『完全自殺マニュアル』騒動記
1993年7月4日
「完全自殺マニュアル」発売。一部取次が通常の委託扱いから書店からの事前注文分のみの扱いに切り替え、さらに減数配本を決定、初版部数の半分近くが書店に送られない形になる。
7月7日
「週刊SPA!」7月14日号に「完全自殺のススメ」と題する鶴見済(完全自殺マニュアルの著者)の文章が掲載される。
7月11日
読売新聞に書籍広告を出稿するがタイトル、著者名、定価のみの記載と大きさの制限を提示される。
8月10日
「噂の真相」9月号が「大田出版『完全自殺マニュアル』刊行の波紋! 新聞広告拒否と取次・書店の販売規制の壁が」を掲載。
9月2日
「週間新潮9月9日号が「地下から書店でベストセラ−『完全自殺マニュアル』」と題する記事の中で「自殺を極めて即物的に扱ったことが強いインパクトを与えたわけだが、そのインパクトはヘア写真集のそれに似ているのではないか。そして、自殺までもマニュアル化してしまう若者気質もどことなく寒々しい」とコメント。
9月20日
アメリカの雑誌「NEWSWEEKLY」9月27日号が「Suicide squeeze」(自殺の社会的効果)と題する記事の中で強すぎる円が日本人を落ち込ませたわけでもないだろうが、日本での最近のベストセラ−は『完全自殺マニュアル』という本だ」と紹介。またオ−ストラリアの全国紙「The Australian」でも「日本的な死に方の終わり」と題する記事が掲載され、「ミシマを無視するツルミ」のキャプションとともに三島由紀夫と鶴見済の写真が並ぶ。
10月1日
「クレア」11月号の「著者自身が教える、『完全自殺マニュアル』の活用法」と題するインタビュ−記事に登場。聞き手・漆原小春が「ただ、ちょっと驚いたのは、彼は死体を見たこともないし、身内の人間が死んだ経験もないというコト。この本が若者に人気があるのも、鶴見氏がイザとなったら死んじゃえばいいって考えているのも、死は遠いものと思っている世代の考え方なのかもしれない」とコメント
10月10日
「TOKYO JOURNAL」11月号が「A dead good read]と題する記事で紹介。
10月12日
ト−ハンの調査で、(ノンフィクション他)の週刊ベストセラ−で8位に初登場。
10月15日
「FRYDAY」10月22日号に「宣伝なしで15万部 ベストセラ−『完全自殺マニュアル』著者が『書けなかった話』」と題する文章を鶴見済が掲載。
10月19日
ト−ハンの調査デ(ノンフィクション他)の週刊ベストセラ−の3位に急上昇。
10月20日
読売新聞朝刊、山梨日日新聞、夕刊フジが、青木ヶ原樹海で『完全自殺マニュアル』を所持した男性の自殺死体2体が発見されたと報道。さらに同所を持ってさまよっていた男性一人が保護されていたことが19日までにわかった。
10月21日
前日の新聞報道を受けて、各ワイドショ−「ズ−ムイン!!朝!」(日本テレビ)、「ザ・ワイド」(日本テレビ)、「ビッグモ−ニング」(TBS)、「モ−ニングEYE」(TBS)、「タイムアングル」(フジテレビ)が報道。スポ−ツ紙でも「東京スポ−ツ」が報道。
10月26日
11月1日
毎日新聞の匿名コラムが取り上げ、「これまでのカルト・ブ−ムの延長。オタク趣味も並みの話じゃ面白くないんで、際どいとこまで行き着いたんです」という若者の意見を紹介し、「若者たちの間ではこの本は挑発的なブラック・ユ−モア、つまりは『アブナさ』そのものを楽しむために読まれている」と分析。
11月2日
毎日新聞の読者欄「みんなの広場」で「憤りを感じる『自殺マニュアル』と題した主婦の意見が掲載される。趣旨は、テレビのインタビュ−に答えて、「自殺は悪ではない、結局は本人の意志だ」といった著者の意見は傲慢であり、いやしくも、物を書く身である以上は、軽々しい発言は慎むべきで、それは表現の自由とは別問題だというもの。
また、ト−ハン調査の同部門週刊ベストセラ−は5位。
