第四章 分析

第一節 「SNS疲れ」に繋がる執着性

 三人のインタビューイの語りを分析してみると、三人が経験する「SNS疲れ」の度合いにはそれぞれ違いがあり、それを図るポイントとしてSNSに対する行動としての執着性の高さが関わっていると考えられる。

                               

 

以下は、相手とのやりとりに対して不安や危惧を抱き、ネガティブ経験をしているAさん、Bさん、Cさんの語りである。          

                   

坂田:はい、じゃあ次。LINEの返信が遅いときに、相手が何をしているかとか、どこにいるのかをとか考えたりする?

A:それは、めっちゃ考える。Twitterとかでもわからん場合とか特に。既読は付いとるんかとか、何回も確認してしまう。

坂田:それって相手が誰でも?

A:うーんとね…(3秒)仲いい人とか、好きな人とかやったら余計気になるかな。でも、誰であっても返事遅かったらわりと気になる。なんか変なこと言ったっけ?とか、遊んでるんかな、とかバイトかな、とか…なんか返事が遅いと、あっほんとは迷惑なんかな、とか面倒臭いんかなって心配になってしまう。

 

B:あー、なんか仲いいメンツの中とか、サークルの中の一部だけで遊んでたり、楽しいこととかしてるツイート見ると、あ、誘われてないなって。自分も同じことしとるかもしれんけど自分がされたらすごい気になるし、あれってなる。なんか、隠れてやればいいのになって。つぶやかんとけばいいのになって。そしたらこんなショック受けることもないのにって思う。

坂田:知らん方がいいってこと?

B:あー、でもやっぱりそっちのほうが嫌かも(笑)なんか、知らされるのも知らんのもどっちも嫌やけど、一応知っておきたいかな、やっぱり…(3秒)なんか矛盾しとるかもしれんけど(笑)、知らされてショック受けるのと、あとから知って隠されとったって思うほうが嫌かな。どっちも嫌やけど(笑)

 

C:楽しそうなことしてる発信を見たらちょっとひがむ(笑)こっちだって楽しいんやぞって。

             

                  

この語りからAさんは、LINETwitterを並行利用していて、Twitterを同時に見ることによって相手のTwitterの更新と自分へのLINEの返信の頻度やタイミングを関連づけて不安を増幅させていることが分かる。LINEの返信はしていないのにTwitterでの更新がされている場合には、何故返してくれないのだろう、何か変なことを言ってしまったのか、などの疑問や不安を抱くことにより、余計にLINEの返信への執着が強まり、何度も返信や既読の有無を確認してしまっていると考えられる。Bさんは、親しい友人やサークル内における、自分がいない所での出来事に関するツイートを見てショックを受け、そのツイートに対するネガティブな感情を抱いていることが分かる。また、ショックを受けるのは分かっているけど、その事実を知らないことへの不安の方が大きくなり、自分の仲の良い周りの人の行動や出来事を把握しておくために、タイムラインを常に気にしてしまうということから、監視的な意味で他者のツイートに対する執着が強くなっていると考えられる。Cさんにおいても、Bさんと同じように他者の発信するツイート内容が自身に否定的感情をもたらしており、対抗意識も生まれてきていることからネガティブ経験をしていることが分かる。

 

 

                  

以上のように三人ともネガティブ経験をしているのだが、対応の仕方では違いがある。以下は、ネガティブ経験をしていながらも使用を止められないAさん、BさんとそうではないCさんの語りである。

 

ALINEのやりとりとかそういうのに疲れちゃって、LINEを放っておきたいと思うこともあります。あと、LINEを夜中にやってたり、眠かったりなんかやらんなんこととかあっ

ても、LINEを止めれなくて、朝起きれんくて学校行けんかったり…大変なことになったりはありますねー。なんか、気づくと同じ人と何時間もLINEしてたこともあったり。

 

B:あとはなんか、他の人の楽しそうなツイート見て、地元の人とか特にやけど、楽しそう

やなーって。いいなーって、自分と比べてテンション下がったりもある(笑)

坂田:うーん(笑)

B:その時の状況にもよるけどね。

(中略)

B:なんか自分の存在意義をアピールしたい…みたいな、そんな感じもあるし、みんなも楽しいことあったらつぶやいとるし、せっかく遊んだんやから記念に写真とかアップして、みんなに見せたいなって。

坂田:共感を求めてたり?

