1980年代頃から我が国において、外国人労働者が存在しはじめ、現在までその数は増加の一途をたどってきている。ここで言う外国人労働者とはいわゆる「単純労働」(定義があいまいであるという指摘もあるが、主に製造業など3kとよばれる労働)に従事するため来日、就労している人々のことを指す。日本政府は単純労働者の受け入れを原則的に認めていない。つまり日本において外国人労働者という言葉の属性は「不法就労者」そして「それによって発生する人権や差別、民族問題といったものを抱える」ということになる。よって西欧諸国や米国から合法的やってきたいわゆるホワイトカラーとよばれる人々は、「外国人労働者」ではない。つまり外国人労働者=単純労働者として捉える。
 今回は「ニューカマー」 ここ10数年の間に就労目的で来日し生活している人達 を研究対象とする。我が国には「オールドカマー」として戦前から在日朝鮮人が多数存在しコミュニテイを形成している。彼等についても、国籍や人権など解決しなくてはいけない問題が多く残されているが、今回本論文においてはいわゆる「ニューカマー」に絞って外国人労働者の問題について述べることにする。
 外国人労働者についての議論はこれまでその受け入れについての是非に重点が置かれてきた。「鎖国論」「開国論」といったいささか感情論を伴ったものを始めとして。確かにこれは重要な論点ではあるが、しかし現実にはすでに数10万という数の外国人労働者が存在しているわけで、実質的にはすでに開国しているともいえる。そこで議論を一歩先に進める必要がある。
 これまで社会学においても様々な研究がなされてきた。その多くは実態調査によるもので、外国人労働者に直接会って面接を行うなどかなり詳細な調査が行われている。その結果、現段階において外国人労働者の実態はかなり解明されてきたといえる。次の段階としてこの問題の本質的な議論、研究が必要不可欠である。そこで本論文においては外国人労働者受け入れの是非や人権問題など個々のケースに言及するのではなく、外国人労働者問題が抱える根本を解析することに目的を置く。そしてキーワードとして「エスニシティ」「出稼ぎ日系人」という方向からのアプローチを試みる。

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