5章 高岡まちっこプロジェクトについて

 

1節 調査概要

今回の調査では、高岡市を拠点に空き家活用に取り組む「高岡まちっこプロジェクト」を調査対象とし、インタビュー調査とメールによる質問調査を行なった。また、高岡まちっこプロジェクトが主催したイベントに実際に参加してきた。以下はインタビュー調査とメールによる質問調査、および筆者が参加したイベントの詳細である。なお、本稿でいう「高岡市」とは、主に高岡まちっこプロジェクトが活動する高岡駅の北側、本町周辺のことを指す。

 

1回インタビュー

日時:平成271122日(日)

場所:大仏茶屋(高岡市)

インタビュイー:加納亮介さん(ほんまちの家管理人、東京工業大学大学院生) 

服部恵子さん(不動産鑑定士、実行委員)

國本耕太郎さん(漆器さん、漆器卸業者、実行委員)

真野洋介さん(東京工業大学大学院准教授)

近藤沙紀さん(富山大学芸術文化学部卒業生、製造業)

分元裕里加さん(富山大学芸術文化学部卒業生、広告代理店)

 

2回インタビュー

日時:平成27126日(日)

場所:富山大学人文学部7階社会文化端末室

インタビュイー:近藤沙紀さん 

富山大学芸術文化学部デザイン情報コースの卒業生。長野県出身、高岡市在住。高岡市内の製造会社に勤務。大学1年生の冬にプロジェクトに加入。第1号シェアハウスのワークショップの時から参加している。社会人となった現在もプロジェクトに携わっている。もともと所属していたクリエイ党15というサークルの担当顧問兼デザイン情報コースの教授と建築コースの友人に誘われたことがきっかけでプロジェクトに加入。プロジェクトでは、主にほんまちの家の大掃除や蚤の市、まち歩きの企画・運営を行ってきた。

 

3回インタビュー

日時:2016527日(金)

場所:Y邸(高岡市内にあるシェアハウス)

インタビュイー:金子佳樹さん 

富山大学芸術文化学部デザイン情報コース2年生。入学時は富山市呉羽町に下宿していたが、現在は空き家(Y邸)にシェアハウスとして、友達と一緒に住んでいる。もともとクリエイ党に所属しており、そこでまちっこプロジェクトの友人に誘われ、大学1年生の2月からプロジェクトに参加。プロジェクトでは、Y邸の改修をはじめとし、DIYプロジェクトを立ち上げ、活動している。

 

4回インタビュー

日時:2016629日(水)

場所:富山大学高岡キャンパス ロビー

インタビュイー:分元裕里加さん 

富山大学芸術文化学部デザイン情報コースの卒業生。石川県金沢市出身、高岡市在住。高岡市内の広告代理店に勤務。大学3年生の秋からプロジェクトに参加している。社会人となった今も活動に携わっている。大学で学んでいるデザインをさせてもらえる場所を学外で探しており、プロジェクトのチラシ作りに携わったことがきっかけで加入した。プロジェクトでは、イベントの企画や運営の他に、ほんまちの家のHP、パンフレット、のれん等のデザインを行った。HPのデザインは自ら「やりたい」と手を挙げ、行ったという。

 

5回インタビュー

日時:20161116

場所:富山大学人文学部7階社会文化端末室

インタビュイー:近藤沙紀さん 

 

メールによる質問調査

201510月下旬から加納さん(ほんまちの家管理人)とメールでやりとりを行なっており、そこで3回にわたりワードファイルにまとめた質問内容を添付し、その質問に回答していただいた。

 

イベント

「空き家を巡ってまちあるき -大仏周辺編-

日時:平成271122日(日)

参加費:500円(1ドリンク付き)

参加者:およそ30

イベントの内容は高岡大仏周辺のまちあるき、および大仏裏にある築110年の空き家の見学である。大仏飲食店街、大仏茶屋、大杉商店などを歩いてまわった。まち歩き終了後は、シェアハウスの下にあるメリースマイルカフェにて振り返りのワークショップを行った。ワークショップのテーマは「大仏周辺の活性化と空き家活用について」であった。

 

 

2節 富山県高岡市の空き家の現状

高岡まちっこプロジェクトが活動する高岡市の空き家状況はどうなのだろうか。高岡市の人口は減少傾向にあり、以前から住宅総数が世帯数を上回っている。高岡市は、黒部市、魚津市に次いで富山県で3番目に空き家が多い地域である。空き家率は13.6%で、この数字は富山県全体の空き家率11.2%はもちろん、全国平均の13.5%も上回っており、高岡市の空き家状況は深刻であるといえる。

 高岡市の中心市街地に存在する空き家は、所有者の親世代が住んでいた古い町家が主であり、不動産流通市場に供給されにくいのが現状である。また、町家等の木造住宅密集エリアの地価は、郊外の新興住宅地や利便性のある市街化調整区域よりも低く評価されている。そのため、空き家が放置されたままとなっている。

