日本はアジェンダ21に示された内容を実施するための「アジェンダ21行動計画」を1993年に決定した。また、地方公共団体が自分たちの地域で地球環境保全を進めるためのローカルアジェンダ21の策定も進められている。

 さらに、国境を越え、世代を超えて広い範囲にわたる環境問題に対処していくための新しい環境政策の枠組として、1993年11月、環境基本法が成立した。そして、1994年12月には、「循環を基調とする経済社会システムの実現」、「自然と人間との共生」、「環境保全に関する行動への参加」、「国際的取組の推進」を4つの柱とした、環境基本計画が策定された。

 環境庁は、環境の保全に関する行政を総合的に推進することを主たる任務として設置され、アジア太平洋地域における責任を果たし、リーダーシップを発揮していくため、地球環境保全のための政策、研究の推進など、さまざまな取り組みを進めている。

 政策面の取り組みの一つに、「アジア太平洋環境会議(Eco Asia)」がありる。これは、アジア太平洋諸国の環境大臣、国際機関の代表者など、ハイレベルの有識者が集まり、自由に意見交換することにより、長期的な環境保全に関する取り組みの推進力とするための国際会議であり、1991年から毎年継続的に開催されている。(1992年を除く)。

 また、地球環境問題の中でも、特にその要因が根源的であり、影響の及ぶ範囲も広いものが地球温暖化である。1997年に京都で開催された「地球温暖化防止京都会議(COP3)」で議長国を務めた日本は、温室効果ガスの排出量を2008〜2012年までに1990年レベルよりも6%削減すると約束した。これを受けて、環境庁では「地球温暖化対策推進法案」を国会に提出し、国内対策の強化に取り組んでいる。

 地球環境問題は一旦顕在化してからでは手遅れになる可能性があり、早期に予見的にかつ適切に対策を講ずることが重要であり、そのためには地球環境研究を速やかに進め、科学的知見の不確実性を低減することが必要である。

 地球環境を保全し、持続可能な開発を行っていくために、様々な分野で様々な機関が活動を行っている。そして、それらの活動の根本となる取り決めが地球環境問題に対する主な国際的な取り組み(1992年6月の地球サミット以降)を以下にまとめた。

◆地球温暖化問題
 1994年 3月 気候変動枠組条約の発効
 1995年 4月 候変動枠組条約第1回締約国会議(COP1)開催(ドイツ・ベルリン)
         (1997年の第3回締約国会議において2000年以降の抑制・削減の
         取組に関する合意を得るべく検討を開始)
 1995年12月 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第二次評価報告書の発表
 1996年 7月 気候変動枠組条約第2回締約国会議(COP2)開催(スイス・ジュネーブ)
 1997年12月 気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)開催(日本・京都)
        (21世紀における地球温暖化防止のための議定書採択)
 1998年11月 気候変動枠組条約第4回締約国会議(COP4)開催
        (アルゼンチン・ブエノスアイレス)

◆オゾン層破壊問題
 1992年11月 第4回締約国会合(デンマーク・コペンハーゲン)
        (CFC等の全廃スケジュールの前倒し、 HCFC等の規制物質への追加を決定)
 1995年12月 モントリオール議定書第7回締約国会合(ドイツ・ウィーン)
        (HCFC等の規制強化の決定)
 1995年12月 モントリオール議定書第8回締約国会合(コスタリカ・サンホセ)
 1995年12月 モントリオール議定書第9回締約国会合(カナダ・モントリオール)

◆酸性雨
 1995年11月 「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想」の採択
       2000年までに東アジア地域に酸性雨モニタリングネットワークを設置)
 1998年 3月 「東南アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する
         第1回政府間会合」開催(ネットワークの具体的な活動内容の検討)