B;うんうん。それもあるし、みんなもすごいツイートするし、なんか自分も楽しんでるよ

                   

っていうアピールでもある(笑)

坂田:あー、はいはい(笑)あるね。対抗じゃないけど…=

B:=そう、なんか対抗じゃないんやけど、自分だって楽しいんやぞって(笑)楽しそうって思われたくてわざとめっちゃ楽しそうな写真のっけたりしちゃう。                

 

 

この語りからAさんは、睡眠時間ややらなければいけないことを犠牲にしてまで、LINEでのトークを中断できずに優先してしまっていることが分かる。LINEのやりとりとかそういうのに疲れちゃって…(以下省略)とあるように、他のことを犠牲にしてまでLINEをするという行為に対しては、それに対する自身の否定的な感情やそれに伴うリスクの認識はしているのにも関わらず、LINEでのやりとりをやめられないでいることが考えられる。Bさんは、他者のツイート内容に対して、他者の生活の充実さと自分の現状を比べて落ち込んでしまうことと、それに対して対抗心や自分の存在意義のアピールからツイートをしなければいけない、という衝動に駆られていることが分かる。他者のツイートに対してネガティブな感情を抱きながらも、それが自分のツイートでのアピールへの原動力ともなっていることが、ツイートに執着する気持ちを高めていると考えられる。

 

 

 

CLINEが溜まってくると返すのがめんどくさくなる。そういうときは既読無視したりする。どうでもいい会話を続けてると、スタンプだけ送って終わらせようともする。

(中略)

坂田:対抗して自分もアピールしたいとは思わんの?

C:いやー…それはなんか違う気がする。アピールしたいとは思うけど、対抗してツイート

しようとは思わん。

坂田:どういう時にツイートする?

C:なんか大きい出来事があったときとか多い。これはツイートしたいなって…時間できた時とか、ほんと自分のペースでやってる気がする。

 

 

Aさん、Bさんに対しCさんは、LINEが溜まっていることと、消化的な会話をすることへのストレスを軽減するために、既読無視やスタンプを送るなどして自らやりとりを中断させようとしていることが分かる。この際、相手やその後の人間関係に関する危惧はなく、LINEを継続させようとする意思はないと考えられる。また、Twitterにおいても他者の発信に対してネガティブ経験をし、対抗意識も生まれてきてはいるが、それに対して自分をアピールするために競争心からツイートを発信するという行為までには至っていないことが分かる。周りの発信に振り回されず、あくまでも自分のタイミングで発信できていると考えられる。

 

 

 

では、Aさん、Bさんは何故やめられないのか。以下は、ネガティブ経験をしていながらもやめられない理由として、相手の反応や評価を気にしすぎて利用頻度が過多になっているAさん、BさんとそうではないCさんの語りである。

 

A:なんか、返事がなかなか返ってこなかったり、いつまでも既読がつかないと、なんか…なんか嫌われたのかな、とか変なこと言ったんかなとか、不安になって…(2秒)で、そういうことを気にし出したら、考えたくないのに、そればっかりもう…気になっちゃって。無意識にずっと意識しちゃうことがあって、それが嫌ですね。

 

B:ツイートをした後に、なんかしらの反応がないかめっちゃ待ってしまう。何回もTwitter開いてまだかな、まだかな、みたいな(笑)この写真でよかったかな、あれにしとけばよかったかなとか、こう書けばよかったなとか。

坂田:それは、なんでそんなに気にするの?