 

3節 高岡まちっこプロジェクトとは

高岡まちっこプロジェクトは、住宅ビルダー、漆器卸業者、銀行員、不動産鑑定士といった本業をもつ経営者らが主体となり、東京工業大学、富山大学芸術文化学部の学生と共に空き家の利活用に取り組んでいる団体である。伝統工芸など付加価値を伴った定住人口の拡大を目指し、「まちなか居住促進」について考えている。高岡市の中心市街地を重点エリアとしている。そこに存在する家屋や街並みを地域資源ととらえ、本物の材料や技術を残し、生活文化の伝承をしながら、まちなかに若いエネルギーを投入しようと試み、日々活動している。このプロジェクトは、市民の有志らによって立ち上がった民間のプロジェクトであり、空き家活用を行政の公的事業として行っているわけではない。だが、空き家の建てかえ等には法関連の知識や行政の補助金が必要となり、プロジェクトと行政はお互いを無視した関係ではなく、緩やかに連携が図られている。

<実行委員> 荒井里江さん(住宅ビルダー)  服部恵子さん(不動産鑑定士)

國本耕太郎さん(漆器卸業者)  桶川淳さん(銀行員)

 

4節 プロジェクトの立ち上げ経緯

20128月に高岡市内を走る万葉線についての勉強会16で、プロジェクトの実行委員である荒井里江さん、服部恵子さん、國本耕太郎さんの3人が一緒になった。3人で「まちなかの人口を増やしたい」という話をしていた際に、たまたま売りに出ていた空き家があった。その空き家は居酒屋の店舗として使われていたもので、物件の構造、間取りがシェアハウスに向いているということで、近くにある富山大学芸術文化学部17学生向け「アトリエ付きシェアハウス」が作れるのではないかという話をしたのがきっかけでプロジェクトがスタートした。

入居者のターゲットである「富山大学芸術文化学部生」とのパイプをどのようにつくるかという事を考えていたときに、荒井さんが同級生である桶川淳さんと再会。桶川さんは当時、富山大学地域連携推進機構に出向し、産学官金連携事業として新しいビジネスモデルを構築したいと考えていた。そこに、シェアハウスの話が挙がり、その内容に桶川さんが賛同し、現在の実行委員である4人が揃う。富山大学地域連携推進委員である桶川さんの参加により、富山大学からシェアハウス企画に対する賛同を得ることができた。そして、学生のアイディアを吸収したいという思いからワークショップを企画し、参加学生を募集したことがきっかけで、プロジェクトに学生が携わるようになった。

 

5節 プロジェクトで改修された物件

 プロジェクトで改修された主な物件を紹介していく。

 

1号シェアハウス

1号のシェアハウスは、高岡市本丸町にある。旧居酒屋兼住宅をリフォームした鉄骨造・木造3階建の建物で、1階はランチやスイーツを提供するカフェとなっている。23階が利用者の居住スペースである。3階には30畳のアトリエが併設されており、居住者が創作活動を行うことができるスペースになっている。前述したように、シェアハウスの計画は、荒井さん、服部さん、國本さんが万葉線についての勉強会で一緒になったことから始まったものである。たまたま売りに出ている空き家の間取りがシェアハウス向きであり、そこから「芸術文化学部学生向けアトリエ付きシェアハウス」というコンセプトが設定された。学生のアイディアを取り入れたいという思いから201212月に芸術文化学部の12年生とワークショップを行った。20131月に荒井さんがシェアハウスとなる空き家を購入し、すぐに改修工事を着工、同年の325日からシェアハウスの入居が開始された。改修費用は荒井さんが代表を務める株式会社フジ創ホームから支払われた。荒井さんいわく、シェアハウスは住んでもらうことで、改修費用は回収できているという。シェアハウスの賃貸料18は運営費として使われている。

自動代替テキストはありません。

写真1 シェアハウスのワークショップの様子

高岡まちっこプロジェクトfacebookより


 

ゲストハウス ほんまちの家

ほんまちの家は高岡市本町にある。「高岡を体験してもらう家」を目指し、町家体験ゲストハウスとして20145月にオープンした。ほんまちの家となる空き家は2013年の夏頃に実行委員である服部さんが購入した。状態が良く、活用してみたいという思いがあったため空き家の活用方法を決める前に購入したという。その後、蚤の市や大掃除、活用方法を決めるワークショップが行われた。ワークショップでは、シェアハウス等の意見が挙がったが、多くの人に町家体験をしてほしいという思いからゲストハウスとして活用することに決まった。20141月に改修工事が着工。作業の一環として壁塗り体験を行うDIYのワークショップが行われた。20145月にゲストハウスとしてほんまちの家が完成。改修にあたり、高岡市による「高岡市まちなか空き家再生支援モデル事業」の支援を受けている。改修費用は行政からの補助金、借入金、自己資金から支払われた。ほんまちの家の利用料19は、初期投資費用の返済、光熱費や備品等の直接経費、施設の整備等などに使われている。


