第四章 質問紙調査の分析

第一節 単純集計の分析(添付資料参照)

 まずは単純集計の度数分布から分析をしたいと思う。
 問1において非常に明確な結果が出たもの(Aに近いもしくはBに近い)を抜粋すると「勇敢」「勝者」「光」「男性的」の四つだがこれらは予想通りの結果となった。
 問2においては「偉大な行為をなした、自分の理想の人物で尊敬の対象」が全体の26.4%、「夢中になれるあこがれの対象」が全体の24.4%と二つで50%を越えてしまった。この二つが人々にとってのヒーローの存在意義の代表となる訳だが、見事に対称的な二つだと思う。
 この二つのうち「偉大な行為をなした、自分の理想の人物で尊敬の対象」はあくまでも「自分にとって」ではあるが、いわば人々から崇められるようなある種”聖なる”存在に近いと言えるのではないだろうか。逆に「夢中になれるあこがれの対象」は気楽にヒーローと呼べるような身近な存在として存在しているのではないだろうか。つまり最近よく言われるように「真のヒーロー」と「認められないヒーロー」がこの二つだと思う。「認められないヒーロー」と言われていることは確かだが、あなたにとってのヒーローとは?と問いかけたときにその「認められないヒーロー」である「夢中になれるあこがれの対象」を選択している人が「真のヒーロー」と同じくらいいることも確かだと言える。
 問3では「ヒーロー不在だと思うか」について尋ねたが、「その通り」が20.2%「どちらかというとその通り」が41.7%と60%を超える人がヒーロー不在だと考えている。しかしこれらは単にメディアでヒーロー不在と言われているために印象に残っているだけかもしれない。というのも次の問4で現在ヒーローがいないと答えた人は13.0%にとどまっているからだ。
 問4ではスポーツ界、芸能人・芸術家のヒーローがいると答える人が多い。スポーツ界は実に80%近い171人の人々がヒーローがいると答えている。これは現代にもヒーローは存在する証しだと思う。スポーツ界にのみならず現代に生きる人々の多くが、設問中の分野を見たうえでヒーローがいると答えてくれているならばそれに従うしかないと言えよう。
 問5では問4と対照的に以前ヒーローがいたと思う分野について尋ねてみた。その結果問4と比べスポーツ界以外の分野については以前ヒーローがいたと思う人の方が多くなった。「現在」「以前」という言葉は非常にあいまいだが[以前」の方が時間的に長いため幅の広い解釈ができるので度数が増えた事も十分に考えられる。ということはつまり「現在」よりも「以前」の方がヒーローがいたという証明にはならない。
 各分野ごとに比較すると特に顕著に「以前」にヒーローがいたと答えた人が増加しているのは政界で、現在政界にヒーローがいると思う人は15人なのに対し以前政界にヒーローがいたと思う人は102人と実に6倍以上に膨れ上がっている。これはやはり昨今の政治不信に関係してると考えられる。
 問6では今後ヒーローが誕生してほしい分野を選択してもらった訳だが、ここでもやはり政界が最も多く、61.2%128人が望んでいる。次に多いスポーツ界が70人に満たない結果であることを考えると現代人がいかに政界の復活を願っているかがよく分かる。 問7は問6とのクロス表を取るための設問だが「他人のために生きる人」が最も多く51人と全体の4分の1以上を占める結果となった。これは誰にとっても不安な現代においては「頂点に立つ強者」や「印象がよく皆から好まれる人」といったイメージ先行のヒーローよりも実際に世の中の役に立つヒーローを望む人も多くいることを表していると考えられる。
 問8はヒーローに対する具体的な意見にたいする賛否を尋ねた質問だが明確な結果が出たものをあげると、「ヒーローが活躍すると人々の励みになる」「ヒーローは子供に希望を与える存在であってほしい」「国民的ヒーローが必要だ」「ヒーローは子供へ悪影響を及ぼしてはいけない」「ヒーローもてはやしすぎてはいけない」といったものが賛成多数で、明らかにに反対多数と言うものはなかった。しかし「ヒーローには特権が与えられて当然だ」「ヒーローの活躍は他の人のチャンスを奪うことになる」は反対が多い結果がでた。このなかで予想と異なったものは「ヒーローはもてはやしすぎてはいけない」の賛成多数で、ヒーローに対して意外にも冷静な眼を持っていることに気づかされた。先行研究としてあげた「ヒーローの文化論」のなかのヒーローを持ち上げるだけ持ち上げておいて突き落とす「ホメケナシ欲求」は少なからずあると考えていたためだ。おかげで先行研究にたいする反論の道具ができた訳だが意外に感じる結果だった。