B:たぶん見栄やと思うけど…他の人が見て、あっこのツイートお気に入り多いやんすごいって思われたいみたいな。反応が全くないとなんか恥ずかしい。だからつぶやく時とかも、ここをこう書いたら面白いんじゃないかな、とか。写真アップする時とかも、わざとなるべくみんなが写ってるやつにして、お気に入り増やそうとか。面白い写真選ぼう、とか。

坂田:相手の反応を気にしちゃう…=

B:=そうそう。相手の反応を気にして、いろんなこと考えながらツイートしてしまう。

           

 

この語りからAさんは、返事が一定時間返ってこなかった場合に不安になり、既読の有無や自分が送った内容の反省や返信ができない理由(相手の状況)を過剰に気にしていることが読み取れる。気にし過ぎてしまうからこそ、返信や既読の有無の確認を断続的に行わずにはいられなくなっていることが考えられる。Bさんは、自分のツイートに対するいいね!(旧お気に入り)やリツイートの数を気にすることで、いいね!やリツイート数が増えるように必要以上に慎重にツイート内容を考えたり、写真を選んでいることが分かる。他者の反応や共感を得るために自分のツイート内容をコントロールしており、自分に対する他者の評価に重きを置いているということからも、自分という存在を認めてほしいという自己アピール精神が強く働いていると考えられる。       

 

C:んー忙しい時とか、なんかしとる時…特に誰かと会っとる時は全く気にせん。LINEをゆっくり考えて返せる空いてる時間がある時だけかな。まず、そういう時は携帯触らんし。

(中略)

C:相手のLINEの返信が遅いからって気にすることはない。何かしてるんやなって思う。坂田:見返したりは?

C:何回も見返したりもしない。自分もなんかしとる時はLINE放置やからそこは理解してほしいなって思う。

(中略)

坂田:たまにツイートする時はどういう風につぶやいてる?

C:それはめっちゃ考える(笑)やっぱりお気に入り数とか周りの反応も気になるし、文章とかしっかり考えてしまう。あとは、独りよがりにならんようにできるだけ人目線で書くように気を付けてる。

坂田:そういうのが疲れる?

C:うん。でも、たまにならいいかなって思う。つぶやきたいなって思ったときだけ。

 

                                    

Aさん、Bさんに対しCさんの一つ目の語りからは、相手の返信の遅さや未読の状態であることに対して、自分の考え方と同じ様になにか別のことをしているから返せない、という理解で納得しているためストレスに感じていないことが分かる。また、自分の時間があるときに自分のペースでラインを返していることから、相手に振り回されずに自分を主体にして利用できていることが考えられる。二つ目の語りからCさんは、Bさんと同様に自分のツイートに対する評価を気にして、自分のツイートを他者本位でコントロールしていることが分かる。しかし、そのような気疲れがストレスにならない頻度でツイートするようにしており、あくまで自分のペースで発信することを主としていることが考えられる。

 

 

 

以下は、ネガティブ経験をしていながらもSNSをやめられない理由として、SNSでつながっていたいという思いが強いAさん、BさんとそうではないCさんの語りである。

 

A:なんかLINEが誰からも来ない、っていう状況が耐えれないっていうか…内容はなんで

もいいんです。ただ、誰かとやりとりをして繋がっていたいっていう感じ。だから、LINEのトークにいっぱい名前があればあるほど、LINEが溜まれば溜まるほど安心する(笑)

 

B:なんで…なんでやろ(笑)なんか周りの人の情報を常に把握してないと、不安になる。なんか落ち着かん。

坂田:自分が忙しいときでも?

B:うん…どうにかして見ようとする。仲いい人とか関わりが強い人のほど気になる。見て、

それに対してなんかするとかってわけじゃないけど、それを見て、知っておくってだけで安心するというか…=

坂田:=Twitterで知り合いの情報を確認できない場合は、どうする?

