序章

現代の若者について、人間関係が希薄になっている、自分の殻に閉じこもるという傾向があるという話をよく聞く。しかし、この傾向は言われているように事実なのだろうか。

近年、若者の間で急速に普及してきたポケットベル(注1)やPHS、携帯電話などの移動体メディアは、若者文化の1つとなったといっても良いように思う。私は、この若者文化の1つなった移動体メディア(注2)の使われ方に若者のコミュニケーション観が現れているように思う。また、移動体メディアが若者のコミュニケーションに何らかの影響を与えてきているのではないかとも思う。そこで、この卒業論文では、移動体メディアをみていくことで実際の若者像について考えていく。
 まずは、ポケットベル、PHS、携帯電話の契約数の推移をみてみる。(図1−1)

 

 ポケットベルの契約数は96年頃から減少し、97年には大幅に減少した。こうした契約数の大幅減少の背景には、95年以降の携帯電話(PHS)の契約数の増加、近年、携帯電話及びPHSの新たなサービスとして登場した文字通信機能の開始(例えば、PHSの95年度から96年度の契約数が伸びている時期はDDIセルラーグループの文字通信サービスが始まった時期に重なる)など、携帯電話及びPHSサービスの急速な普及の影響が一因と考えられる。

 ポケットベルからケータイ(注3)への移行を示唆するものとしては、次のようなものがある。

 96年度の『ポケベル等通信媒体調査』((財)日本青少年研究所)によると、ポケットベルをよく使うという高校生は36.9%で、携帯電話・PHSをよく使うという高校生は15.2%であった。

現在(98年)では、『新世代のメディア利用行動に関する調査研究報告書』(郵政省)によると、ポケットベルを利用しているのは若者(15〜29歳)の19.1%(大学生・短期大学生だけに限ると18.4%)で、携帯電話もしくは、PHSを利用しているのが若者の56.3%(大学生・短期大学生だけに限れば67.4%)である。

96年度の『ポケベル等通信媒体調査』のなかの高校生という年代は、『新世代のメディア利用行動に関する調査研究報告書』のなかの大学生、短期大学生の年代になっている。このことから上記の数字を見ていくと、ポケットベルの%が減少しケータイの%が増加していることから、高校生のときに使っていたポケットベルを大学生、短期大学生へと成長するとともにケータイへと変えていったということができるのではないか。また、私はこのポケットベルからケータイへの移行で若者のコミュニケーションにも変化があったのではないかと思う。

この卒業論文ではまず、1章で移動体メディアの流れ、2章でそれぞれの移動体メディアについての先行研究をみていき、3章、4章でアンケート調査をもとにポケットベルからケータイへの移行があったことを明らかにし、若者のコミュニケーション観について考えていく。そして5章で全体のまとめをおこなう。