<第6章 その他の調査結果>


 最後に直接私の問題意識(「なぜ人々は勉強や受験に躍起になるのか」)に関係していたわけではないが、この調査を通してわかったいくつかの(私にとっては)興味深かった事柄について述べ、終わりにしようと思う。
 まず最初に、「学年」という要因がどのくらい「行動」や「意識」というものに影響を与えているかをまとめて紹介しよう。

(1)学年によるちがいがあったもの

  1. 「試験前はテレビ、まんが、TVゲ−ムなどをがまんしているか」という問に対する、「学年」との関連は「P<0.1、Cramer’V=0.15]と若干の関連が見られた。3年生が1番このような意識が強いのかと思っていたのだが、実際は「1年生」が、1番我慢しており「20・8%」、ついで3年生「18・1%」、2年生「13・1%」となっていることがわかった。2年生では実に「41・2%」が「がまんしていない(しようとも思っていない)」ということがわかった。
  2. 「宿題、朝学習をきちんとするほうか」という問に対する「学年」との関連は「P<0.1、Cramer’V=0.17]とやはり若干の関連が見られた。ここでも「きちんとするほうだ、ほとんどの場合きちんとするほうだ」などと答えた割合は、1年で「84・8%」、2年で「58・9%」、3年で「74・0%」とやはり1、3、2の順番になっていることがわかった。いわゆる2年における「なかだるみ」というものが起こっていることがこの2つ結果から読みとれた。
  3. 「友達と高校進学について今までに話をしたことがあるか」という問いと「学年」との関連は「P<0.01、Cramer’V=0.31]と非常に強かった。相関係数も−0・37あった。
  4. 「家の人と高校進学のことについて今までに話をしたことがあるか」という問いと、「学年」との関連は「P<0.01、Cramer’V=0.26]と強かった。相関係数も−0・36と非常に強い相関があった。
  5. 「塾にいっている割合」も「学年」との非常に強い相関があった。

(2)学年によるちがいがなかったもの

 ここでは、学年による違いがあると思っていたのに実はなかったというようなものだけを取り上げてみた。
  1. 「勉強とはやらなくちゃいけないものだという意識」と「学年」の間には絶対に関連があると思っていたのだが、「P=0.53」と、全く関連はみられなかった。逆に言えば「学年に関わらず」生徒たちは、「勉強とはしなくてはいけないものという意識を強くもっている」ということが言えるのではないだろうか。
  2. 上の所でも少し述べたが「大学へ行こう」という意志も、1年生などはあまり持っていない(考えていない)のではと思っていたのだが、1年生のうちからすでに33・8%(24人)もの生徒が「将来大学にいくつもりだ」と答えており、カイ2乗検定も「0・31」となっていた。「大学へ行こう」という意志と「学年」との間に関連はないことがわかった。
  3. 「家の人から何か言われる頻度」も「ほめられる頻度」も、「学校の先生から何か言われる頻度」も「ほめられる頻度」も「よく」という頻度だけに限ってみれば「学年があがる」ほど「頻度もあがって」いるのだが、全体としてみれば、関連は見られなかった。
 *以上の結果から、「高校進学について話をする」「塾に行く」といったような「具体的な行動」に関しては、やはり学年が上がるごとに「多く」なるのだが、「勉強とはやらなくちゃいけないものだ」、あるいは「大学へ行こう」というような「意識」の面は、「学年によって変わらない」もののようだ。

(3)その他

 その他、興味深かった事実を並べてみた。
  1. 親の「何か言う頻度」と、本人の「成績」との間には相関が見られなかったが、教師の「何か言う頻度」と成績との間には相関が見られた。つまり、「親は成績が悪かろうが良かろうがしかるが、教師は成績が悪いほどしかる」ということである。
  2. 一方「ほめたり、励ましたりする頻度」は、親、教師に関わらず、「成績のよい子」の相関が見られた。
  3. カイ2乗検定をパスしていないので単なる偶然かもしれないが、男子生徒と女子生徒で「大学に行く意志」を比べてみたところ、「行くつもりだ」と答えた割合は男子「33・0%(33人)」に対し、女子「35・8%(38人)」と女子の進学志向の方が強いという結果がでた。(ちなみに、学年別に見た男女の比率(男子:女子)は、1年では「29・4%(10):37・8%(14)」、2年では「37・5%(12):25・8%(8)」、3年では「32・4%(11):42・1%(16)」であった。)
 このような「子供の側の意識」とは裏腹に、「親」が子供に大学(あるいは専門学校)への進学を希望する割合は、その子供が「男」の場合には「30・9%(30)」であり、「女」の場合は「18・7%(20)」であった。やはり男の子の方に進学を望む率が高いようである。このように、女子生徒の進学志向は高まっているが、親の方では、相変わらず「男の子の方に大学進学を・・・」という意識が根強いようである

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