B:焦るし、不安になるし、気が気じゃなくなります(笑)時間が空けば空くほど不安になるかも。

 

 

この語りからAさんは、用事がないのに特定の相手と個人ラインでのやりとりを続けることで、実際に会っていない時も自分の人間関係の付き合いを持続させ、安心感を得ようとしていることが分かる。トークの内容が重要なのではなく、何人とも個人ラインをしているという事実が、自分の人間関係上でのステータスに感じていると考えられる。Bさんは、一定時間Twitterの使用ができずにTwitter上でのやりとりや周りの人の情報を把握できなくなると不安になり、気になって落ち着かなくなることが分かる。常に他人の情報を把握しなきゃいけないという気負いを感じながらも、焦燥感や不安感からTwitterで周りの情報を把握しておくことに安心感を求めてしまっていることが考えられる。

                    

 

 

坂田:誰かに話を聞いてほしくてLINEで話すことで晴らしたりすることは?

C:いや…それはない。現実世界で直接会って話してるのに、LINEでまたやりとりするのって面倒くさい。寂しくてLINEを続けたりするのはないかなー…暇やったら暇やから遊

ぼって言っちゃうし。

(中略)

坂田:しばらく一定の時間Twitterが見れんくなるとしたらどうする?

C:別のことしてる時はTwitterは放置やし、特に気にならん。自分が忙しいときに無理してとかは見ない。Twitterが見れんからって気になるってなったり落ち着かんくなることもない。

坂田:後で見れんかった分も全部見るって感じ?                  

C:うん、時間ができた時に一気に見る。それを一日に何回か繰り返すって感じ。でも、暇なときは頻繁に見てる。

                     

 

Aさん、Bさんに対しCさんの一つ目の語りからは、用事がないのに個人ラインをやりとりすることによって、直接会っていない間の人間関係における安心感を求めていないことが分かる。あくまでLINEは、連絡や用事を済ませる手段として活用しており、それ以上の個人間の関係の深まりや、自分の満足感を目的とした活用は必要としていないと考えられる。二つ目の語りからCさんは、Twitterが見れない状態においても無理に見ようとはせず、また、精神面においても気になって仕方がなくなったり落ち着かなくなることはないということから、他者のツイートに執着していないことが分かる。忙しい時は後からまとめて見る、暇な時は頻繁に見る、というようにその時の自分の状態に合わせて自分のペースでTwitterを利用している。

 

 

                  

以上を比較すると、SNSに対する行動として執着性が高い部分が多く見られるAさんとBさんは、執着性が低いCさんより多くの「SNS疲れ」を経験していることが分かる。また、「SNS疲れ」の性質として執着性の強さが一つの要因となっているとすれば、無意識に自分の価値観や生活の中にSNSを取り込んでおり、必要不可欠な存在という認識が両者の中で確立されていると考えることができる。この観点から言うと、AさんとBさんはSNSをただの連絡手段や情報交換を行うためだけのツールとしてではなく、自身の人間関係を保っていく上で現実での人間関係を補完するまたはそれ以上の働きを持っており、生活の中でのSNSの比重が高くなり自身で利用をコントロールできなくなっていることが執着性を高めていることに影響しているといえる。また、AさんとBさんの語りから、執着性の高さは同じだが、ネガティブ経験やSNS疲れの内容がLINETwitterでは違いがあることが分かり、これはSNSの違いによるものではないかと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

                   

 

 

 

 

 

 

 

第二節 LINETwitterによる違い

第一節で分析した執着性の高いAさん、Bさんにおいて使用しているメディアでSNS疲れやネガティブ経験に違いが見られた。そこで、それぞれの人間関係におけるSNSの在り方や役割についても違いがあるのか語りを用いて分析する。

 

 

第一項 LINEの場合

 

以下は、LINEの利用がAさんの人間関係に与える影響についての語りである。

 

