第1章 移動体メディアの流れ

(1)ポケットベル

・主な流れ

信号を送ることで受信専用端末が鳴り、「呼び出す」ことができるというサービス。1958年にアメリカ合衆国オハイオ州で始まった「ベルボーイ・サービス」が世界最初のサービスと言われる。10年後、68年に日本電信電話公社が東京都23区でポケットベル・サービスを開始する。当初はブザー音が鳴るだけだったが、87年に数字も送れる液晶ディスプレイ方端末が発売される。93年にポケベル加入時に必要な費用がそれまでの半額程度(8000円前後)まで低価格化されたことで、この頃から若者の間にポケットベルが普及し始める。その後、従来のトーン信号による呼び出しのほか、カナ、数字、漢字等を使用して簡単なメッセージを表示できる端末が登場する。

・現在

 現在のポケットベルのサービスはより進化している。1998年8月からNTTドコモでは電子メールアドレスでも受信可能になった。また、99年2月からは基本使用料金が無料、呼出やメッセージ送信も料金の発信者側が負担する発信課金サービスが開始。NTTドコモの02・DO(ゼロニード)では天気予報や交通情報、ニュースなどが無料で受信可能。テレメッセージの020サービスではリアルタイムで電子メールの受信もできる。

(2)PHS

・主な流れ

 北海道での実験的運営を経て、1995年の7月にサービスを開始。携帯電話とは全く別の発祥を持ち、もともとは外に持ち出せるコードレス電話という案から発展。そのため電波を飛ばす力は比較的弱く、半径100mから200mおきに電信柱、電話ボックスの上やビルの屋上などに中継局を設置しなければならない。しかし、建設費は安いので、サービスは低料金。携帯電話や自動車電話と違い高速の乗り物の中では使えない。公衆電話並みの通話料であったことから簡易型携帯電話として、若年層を中心に急速に普及した。また当初からデジタル化されているのでパソコンとの相性がいいと言われる。

・現在

 電子メールに対応したサービスもでてきた。現在では32Kbpsから64Kbpsの高速データ通信が可能になった。文字サービスにおいては、1996年4月にDDIセルラーグループがカタカナや英数字、記号を送受信できるサービス(Pメール)を開始したのを皮切りにし、98年3月にはPHS3事業者(NTTドコモグループ、DDIポケットグループ、及びアステルグループ)の端末間直接通信型の文字メッセージ機能において、互換性が図られた。これにより、従来、メッセージのやり取りは同一事業者の端末間同士のみの独立したサービスであったが、他事業者の端末間でも相互にメッセージのやり取りが可能になった。また、99年2月にはDDIポケットから非音声サービスとして文字電話が登場。絵や手書き文字も送れるようになった。

(3)携帯電話

・主な流れ

 1985年にサービスが開始された、車外でも使えるショルダー型の自動車電話「ショルダーホン」が発端。その後、87年に車載を目的としない「携帯電話」としてサービスが開始される。高速で走る自動車から使えるようになっているので電波は比較的強力。しばらくは普及しなかったが、1998年の新規事業者の参入以来、低価格化、端末の小型化(サービス開始当初の端末は750グラムもあった)、通話可能範囲の拡大などが進み、加入者数は急速に増加した。アナログ方式とデジタル方式があるが後者が主流になっている。

・現在

 電子メール等のサービスをはじめ、メッセージ機能を使った多彩な情報配信サービスを展開している。このサービスには、必要なときに情報を引き出す「オンデマンド型」と、最新のニュースや天気予報等の情報をリアルタイムあるいは指定した時間に配信する「自動配信型」に2通りの形態があり、いずれも文字メッセージ形式で受信できる。また、音質に関しても従来のものに比べて格段によいものが出てきた。電波に関しても複数の基地局からの電波を同時に受信して安定した通話を可能にしている。

 以下に、移動体メディアの主な流れの年表を示す。(表2−1)

表2−1 移動体メディアの主な流れ 年表

 

ポケットベル

PHS

携帯電話

1958

●(米)オハイオ州コロンバスで交換手扱いの「ベルボーイ・サービス」が始まる→世界で最初のページングサービス

   

1968

●日本電電公社、東京都23区で自動ダイヤル交換方式のポケットベル・サービスを700台で開始(7/1)

   

1970

   

●大阪で開かれた日本科学万博の電気通信館で携帯電話が展示実演される

1972

●小型ポケットベル販売開始

   

1979

   

日本電電公社、自動車電話サービスを東京で開始(12

1985

   

●車載兼用のショルダー型の電話が登場(9

1987

NTT、ディスプレイ・ポケットベルのサービス開始(数文字表示サービスの開始)(421

NTT以外の新規通信事業会社(NCC)がページング・サービス営業開始

 

●携帯電話サービス開始(410

1993

●ポケットベル加入時に必要な費用がそれまでの半額程度(8000円前後)まで低価格化する

   

1994

●数字を文字に変換して12文字までの単文が受信できるようになる

   

1995

 

●首都圏、札幌でPHSサービス開始(7

●発信電話番号表示サービス開始

 

1996

 

●文字メッセージサービスの開始(4

●文字メッセージサービスの開始

1997

 

●PHSによる32bpsデータ通信開始

●デジタル携帯電話において発信電話番号表示サービス開始

1998

NTT、電子メールアドレスでも受信可能になる(8

●位置情報サービス いまどこサービス開始(5

●文字メッセージサービス Sky Warp開始(4

CDMA方式の携帯電話cdmaOneが発売(7

●文字メッセージサービスSky Message開始(10

●着信音設定サービスSky Melody開始(11

1999

●発信者課金サービス開始(2

●非音声通信サービス 文字電話発売(2

●オンラインサービス iモードが発売(2

●ディスプレイ部分がカラーのものが発売(12

( )の中の数字は日付である