第二節 クロス表による分析

 次にクロス表によって分析したもののうちカイ二乗検定値0.05未満を有意水準としてして採用している。なお問1および問8はクロス表に採用する際に値1及び2を新しく1に、3を新しく2に、4及び5を新しく3に加工している。

☆問1ヒーローのイメージ×問4現在ヒーローがいると思う分野
 このクロス表は現在ヒーローが存在すると思う分野とヒーローのイメージとの関連を導き出すものだが、分野ごとの現代人のヒーロー観が明らかにされることによって多くの人がヒーローがいると思う分野、いないと思う分野それぞれに求められるヒーロー観が結果として出てくることが期待される。
 政界にヒーローがいると答えている人はいないと答えている人よりも「集団」のイメージの割合が高い。逆に政界にヒーローがいないと答えている人は、6割もの人が「孤独」を選んでいる。政界のヒーローは単独では存在し難く、集団つまり党のイメージが強いのだろうか。(表1参照)
 学者・知識人ヒーローがいると思っている人はヒーローのイメージの「文科系」のイメージが8割強と非常に強く「体育系」と答えた人は0人となっている。当然の結果となった。(表2参照)

☆問1ヒーローのイメージ×問5以前ヒーローがいたと思う分野
 これは過去にヒーローがいたと思う分野とヒーローのイメージとのクロスだが、問1×問4で出てきた現代人のヒーロー観をさらに確かにしてくれる結果が期待できる。
 以前政界ヒーローがいたと思う人は「集団」の割合が高くなっている。これは単に政界ヒーローはやはり議員の集団の中にいるというイメージからだろうか。しかし問1×問4で述べたように現在政界ヒーローがいないと思っている人は「孤独」のイメージが強い。したがって政界ヒーローの「集団」というイメージとは単に議員の集団から連想されたものではなく「集団」を取り仕切るリーダーというイメージから連想されたものと考えられる。(表3参照)

☆問1ヒーローのイメージ×問6ヒーロー誕生を望む分野
 これは今後ヒーロー誕生を望む分野とヒーローのイメージとの関連だが、現代人がこれからの日本に求めている、つまり現状に不満を持っている分野において要求されるヒーロー像について結果がでる。
 財界ヒーローを望む人は「粗雑」イメージが強い。「粗雑」というとイメージが悪いが財界のドンたる者はあまり細かいことは気にせず豪快にふるまってほしいという願いだろう。(表4参照)
 スポーツヒーローの誕生を望む人はヒーローのイメージを「遠い」と答えた人の割合が6割をこえている。これは現代人はあまり自分から遠くに感じてしまうヒーローよりも、普段からメディアへの登場が多く、しかも野球やサッカーなど多くの人が実際に関わったことのあるスポーツの延長上にあり比較的身近に感じられるヒーローであるスポーツヒーローの誕生を望んでいる証拠だと考えられる。(表5参照)
 また芸能人・芸術家ヒーローの誕生を求める人のヒーローのイメージも7割以上が「遠い」を選択している。これもスポーツヒーローの場合と同じことが言える。(表6参照)
☆問1ヒーローのイメージ×問7誕生して欲しいヒーローの人物像
 ここではヒーローが「遠い」と感じている人ほど「華麗な演技、技術で人々を楽しませる人」の誕生を望んでいることがわかる。これはやはり、現代人が遠くに感じるヒーローよりも身近なヒーローを望んでいると言えるだろう。(表7参照)

☆問1ヒーローのイメージ×問8ヒーローに関する意見
 このクロス表ではヒーローを「近い」と思っている人ほどヒーローは逆境から生まれるわけではないと思う人が増える関係が発見できるが、特に注目したいのはヒーローを「遠い」と感じている人の半数がヒーローは逆境に生まれると考え、逆境に生まれるわけではないと思う人がたった3.3%しかいないところだ。つまり「遠い」と感じはするが、「遠い」ヒーローはそれだけ力を持ち、多くの人のために悪い状況の打破をしてくれるのではないかというイメージがあるのではないだろうか。(表8参照)