A:なんか、日常的にLINEのやりとりをしてるほうが、相手の情報が分かるし、何て言えばいいんやろ…(2秒)常にその人を身近に感じれるとゆうか。だから、実際に直接会った時も、より親しみをもって接することができるし、LINEしてない人だったら、会ってないときのその人の情報とか気持ちとかわからなくて、なんか壁を感じてしまう気がする…私だけかもしれんけど(笑)

(中略)

ALINEのやりとりは会ってない期間の、その人と繋がれる大事なコミュニケーションになってるから、LINEでのやりとりがなくなっちゃうと、その人との繋がりもコミュニケーションもなくなっちゃってそんな仲良くない人は平気だけど、親しい人とか大事な人とかとはLINEしてないと…なんか心配になるし、寂しいかな…(2秒)LINEをしてないとこうなるっていうダメなことがあるわけじゃないけど、気持ち的な面ですごく不安になる。

   

                

この二つの語りからAさんは、人間関係を保っていく上で日常的に個人LINEをしている、ということを重要としていることが分かる。実際に会っていない間もやりとりをすることによって、相手の情報を得たりコミュニケーションを取ることができ、実際会った時により親しみやすさを求めていると考えられる。また、「LINEでのやりとりがなくなっちゃうと、その人との繋がりもコミュニケーションもなくなっちゃって」の部分から、LINE上でのやりとりを現実の人間関係の延長線上にあると捉えていることが考えられる。

 

 

 

Aさんにとって、LINE上でのやりとりは現実の人間関係の延長線上にあるということが分かった。このことを踏まえた上で、AさんがLINEに求めているものは何であるのか。以下は、AさんがLINEに求める役割や働きについての語りである。

 

A:あと、やっぱり常に連絡を取っているほうが、会う約束とか誘いやすいってのもあるし、誘われやすいってのもある。

坂田:うーん。誘いやすいって思うのはなんで?

A:やっぱりそのLINEでの会話の流れとかで、「じゃあ…」ってなるのが多いから、自然と遊ぶ約束ができるって感じ。やし、相手もそう思ってると思うから、LINEを続けてるってのもあるかも。

坂田:というと?

A:なんか、LINEここで切っちゃったらこの人わたしのこともう誘ってくれんかな、とか。いつ誘われてもいいようにLINEは続けておきたいなって思う。

坂田:なるほどね…その理由で他の人誘ってたらなんか嫌だね、たしかに。

A:そうそう、返しとけばよかったって後悔したことあるし。

 

 

 この語りからAさんは、LINEを続けることでその人との遊ぶ機会や交流を期待していることが分かる。「LINEここで切っちゃったらこの人わたしのこともう誘ってくれんかな、とか」の部分から、AさんにとってLINEがただの日常的なやりとりでは終わらず、実際に交流する機会やきっかけを作る重要なツールとして機能しており、Aさんが周りとの人間関係を保っていく上で有効に働いていると考えられる。また、「返しとけばよかったって後悔したことあるし」の部分から、過去の失敗した経験からLINEを続けなければいけない、という義務的要素を強くさせていると考える。

             

 

 

 AさんはLINEを自身の有効な人間関係の為に利用していることが分かった。では、Twitterに関してはどうだろうか。以下は、TwitterではなくLINEを頻繁に利用している理由についての語りである。

 

A:あと、やっぱりTwitterをしてないってのもあるかも。一応しとるけど、見る専で全く発信してないし…

坂田:全然つぶやかんもんね。

A:うん。だから、Twitterで発散したりできない分LINEにいっちゃってるっていうのはあるかな。LINEのアイコンとかもめっちゃ慎重に選んだりするし(笑)

(中略)

A:人間関係は広くなったけど、仲いい人はサークルに特定されるし…そんなに仲良くない人とTwitter上で交流するのがしんどくて(笑)なんか上辺だけの付き合いって感じがして                   

嫌なんよね。

この二つの語りからAさんは、Twitterでの交流はほとんどなく、LINEでのやりとりだけでSNSでの他者とのコミュニケーションを補っていることが分かる。また、自身の大学での交友関係もサークル内だけと特定されていることから、Twitter上での幅広い交流ではなく親しい間で密にコミュニケーションが取れるLINEの方を多用していると考えられる。