画像に含まれている可能性があるもの:室内

写真2 掃除前のほんまちの家

画像に含まれている可能性があるもの:1人

写真4 蚤の市の様子

 

自動代替テキストはありません。

写真3 DIYワークショップの様子

自動代替テキストはありません。

写真5 完成したほんまちの家


高岡まちっこプロジェクトfacebookより


 

塩谷ビル

万葉線沿いに建つピンクのビル。空き室が目立つことから所有する塩谷建設が高岡まちっこプロジェクトに利用方法を依頼した。「塩谷ビルの使い方を考えよう」と名付けられた全3回のワークショップ(2015531日、725日、829日に開催)にて、学生や一般市民で意見を交えた結果、シェアハウスとして利用することに決定した。改修工事は、依頼主である塩谷建設が行った。4階が男性専用、5階が女性専用のシェアハウスとなり、1階には共用キッチンが設けられている。家賃は共益費を含め4.6円程度である。

画像に含まれている可能性があるもの:4人、座ってる(複数の人)、テーブル、室内

写真6 塩谷ビルのワークショップの様子

高岡まちっこプロジェクトfacebookより

 

Y

現在、Y邸に住んでいる金子さんは入学当初、富山市呉羽町にアパートを借り下宿していた。20162月からプロジェクトに参加しはじめ、そこで高岡のまちの良さや活用された空き家について知り、自身も高岡に、そして空き家に住みたいと思うようになった。そこで、加納さんに相談し、空き家物件を探してもらい、7年間空き家だったY邸を紹介してもらった。シェアハウスにしたいという考えから、3月に同じ富山大学芸術文化学部の友達の中から一緒に住む人を探し、3月末に物件の掃除を行った。ものであふれかえっており、2tトラックで3回かけて不要なものを運び出した。4月に物件のオーナーと契約について相談、畳の表替えと呼ばれる畳の表面をきれいにする作業を実施している。物件の2階にある部屋の畳が腐っており、オーナーのご厚意のもと自分たちの手で床はりをさせてもらえることになった。そこで、5月にワークショップとして床はりを行っている。床はりをするにあたり、もともとまちっこプロジェクトとして2年ほど前から構想としてあったDIYの団体を作った。大工さんにレクチャーしてもらい、12年生で床はりを実践した。家自体が傾いていたため、床をはった際にまっすぐになるよう、糸で水平をとって傾いている部分の隙間に板をいれるところから行っている。このワークショップの際に、高岡市若者チャレンジ応援事業20にエントリーし、5万円の助成金をもらった。


写真7 床はり前の部屋

写真9 床はり後の部屋

画像に含まれている可能性があるもの:室内

写真8 床はりの様子

 

 

 

 

 


(写真8:高岡まちっこプロジェクトfacebookより、写真7,9:金子さん提供)



6節 空き家活用のプロセス

 高岡まちっこプロジェクトでは、改修する空き家物件は、シェアハウスやほんまちの家のように実行委員の方が購入する場合と、塩谷ビルのように外部から委託する場合がある。第一号のシェアハウスはその構造からシェアハウスという事が決まっていたが、他の物件は活用の目途があるわけではないため、その空き家をどう活用していくか考える必要が生まれてくる。そこで、アイディアを出すためのワークショップが行われている。ワークショップはチラシやFacebook等で告知され、誰でも参加することができる。ワークショップで出た多くのアイディアの中からみんなで話し合い、最終的には空き家の活用方法を建物の持ち主が決める。

ワークショップと同時進行で、物件の片付けも行われる。長年放置された空き家は、たくさんの物であふれかえっており、それを少しでも減らすため、空き家から出てきた本や食器を格安で訪れた方に提供する蚤の市を開いている。蚤の市を行うにも、物件のある程度の掃除、ディスプレイ、宣伝のためのチラシ作りなど多くの準備が必要となる。蚤の市を行い、物がある程度片付くと次は物件の大掃除に取り掛かる。

物件の掃除が終わり、家の活用方法が決まると、いよいよ改修工事の着工である。改修工事は現場監督、大工の手によって行われる。だが、随時メンバーが改修中の現場を訪れ、現場打ち合わせを行うなど改修工事中も積極的に携わっている。また、改修作業の一部を体験型ワークショップとして、実際に漆喰塗を体験することができるイベントを開催している。改修工事終了後は内見会を行い、その後ワークショップで決めた利用方法で運営されていく。このように、物件購入、ワークショップ、空き家の掃除、改修工事と一連の流れを経て、空き家物件が再利用されていく。また、改修工事が竣工した後も、物件にかけるのれんを製作する、HPをつくるなど、活用された空き家をより良いものにしていくための取り組み、より多くの人に知ってもらうための情報発信を行っている。1軒の物件改修において、ワークショップや蚤の市などのイベントを通して、プロジェクトメンバー以外の人も多く関わっていることがわかる。

