(注)


  1. 「学歴決定論」
    尾形憲氏がこの論を主張する代表的人物。著書に、「学歴信仰社会−大学に明日はあるか」(時事通信社、昭和51年)などがある。
  2. 「学歴社会思い込み論」
    小池和男氏、渡辺行郎氏などがこの論を主張する代表的人物。著書に、両氏によって書かれた、「学歴社会の虚像」など(東洋経済新報社、昭和54年)がある。
  3. 「日本だけ論」
    学歴決定論同様、尾形憲氏がこの論を主張する代表的人物。同著書「学歴信仰−大学に明日はあるか」で尾形氏は、学歴社会の形成・発展を日本資本主義の帰結と主張。学歴社会は日本の社会にだけはびこった病弊であるとした。
  4. R・P・ド−ア・・・彼は著書「学歴社会−新しい文明病」(松居弘道訳、岩波書店、昭和53年)の中で、「学歴病」は日本だけの問題ではなく、近代化の後発国に共通の問題であることを指摘した。
  5. 「自己の存在証明、価値証明」
    石川准氏は著書「アイデンティティ−ゲ−ム 存在証明の社会学」(1992年、新評論)の中で、「アイデンティティ−」のことをこう表現する。氏はわれわれ人間は、「自分がいかに価値のある人間であるか」ということを、他人に対して、あるいは自分自身に対して、証明せずにはいられない存在だということを主張する。そしてこの「「自分は価値ある特別な人間なんだ」ということを証明することに人は没頭するあまり、じつにいろいろな悲喜劇が演じられてしまう」(同著書、p5)ということも石川氏は述べている。
  6. 「投資」としての学歴
    矢野真和氏の「試験の時代の終焉−選抜社会から育成社会へ」(1991年、有信堂高文社)の10項によると、「投資としての学歴」とは、もともと経済学の言葉である。経済学では「教育=将来のための投資的行為」として教育を定義付けしてきた。彼らの考えでは、人々は効果にみあうだけの投資をしようとするはずでであるから、学歴のもつ「資格」としての効果が高いときは人々の進学熱も高まり、逆に学歴の効果が低いときは、人々の進学熱も下がると考えられてきた。
  7. 「アスピレ−ション(aspiration」)
    個人がより高い目標に到達しようとする欲求のこと。一般的には向上心とか野心とか呼ばれる。社会学では特に、社会的地位の上昇欲求をさすことが多く、社会移動における社会的成功や立身出世の意欲のもんだいとして検討されてきた。アスピレ−ションの研究関心は大きく二つに分けることができる。
     第一は達成動機の問題とも関連するが、アスピレ−ションと行動との諸関係である。たとえば要求水準(level of aspiration)という観点 を導入して、学業成績や学 歴達成、職業選択や職業移動などがアスピレ−ションとどの ように関係しているかを解明する。
     第二はアスピレ−ションの社会化である。個人の性別や親の学歴、職業の違いによって、あるいは所属集団の平均的な要求水準などによって、個人のアスピレ−ションがどのように形成され、変容されるかを検討する。(出典 新社会学辞典 1993、有斐閣)
  8. 「収益率」
    矢野真和氏の「試験の時代の終焉−選抜社会と育成社会」のp10によると、収益率とは、「進学にともなう費用 対 進学によって得られる便益(=学歴別の所得格差)」によって計算されるもののことである。この2つを秤にかけて、便益が大きいと考えれば進学、費用が大きすぎてムダだと判断すれば就職を選択すると考えられてきた。
  9. 「コミットメント(commitment)」
    コミットメントとは、「既成の思想、信条、規範、あるいはこれらを保持する集団に対して、心情的にあるい制度的に関わりをもつこと]である。(出典 新社会学辞典 1993、有斐閣)
  10. 達成動機・・・achievement motive
    初めてマレ−(Murray,H.A.)があげた要求の1つで、その後マクレ ランド らによって精力的に研究された。その結果によると、社会が経済的に発展する背景には、それに先立ってその社会の人々の達成動機や子供の教育における達成動機づけの強調が多くの社会においてみられた。達成動機は普通TAT図版を用いて物語を作らせて測定されるもので、失敗回避動機と対比される。(新社会学辞典、1993、有斐閤)


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