• 第3章 アンケート調査の概要
  •  まず、調査の概要について説明する。この調査はポケットベルからケータイへの移行があったこと、その移行で若者のコミュニケーションにどのような変化があったのかということを明らかにするために行った。対象者は富山大学生300人とし、その理由については、現在の若者のコミュニケーションを考えていく場合、大学生は18歳から20歳代と年代的にも若者世代に当てはまり、また、現在の大学生がポケットベル流行時の1994年から96年頃にかけてポケットベルをプライベートでのコミュニケーションの手段、道具として使用していたと考えられることによる。

    第1節 調査方法

     この調査には、クォータ法を使った。クォータ法とは、有意標本抽出の一種で、比較割合標本抽出の一つである。クォータ法では、母集団意識に着目して、これを基準にして母集団にできるだけ似るようにする。典型的には国勢調査などから得た情報に基づいて、各標本について母集団の各部分の構成に対応して、標本の各部分の構成を似せる、つまり、割り当てをする。(見田宗介・栗原彬・田中義久編、公文堂『社会学辞典』、1987

     母集団を富山大学生(表3−1)とし、学部、学年、性別に対応して以下のように割り当てをおこなった(表3−2)。なお、サンプル数は300としたが、割り当てをおこなった結果、301になった。

    表3−1<富山大学生現員数>

    1年

    2年

    3年

    4年

    人文学部

    男性

    60

    77

    85

    100

    322

    女性

    149

    131

    142

    153

    575

    教育学部

    男性

    53

    65

    52

    96

    266

    女性

    119

    126

    142

    165

    552

    経済学部

    男性

    237

    264

    245

    318

    1064

    女性

    156

    130

    142

    146

    574

    理学部

    男性

    176

    179

    259

    177

    791

    女性

    59

    66

    86

    83

    294

    工学部

    男性

    386

    376

    598

    380

    1740

    女性

    61

    55

    89

    67

    272

    6450

    表3−2<サンプル数>

    1年

    2年

    3年

    4年

    人文学部

    男性

    3

    4

    4

    5

    16

    女性

    7

    6

    7

    7

    27

    教育学部

    男性

    2

    3

    2

    4

    11

    女性

    6

    6

    7

    8

    27

    経済学部

    男性

    11

    12

    11

    15

    49

    女性

    7

    6

    7

    7

    27

    理学部

    男性

    8

    8

    12

    8

    36

    女性

    3

    3

    4

    4

    14

    工学部

    男性

    18

    17

    28

    18

    81

    女性

    3

    3

    4

    3

    13

    301

     調査票の配布、収集、結果の入力作業については、社会学調査法の授業で受講者に協力しておこなってもらった。配布は上記の通り、301部配ったが1部回収できず、300部で分析をおこなった。

    第2節 調査内容

     調査票の中の設問についての説明をする。

    本人の属性等について 性別(F1)、学年(F2)、学部(F3)、一人暮らしか家族と同居か(F4)、自由に使える金額はどれくらいか(F5

    ケータイに関する質問(Q1〜Q17)、その中で文字通信に関する質問(Q12〜Q15)、ポケットベルに関する質問(Q18〜Q29)ポケットベルの利用者に関しては、現在の利用者が少ないということが調査前から分かっていたので、以前利用していたという人もその当時のことを思い出してもらい、答えてもらっている。

    利用の有無(Q1、Q12、Q18

    利用していない人に将来利用しようと思っているかどうか、当分利用するつもりがないか、またそのときはなぜ利用する気がないのか<複数選択>(Q2、Q19)また、ポケットベルを以前利用していた人になぜ利用をやめたのかを尋ねた(Q20)

    利用動機<複数選択>(Q3、Q20)

    ケータイの利用頻度について回数と時間(時間はケータイのみ)(Q4〜5、Q13、Q22)

    相手に関する質問<複数選択>(Q6〜7、Q14、Q23〜24)

    話す(交換するメッセージの)内容について<複数選択>(Q8、Q15、Q25)

    ケータイの電話番号表示についての質問(Q9〜Q11)、「シカベル」についての質問(Q26)

    利用してからの意識の変化<5段階評価>(Q16、Q28)

    利用してからの実際の生活の中での変化<3段階評価>(Q17、Q29)

    ベル友の有無(Q27)

    電子メールについての質問(Q30〜Q54)※私の分析には用いていない。

    人との接し方<5段階評価>(Q55)

    友人との付き合い方<5段階評価>(Q56)

    友人にケータイ、ポケットベルを持っている人、電子メールを使っている人がどれくらいいるかを割合(Q57)

    友人と直接会ってする話の内容<複数選択>(Q58)

     ポケットベル、ケータイそれぞれ似た質問をしているので、まずはそれぞれの結果を比べていきたいと思う。その後、若者のコミュニケーションということに重点を置いて詳しく分析・考察していく。