                     

 

 

第二項 Twitterの場合

 

以下は、Twitterの利用がBさんの人間関係に与える影響についての語りである。

 

B:大学入ってほんと交友関係広くなったから、Twitterの必要性はめっちゃ強くなった気がする。学部、サークル、バイト先とか…学部なら学部で、サークルならサークルでその内輪で会った時に、Twitterの情報が話題になることが多いし、知ってないとついてけんこともあるから…他の人のやつをいっぱい見とる分、自分もツイートしなきゃって、アピールし

なきゃってなる。

(中略)

B:えっと、大学って浅く広くの関係が多いから、Twitterフォローしとるだけであ、この前ここ行っとったんやな、あたしも行ったな、みたいな感じで会ったときのちょっとした話のネタになって、(笑)絡みにいきやすくなる。

 

 

 この語りからBさんは、他者の情報を実際会った時にそれぞれのコミュニティで共有する目的でTwitterを利用していることが分かる。また、自身も積極的に発信しないと、という気持ちに駆られていることから、サークルや学部など多様なコミュニティの中でTwitterの情報や自ら発信をすることは、現実の人間関係の中で自分の存在性を保っていく上で他者に与える影響が大きく、欠かせないツールの1つとなっていると考えられる。

                   

  

 

では、以上の、TwitterBさんの人間関係に与える影響が利用目的にどう関わっているのか。以下は、BさんがTwitterを利用する目的や役割についての語りである。

 

 

B:なんか高校の時とかは、Twitterなくても学校で絶対毎日会うから、昨日こんなことあったんやとか、すぐ分かるけど、今私地元すごい離れとるから地元の友達の近況とか情報がTwitterでしか知れんから。あと、自分のことについても、最近こんなことやっとるよってみんなにアピールできる場はTwitterくらいしかないから…って感じかな。

 

 

 この語りからBさんは、遠くにいる地元の友達や大学での幅広い交友関係において、自分とその他を繋ぐ唯一の大きなコミュニティになっていることが分かる。実際にはなかなか会う機会が少ない他者の近況や情報を一度に取り入れることができ、同じ様に自身も発信することで、お互いのツイートに対する反応(いいね!やリツイート)やそこからやり取りが生まれるなど、Twitterを通して会っていない間でも人間関係を保っていくことができると考える。

 

 

 

以上のことを踏まえた上で、Twitterの存在がBさんの中でどのように確立されているのか。以下は、Bさんの人間関係におけるTwitterの在り方や働きについての語りである。

 

B:自分と遊んだことをつぶやいてくれたってことは、自分のことを良く思ってくれとるんかなって思って、嬉しくなったりはする。誕生日の時とかのお祝いツイートとか特に、ああ、この子って自分のことこういう風に思ってくれとるんやなー、とか。それをリツイートしたり。

坂田:あー、よく見るわそれ(笑)他の人達にもアピールできるしね、仲の良さアピールというか…=

B:=それはめっちゃある(笑)それこそ対抗心なんかも(笑)やから、自分もサークルと

か友達とか自分の周りの楽しいことを自分からツイートするし。

 

 

この語りからBさんは、自分の周りの人間関係において、他者がツイートする内容にその人の相手に対する思いや仲の良さが表れていると捉えていることが分かる。そのため、自分と関わりのあるツイートはリツイートして他者にアピールするなど、Twitter上でも現実の交友関係が反映されていると考えられる。「仲の良さアピール」に関しては、現実の出来事や人物との関係性をSNS上で再び文面化することにより、思い出を共有したりお互いの仲を再確認することができる。また、それを第三者にも発信することで自分の人間関係や日常生活に対する反応や評価を得ることができ、それを自分のステータスと捉えていると考えられる。また、Twitterを通して大勢の他者の発信を受けている分、その反動で今の自分に対する評価や反応を求めてしまい、ツイートに対する競争心が芽生えてしまっているとも考えられる。