☆問4現在ヒーローがいると思う分野×問8ヒーローに関する意見
 これは現在ヒーローがいると思う分野とヒーローに関する意見との関係が分かる訳だが、現在いる各分野のヒーローに対するおおまかな意見が明らかになる。
 スポーツヒーローがいると答えた人は子供への悪影響を気にする人の割合が高くなっている。これらはやはりメディアによって活躍その他の情報が得られるためであり、非常に身近に感じられることも影響していると思う。また彼らはヒーローが生まれない社会は衰退してしまうと考える人の割合も高く、スポーツヒーローに期待しているもの感じているものは大きいと言える。(表9、10参照)
 学者・知識人のヒーローが居ると答えた人はヒーローには特権が与えられて当然だと考える傾向が強い。またヒーローが社会を発展させるという意見も強い。彼らは一般人には到底分からないことに詳しいためか評価が高いうえ、社会のために素晴らしいことをやってくれるのではないかという期待ももたれている。(表11、12参照)
 ヒーローがいないと答えた人は「ヒーローが活躍すると人々の励みになる」に否定的だがサンプル数が少ないので断定はできない。また「国民的ヒーロー」が不必要だと考える人の割合も高い。(表13、14参照) 

☆問6ヒーロー誕生を望む分野×問7誕生してほしいヒーローの人物像
 このクロス表は非常に分かりやすくヒーロー誕生を求める分野とその分野に望まれるヒーローの人物像が導き出される。
 政界に誕生を望まれるヒーローの人物像は「他人のために生きる人」が3分の1を占めている。政治があくまでも我々国民の為にあってほしいという思いが現れている。(表15参照)
 その他には2割弱の人が選択した「常識をくつがえすようなことをする人」があるが、これは現在の国民の政治不信も関係しており、現在の信頼できない政治を見事に改革してくれるようなヒーローを求めているのではないだろうか。(表15参照)
 また「華麗な演技、技術で人々を楽しませる人」はやはり政治家のイメージとは掛け離れているためか割合は5分しかない。表面上の華やかさは政治家には必要なくしっかりとした政治の中身を求めていることが分かる。(表15参照)
 これらから政治に無関心と言われている現代人だが意外にも政治にたいしてしっかりと求めるものを持っていることが分かる。無関心なのはやはり政治自体にあると言えるのかもしれない。
 今後誕生を望むスポーツヒーローに求めるヒーローの人物像としてはやはり「華麗な演技、技術で人々を楽しませる人」が4割弱と多い。また芸能人・芸術家も6割強と「華麗な演技、技術で人々を楽しませる人」が多い。これらは当然だろう。(表16、17参照)
☆問6今後ヒーロー誕生を望む分野×問8ヒーローに関する意見
 まずヒーロー誕生を望まない人はどこかにヒーロー誕生を望む人に比べ「ヒーローが活躍すると人々の励みになる」「誰もがヒーローになれる社会が必要だ」「国民的ヒーローが必要だ」に否定的な割合が高い。サンプル数が少ないが、納得が行く。(表1819、20参照)
 政界にヒーロー誕生を望む人は「ヒーローは子供に希望を与える存在であってほしい」「国民的ヒーローが必要だ」「ヒーローは子供へ悪影響をおよぼしてはいけない」「ヒーローをもてはやしすぎてはいけない」に賛成する傾向が強い。これは政界にヒーローが誕生し未来の日本を背負って立つ子供達に余計な負担となるような問題を解決し、希望をもてるような国にしてもらいたいと願っているのだろう。(表21、22、23参照) 

第三節 相関係数による分析

 この節では相関係数による二変数の線形的な関係を求める。

☆問1ヒーローのイメージ×問8ヒーローに関する意見(表24参照)
 この二つの相関係数をとると「遠い−近い」と「ヒーローが活躍すると人々の励みになる」との正の相関が見られた。つまりヒーローを遠いと感じる人ほどヒーローの活躍は励みになると感じ、ヒーローを近いと感じる人ほど特にはそう感じていないと言う結果だが、遠いところにいると感じるヒーローは強い影響力を持っているという証しだろうか。
 また問1×問8のクロス集計で分析したように「遠い−近い」と「ヒーローは逆境から生まれる」に正の相関が見られた。

