はじめに


 最近、父親を対象とした育児書や体験談が数多く出版されている。一昔前までは父親は外で仕事、母親は家で家事と育児、というのが社会の一般的な考え方だったのに、最近では父親はもっと育児に参加すべきだ、という意見が聞かれるようになった。なぜ、このように、育児に父親の参加を強く求めるようになってきたのだろうか。また、そもそも、「父親」とは、育児の中でどのようにとらえられてきたのだろうか。
 その疑問を解決するための手がかりとして、母親の育児の手助けに用いられている育児書を調査することにした。育児書の中に書かれている「父親」がどのような役割を担っていたかを知ることで、その時代の父親像が見えてくるのでは、と思ったからだ。育児書は、育児に慣れていない母親が読むものである。よって、育児について、簡単で、わかりやすい内容になっている。また、育児の中の1部分だけをとらえて書かれるのではなく、育児に関する全てについて書かれている。よって、「父親」が出てくる場面や状況は、必要があるから書かれているのだといえるし、広い範囲で「父親」の役割を考えることができる。そのように考えて、育児書を調査対象とすることにした。
 この調査の結果から、時代の流れの中で、「父親」がどのような役割を担ってきたか、そしてその役割の内容に変化が見られるかどうかによって、昔からの社会通念である「男は仕事、女は家庭」という考え方が、もう過去のことなのか、現在に通用することなのかが解るのではないかと思う。

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