11月4日
「スポ−ツニッポン」が「自殺マニュアル本」”いらぬガイド”樹海の村大迷惑」の見出しで大々的に取り上げる。
11月9日
君津BBS会会長・長崎功子を申立人として「発刊中止申立書」が大田出版に手渡される。またト−ハン調査の同部門週刊ベストセラ−は5位。
11月11日
東京新聞が「話題本『完全自殺マニュアル』の読まれ方」と題する記事を掲載。「『死ぬことは悪いことじゃない』と大きな声で言ってくださったことが本当に励みになりました。これでいつでも死ぬことができると思うと、安心するというか、妙に元気になりパワ−も出てきます」といった読者の手紙、「ジョークで読むものでしょう」という養老孟司東大医学部教授の発言、「若い人は生き方、死に方についてもマニュアル化されていないと自分のものにできない」という劇作家の山崎哲の発言を引用し、「若者は『自殺マニュアル』の誘惑に限りなく近づくことで、平和な時代の緊張感を味わおうとしているのかもしれない」と結ぶ。
11月16日
11月22日
11月25日
朝日新聞が夕刊で「増える『樹海自殺』マニュアル本が地元刺激」という見出しで記事を掲載。
11月23日
「アサヒ芸能」12月2日号で「自殺マニュアル著者、主婦団体『出版中止』要求に『おカド違いだ』」という記事を掲載。
11月25日
「宝島」12月9日号に「問題のベストセラー著者自信が語る、『完全自殺マニュアル』其の後 平成の自殺志願者たち」を掲載。
11月30日
12月7日
12月8日
朝日新聞社読者欄「声」に、「『自殺』本出版に責任はないか」と題する読者の意見が掲載される。
12月10日
「創」1月号が「なぜ20代にこうも読まれるのか 『完全自殺マニュアル』が売れる時代」を掲載。
12月12日
12月14日
12月20日
8日付朝日新聞「声」欄に対する反論が再度掲載される。「『自殺』本には抑止効果ある」という内容のもの。
12月25日
アメリカの雑誌「HAPPER’S」1月号に『完全自殺マニュアル』の抄訳が掲載される。コピーは「A FINAL EXIT FOR JAPAN’S GENERATION’S X」。
1月18日
朝日新聞朝刊(関西版)、夕刊で『完全自殺マニュアル』を愛読していた中学3年生の少年が、マニュアル通りに自殺したと報道。記事によると、少年は昨年10月頃本を購入、「繰り返し読んでは、母親に冗談交じりで内容について話していた」。遺書も無く、「成績は常に上位で」あったことから、中学の校長は、「自殺の動機は見当たらなかった。本の影響があったのではないか」と語り、少年の父親も「本だけが原因とは思わないが、自殺を『気持ち良い』などと賛美する内容によって、息子が(自殺へと後押しされたことはあると思う」と語っている。「警察でも関連を調べている」が「出版元や著者は『本が自殺のきっかけとは考えられない』と反論している」。
1月19日
前日の朝日の記事を受けて、新聞では毎日新聞、共同通信、デイリースポーツなどが、テレビでは「タイムアングル」(フジテレビ)が『完全自殺マニュアル』と事件を関連づけた報道を展開。また自殺した少年の父親の要請を受けて、福岡県警が、『完全自殺マニュアル』を有害図書に申請することを検討した。(鶴見済、1994、p14ー33)
それから、「CROSSBEAT」10月号で水越真紀、「DIME」10月21日号で山崎浩一、「クレア」11月号で山本直樹、「週間文春」11月4日号でビートたけし、「週間現代」11月27日号で高橋春男、「ポパイ」12月1日号でさるすべり中野、「週間朝日」12月10日号で高橋源一郎、「ダカーポ」10月号で大月隆寛、そして他にも様々な雑誌で様々な人が『完全自殺マニュアル』について書いています(鶴見済、1994、p198ー216)。
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