☆問1ヒーローのイメージ×問23自分の性格
 ヒーローのイメージを「派手」ととらえる人ほど自分の性格を「上昇志向が強い」と思っており、「常識」というイメージを持っている人ほど自分の性格を「他人と違ったことをしたくなる」とは思わなくなる。また「集団」のイメージがある人ほど、「グループの中でリーダーシップを取りたくなる」と答えている。これらからヒーローのイメージと自分自身とを写し合わせていることがわかる。 (表25、26、27参照)

☆問1ヒーローのイメージ×問30年齢(表28参照)
 年齢が高くなるほどヒーローのイメージとして「集団」をあげる人が多くなっている。これは年齢が高い人が見て来たヒーローとは集団の頂点に存在する人々だったのかもしれないという予想が立つ。現代の若者よりも集団に対する帰属意識が強かったために、そのうえに存在したヒーローに集団のイメージを持っているのかもしれない。        また年齢が高くなるほどに「常識」のイメージが強くなっている。これは若い人はヒーローに過度の期待をかけ非常識と思われるような大変な事を求めているが、年齢が高い人はヒーローとはあくまでも一般大衆の頂点として存在するもので、非常識な言動によってヒーロー視されるわけではないと思っていると考えられる。       
 さらには年齢が高くなるにつれヒーローを「近い」と感じている人が増えているが、これは年齢の高い人がヒーローはあくまでも一般大衆と同じことをしているが、そのすべて、もしくはあることにおいてレベルの高いところにあるだけで非常識な事をしているわけではない、という考えがあるのではないだろうか。       

☆問3ヒーロー不在だと思うか×問8ヒーローに関する意見(表28参照)
 この中で唯一関連が見られたのがヒーローが不在だと考える人ほど、「豊かな社会ではヒーローは生まれにくい」と考える人が増える、というものだった。これはつまり、豊かな社会になるとヒーローは生まれにくいという人は実際に現代は豊かなためにヒーローが生まれにくい時代だと感じているということになる。

第四節 因子分析による考察

☆問1ヒーローのイメージ(表30参照)

 問1のヒーローのイメージについて因子分析を行ったところ、固有値1以上の因子が6つ抽出されたが、固有値が1を大きく越えている上位4つの因子を採用することとした。共通性を見ると問1×10、問1×20が十分な値に届いていないので、この因子分析では除外することとする。
 因子1は派手、光、勝者、勇敢、大胆に対して正の、貧困に対して負の因子負荷量がかかっている。そこでこの因子を「成功者ヒーロー因子」とする。
 この因子はポジティブなイメージで構成されているため、非常に活力があり何事にも積極的なヒーローといえよう。しかし、実際には日本人にはなかなかいないタイプかもしれないし、逆にそれゆえにヒーロー視されるということも考えられるヒーローの因子と言える。
 因子2は利己的、一瞬、貪欲に対して負の因子負荷量、柔和、男性的に対して正の因子負荷量がかかっている。そこでこの因子を「好感ヒーロー因子」とする。
 この因子は文字通り好感度が高いヒーローで他人との競争を嫌い、常にしなやかな物腰で振る舞うヒーローの因子と考えられる。
 因子3は上品、常識、理性的に対して正の因子負荷量、粗雑に対して負の因子負荷量がかかっている。この因子を「普遍的ヒーロー因子」とする。
 この因子はある種、高貴な人物を思い浮かばせる。しかし普遍的といったのはあくまでもこのような人物が、一般人の中にも多く存在すると考えたためであり、共同体の上に位置するヒーローではないと考える。
 因子4は、集団、文化系に正の因子負荷量、寡黙に負の負荷量がかかっている。そこでこれを「権力ヒーロー因子」と名付ける。
 この因子のイメージはさしずめ政治家だろうか。政党なる集団に属し勉強一本の文化系で口はうまいというイメージが最も当てはまると私は考える。
 ここに4つの因子が出揃った訳だが、それぞれを分析に使えるように因子得点化し、さらに質的データとして見ることができるようにそれぞれについて因子得点が高い、中間、低いの3つに分け、因子得点変数とした。これらを分析にかけてみることとする。