◆野生生物の減少
 1993年 6月  第5回ラムサール条約締約国会議開催(日本・釧路市)
 1993年12月 生物多様性条約発効
 1994年 6月 第1回生物多様性条約締約国会議開催(バハマ・ナッソー)
 1994年11月 第9回ワシントン条約締約国会議開催(アメリカ・フォートローダーデール)
 1995年11月 第2回生物多様性条約締約国会議開催(インドネシア・ジャカルタ)
 1996年 3月 第6回ラムサール条約締約国会議開催(オーストラリア・ブリスベーン) 1996年 6月 第3回生物多様性条約締約国会議開催(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
 1997年 6月 第10回ワシントン条約締約国会議開催(ジンバブエ・ハラレ)
 1998年 5月 第4回生物多様性条約取締国会議開催(スロバキア・ブラテイスラバ)

◆森林(熱帯林)の破壊
 1992年 6月 「森林原則声名」採択
 1994年 1月 新国際熱帯林木材協定(ITTA)の採択
 1995年 9月 第1回「森林に関する政府間パネル」(IPF)の開催
 1996年 3月 第2回「森林に関する政府間パネル」(IPF)の開催
 1996年 6月 第3回「森林に関する政府間パネル」(IPF)の開催
 1997年 2月 第4回「森林に関する政府間パネル」(IPF)の開催

◆砂漠化
 1994年 6月 砂漠化防止条約採択
 1996年12月 砂漠化防止条約発効
 1997年 9月 第1回砂漠化防止条約締約国会議開催(イタリア)
 1998年11月 第2回砂漠化防止条約締約国会議開催(セネガル)

◆海洋汚染問題
 1993年11月 ロンドン条約付属書改正(産業廃棄物の海洋投棄の原則禁止)
 1994年 9月 北西太平洋地域海計画を中国、韓国、ロシア、日本の4ヶ国で採択
 1994年11月 海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)発効
 1995年 5月 1990年の油による汚染にかかる準備、対応及び協力に関する国際条約
         (OPRC条約)発効
 1995年11月 陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画の採択
 1996年 6月 国連海洋法条約を締結(同年7月20日の海の日に発効)

◆有害廃棄物の越境移動問題
 1995年 9月 バーゼル条約の改正(OECD加盟国からの非OECD諸国への輸出禁止)
 1998年 2月 第4回バーゼル条約締約国会議開催(マレーシア)
     (条約の規制対象及び規制対象外の廃棄物を示すリストを付属書として採択)

◆南極における環境問題
 1991年10月 環境保護に関する南極条約議定書採択(南極の環境及び生態系の包括的な保護)
 1998年 1月 環境保護に関する南極条約議定書発行

◆その他
  世界遺産の保全
 1992年12月 第16回世界遺産委員会開催(アメリカ)日本が加入
 1993年12月 第17回世界遺産委員会開催(コロンビア)
 1994年12月 第18回世界遺産委員会開催(タイ)
 1995年12月 第19回世界遺産委員会開催(ドイツ)
 1996年12月 第20回世界遺産委員会開催(メキシコ)
 1997年12月 第21回世界遺産委員会開催(イタリア)
 1998年12月 第22回世界遺産委員会開催(日本)

 それらと平行して、産業界にそれまでに存在した国際規格(ISO,IEC)は、環境に関した規格の標準化を進めてきたのである。それらの規格は 主にヨーロッパから広がり、産業の国際化、複雑化によりその効果が世界に広がった。

 感想

 現在の世界における環境問題は影響する分野の広さと複雑さから国家単位の問題ではなくなってきている。産業革命以来世界各地で大気汚染や土壌汚染、水質汚濁などの問題が発生してきたが、今の経済、産業の分野は世界的な規模を持つようになり、今までのような単独国家内での行政での干渉では対処できない問題となってきている。隣の国が何していようと関係ないとは言えないほど、今の環境破壊の規模は大きくなってきているのである。人類がこれからも発展し、地球上の生命の命を預かりつづける以上、その問題は真に捉えられ、人類はその責任を認識していかなければならない。真の発展とは、人間を始め、地球上のすべての生物が発展していくことであり、人類は人という生物の1つとしてこれからも環境というものを認識していかなければならないのである。