 

7節 イベント

高岡まちっこプロジェクトでは、空き家改修以外にもさまざまなイベントを企画・運営している。なかでも、プロジェクトで改修したゲストハウスほんまちの家では、観光客向けの宿泊業だけでなく管理人の加納さんを中心にさまざまなイベントが開催されている。(表6:巻末に添付)

イベントに注目してみると、「ほんまちのヨル」を代表として、どれもみんなでワイワイ楽しもうというスタンスのものが多い。ゲストハウスの宿泊者、プロジェクトメンバー、地域住民と多くの人が気軽に参加でき、交流できるイベントである。このようなイベントは、人と人との繋がりを作るきっかけとなっている。まちの人同士の交流は地域の結束を固める。プロジェクトにとっても地域からの支援・協力は必要なものであり、その点でこういったイベントは重要である。ゲストハウスの宿泊者として高岡を訪れた観光客にとっても高岡での良い思い出となり、少しでも高岡を好きになってもらうことに繋がるだろう。プロジェクトでは、人との繋がりも重視されている。

 

8節 ワークショップ

1項 ワークショップの雰囲気

まちっこプロジェクトでは学生参加のもと、数多くのワークショップが開催されている。以下は、筆者が参加してきたワークショップの雰囲気である。

 

平成271122日(日) 空き家を巡ってまちあるき -大仏周辺編-

フィールドノーツ

ワークショップには、学生から70代の方まで様々な年代の人が参加していた。男女の比は、半々であった。各自好きな席に座り、そのテーブルごとに意見を出し合う形式である。1テーブル約57人ほどで、全部で4つのグループができた。ワークショップは、飲み物を交えながら行われる。そのため、意見を言うというより、雑談のように楽しく話すという感覚である。「大仏周辺の活性化と空き家活用について」というテーマに沿って、まちなかでやってみたいこと、ほしい施設、空き家の活用方法などを制限なく自由に挙げていく。年齢、性別、職業に関係なく思ったことを思ったままに発言することができる。意見に重要度や順位はなく、どんな意見があがってもみな肯定的であった。グループでの意見交換に沈黙はなく、終始途切れずに意見やアイディアが出されていた。学生も積極的に意見出しに参加しており、一般の参加者と同じ扱いである。最後の各グループからの発表では、若い目線での創造的な意見、まちの生活者として欲しい機能・施設などたくさんのアイディアがあがっていた。他のグループの発表に対し、笑いなど好意的なリアクションがみられ、雰囲気は常に和やかで、参加者が楽しめるものであった。

 

2項 ワークショップへの工夫

前述したように、ワークショップの雰囲気は極めて和やかである。和やかで参加しやすいワークショップの雰囲気を作るために実行委員たちもいろいろな工夫を行っている。

 

1号シェアハウスの場合

1号となるシェアハウスの際のワークショップにおいて、学生を集めるために実行委員たちは試行錯誤している。以下は、そのことに対する服部さん、國本さん、近藤さんの話である。

 

國本:まちっこのゆる感じ…コーヒーとかジュース飲みながらお菓子とかテーブルに並べて食べながら。

近藤:お菓子美味しかったの覚えてます。最後持ち帰らせてくれたり(笑)

服部:私たちもワークショップって初めてだったのね、そんなに経験もないから。結構気を張ってね。お菓子部隊とかいってお菓子買いに行ったりとか、飲み物を用意したりとか。

國本:おもてなしせんなって。へへへ。

近藤:「くまさん」とか、そういうかわいらしいチーム名があったりとか

 

1号シェアハウスのワークショップは、実行委員にとっても初めてのワークショップであり、どうしたら学生が集まるのか、喜んでくれるのかを考え、準備を行っていたことが読み取れる。授業のように固くなりすぎないようにお菓子やジュースを準備して学生をもてなしている。また、各チームの名前にも工夫が凝らされている。集まった学生が全員女子であったことから、女子ウケを狙い、「くまさん」「うさぎさん」チームなど動物名のチームとしている。意見を自由に出しやすくするために小さなことではあるが工夫し、柔らかい雰囲気を作っているのだ。

 また、さらに意見を出しやすくするために、雰囲気だけでなくワークショップの内容自体も考慮されている。服部さんは次のように語っている。

 

服部:はじめに、いきなりシェアハウス考えてくれっていってもびっくりするだろうから、まず「みんなが思う高岡ってどんなところか」とか、「高岡にシェアハウスがあったらどんな機能が欲しいか」とか、そういうことを、2回ぐらいワークショップ…3回ぐらいかな、やって、その中で徐々に、「高岡の空き家を実際に見てください」って言って、一緒に歩いて空き家を見たりとか、「町家を直すとこんな風になりますよ」っていうような例を一緒に見たりとかしてたかね

 