クロス表(ただしカイ二乗検定値0.05を有意水準として選択、採用している)
☆各因子×問4現在ヒーローがいると思う分野
 「好感ヒーロー因子」の値が大きくなるほど「芸能人、芸術家」にヒーローがいると答える人の割合が大きくなっている。これは特に芸能人が、それが普段と変わらないのか、異なるのかは抜きにして常に好感を持たれる性格をしているためと考えられる。逆に言うとその中でヒーローと見なされるのはかなりの好感度を持たれていることの証しになるだろう。(表31参照)
 「普遍的ヒーロー因子」のイメージを強く持つ人ほど現代にヒーローがいないと答える割合が高くなっている。私の「普遍的ヒーロー因子」の定義によると一般人の性格の変化が関係していると思われる。強いヒーロー観を持っている人ほど、複雑で混乱した時代の中で人々の性格そのものがヒーローとしての資質に欠けて来ていると考えているのではないだろうか。問4で「ヒーローがいない」以外を選択した人は「普遍的ヒーロー因子」の値が小さくなるほど多くなっているのもその裏付けと言えるのではないだろうか。(表32参照)

☆各因子×問7誕生して欲しいヒーローの人物像
 「独力で必死に生きる人」を誕生して欲しいヒーローの人物像としている人は、「成功者ヒーロー因子」のイメージが強くなるほど増加している傾向がある。これはそのままの解釈で、地道に自分の力を頼りに必死に努力して来た人が、結局は人生の成功者として生活していると考えられているからだと思われる。(表33参照)
 「華麗な演技、技術で人々を楽しませる人」がヒーローの人物像として誕生して欲しい人は「成功者ヒーロー因子」の値が低くなるほど多くなっている。これは「華麗な演技、技術で人々を楽しませる人」の評価が低いと思われている結果だが、「楽しませる」という部分で若干軽いイメージを与えてしまったことも考えられる。(表34参照) 
 
相関係数
☆各因子×問8ヒーローに関する意見
 因子1の「成功者ヒーロー因子」と「ヒーローは子供に希望を与える存在であってほしい」「ヒーローはごく一部の人がなれるものだ」「ヒーローは子供へ悪影響をおよぼしてはいけない」の3つに正の相関が見られた。これらから「成功者ヒーロー因子」は子供にとって好ましい影響と好ましくない影響が見られるという意見があることがわかる。好ましい影響はたくましく生きた結果として、ごく一部の人生の成功者になったという考えで、悪影響とはやはり日本人の国民性からあまり目立つと恨みねたみを持たれるかも知れない、ということだろうか。(表35参照)
 因子2の「好感ヒーロー因子」と「ヒーローの活躍は他の人のチャンスを奪うことになる」「『私だけのヒーロー』がいればいい」との負の相関が見られた。この相関では好感度が低くなる理由として、ヒーローは誰かとの競争の上で存在するもので、ヒーローの陰には多くの犠牲があるという意見があげられる。そして、そのようなヒーローなど存在しなくてもよく、自分の内側に自分だけのヒーローがいればいいと考えていると思われる。 因子3の「普遍的ヒーロー因子」は「ヒーローが活躍すると人々の励みになる」「ヒーローは子供に希望を与える存在であってほしい」との正の相関が見られる。「普遍的ヒーロー因子」はあくまでも普遍的なため、普遍的なヒーローに関する意見だと思われる二つと正の相関があったのだろう。(表36参照)
 因子4の「権力ヒーロー因子」は「ヒーローが活躍すると人々の励みになる」に負の相関、「ヒーローの活躍は他の人のチャンスを奪うことになる」に正の相関が見られた。これは「権力ヒーロー」の活躍が人々の励みにはなっていないことと、他の人のチャンスを奪っているという意見になる。人々の励みになっていないことに関しては、「権力ヒーロー」の例として挙げた政治家があるが、現代に政治家のヒーローがおらず多くの人が誕生を望んでいることと関係があるのではないだろうか。(表37参照)

☆各因子×問30年齢
 因子4の「権力ヒーロー因子」と「年齢」との間に負の相関が見られた。この相関が意味するところは年齢が高くなるほどに、「権力ヒーロー因子」のイメージが小さくなるということだが、単に昔存在した「権力ヒーロー」を見たことがあり、最近では「権力ヒーロー」を見いだすことが出きないと感じているのかもしれない。(表38参照)

以上の結果を使い次章でまとめてみることとする。

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