 語りの分析を用いて、AさんとBさん二人の環境や行動からその特性を明らかにしたところ、各メディアの機能が個人の特性と密接に結び付き、それぞれのSNS利用やSNS疲れを増幅させるように作用していることが分かった。

まずLINETwitterのそれぞれの機能について語りの分析から、その特徴を比較する。LINEにおいては、相手を気遣って早く返信したり、やりとりを続けたりと相手のことを危惧することが原因で気疲れをしてしまう、ということが考えられた。個人LINEの対個人でのやりとりという性質からも、その特性を見ることができる。一対一のやりとりでは、会話のキャッチボールがより密に連続的に行われる。この観点から言うと、LINETwitterよりも時間的な縛り、不自由さが強くなると考えられる。一方Twitter上には多くのユーザーが存在し、対大勢に向けての発信ややりとりになる。また、多くの他者に向けて自分を発信するということは、同時に多くの他者からの発信を受信することになる。その為、他者との競争化から自分の発信内容に対する評価を気にしたり、自分の存在意義のアピールなど自己啓示性の強さが原因で気疲れしてしまう、と考えることができる。加えて、他者の発信内容や情報に対する執着性から監視的な目的のためにTwitterを利用することによる気疲れが考えられる。この他者の発信に執着してしまう、ということに関しては時間的な拘束があるという点で、LINEと共通する部分であると考えられる。 また、LINETwitterの双方を並行利用することによって生じる「SNS疲れ」問題も明らかになったので、この二つの関係性にも「SNS依存」へつながる要素があると検討できる。

次に以上の様な各メディアの機能がどのように個人の特性と密接に結び付き、それぞれのSNS利用やSNS疲れを増幅させるように作用しているか、語りの分析から両者を比較する。Aさんは、大学に入って人間関係は広がったが、実際の交友関係はサークル内など特定のコミュニティに限定されている。そのため、Twitterでの誰とでもつながることのできる幅広い交流ではなく、対個人として日常的に密にコミュニケーションの取れるLINEを多用していると考えられる。Twitterを利用しているが、自分からは発信はせずまたその場で交流をすることもない。現実世界以外で他者とやり取りを交わし、自分の思いを伝えたり、自分の存在をアピールできる場所はLINEだけであり、その反動でLINEに固執してしまっているということができる。そのため、LINEはAさんにとって実際に会っていない間の人間関係の付き合いを保っていく上で重要なツールであり、欠かせない存在になっている。このようなAさんの特性に対し、LINEの機能がAさんの不安やマイナス要素を補うように、その依存性を増幅させていると考えられる。第二節で取り上げたLINE疲れに伴うネガティブ経験に関しても、実際にLINEの使用による気疲れを感じてはいるが、むしろLINEに縛られることやそれに伴う気疲れがあるからこそ自分のアイデンティティや人間関係に対する欲求が満たされていると実感していることが推察できる。Bさんは、大学に入って人間関係も交友関係も広まり、地元の付き合いも続いており特定された一つのコミュニティだけでなく、幅広く関わっている。そのため、特定の人と対個人で日常的にやりとりを行って仲を深めるLINEよりも、自分と関わりのある人すべての情報がタイムリーに分かり、自分のことも発信しながら交流をしていくTwitterの方を多用していると考えられる。内輪だけでなく多くの人とツイートを共有し、Twitter上での反応や評価を得ることで自分という存在をアピールしようとしている。その為、他者との競争心からツイートしなければいけないという気持ちに駆られたり、いいね!やリツイートなどの他者の評価を得ることを気にし過ぎるなど、Twitterへ執着が強くなっている。このBさんの特性に対しても、現実の人間関係を補完する役割としてTwitterの機能が自身のニーズを満たしており、Twitter疲れを経験することで自分がSNSを通して人と繋がっていることやSNSの世界での自分の存在を実感していると考えられる。