 この語りから、学生たちが意見を出しやすくするために、最初から空き家やシェアハウスについて考えるのではなく、段階を踏み、徐々に考えていっていることがわかる。最初は、高岡のまちについて考えている。その後、実際に空き家や町家を見学して、より学生がイメージしやすい状況を作っている。そうして、本題へと移っている。このように、実行委員たちは意見を得るためにただ闇雲にワークショップを開催するのではなく、どうしたら意見が出やすいかを考慮し、ワークショップのいたるところに工夫を施している。

 

塩谷ビルの場合

塩谷ビルの使い道を考えるワークショップにおいても、意見を出しやすくする工夫がなされている。そのことに対して、近藤さんは次のように話している。

 

近藤:重たくならないようにまちっことしてやってたね。進め方とかも進行が上手い加納さんとかが結構やってくれて和やかに進んでる気がする。あと、チームにまちっこプロジェクトとか学生を忍ばせてる。息が詰まるというか、最初ってなかなか意見出にくいの。特に一般の参加者って。だから先に学生がワーッ言ってみるとか。あと、学生の利点として絵を描けるから、言ってくれた意見に対して絵を描いてみたりして、「いいねぇ」とか会話が弾んだりとかして。そういうのしてた

 

塩谷ビルのワークショップでは、各チームにまちっこプロジェクトのメンバーや学生を配置させ、その学生たちが空気作りを行っている。最初に率先して意見を出し、沈黙を作らないようにしている。また、芸術文化学部ならではの絵のスキルを利用し、出た意見を実際に絵にしている。そうすることで、参加者は意見をより鮮明にイメージすることができ、絵を中心に会話が弾むようにもっていっている。。

 

このように、ワークショップには実行委員や学生たちが試行錯誤し、いくつも工夫を凝らしているのだ。この工夫によって、ワークショップは和やかで、且つ活発な意見出しの場となっており、潤滑に運営されている。

 

 

9節 富山大学生の参加

 プロジェクトには、多くの富山大学芸術文化学部性が参加している。前述したように、実行委員が学生のアイディアを吸収したいという思いからワークショップを企画し募集したことがきっかけで、プロジェクトに学生が携わるようになった。それ以降、学生は多くの活動に参加している。インタビューを行った近藤さん、金子君、分元さんの3人もこれまで様々な活動を行ってきている。

 

1項 学生にとっての空き家

では、プロジェクトに携わっている富山大学芸術文化学部の学生は空き家のことをどう捉えているのだろうか。以下は、そのことに対する近藤さんの語りである。

 

近藤:空き家を初めて見るのが一番私は好き。活動じゃないけど瞬間的に。「空き家を改修しようと思ってるんだよ」とか、「こういう空き家あるだよ」って紹介してもらった時に、「こんな空き家あるだ、まちに」って。実際、中もあんま見れないやんか、空き家って。それを見て、何に使えるだろうって考えるのがすごい好き。空き家の中見て、こここんなんあったらいいよねーって想像膨らましてる時間が楽しかった。

 

この語りからわかるように、空き家は学生にとって日常的に見ることのできないものである。空き家が周囲にあったとしても、所有者の許可がない限り、中に入ることができない。プロジェクトでは、実際に空き家の中に入り、中がどうなっているのかを自分の目で見ることができる。空き家を自分の目で見るということ、その使い道を考えるということに近藤さんは思い入れを感じている。滅多に見ることのできない空き家の中の様子を見て、感じとり、想像を膨らませるということは学生にとって特別なことである。そこに普段味わうことのできない感動や喜びといったものを感じているのではないだろうか。どんな使い道にするのか、どのように空間を活かすのか、自由に創造することができる。これが、学生の好奇心や想像力をかきたてていると考えられる。こういった好奇心のもと、学生はプロジェクトに参加して、空き家活用に携わっているのではないだろうか。

 

2項 ワークショップへの参加

 まちっこプロジェクトでは、空き家の活用方法を決めるものや障子貼りを行う体験型のものなど、これまでに様々なワークショップを行ってきた。学生もそのワークショップに参加している。近藤さんも、学生時代から今日にかけ、多くのワークショップに参加してきている。近藤さんが最初に参加したのは第1号のシェアハウスのワークショップである。チームに分かれて、「学生が住みたくなるようなシェアハウス」について意見を出し合い、発表したという。ほんまちの家の改修では、蚤の市やお掃除ワークショップ、壁を塗るDIYワークショップに参加している。蚤の市やお掃除ワークショップは近藤さんがやりたいと言って、企画や準備、運営を学生主体で行った。塩谷ビルの使い道を考えるワークショップにも参加しており、そこで一般の参加者とともにビルの改修方法を考えている。プロジェクトで行われるワークショップの内容のほとんどは、空き家の改修方法についての意見出しだそうだ。

 

