第6章 まとめ


現代においては、音の複製装置の普及によって、音楽は社会の隅々にまで浸透している。そして、生まれた時からそのような環境の中で育ってきた、現代の若者の、音楽に対する感性や、また彼らにとっての音楽の持つ意味や役割は多様化してきている。
まず、音楽が彼らの生活にあまりにも密着しているために、音楽を聴いていることすら意識しないような、空気のような存在としての音楽がある。そして、調査結果からもわかるように、彼らの音楽の聴き方においては、音楽を聴くことだけに集中するというよりは、むしろ、何かをしながら音楽を軽く聴き流すといったスタイルが主流となっている。彼らは自分にとって必要な音楽・不必要な音楽を巧みに聴き分け、必要な音楽だけを拾ってあとは背景として聴き流すという能力を自然に身につけているのである。
それから、彼らが意識的に自分たちの生活に取り入れている音楽がある。しかし、それは彼らにとって、単なる鑑賞や愛好の対象となっているだけでなく、カラオケによる自己表現にみられるように、彼らは音楽のメディアとしての性格をうまく利用しているのである。
このように、現代の音楽化社会の中で、若者は音楽に振り回されることなく、逆にそれを自由自在に操っているように見える。
現代社会の音楽化の進行を押し進めているのは、間違いなく彼らなのである。

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