近藤:一番はじめはまちっこと関わるようになったワークショップで今のメリースマイルカフェの時なんだけど、その時はなんか学生が住みたくなるようなシェアハウスってどんなシェアハウスかっていうのをやった。形式はチーム分けされて、うさぎさんとかくまさんチームで幼稚園のバッジみたいなの配られて、バカなアイディアでもいいから、チームごとに出しあおうみたいなので、書いて付箋で貼って、その後に内容でグループ分けして、それをまとめて発表するみたいなやつだったかな。

 

近藤:ほんまちの家のお掃除ワークショップとかもやった。空き家をまちっこプロジェクトだけで掃除するのは大変だからみんな呼んできて、一緒に空き家をきれいにしようみたいな。蚤の市を企画して、そのあとは物がなくなったから掃除をしようって言って、自分なんか掃除大好きなんね。空き家のすごい汚い、もうほこりが詰まってってところをめっちゃきれいにするのが好きだから、やりたいって言って大掃除は、学生主体でやった。

 

近藤:あとは、塩谷ビルっていう万葉線沿いにあるビルがあるだけど、それも新しい使い道を考えようみたいな。歯医者とか入ったり複合施設だっただけど、それ2食べ物スペース、飲食店スペースで、上がシェアハウスになったのかな。ってなったときも、そのワークショップで使い道考えたよ。

若狭:結構ワークショップで使い道とか考えたりしてるんですか

近藤:うんうん。結構してる。むしろそれが多かった気がしてる

 

たくさんのワークショップに参加してきた近藤さん。では、ワークショップについてどう感じているのだろうか。近藤さんは、次のように語っている。

 

 

近藤:自分の部屋の中だったら、「こういう風に使いたい」って限度があるけど、そういう空きスペース、箱だけあって中身がなにもなくて、それを新しく作るっていうことを自分で、自分だけでも多分楽しいだろうけど、その自分じゃ考えられないことをそのワークショップによっていろんな人の意見を聞けたらより楽しくなるというか。相乗効果だし。それでいいものができる気がするから、毎回参加してて、満足得られるかな。

若狭:自分が考えたものが形になるのってすごいですよね。

近藤:ね、すごいよね。それが取り上げられるのって嬉しいよね。でき上がったもの私たち考えていたこと通りになってるのが嬉しかったりする。例えば、ほんまちの家だったら、このスペースは学生とそのお客さんがコミュニケーションするとか。そこで宿泊者と高岡の地元の人が交流するとか、情報を提供するとか結構できてるできてるから嬉しいし、自分たちが考えてなかったこともそこでできるようになってるってことも嬉しい。

 

この語りから、近藤さんはワークショップに参加して、空き家の使い道を自分たちで決められることに喜びを感じている。前項で触れたように、空き家を見て、使い道を考えることが好きな近藤さんにとって、ワークショップはその使い道を外に発信できる場である。「人の意見を聞けたらより楽しくなる」とあるように、ワークショップは自分以外の人の意見にも触れることができ、より近藤さんに刺激を与えている。

また、近藤さんは改修後の物件が自分たちで考えた活用方法できちんと運営できていること、考えていたこと以上の効果が生まれていることに喜びを感じている。そこには、自分たちの考えが目に見える形となる喜びがある。ワークショップの参加で得られる満足度は非常に高いことが見て取れる。

 

3項 学生がイキイキと活動できる場所

 プロジェクトにおいて、ワークショップ以外でも学生は活動している。学生にとって、プロジェクトとは、どのような場で、そこでの活動はどのように捉えられているのだろうか。プロジェクトに参加するきっかけとして分元さんから以下のような話が得られた。

 

分元:最初まちっこに関わったのはデザインをさせてもらえる場所を探してて、やっぱデザインはお題があったほうがやりやすいので。例えば「今度こういうイベントするのでチラシ作りたいだけど、作ってくれる?」みたいな依頼があって、それでチラシ作ったりとかしてて関わり始めたのが最初で。で、それが地域のためになったりするのはよりいいかなみたいな感じ。

 

この語りからわかるように、分元さんは、大学で学んでいるデザインを実践できる場としてチラシ作りに携わったことがきっかけでプロジェクトに参加している。「デザインをさせてもらえる場所を探してて」という発言にあるように、デザインを学ぶ学生にとって、外の場でデザインを行なえるということは、自分の能力を外の場で発揮できるということである。また、分元さんは自ら「デザインしたい」と名乗り出て、ほんまちの家のホームページのデザインを行なった。学生が「やりたい」と手を挙げれば、その思いが尊重され、学生はやりたいことを自由に行なうことができるのだ。

金子さんはプロジェクトに関わったことによって、現在空き家(Y邸)をシェアハウスとして利用している。以下は、Y邸を改修したことについて、金子さんが感じたことである。

 

金子:授業とかでデザイン関係やってるんですけど、それも学ぶだけなんで大学の中だけでおさまっている。まちっこってすぐに外でこんな家をいじれるってこと自体大きいし、ちゃんとやろうと思えば大きいことが動かせるっていうのがやりがいを感じます。(中略)台所の壁はがしたですけど霧吹きでふいたら、水をしみこんで、あとヘラでペラッとめくったら、はがれちゃうですよ。家ってなんか……イメージだと大工さんとか住宅メーカーとかに外注するイメージしかなかったですけど、意外と家って原始的で自分でやろうと思えば何でもできちゃうなっていうのが面白かったです。

 

これらの語りから、大学での授業は大学内のみで収まっているのに対し、まちっこプロジェクトでの活動は外、つまりまちで活かせていると感じていることがわかる。実際に床はりや土壁を剥がす作業を行い、それまでは専門の業者がやるという考えから、自分たちの手でもできるということを金子さんは学んでいる。家という大きなものを自分の手で改修するということは、学生にとっては貴重な経験である。こういった活動は強制されたものではなく、自分で「やりたい」と思って行動しているものであるため、学生は積極的に楽しみながら活動している。

このように、プロジェクトは学生の持っている能力を発揮し、活かせる場所となっている。大学のようにある程度決められたことをするのではなく、学生は思いのまま自由にやりたいことができる。学生にとって自己を表現するには最適なことである。また、そうして様々なことに挑戦しながら、新たな発見を通じ、学生は知識を身につけており、同時に学びの場ともなっている。プロジェクトには学生の「やりたい」を形にできる環境が整っており、学生はイキイキと活動できているのだ。

 

4項 プロジェクトでの活動がもたらした変化

1 空き家への印象の変化

シェアハウスとして空き家に住むことになった金子さんは、空き家に対する印象について以下のように語っている。

 

金子:今まではボロくて汚いっていうイメージしかなくて、全然空き家に住もうっていう発想はなかったですね。きれいなアパートのほうがいいなっていうのが正直思ってた。(中略)まち歩きで、大学生がいろんなところでシェアハウスをしているっていうことを知りまして、さらにほんまちの家って昔は全然そういう綺麗じゃなくて空き家でそれを改修してこんな綺麗になったっていう経緯を知りまして、あぁ空き家って自分でもいろいろ手を加えたらできるだってことをまちっこに入ってわかって、あぁじゃあ空き家いいなってことで(住むことを)決めました。

 

この語りからわかるように、金子さんにとってプロジェクトに参加する前の空き家の印象は、「ボロい」「汚い」「怖い」というようにマイナスなものである。その空き家に対するマイナスイメージが先行し、アパートに住む方が良いという考えを持っていた。しかし、プロジェクトの活動に参加する、プロジェクトによって改修された物件を見ることで、金子さんの空き家に対するイメージが大きく変わっていることがわかる。きちんと人の手を加え、綺麗になった空き家を知ることで空き家への考え方が変化し、自らも空き家に住むことを決めている。このように、プロジェクトに参加することで、空き家に対するイメージが変わり、空き家にプラスの思いを持つことに繋がっている。また、このイメージの変化から、金子さんは空き家に住むことを決め、Y邸のプロジェクトがはじまった。空き家に対するプラスイメージへの変化が新たな活動、積極的な活動をもたらすといえる。

 

2 まちに対する愛着の形成

プロジェクトでは、都会にはない高岡ならではの職人の技術や熱い想いに出会うことができる。他県出身である学生にとって、高岡にしかないもの、高岡でしか出会えない人との交流は、高岡のまちを知るうえで重要である。ならびに、プロジェクトを通じてまちの人たちと繋がることで、まちでの生活がより一層楽しくなる。インタビューを行った3人の学生、近藤さん、金子さん、分元さんに高岡の第一印象を伺ったところ、商店街もシャッターが全て閉り、人がだれもいなかったことから、みな高岡への第一印象は悪かった。しかし、3人ともプロジェクトで出会った人やその人が持つ考え方に触れることで高岡に対する印象が良くなっていた。

近藤さんは「服部さんだったら一緒に廃墟になったビルとか空き家を探しに行こうかとか荒井さんだったらハウスメーカーだからモデルルームオープンの時に接客とかさせてもらったりだとか、國さんだったら漆器塗らしてもらえたりだとか、職人さん紹介してもらえたりだとか、その人たちと繋がったおかげ高岡できることがグーンと増えて、増えたら増えたぶんだけ高岡を好きになる」と述べている。プロジェクトで出会った人によって、近藤さんは高岡のまちで様々なことに挑戦できるようになっている。このことが近藤さんにとって、「なんでもできるまち」として高岡を好きになる要因となっている。

金子さんからは、「まちっこと関わると、まちに住んでる職人さんとか個人個人の顔が見えてくるのでまちに親しみを感じる。夜、高岡駅前とか歩いていると飲み会帰りの職人さんに声かけられたり」という発言が得られた。空き家改修やイベントに参加することで、一般の参加者や高岡の職人と仲良くなり、プロジェクト以外の場で出会って際も挨拶を交わすようになっている。まちに住む人の顔が見えるようになることで、金子さんの高岡への親しみが増加している。

 分元さんは、「いっぱい面白いところ知ってんの。まちっこの大人たちとか、そこで関わるまちづくりしてる人とか。話したらどんどん高岡の良さが出てくるわけね。まちっこやってるから知れた」という。プロジェクトで関わる人からまちの面白さや良さを聞くことで、分元さんは自分が知らなかった高岡を知ることにつながっている。そこから自身も高岡の良さに気づき高岡を面白い場所と捉えている。

 近藤さんはまちが好きになったことに加え、次のような話もしている。

 

近藤:いろんな人が高岡のまちに来た時に「高岡っておもしろいまちだよね」ってまちっこを通してそういう感想を言ってくれるのは嬉しい。友達とか呼んでもさ、「高岡何もない」みたいなことを言う子が多いんね(笑)だから、そういう中で、何もいとこだけど何かを見つけてくれるっていうのはやっぱりすごい嬉しい。

 

近藤さんの友人は高岡に対して「何もない」と感じ、当初の近藤さんと同様にマイナスのイメージを抱いている。そういう中で、プロジェクトに参加した人が、高岡のまちの面白さを発見する、気付くということが、現在の近藤さんのプロジェクトでのやりがいとなっている。近藤さん自身がそうであったからこそ、他の人がプロジェクトから高岡の良さに気付いてもらえることが喜びとなるのではないだろうか。プロジェクトの活動は、自分自身がまちの良さを知るだけでなく、他の人ともまちの良さを共有する喜びが存在する。まちの良さを知る側から、まちの良さを伝える側に変化していく。これは、まちへの思い入れが強くなっていることの現れといえる。

 また、卒業後も高岡のまちやほんまちの家に遊びに来るOGもいるという。以下は、そのことに対する近藤さんの話である。

 

近藤:友達がいるから会いに来るのもそうだし、イベントに合わせて来るのもそうだし。やっぱり大学卒業して高岡に愛着を持ったというか、地元の次の地元というか、むしろ地元よりこっちのほうが地元っていう人もいる。高岡に住んでいても、お家に帰ってただご飯食べるだけとかって地域関係ないけど、まちっこと関わってるとすごい地域と関連してくる。高岡じゃないと体験できないことが体験できるから、愛着持つきっかけになると思う。だから、そこに帰ってくるっていう感覚の人が多くて。その時にほんまちの家っていう、ある意味共有スペースのところで会うといいよねーみたいな。自分が会おうとしてた友達以外の子もそこにいることがあるから、みんな来るかな。帰ってきたら。

 

この語りから、卒業しても学生時代を過ごした高岡への愛着は残り、高岡は地元と同等、もしくはそれ以上と認識している卒業生が多いことがうかがえる。これが卒業後も高岡へ足を運ぶ要因となっている。このように、プロジェクトに参加することで、まちとの関わりが増し、その中でまちに対する愛着が形成されていっているといえる。

 

10節 つなぐ役割

 まちっこプロジェクトでは、実行委委員や一般の参加者の大人たちと学生が協働して活動を行っている。その大人と学生をつなぐ役割としてほんまちの家の管理人である加納さんの存在がある。筆者がまちっこプロジェクトに調査協力を依頼した際、加納さんが対応してくださった。金子さんが空き家に住む際も、加納さんに空き家を探してもらうなど、加納さんは学生たちのよき相談役となっている。本稿で取り上げた学生たちのインタビューの際も加納さんの名前が頻繁に登場し、その信頼度は非常に高く感じられた。

 加納さんは学生だけでなく地域住民とプロジェクトをつなぐ存在でもある。加納さんは研究室の教授と共に調査で高岡に訪れた。高岡の人たちと一緒に活動するうちに、高岡はこれから面白くなると感じ、「住民と同じ目線でまちを眺めたい」「その場所に住むからこそわかることもある」という思いから高岡に移住をすることを決断した。そして、現在は、ほんまちの家の管理人として高岡で暮らしており、地域住民と交流を行っている。そこでは、加納さんを中心に地域住民の街に対する意識が良い方向へと変化している。地域住民から「できることがあれば手伝う」と積極的な声があがる、プロジェクトとして加納さんやメンバーが企画を行わなくとも「こういったことをしたいから力を貸して」と住民のほうから依頼してくるなど、地域住民側からの働きかけである。これに対して、加納さんはみんなでまちを盛り上げていこうという思いを感じており、そのことをうれしいという。また、ほんまちの家での地域住民との交流をはかるイベントを企画しているなど、高岡のまちとそこに住む人を大切にしていることが分かる。

 このように、加納さんは学生がやりたいと感じたことをまず初めに相談する存在である。そこから学生の思いがプロジェクトにおいて実現できており、学生と大人とをつないでいる。また同時に、実際に加納さんが高岡のまちに住み、地域住民との交流を企画するなど、地域住民がプロジェクトに関わる窓口的な存在でもある。加納さんは地域住民とプロジェクトもつないでいるのだ。